・
本日の授業もすべて終わり、下校時間になる。
眠りかけて怒られた茜はいまだにそれを引きずっているのか、どこか元気がないように見える。
「お姉ちゃん、もう元気出しなよ」
「せやなー・・・・・・」
葵の言葉にも上の空な様子で、竜は少しだけ心配になっていた。
いつまで経っても元気にならない茜の様子にゆかりやマキも心配そうに見ている。
「いつまでしょげてんだ」
「わぅ?!ちょ、やめぇ?!」
グシャグシャと頭を乱暴に撫でられ、茜は困惑しながら竜の手を掴もうとする。
しかし茜の手が触れる直前に竜は手を引く。
「んで?なんで元気がないんだよ」
「・・・・・・笑わへん?」
竜の言葉に茜はおずおずと尋ねる。
茜の姿は、どこか恥ずかしがっているようにも見えた。
「内容によるな」
「う・・・・・・、せやね。・・・・・・・・・・・・んや」
竜の答えに茜は少しだけ考え、小さく呟いた。
茜の言葉がハッキリとは聞こえず、竜は茜に耳を近づける。
「なんて?」
「だから・・・・・・。・・・・・・・・・・・・もうたんや」
先ほどよりは少しだけ声は大きくなったが、それでもハッキリとは聞こえない。
竜はさらに茜に耳を近づける。
「だから!お腹が空いてもうたんや!」
「うぉ?!」
近づけた耳元での茜の咆哮ばりの叫びに竜は思わず耳を押さえる。
それでも完全には防げていなかったため、耳がややキーンとしていた。
また、茜の声が大きかったので周りにいた他の人間の耳にも茜の声は届いており、葵やゆかり、マキを含めた全員に呆れたような目を向けられていた。
茜の元気のなかった理由がただの空腹。
その事実に何とも言えない空気が広がる。
茜の元気がなかったことを心配していたクラスメイトたちは苦笑を浮かべながら教室から出ていった。
「お前・・・・・・、ただの腹減りかよ・・・・・・」
「しゃあないやん。最後の授業が体育やったんやから」
「いや、あれはお姉ちゃんだけが勝手に盛り上がって動き回ったからだよね?」
竜は呆れた表情で茜を見ながら言う。
竜の視線から逃れるように茜は顔を逸らし、もごもごと答えた。
しかし茜の答えを葵はバッサリと切り捨てた。
午後の最後の授業の体育で茜はする必要もないのに無駄に動き回っていた。
そのことは同じ授業を受けていた全員が証言できるし、誤魔化しようのない事実である。
そして同じ授業を受けている他のクラスメイトたちは誰1人として空腹を訴えていない。
この事から茜が空腹になっているのは完全に自業自得だった。
「り、理由なんかどうでもええんや。お腹空いとるから帰りにどっかに寄らへん?」
「どっか、ねぇ?」
「この辺りだとファミレスとか?」
茜の言葉に竜と葵は近辺に何があったかを考える。
お腹が空いたと言っているのだから飲食店であること。
そして、晩御飯前なのだから少量のものがあるところ。
どこに行こうか頭を悩ませる3人のもとにマキとゆかりが近寄ってきた。
「やっほー、3人でどこかに食べに行くの?」
「これからマキさんの家の喫茶店に行くのですが、一緒にどうですか?」
「マキマキんちは喫茶店なんか」
「喫茶店なら小腹を満たすのにはちょうどいいのかな?」
「新規開拓も面白そうだし。一緒に行くか」
マキとゆかりの言葉に竜たちは頷く。
喫茶店であればレストランよりも少なめの軽食のようなものがあるイメージがあり、軽く小腹を満たすにはちょうどいいと考えたからだ。
帰るための荷物を掴み、竜たち5人は教室を出た。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
-
佐藤ささら
-
鈴木つづみ