あけましておめでとうございます。
こちら、新年最初の投稿となります。
今年も楽しく読んでいただけると嬉しいです。
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街が様々な飾りによって彩られ、イルミネーションの光がまたたいていた日からはや数日。
その数日の間に街はまったく違う光景へとその姿を変えていた。
イルミネーションによって彩られていた電信柱には赤と白の布が巻かれ、サンタクロースなどの置物が置かれていた道脇には門松が置かれている。
ちらりと適当な店を見てみれば
今日は12月31日。
この日は1年の締めの日であり、今年1年の汚れや疲れなどを
そんな1年の締めの日に竜たちは東北家に集まっていた。
「なんだろうなぁ、やっぱ和風建築って不思議と落ち着くよな・・・・・・」
「せやねぇ、しかもコタツでぬくぬくなんて最高やん・・・・・・」
「くぅ~・・・・・・」
「見事なまでに竜くんは溶けてますねぇ・・・・・・」
「それを言ったらゆかりさんもだよぉ・・・・・・」
「あ~、いいっすねぇ~・・・・・・」
「ふふふ、コタツは魔物なのです。一度入れば抜けることは叶わず、このまま年越しまで過ごしてしまうのですよ」
「うなぁ~・・・・・・、東北ぅ~みかん取ってくれぇ~・・・・・・」
「あ、うちもみかんが欲しいったい!」
「コタツでアイス・・・・・・、なんだか悪いことをしている気分になりますね・・・・・・」
コタツ特有の温かさにぐてぇ、と溶けながら竜たちはポヤポヤとした口調でしゃべる。
東北家のコタツはとても大きく、ここにはいないイタコ、ずん子、マキ、茜が座ったとしても余裕があるほどの大きさだった。
コタツのぬくもりで溶けている竜の膝の上についなは元の姿の状態で座っており、頭の上にはイタコのキツネが乗っかっている。
そんな竜の姿についなとキツネの姿が見えていないゆかりたちはのんびりとコタツのぬくもりを感じていた。
竜の左右にはウナときりたんが座っており、さすがのゆかりたちでも小学生を押し退けて竜の横に座ろうとはしていなかった。
年越しということでこんなに遅い時間なのにウナがいて大丈夫なのかと思いかもしれないが、きちんとウナの両親には説明をしており、許可も得ているので気にしなくて大丈夫なのだ。
なお、あかりがどこか淫らっぽい言葉を言っているかもしれないが、これはコタツのぬくもりの感想なのでなんの問題もないのである。
何の、問題もないのである。
「ふふふ、みんなしてとろけていますわね?」
「そうですね。みんな、もう少しでお
「お蕎麦のつゆはイタコ先生と生徒会長、うちとマキマキの4人が作った4種類やで。あと、忘れちゃいけない天ぷらもや!」
「それぞれ少しずつ違うから楽しみにしていてね?」
竜たちがコタツで溶けていると、台所からもう少しで年越し蕎麦の準備ができると料理をしていた4人が顔を出して言った。
台所で料理をしているイタコの髪の色はキツネが抜けているために黒くなっており、普段の白銀の髪色とはまた違った大和撫子さを感じられ、竜は少しだけドキドキとしている。
クリスマスの時とは違って、今回は茜も料理をする側に回っており、年越し蕎麦のつゆ作りと天ぷらを作っていた。
ずん子の言葉に溶けていた竜たちは動き始め、コタツの上に広がっていたみかんの皮や、せんべいのゴミなどをゴミ箱に捨て始める。
そうこうしているうちにイタコたちの作った蕎麦つゆが運ばれてきた。
それと一緒に大きなざるに盛られた大量の蕎麦も運ばれてくる。
「そういえば蕎麦ってほかの麺類よりも簡単に切れるから今年1年の災厄を断ち切るって意味で食べるんだっけか」
「ほぇ?うちが知っとるんは細く長いから延命と長寿願ったものって話なんやけど」
「うんうん。長生きをするために蕎麦を食べるんだって聞いたことがあるよ?」
ふと、竜は大晦日に年越し蕎麦を食べる理由を思い出して呟く。
竜の言葉に茜と葵は首をかしげて、竜とは違った年越し蕎麦を食べる理由を言う。
挙げられた2つの説に竜たちは不思議そうに首をかしげる。
そんな竜たちの様子にイタコとずん子は笑みをこぼした。
「ふふふ、公住くんが言っていることも、琴葉さんが言っていることもどちらも間違いではありませんわ」
「年越し蕎麦にはいろいろな説があるんですよ。ソバは風雨に叩かれてもその後の晴天で日光を浴びると元気になる事から健康の縁起を担ぐ説や、蕎麦が体の中の毒を取ると信じられていたことに由来するとの説。家族の縁が長く続くようにとの意味であるとの説なんてのもありましたね」
竜と茜、どちらが言った説も間違いではない。
というよりも年越し蕎麦にはいろいろと説があるのだ。
ずん子の説明に竜たちは感心したようにうなずく。
「あ、そういえば私もお母さんから1つ聞いたことがあったよ」
ずん子の年越し蕎麦に関する由来の話を聞き、マキはふと自分も親から聞いた話があることを思い出した。
マキが聞いたという話が気になり、竜たちはそろってマキの方を見る。
「えっとね、お蕎麦と
「そしたらここでお兄ちゃんと年越し蕎麦を食べればウナは来年もお兄ちゃんと一緒にいれるんだな?」
「そうですね。私たち全員が側にいられますね」
「うちたちもみんなと一緒にいられるってことったいね!」
マキの話した説にゆかりたちは頬を赤く染める。
そんなゆかりたちの様子など気にせずにウナは竜のことを見上げながら言う。
シレっと竜と自分だけにしているウナに、きりたんはやや口調を固くしながら訂正した。
「っと、年越し蕎麦は次の年に残してしまっては金運が逃げるとされておりますわ。そろそろ食べましょうか」
「それじゃあ、好きな蕎麦つゆを選んでいってね」
時計を確認したイタコはそろそろ年越し蕎麦を食べようと提案をする。
いまの時間は9時あたりで余裕はあるのだが、それでも食事を終えてから年越しを迎えたいのだ。
イタコとずん子の言葉に竜たちはそれぞれ思い思いの蕎麦つゆを選んでいく。
イタコの作った年越し蕎麦のつゆは
ずん子の作った年越し蕎麦のつゆはニンジンや焼きネギ、豚肉の入っているつゆで、蕎麦つゆとして以外にも雑煮のつゆとして使えそうなものだった。
マキの作った年越し蕎麦のつゆはイタコやずん子の作った蕎麦つゆと比べて色が薄く、
茜の作った年越し蕎麦のつゆはカツオ出汁の使われた蕎麦つゆで、特にエビの天ぷらと合うように味付けをされていた。
4人それぞれの特徴の出た蕎麦つゆはどれもとても美味しそうに見えた。
そして、竜たちは年越し蕎麦を食べ始めるのだった。
◇ ◇ ◇
イタコたち4人の作った蕎麦つゆにそれぞれが舌鼓をうち、大量に作られていた蕎麦はあっさりとその姿をなくしていた。
残ったのは空になったざると少しばかり残った蕎麦つゆだけ。
このことから4人の作った蕎麦つゆがとても美味しかったことが分かるだろう。
「満腹、満腹・・・・・・」
「どのつゆも美味しかったねぇ・・・・・・」
「どれが一番とか決められない美味しさでしたね」
お腹をさすりながら竜たちは年越し蕎麦を食べた余韻に浸る。
そんな竜たちの姿に蕎麦つゆを作った4人は嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「さて、年越しまでもう少しでわね」
「え、あ、本当ですね。年を越す前に片付けをしなきゃ」
「みんなでやればすぐに終わるで」
ちらりと時計を見てみればいつのまにやら時計は11時を指している。
食べ終わった食器などは片付けて残り時間はのんびりとみかんや煎餅なんかをつまんでいるのが乙なものだろう。
そう言ってイタコたちは食べ終わった食器を台所へと運んでいく。
それを見て竜たちも自分たちの使った食器を台所へと運んでいった。
◇ ◇ ◇
片付けもすべて終わり、竜たちはコタツに足を入れてのんびりとくつろぐ。
あと数十秒ほどで今年が終わる。
「もうすぐ年を越しますね」
「今年もほんまに色々あったなぁ」
「うん、とても楽しい年だったよね」
「来年もきっと楽しい年になるよね?」
「みんなでいればきっと楽しい年になりますわ」
「そばにいられるように年越し蕎麦も食べましたしね」
「言葉遊びみたいな説でしたけど。そうなると良いかもですね」
「来年もみなさんと美味しいものを食べたいですねぇ」
「お兄ちゃん、来年もよろしくな」
「よっし、年越しに合わせてうちらで浄化をするったい!」
「まぁ、それもよかね」
「カウントダウンはするんか?」
「残り5秒辺りからカウントしていくか」
口々に今年あったことを思い返したりしながら自由にしゃべる。
そして、年越しまで残り5秒となった。
『5!』
『4!』
『3!』
『2!』
『1!』
『あけまして、おめでとうございます!!』
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ