ううむ・・・・・・。
不完全燃焼・・・・・・。
・
迫ってくる霊の姿に竜とあかりは体を強張らせる。
すでに2人は下がることのできる限界にまで下がっており、これ以上後ろに下がることはできなかった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・・・・」
呻き声をあげながら近づいてくる霊に、竜はあかりを庇うようにして前に出る。
対抗する手段はないが、それでもあかりが逃げる時間稼ぎくらいはできるだろうと考えたからだ。
まぁ、自己犠牲で助けられてもそれが本当に助けられた人にとって救いになるかといえばうなずくことはできないのだが。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・・・・う゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛っ?!?!」
「間に合いましたわ!」
そして、もう少しで竜に霊が触れるかというところで、不意に霊は苦しむように悶え始める。
それと同時に聞き覚えのある声が霊の後ろから聞こえてきた。
「ちゅわ?公住くんに紲星さん?」
「え、イタコ先生・・・・・・?」
「えっと、とりあえず助かったんですかね?」
悶え苦しんでいる霊の後ろからひょこりと顔を出した女性、東北イタコは霊に襲われていたのが竜たちだと気づき、驚いたような表情を浮かべる。
見知った人が現れたことによって気が抜け、竜とあかりは思わずへたりこんでしまうのだった。
◇ ◇ ◇
イタコ先生によって悶え苦しんでいた霊もきっちりと徐霊し、竜たちは“ザ・フォレスト”の外にあるベンチに座っていた。
竜とあかりが知りたいのは“ザ・フォレスト”にいた先ほどの霊についてだ。
「それで、さっきの霊はなんだったんですか?」
「イタコ先生が来ているってことはこの“ヴァーチャルランド”から依頼を受けたってことですか?」
「そうですわ。えっと、少し前からここの遊園地でヴァーチャルとは思えない幽霊が出るって話を相談されておりましたの」
竜とあかりの質問にイタコ先生は近くの自販機で買ったお茶を一口飲み、答える。
どうやらイタコ先生は先ほどの霊について少し前から遊園地から相談を受けていたようだ。
「ですが、今日まであの霊を見つけることができていなくて・・・・・・。お2人を助けることができたのは幸運でしたわ」
「そうだったんですね」
「う~ん。
イタコ先生でも見つけることが難しかったということは隠れることに特化でもしていたのだろうか。
イタコ先生は竜とあかりのことが助けられて良かったと安心したように息を吐いた。
イタコ先生の話を聞き、あかりは頬に指を当てて報告が挙がってきていなかったことに対してぼやく。
もしかしたら現場の方でこんな心霊現象のことを報告しても信じてもらえないと判断して独自に解決しようとしたのかもしれないが、それでも報告として挙げてもらえればなにかしらの対応がもっと早くできたかもしれなかった。
「えっと、とりあえずこれで今後は大丈夫になったんでしょうか?」
「そうですわね。私の気づける限りでは徐霊をしておいたので大丈夫だとは思いますけど」
報告が挙がってきていなかったことに対してぼやいていたあかりだったが、すぐに頭を切り替えて今後は霊的な問題が起こったりしないかの確認をイタコ先生にする。
あかりの言葉にイタコ先生は少しだけ考えるような仕草を見せ、問題はないだろうと答えた。
イタコ先生の言葉にあかりはホッと安心したように息を吐いた。
「それでは、私もお仕事が終わりましたので帰りますわ。公住くん、近いうちに遊びに来てくれるとこの子も喜びますのでお願いしますわね?」
「あ、はい。わかりました」
「ありがとうございました」
そう言ってイタコ先生は竜へと飛びつこうとしていたキツネを手早く捕まえて歩いていくのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ