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顔を赤くして悶えている茜と、腹部に多大なダメージを負って悶える竜。
2人はどうにか葵を説得し、お互いに離れることができるようになった。
離れることのできた茜は一息に竜の膝から跳ね起きると、葵からコントローラーを奪うように受け取って赤い顔のままゲームをプレイし始める。
どうやらゲームをやって恥ずかしさなどをごまかそうとする算段のようだ。
「い、いくでみゅかりさん!武器の準備は万全か?!」
「みゅっみゅみゅ!」
そんな茜の様子に葵はクスリと笑みを浮かべて竜の隣へと移動した。
茜と入れ替わるように葵が隣に来たことに、竜はドキリと体を揺らした。
「えへへ、お姉ちゃんにはよくからかわれてるから、巻き込んじゃってごめんね?」
「い、いや、さっきも言ったけど嫌じゃなかったからいいよ」
ペロリと舌を出しながら葵は竜に手を合わせて謝る。
あざとい仕草ではあるが葵のそれは非常に可愛らしく、竜は顔を赤くしながら答えた。
「みゅ~う・・・・・・」
「おわ?!みゅかりさん?」
「あれ?お姉ちゃんとゲームをやってたんじゃないの?」
鳴き声と共に頭の上にポスンと襲いかかってきた衝撃に竜は驚き、乗ってきたものの正体に気づく。
竜の頭の上に乗ってきたみゅかりさんの姿に葵は不思議そうに呟いた。
葵の言葉にみゅかりさんは、やれやれといった様子で体を振りながらテレビの方を前足で指し示した。
「にゅおあぁあぁあぁあああ?!?!?!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ、死ぬぅぅううう?!ちょ、今かすった?!ちょびっと被弾したで?!やられてたまるかいぃぃぁあああああ?!?!?!」
みゅかりさんの指し示した先では、ゲームの難易度をインフェルノにした茜が叫びながら敵から逃げ回っていた。
一緒にプレイしていたみゅかりさんの操作キャラクターは建物の上の方に吹き飛ばされて引っ掛かってしまっており、爆発武器を持ってきていなかった茜では救出することができない状態になっていた。
唐突な茜のうるささに竜と葵の2人は思わず顔を見合わせる。
「お姉ちゃんがうるさくてごめん・・・・・・」
「うん、まぁ、茜の気持ちもわからなくはないから・・・・・・な」
「みゅ~・・・・・・」
その後、なんだかんだで3分ほど逃げ回っていたのだが、あえなくカエルにスナイプされてゲームオーバーとなった。
◇ ◇ ◇
楽しい時間と言うのは早く過ぎるもの。
いつのまにやら時刻は7時。
茜と葵の2人は帰らなくてはいけない時間になっていた。
「あちゃー、もうこんな時間かいな」
「いくら家が近いからって、ちょっと熱中しすぎちゃったね」
「楽しいと時間を忘れるってのは本当だよな」
「みゅう!」
スマホで時間を確認した茜は葵に帰宅を促しながら立ち上がる。
茜と葵が住んでいるのは“
ゲームを片付けながら竜は葵の言葉を肯定する。
「んじゃ、うちらはそろそろ帰るわー」
「けっこう騒がしくしちゃってごめんね」
「んー・・・・・・、あー、ちょい待ち。家まで近いのはわかってるけど一応送ってくわ」
「え、でもそんなに遠くないし、大丈夫じゃないかな」
「せやせや、それにうちらを襲うやつなんておらんやろ」
「いーんだよ、俺が気になっちまうってだけなんだから」
玄関に向かおうとする茜と葵を引き留めて、竜は手早く上着を着る。
竜の言葉に2人は心配しすぎではないかと思ったが、悪い気もしなかったのでそのまま一緒に家を出るのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ