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ニコニコと楽しげにマキはゆかりを見る。
そんなマキの視線に耐えられなくなったのか、ゆかりは小さく咳払いをした。
「ん、んんっ・・・・・・。なんですか・・・・・・」
「んーん、別にー?」
ゆかりの問いにマキは生暖かい視線を向けながら答える。
「そっかそっかー、気分転換で髪型を変えたんだっけかー」
「う・・・・・・」
マキの言葉にゆかりは小さく呻く。
それはゆかり自身が朝に髪型の話題でマキに言った答え。
その言葉が誤魔化しであったことがバレたことをゆかりは理解した。
「あとは、なんだっけ。親睦を深めるため、だったっけ?」
「うぐぐ・・・・・・」
さらにマキはお昼を食べる前に竜をつれてきた際にゆかりの言った言葉を呟く。
完全に自身の思っていることがバレてしまっていることにゆかりは顔を赤くして呻くことしかできなかった。
「ゆかりんにもついに春が来たかー。私は応援するよ?」
「・・・・・・ありがとうございます」
顔を赤くするゆかりに向かってにっこりと微笑みかけながらマキは言う。
マキの言葉にゆかりは小さく答えた。
そんな2人のもとに赤と青の双子、茜と葵が近づいてきた。
2人の姿にマキは首をかしげ、ゆかりはわずかに目を細める。
「・・・・・・お2人ともなにか御用ですか?」
「それはあんたの方が分かってると思うんやけどな。ゆかりさん」
「昨日も聞いたけど本当だったんだね」
「え、なに?3人ともどうしたの?」
バチリッ、と電流が走るような音がクラスの中に響いた気がする。
どこか剣呑な3人の様子にマキはキョロキョロと3人を見る。
そして他のクラスメイトたちは遠目に様子を伺っていた。
「まぁ、ええ。とりあえずゆかりさんがライバルなことはハッキリとしたんやし」
「ボクたちは負けるつもりはないからね」
「・・・・・・私だって負けるつもりはありません」
3人の背後にそれぞれピンク色のスライムのような生き物、青い布のような生き物、紫色の1頭身の猫のような生き物が現れ威嚇をする。
とは言っても実際に現れているわけではなく、あくまでもイメージと言うだけなのだが。
「・・・・・・えっと、とりあえず茜ちゃんと葵ちゃんはゆかりんのライバルってことで良いのかな?」
話に置いてけぼりになってしまったマキは3人の会話から3人がどんな関係なのかを推測する。
マキの言葉に3人は今いる場所が教室であり、自分たちの他にクラスメイトたちがいることを思い出して静かになった。
とくに葵はクラスメイトたちから見られていることに気づいて茜の後ろに隠れてしまっている。
「3人に思われるなんて、竜くんはモテモテだねぇ」
ライバルだとハッキリしてからは剣呑な空気もどこかにいき、3人は普通に会話を始めた。
ライバルの関係ではあるものの、3人が仲良くなれそうなことにマキは嬉しくなり、3人の会話に混ざるのだった。
◇ ◇ ◇
一方その頃。
トイレに向かうために教室から出ていった竜は、トイレに行ったついでにお菓子も買っておこうと購買に立ち寄っていた。
「とりあえずこれでいいか」
お昼休みの残り時間も少なく、購買でお菓子を買い終えた竜は早足で教室に戻ろうとする。
お昼休みがもうすぐ終わりそうなこともあり、竜は少し急ぎめに廊下を走りそうで走らない、ちょっとだけ走っているような速度で移動していた。
そして、そんな焦っている状態で廊下を移動していれば当然────
「おわっ?!」
「きゃっ?!」
────曲がり角で誰かにぶつかってしまうのも仕方がないことだった。
出会い頭にぶつかってしまった竜は、思わず相手が倒れてしまわないように咄嗟に手を掴んだ。
しかしここで想定外なことが起こる。
1つ、相手の体が思いのほか軽く、簡単に動いてしまったこと。
1つ、竜は咄嗟の判断で手を掴んだため、思った以上に力が出てしまっていたこと。
この2点により、倒れないように手を掴んだ相手を竜が抱き締める形となってしまっていた。
「え、え・・・・・・ッ?!」
「すまん!時間がないから!これはお詫びな!」
いきなりの事態に混乱する女子生徒を尻目に、竜は先ほど購買で買ったお菓子の一部を渡して教室へと向かう。
そんな竜の姿を見ながら、2ヶ所を長い三つ編みにした髪型の女子生徒はドキドキと高鳴る胸をお菓子を持った手で押さえるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ