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しばらくついなたちの勝負を眺めていた竜だったが、途中でお風呂が沸いたという通知音が聞こえてきたため、ついなたちに一言言ってお風呂場に移動した。
需要的にまったく無さそうではあるが、竜は服を脱ぎながら考える。
竜が考えているのはバイト中にあかりと約束をした出かける約束のこと。
一度守ることができなかった約束なだけに竜はしっかりと考えるようにしていた。
「出かける、つってもなぁ・・・・・・」
普段、竜が一緒に出かけているのは男友達か、基本的には茜と葵の琴葉姉妹である。
当然ながら男友達と同じようなところに出かけるというのは論外だろうし、茜と葵の2人と出かけているところは2人の好みの場所であることがほとんどなため、参考にするには少しばかり合わないだろう。
最近ではついなと2人でいることが多いのだが、それでもついなは基本的には服のポケットにいるか、竜の頭の上に乗っているかなので、基本的には竜の行きたい場所になってしまっている。
と、このようにあかりと出かけるのに参考になりそうなものがほとんどないのだ。
「どうしたものか・・・・・・」
頭を悩ませながら服を脱ぎ終えた竜はお風呂場の中へと入る。
人によっては先にお風呂に入ってから体を洗う人などがいるらしいが、竜は先に体を洗ってからお風呂で温まる派なので、先に体を洗い始めた。
竜が体を洗い始めてしばらくすると、なにやらドタバタという音がお風呂場の外から聞こえてきた。
家の中でそんな音が聞こえてくるのだとしたら原因はついなたちの誰かであろうことは明らかだ。
聞こえてきた音に竜は思わず頭に手を当てる。
「なにをやってるんだ・・・・・・。おーい!家の中で暴れたりするなよー!」
しばらくすれば音が止むかとも思ったが、ドタバタという音は収まることがない。
頭に手を当てたまま固まっていた竜だったが、あまりにも音が止まないため、お風呂場の扉を開けて大きく声を出した。
すると、竜の声が聞こえたのか、ピタリと音は止まった。
「ひめ辺りがなんかやったのかねぇ・・・・・・」
ついな、ひめ、みこと。
この3人の中で1番なにかをやらかしそうなのは1人しかおらず、口ではボカしたように言っているが竜の頭の中ではほとんど確信のようなものがあった。
そして、体を洗い終えた竜は頭を洗い始める。
シャンプーを手に出してワシャワシャと頭を洗い始めれば大量に泡がたち始め、竜は泡が目に入らないように目を閉じた。
頭を洗う際には爪を立ててしまわないように気をつけ、指の腹の部分でマッサージをするように洗うと良いだろう。
爪を立ててしまえば頭皮が傷つき、炎症などを起こしてしまったりする。
当たり前だがそれは頭皮にとっても良くないので、可能ならば避けた方がいいだろう。
不意に、竜の耳にお風呂場の扉が開いた音が届いた。
お風呂場の扉を背にするように座っていることと、頭を洗っているために目を開くことのできない竜は頭を洗う手を止めて首をかしげる。
ついながなにか補充のために扉を開けたのかと考えたが、とくになにかが残り少なくなっているというものはなかったはずだ。
「外の風が入って寒いから閉めてくれー」
「分かったばい!」
「・・・・・・うんッ?!」
聞こえてきた返事に竜は思わずぐるりとお風呂場の扉の方に顔を向ける。
といっても目は閉じているのでその姿は見えないのだが。
竜の驚きなど気にした様子もなく、お風呂場の扉は閉められ、ペタペタと2人分の足音が聞こえてきた。
足音の量からもう1人もいるのだと理解した竜は泡だらけのままの頭を抱えるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ