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首にみゅかりさんがしがみついたまま竜は茜と一緒に歩く。
みゅかりさんはいまだにゲームに未練があるのか、小さく小刻みに鳴き声をあげていた。
「みゅぅう・・・・・・、みゅぅう・・・・・・」
「ええかげんに諦めえや・・・・・・」
鳴き声をあげ、みゅかりさんは竜の体にグリグリと体を擦り付ける。
みゅかりさんのその姿に茜は少しだけ呆れたような声をあげた。
そんなやりとりをしながら茜と葵、そしてみゅかりさんの住んでいるアパート“清花荘”に到着した。
「葵ー、帰ったでー!」
「はーい、おかえりなさーい」
“清花荘”の茜と葵の暮らす部屋の扉を開けて茜が声をかけると、中から葵の声が聞こえてきた。
葵がいることを確認した茜はそのまま竜を部屋の中へと招き入れる。
「ほな、ちゃちゃっと晩御飯の準備でもしよか」
「ん、ならなにか手伝うことはあるか?」
「大丈夫やで。葵んとこで待っててや」
廊下を歩き、リビングへの扉の前で茜と竜は話す。
どうやら葵はテレビを見ているらしく、リビングからテレビの音声が聞こえてきていた。
そして茜はリビングへの扉を開けた。
「え゛・・・・・・」
「葵・・・・・・ちゃんとせえっていつも言っとるやろ・・・・・・」
リビングへの扉を開き、目に入った光景に竜は驚きに、茜は呆れて言葉を失った。
琴葉 葵、彼女を知っている友人たちは皆一様にしっかりもので真面目な女の子と彼女のことを評価する。
そしてその評価は間違っておらず、制服なども着崩したりすることなくきっちりとした格好をしていた。
学校などの
まず目に入ってくるのはシワができそうな状態で脱ぎ散らかされた制服たち。
続いて床に普通に落ちているお菓子の袋。
もちろんお菓子の袋の口は空いている。
そして極めつけはクッションの上でうつ伏せでだらしない体制になってテレビを見ている葵の姿だった。
しかも部屋着なのかブカブカのシャツだけを着ており、ギリギリで下着が見えていないという状態になってしまっている。
同級生の女の子のとんでもない姿に竜は言葉を失って、目を逸らすことも忘れてしまっていた。
ちなみにみゅかりさんは特に気にした様子もなく竜の首もとにぶら下がっている。
「あ、お姉ちゃん。おかえ・・・・・・り・・・・・・」
「ただいまや。それと今日は竜とみゅかりさんも晩御飯を食べてくからなー」
扉が開いた音で茜がリビングに入ってきたことに気づいたのか、葵はくるりと顔を扉に向け、言葉の途中で固まってしまった。
そんな葵のことなど気にせずに茜は脱ぎ捨てられていた制服などを回収していく。
「え、あ・・・・・・、え?・・・・・・~~~ッッッ?!?!」
ボフンッ、とでも聞こえてきそうな勢いで顔を赤くした葵は乗っかっていたクッションを体の前に動かして体を隠しながら自分の部屋へと駆けていった。
事態に着いていけずに竜はそんな葵の様子を見ていることしかできなかった。
「・・・・・・茜、知っててやったのか?」
「せやで。うちが何っ回も言うても治らんかったからな。強行策に出させてもらったんや」
ギギギと茜に顔を向けて竜が尋ねると、茜は悪びれる様子もなく肯定した。
それほどまでに葵のだらしなさが酷かったということなのだろうが、それでも他にやり方があったのではないかと竜は思った。
「じゃ、うちは晩御飯を作るからテレビでも見て待っててや」
「あいよ」
「みゅい」
エプロンを着けて茜はキッチンへと向かっていった。
そんな茜を見送って竜は先ほどまで葵のいた場所の近くに腰を下ろした。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ