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やや暗くなった道を3人と1匹は歩く。
その歩調は普段のそれと比べると明らかに遅いもので、普段であればもう茜と葵の住んでいるアパートに着いているはずだった。
「そういえば普通にみゅかりさんもつれてきちゃったけど、みゅかりさんってどこに住んでいるんだ?」
ピョコピョコと跳び跳ねながら移動するみゅかりさんを見て竜はふと気になったことを呟いた。
ふとしたときに遊びに来て満足したらどこかに帰っていく。
竜からしたらみゅかりさんにはそんなイメージが着いていた。
自分を見る視線に気づいたのか、みゅかりさんは移動を止め、コテンと首をかしげながら竜のことを見た。
「それなら心配せんでも大丈夫や」
「みゅかりさんはボクたちと同じで“清花荘”に住んでるんだよ」
「だからみゅかりさんについて詳しかったんだな」
竜の呟きに茜と葵は笑いながら答える。
2人がみゅかりさんについて詳しかった理由がわかったことに竜は納得して頷いた。
「あ、それならみゅかりさんの飼い主にも話をしておいた方がいいか。一応、家に来てることもあるかもしれないし」
「あ・・・・・・え、えっと別に話とかはしなくても大丈夫やと思うで!」
「うんうん!それに飼い主の人もそんなに神経質な人じゃないし!」
「そ、そうか・・・・・・?まぁ、偶然会ったりしたらそのときでいいか・・・・・・」
「みゅ~?」
みゅかりさんの飼い主がいるのならば話をしておいた方がいいのではないか。
そう思った竜の言葉に茜と葵は慌てた様子で竜を引き留める。
2人の慌てように竜は驚き、疑問に思いつつ話をすることを保留することに決めた。
そんな話をしていると壁が緑色のアパートに着いた。
このアパートが茜と葵、みゅかりさんの住むアパート、“清花荘”だ。
「ほな、見送りありがとなー」
「竜くんも気を付けて帰ってね」
「おう」
“清花荘”の前で茜と葵は竜に手を振る。
茜は大きくブンブンと、葵は体の前で控えめに小さく。
2人の性格の出ている手の振り方に竜は思わず笑ってしまった。
「みゅ!」
「ん、みゅかりさんもまたな」
足元で前足をあげるみゅかりさんに竜はしゃがみこんで応える。
嬉しそうなみゅかりさんの様子に竜も自然と嬉しくなっていた。
「みゅい」
「うん?くれるのか?」
「みゅ!」
「なぁッ?!」
「みゅかりさん?!」
竜が立ち上がって帰ろうとすると、不意にみゅかりさんが鳴き声をあげて竜を止めた。
不思議に思ってみゅかりさんを見ると、みゅかりさんは前足に着けているアクセサリーのようなものを取り外して竜に差し出してきた。
どうやら竜に貰って欲しいらしく、確認する竜の言葉に頷いて答えた。
みゅかりさんがアクセサリーを外して渡したことが意外だったのか茜と葵の2人は驚いて声をあげる。
「んじゃ、またなー」
みゅかりさんから渡されたアクセサリーを手に持ちながら竜は自分の家へと帰っていった。
そんな竜の後ろ姿を茜と葵は驚いた表情のまま見つめていた。
「みゅっみゅっみゅ~」
「ちょい待ちい」
「いったい何を考えてるの」
上機嫌で“清花荘”の中へと入ろうとするみゅかりさんを茜と葵は捕まえる。
その声は先ほどまでの竜と話していたときとは違っており、どこか鋭さも感じられた。
「あんたはうちらの思いを知っとるはずやで」
「さっきのはつまりは宣戦布告ってことでいいのかな。ねぇ────」
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誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ