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マキの家がやっている喫茶店へと向かう道中。
竜たちは何てことのない会話をしていた。
「うちは思うんよ。クッパって実はマリオのことが好きなんやないかって」
「どうしてそんな風に思ったんですか?」
茜の言葉にゆかりは首をかしげて尋ねる。
知らない人はいないと思うが、茜の言うクッパとはマリオシリーズの敵キャラでトゲつきの甲羅を背負った亀のことだ。
少し前には擬人化、というか姫化をしたこともあったが。
ゆかりの言葉に同意するように竜、葵、マキも茜のことを見る。
「いやな、自分でコースを作るゲームがあるやろ?」
「ああ、ありましたね」
「たしかマリオメーカーだっけ?」
茜の言うゲームが思い浮かんだのか、マキがゲーム名を言う。
マキの言葉に茜は頷いた。
「せやで。んでな、うちもコースを作ってみたんよ」
「ああ、昨日はそれで宿題をやってなかったんだね」
宿題をやらなかった理由の自白に茜に白い視線が突き刺さった。
そんな視線を気にしないように顔を逸らしつつ茜は言葉を続ける。
「あれな。うまい具合にコースを作るんが難しいんよ。マリオのジャンプする距離やら、ブロックの配置やら、アイテムの配置と使い道やら。いろいろとちゃんと考えなあかんのよ」
「あー、なるほど。簡単にクリアできるやつは作りやすいけど、ギリギリクリアできるかなって難易度にするのが難しいんだな」
茜の言いたいことが分かった竜はしきりに頷く。
「んでな?そんなコースをクッパは作っとるわけやろ。コース1つを作るのにマリオのことをたくさん考えとるんや。これはマリオのことを好きと言っても過言ではないと思うわけや!」
ドンッ、という効果音が聞こえてきそうなほど茜は自信満々に言う。
そんな茜の言葉に竜たちは顔を見合わせた。
「・・・・・・どう思う?」
「すさまじいほどの極論ではないでしょうか?」
「ちゃんとクリアできるように設計されているって言う点では好ましく思っていると思えなくはないけど・・・・・・」
「お姉ちゃんが変なこと言ってごめんなさい・・・・・・」
茜の言葉に同意を示すものはここにはいなかったようだ。
自信満々に胸を張りながら歩く茜に、竜たちはため息を吐くのだった。
「あ、見えましたよ」
「あれがマキマキの家がやってるカフェなんやね」
「えっと、“Cafe Maki”?」
「もしかして、店の名前はマキの名前からか?」
「うん。私が生まれてから喫茶店を始めたんだって」
しばらく歩いていくと、白い壁に黄色の文字で書かれた看板の掲げられた建物が見えてきた。
建物の外観はシンプルな白地の壁に大きめの窓がついており、店の前には色とりどりの花が鉢植えに植えられて並んでいた。
喫茶店の建物の後ろには別の建物が繋がっており、そちらが弦巻家の住居なのだろう。
竜の言葉にマキは嬉しそうに笑みを浮かべながら答える。
「えへへ、うちの喫茶店“cafe Maki”へようこそ!」
マキは照れながら笑みをこぼし、店の扉を開けた。
喫茶店の内装は木製のテーブルに白い椅子とシンプルながら雰囲気にあった物が使われており、とても落ち着いた雰囲気を感じられた。
扉を開けた際に鳴ったドアベルの音が聞こえたのか、1人の女性が歩いてきた。
「いらっしゃいませ~、って、あら?マキちゃん、おかえりなさい。そちらはお友だち?」
「ただいま、お母さん。うん、ゆかりんの他にも連れてきたんだ~」
歩いてきたのはマキの母親だった。
マキの母親は竜たちのことを、とくに竜のことを興味深そうに見ると、パチンと手を合わせる。
「マキちゃんのボーイフレ────」
「違うからね?!」
自分の母親がとんでもないことを言い出しそうなことに気がついたマキは慌てて言葉を遮る。
ただでさえお昼休みの出来事で敏感になっているのだからここで刺激を与えるのは得策ではない。
そしてマキは誤魔化すように竜たちを席に案内するのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ