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口へと入れられた唐揚げの美味しさに竜は一瞬だけ固まる。
しかし、すぐに自分の口に入れられているのがあかりの使っていた箸だということに気がつき慌てて口を離した。
「ちょ、おま、なにを・・・・・・?!」
「竜先輩、美味しかったですか?」
「旨かったけど・・・・・・」
慌てる竜に対してあかりはワクワクとした表情で尋ねる。
子供のように無邪気な笑顔で聞いてくるあかりに竜は勢いを削がれたのか、やや困惑した表情になりながらも頷いた。
「それならよかったです!他にも食べたいものはありますか?」
「な、ならそれをもらおうかな」
「これですね。どうぞ!」
竜の答えにあかりは嬉しそうにしながら次に欲しいものを尋ねる。
あかりの言葉に竜は重箱の中に入っているおかずを1つ選ぶ。
竜がおかずを選ぶとあかりはそのおかずを箸で掴んで差し出してきた。
なんの躊躇いもなく再び自分の使っていた箸を使っておかずを差し出してきたあかりに竜は困惑しつつ受け取ろうと手を出す。
「手で持つなんて行儀が悪いですよ。はい、あーんしてください」
「あ、ああ・・・・・・」
おかずを受け取ろうとする竜の手におかずを置かずに竜に口を開けるように促す。
あかりの言葉に竜は照れつつ、躊躇いがちに口を開けた。
口を開けた竜にあかりは楽しそうに掴んだおかずを食べさせる。
「も、もう十分だからあとは自分で食べてくれ」
「はーい」
さすがに恥ずかしさが限界になったのか、竜は顔を隠しながらあかりに言う。
そんな竜の言葉にあかりはとくに照れなどの様子もなく、竜が口にしたことも気にせずにそのまま箸を使ってお弁当を食べるのを再開した。
「あの子、いきなりあんなことを・・・・・・」
「どうする、お姉ちゃん。処す?処す?」
「葵、落ち着きい。次の機会にうちらも竜にやるんや」
「ありゃー、なんとも修羅場だねぇ・・・・・・」
やや暴走を始めたゆかり、葵、茜の3人の声を聞きながらマキは聞こえないように小さく呟く。
その原因になっている竜とあかりの様子を見ながらマキは自分のお弁当を食べきるのだった。
「・・・・・・あれ?もしかして、私とゆかりんも昨日はあんな感じだったのかな?」
食べ終わったお弁当箱を片付けながらマキはふと昨日のお昼のことを思い出す。
昨日のお昼ではマキとゆかりも竜に対してお弁当のおかずを箸で掴んで差し出していた。
直接食べさせてはいないとしても同じような感じになっていたのはほぼ間違いないだろう。
そのことに思い至ったマキは恥ずかしさで顔を赤く染めるのだった。
「ごちそうさまでしたぁ!」
「おぉう・・・・・・、本当に食べきったよ・・・・・・」
いつの間にか重箱の中はキレイになくなっており、それでもまだ余裕のありそうなあかりの姿に竜は驚きと恐れの入り交じった声で呟いた。
クラスにいた他の人たちも同じような気持ちなのか、どこぞのピンク色のボールな悪魔や緑色の恐竜を見るかのようにあかりを見ていた。
「えへへ、お弁当はいつも美味しいんですけど今日は竜先輩と一緒に食べたから一層美味しく感じられました!」
「また・・・・・・、恥ずかしくなることを言うなぁ・・・・・・」
ニヘラと嬉しそうに笑いながら言うあかりの言葉に竜は照れながら答える。
あかりの言葉に似たような経験のあるリア充なクラスメイトたちは同意をするように頷き、非リア充なクラスメイトたちはどこか光のない瞳で竜に鋭い視線を向ける。
「竜先輩、また今度も一緒に食べてもいいですか?」
「ああ、俺は別に構わないけど。その時はせめて箸をもう一組用意してもらえると安心できるかな。おかずを貰うにしても貰わないにしても・・・・・・」
少しだけ不安そうにあかりは竜に尋ねる。
あかり自身、今日のことは少しばかり勢いに任せて押しきってしまった自覚はあるので、次からも一緒に食べることができるのかが不安なのだ。
あかりの言葉に竜は苦笑しながら答えた。
「やった!ありがとうございます!・・・・・・お箸は洗い物が増えちゃうので私ので大丈夫ですよね。では!」
「ちょ、まっ?!」
竜の言葉にあかりは嬉しそうに喜ぶ。
そしていつの間に重箱を片付けたのか、椅子から立ち上がると手をあげて教室から出ていった。
あかりの残した最後の言葉に竜が驚いてあかりを捕まえようとするも、すでにあかりは教室から出ており、手を伸ばすことしかできなかった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ