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車に揺られて・・・・・・、いや、揺れるほどの振動を感じさせない車なのでその表現は間違いか。
あかりの護衛である黒服の人の運転する車に乗ってしばらくして、竜とあかりはかなり大きな遊園地に到着した。
黒服の人は車を置いた後はあかりの護衛に戻るようで、遊園地の入り口付近で竜とあかりを下ろした後に頭を下げて駐車場に向かっていった。
「ここの遊園地か。名前は知っていたけど来たことはなかったな」
「そうなんですね。なら竜先輩の初めての“ヴァーチャルランド”を楽しみましょうか!」
遊園地“ヴァーチャルランド”の入り口の門を見上げながら竜はここに初めて来たことを呟く。
“ヴァーチャルランド”はその名の通りVR、つまりはヴァーチャルリアリティを売りにしている遊園地で、園内のアトラクションはすべてVRと組み合わさっており、そのどれもがとても人気なのだ。
竜の呟きが聞こえたあかりは竜の腕を引いて入り口である門に向かっていった。
「学生2人でお願いします」
「こ、これは紲星さま!こちらのリングを腕に着けていただければ大丈夫ですので!」
竜が門やその周りをキョロキョロと見ていると、いつの間にかあかりが入り口の受け付けで2つのリングを受け取っていた。
どうやら受付の職員の反応から紲星グループがなにやら関係ありそうだが、門などを見ていた竜は気づいていなかった。
「竜先輩、このリングを着けたら“ヴァーチャルランド”に入れますよ」
「あ、すまん。周りを見ててうっかりしてた。金額はいくらだったんだ?」
あかりから渡されたリングを受け取り、竜は財布を取り出す。
竜よりもあかりの方がお金を持っているということはハッキリとしているのだが、それでも後輩の女の子に払ってもらうというのは気が引けるのだ。
「あ、大丈夫ですよ。“
「そう、なのか・・・・・・」
普通ならいくら運営している親会社の令嬢が来たからといってお金を払う必要がないということはないだろう。
しかし、紲星グループはそれができてしまう。
このことからも紲星グループが改めてかなり大きな会社だということがうかがえた。
あかりから聞いたお金を払う必要がないという事実に竜は驚きつつ、少しばかり申し訳なさを感じて入り口を通る際に受付の方に向かって小さく頭を下げるのだった。
「さて、それじゃあどのアトラクションに行きますか?」
「そうだなぁ、さっき入り口でもらったパンフレットを見るとどれも面白そうだしな・・・・・・」
入り口を通り抜け、あかりはどのアトラクションに行くかを竜に尋ねる。
あかりの言葉に竜は入り口を通る際にスタッフからもらったパンフレットを広げて中を見る。
遊園地の定番とも言えるジェットコースターやお化け屋敷、観覧車があるのは当然として、VRを使ったシューティングゲームや、リズムゲームなんかもあるようだ。
アトラクションの種類はとても多く、適当に遊んでいくのではすべてを回りきるのはほぼ不可能と言えるだろう。
「なんでしたら今日は私がオススメするアトラクションを回りましょうか?」
「んー、それも助かるといえば助かるんだが、それだと一緒に遊んでるんじゃなくて案内みたいになっちゃうからな。だからあかりのオススメを回りつつ、俺も気になるやつがあったら言うようにするよ」
竜は“ヴァーチャルランド”に来たのは初めてということで、どのアトラクションがどんなものなのかはほとんど分からない状態。
そのことを理解したあかりは自分がオススメするアトラクションを回るか提案をする。
その際に『今日は』と言っている辺り次も来ようとしていることがうかがえた。
あかりの言葉に竜は少しだけ考え、答えた。
確かにあかりのオススメのアトラクションを乗っていけば悩んだりすることなく楽しむことはできるだろう。
しかし、それではあかりに案内をしてもらっているようなもので、一緒に遊ぶというのとは違うのではないかと竜は考えたのだ。
竜の言葉にあかりは少しだけ驚いたような表情を浮かべ、すぐに嬉しそうにうなずくのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ