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お昼休みも終わり、竜もギリギリに教室に着いて午後の授業も無事に間に合うことができた。
そのあとはとくに何事もなく・・・・・・いや、美術の授業の際に美術の教師の「それでは写生大会を始めます」の言葉に対して茜が「学校の中でなんちゅうことをするんや?!」と叫んでしまったことがあったが、他には何事もなく授業は進んだ。
ちなみに茜の言葉を理解した生徒は苦笑いをし、よく分からなかった生徒は首をかしげ、美術の教師は茜の頭を思いきり叩き抜いた。
そして時刻は流れて放課後。
竜と茜は昇降口にいた。
すでに葵は日直の仕事を始めており、教室で仕事をしている。
「それじゃあ、早速向かうで!」
「おう」
靴を履き替え、茜は元気に腕をあげる。
そんな茜の姿に竜も小さく腕をあげて応えた。
「それにしてもお前、美術の授業でのアレはなぁ・・・・・・」
「ううぅ、もう言わんといてや・・・・・・」
竜の言葉に茜は顔を赤くし、両手で顔を覆う。
すでに竜以外にも葵やゆかり、マキに他のクラスメイトにまで弄られており、茜の羞恥心はかなり刺激されていた。
どうしてこうなったのかと言えば茜の完全な自爆であり、仮に勘違いしたにしても口に出さなければ良かっただけの話なのだが。
「ま、しばらくは弄られるだろうから諦めな」
「せやねー・・・・・・」
ガックリと肩を落としながら茜は竜の言葉に頷く。
人の噂も七十五日。
しばらくすればなくなるだろうがそれまでは諦めて耐えるしかないだろう。
「つっても本当に嫌なときは嫌って言えよ?なんだかんだでお前は溜め込むんだから」
「ん、そんときは頼らせてもらうわ。・・・・・・あんがとな」
そこそこに長い付き合いから茜が溜め込んでしまう性格なことを分かっている竜は軽く肩を叩いて言う。
竜の言葉に茜は小さくお礼を言った。
そして2人は茜がカードを予約した店に到着した。
店ではなにかイベントでもやっているのか、人だかりができている。
「なんやろ?今日はイベントがあるとかは聞いとらんのやけど」
「一応見とくか」
興味の惹かれた竜と茜は人だかりの方へと向かっていった。
人だかりの隙間から覗きこんでみるとどうやら誰かが遊☆戯☆王でデュエルをしているらしい。
しかも近くにあるカメラなどから察するに動画の生放送をしているようだ。
「ふふん。これでトドメです!私は“プランキッズ・ロケット”でダイレクトアタック!」
「ぬわー!」
どうやらちょうど勝負がついたらしく、頭に包丁のような髪飾りを着けた少女の宣言と同時にモンスターが攻撃をして対戦相手を吹き飛ばした。
それと同時に対戦相手のライフポイントはゼロになり、少女の後ろにある画面に数字が現れ、7から8に数字が変化した。
「ふっふっふ、レベルに差がありすぎましたね」
広げていたカードを片付けながら少女は自慢げに笑う。
笑う少女の姿に竜と茜は少女が誰なのかを理解した。
「きりたんやないか。今日は遊☆戯☆王の配信をしとるんやね」
「みたいだな。ということは最後の最後でまた誰かに泣かされるんだろうな」
生配信をしている少女の正体が分かった竜と茜はこのあとに何が起きるのかの予想をしながら見学することに決めたようだ。
「ふふふ、私の10連勝企画の次の犠牲者は誰になってもらいましょうかね」
そう言って頭に包丁のような髪飾りを着けた少女────東北きりたんは周囲を見回す。
しばらく周囲を見回していたきりたんは、やがて1人の客を真っ直ぐに見つめて指差した。
「次の私の対戦相手は・・・・・・、そこのあなたに決めました!」
「な、う、うちか?!」
きりたんに指差された客、茜は自身が選ばれるとは思っていなかったため動揺しながらきりたんの前に移動するのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ