エペでデュオならまだソロでもチャンピオンになれるな―。
それでも厳しいことに違いはないんですけどねー。
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貴身純家からの帰り道。
竜はイタコ先生の運転する車に乗っていた。
「貴身純家が俺の親の実家だっていう驚きはありましたけど、無事に終わって良かったですね」
「そ、そそそそそ、そうですわね!」
「なんや、挙動不審やな?」
無事にイタコ先生の婚約の話を解決することができ、竜はホッと息を吐きながら言う。
そんな竜の言葉に貴身純家で竜と婚約者の関係になる可能性があったという情報を聞いていたイタコ先生は噛みながら答えた。
いつもとは違うイタコ先生の様子に竜とついなはそろって首をかしげる。
「どうかしましたか?」
「い、いえいえ。なにもありませんわよ?!」
「くーっ!」
不思議に思った竜が尋ねるが、イタコ先生は慌てた様子で答えるだけでどうして挙動不審なのかを答えることはなかった。
挙動不審になったまま答えたイタコ先生からいきなりキツネが飛び出し、竜に飛びつく。
イタコ先生に憑いているキツネがいきなり現れて飛びついてくることはいつものことなため、竜はとくに驚くこともなく受け止めることができた。
「っと、どうしたー?」
「くー、こーんっ!」
「いつもながらいきなり現れるなぁー」
飛びついてきたキツネの頭をグシグシと撫でながら竜はキツネに声をかける。
竜に撫でられ、キツネは気持ちよさそうに目を細めながら鳴き声をあげている。
そんなキツネの様子についなは呆れたような声で呟いた。
キツネが飛び出したことによって挙動不審になってしまっている理由を話すことがうやむやになり、イタコ先生は竜たちに気づかれないように小さく息を吐くのだった。
◇ ◇ ◇
イタコ先生の運転によって家に着いた竜は、軽く伸びをする。
竜が車から降りた際にキツネが引っ付いて離れないようにしていたが、すでにいつものことなためにとくに苦労することなく引き剥がされてしまっていた。
「それにしてもご主人のお母さんの実家が高名な霊能者の家系だったっちゅうんは驚きやったなぁ。家に来た時に術を使っとったんは見とるから霊能者やっちゅうんは知っとったけど」
「そうなのか?」
家の中に入って落ち着いたのか、ついなはしみじみと呟く。
ついなの呟きからついなは竜の母親が霊能力を使うことができるということを知っていたのだと知り、竜は少しだけ驚いた表情になりながらついなに聞き返した。
竜の言葉についなは一瞬だけしまったというような表情になったが、すぐに元の表情に戻る。
「どうかしたのか?」
「あー、ご主人のお母さんにご主人には言わないように言われとったんやけど・・・・・・。よく考えたら貴身純家で正体を明かしとった時点で分かっとったなぁって、思ってなぁ」
竜に尋ねられ、ついなは少しだけ悩み、先ほど表情を変えた理由を答えた。
ついなの答えに竜は口止めをしている自身の母親の姿を思い浮かべてしまい、やや疲れたような表情になるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ