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マキの父親の予想外の言葉による衝撃からどうにか歩ける程度にまで回復した竜はいまだに混乱した頭のまま家の鍵を開ける。
正直に言ってしまえば、マキの父親が卒業したら“cafe MAKI”で働かないかと言ってくれて悪い気はしなかった。
しかし、自分がまだ学生だということと、自分のやりたいと思えることがまだハッキリとしていないことからすぐに答えることができなかったのだ。
「おかえりなさーい!」
「だいぶ遅いお帰りだったんですね。外ももうだいぶ暗いですけど」
「・・・・・・は?」
「・・・・・・え?」
玄関を開けて最初に目に飛び込んできたのは桃色と青色。
続いて耳に届くのはお昼休みや授業中にも聞いた覚えのある声。
あまりにも予想外のことに、竜は思わず家に入らずに玄関をそのまま閉じてしまった。
「・・・・・・見間違い、か?」
「いやぁ、あんなハッキリとした見間違いはないと思うんやけど・・・・・・」
玄関を閉じた竜はポケットから顔を出していたついなの方を見て確認をとる。
竜の言葉についなは困惑した表情のまま答えた。
そして、呼吸を整えた竜は改めて家の玄関を開けた。
「もー、おかえりって言われたらちゃんとただいまって言わにゃいけんのよ!」
「ひめ、近所迷惑になるったい。もうちょい静かにせんと」
「見間違いじゃなかったかー・・・・・・」
「みたいやね・・・・・・」
竜が玄関を開けると、学校にいるはずの少女、ひめがプンスコ!という擬音が聞こえてきそうなほどに頬を膨らませていた。
ひめが少し大きな声を出したことに、同じく学校にいるはずの少女、みことが注意をする。
ひめとみことの2人がいるのが見間違いではないと認識し、竜はガックリと肩を落とす。
「えっと、とりあえず・・・・・・ただいま。それで、2人はどうして、というかどうやって家に?」
「遊びたくなったから遊びにきたばい!」
「ひめだけを行かせたらなにが起こるか分からないので」
とりあえず竜は靴を脱いでひめとみことに向き直って家に来た理由を尋ねた。
竜の言葉にひめは元気よく手を上げながら答え、みことは落ち着いた様子で答える。
「そんで家に入った方法はこの梅の木ばい!」
「ボクたちは、ボクたちの宿っている梅の木を使うことによって移動できるけん。今回はこの梅の木を使って竜さんの家に入ったったい」
続いてひめは下駄箱の上に置いてある植木鉢に植えられている梅の木を指差した。
ひめの言葉に続けるようにみことが詳細な説明をする。
と、ここで竜はようやく植木鉢に植えられている梅の木が朝と姿が変わっていることに気がついた。
「なんかめっちゃ育ってる?!」
「なんやこれ。家を出るときは普通に植えられている枝やったやん?」
朝、竜が最後に見たときは多少の枝は伸びて緑色の葉をつけてはいたが、それでもまだ枝と呼べそうな見た目だった。
しかし、いまの梅の木は盆栽と呼んでもおかしくないようなほどに成長をしており、学校の中庭に植えられている梅の木と同じように小さな花を咲かせている。
まぁ、夜にもらって朝起きたら枝が伸びて緑色の葉がついている時点でかなりおかしいのだが。
「竜お兄さんから溢れている霊力を糧にしてここまで育ったばい。イタコでもここまでの速度では育たんとよ?」
「といってもイタコさんは意識して霊力を抑えているところもあるっちゃ。一概に言えんよ?」
驚いて植木鉢を見る竜にひめとみことは梅の木が急成長した理由を答えた。
どうやらひめとみことの話を聞く限りではとくになにか悪いことが起こるとかそういうわけではないらしい。
2人の言葉に竜はホッと息を吐いて安心するのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ