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茜の言葉に呆けていた竜は、自身を見て笑う茜を見てようやく自身がからかわれたのだということを理解した。
笑う茜をジトッとした目で竜は睨む。
「すまんすまん、だからそんな顔で見んといてや」
「ったく、本気になったらどうするんだっての・・・・・・」
「む~っ、そんなつもりもないくせに言わんでよ」
謝る茜に竜はため息を吐きながら答えた。
そんな竜の姿を見ながら茜は小さく呟く。
プンスコと擬音が聞こえてきそうな表情の茜を見ながら、竜はドキドキと少しだけ強くなる胸を誤魔化すのだった。
「おっと、そうや。葵にチョコミントアイスを買ってかな」
「そういえば言ってたな。俺も晩御飯の材料とかを見とかないと」
ふと、茜は思い出したように手を叩く。
日直で別行動になる葵のためにチョコミントアイスを買って帰ることを約束していたのだが、店での出来事や先ほどの竜とのやり取りでうっかり忘れかけていたのだ。
茜の言葉に竜も自身の家の冷蔵庫の中身を思い出しながら呟く。
「めんどいから麺類かな」
「んー、なんやったらうちで食べてったらどうや?葵も喜ぶと思うし」
晩御飯のメニューを面倒と言う理由から麺類にしようとしている竜に茜は名案を思い付いたとばかりに目を輝かせる。
「いや、さすがに迷惑だろ。それに食費とかも余分にかかっちまうし」
「別に作る分には2人も3人もそんな変わらんて。と言うわけで決定や」
「おいおい・・・・・・」
困惑する竜を尻目に、茜はスーパーへと向かっていった。
ずんずんと進んでいく茜の姿に、竜はため息を吐いて後を追った。
「今日の安売りは・・・・・・、お肉が安いみたいやね」
茜はスーパーに着くと、入り口に貼り付けられている広告を確認して買うものをピックアップしていく。
茜と同じように竜も広告を確認して買うものを確認する。
「ほな買いに行こかー」
「おう」
広告の確認を終え、茜は買い物かごを持ってスーパーの中へと入っていった。
茜の言葉に竜も買い物かごを手に持ちながら応えた。
「そういえば、茜と葵ってどっちが家事をやってるんだ?」
「あれ?言っとらんかったっけ?」
食材をかごに入れながら竜は気になったことを茜に尋ねる。
竜の言葉に茜はキョトンとしながら聞き返した。
「基本的に家事で料理はうちがやっとるで。代わりに掃除なんかは葵にやってもらっとるけどな」
「へぇ、と言うか茜が料理してたのか。ちょっと意外だ」
茜の言葉に竜は意外そうに茜を見る。
正直なところ、竜は茜を飯マズ系女子だと勝手に思っていたので本当に意外だったのだ。
そんな竜の心情を察したのか、茜はムッと頬を膨らませる。
「これは、うちにどんなイメージがあったのか詳しく聞く必要がありそうやな」
「おぉっと、俺はちょっと自分の方で買うものがあるから別行動かなー。ハッハッハ・・・・・・、さらば!」
「逃がすかぁ!」
圧の込められた茜の言葉に竜はすばらしいほどの棒読みを白々しく言いながら逃げ出す。
そんな竜を茜は全速力で追いかけ始めた。
並んでいる商品の隙間を縫うように走り、所々にいる買い物客にぶつからないように2人はスーパーの中を走る。
なにかにぶつかっては後方から追ってくる茜に捕まり。
なにかにぶつかっては前方の追いかける竜に逃げられる。
互いにミスを許されないデッドヒート。
そして、その決着は────
「2人とも高校生なんだからちゃんとしようね・・・・・・?」
「「は~い・・・・・・」」
────タカハシというネームプレートを着けた店員に捕まるという結末で終わりを迎えるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ