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女性が3人集まれば姦しいというが、そこに1人加わるとさらに手に負えなくなる。
楽しそうに話す茜、葵、ゆかり、マキの4人を見ながら竜はマキ茶を口に運ぶ。
ときおり竜も会話に参加できるような話題が出るものの、それでもどことなく居心地の悪さのようなものを感じていた。
ファッションの話やメイクの話、好きな音楽の話に勉強の話。
様々な話題が尽きることなく4人の口から溢れてきていた。
中にはうっかり聞いてしまった体重の悩みについての話なんかもあったが、それを聞いてしまった直後に忘れるように念入りに釘を刺されてしまったりもした。
「よくもまぁ、あんなに話題が尽きないもんだ・・・・・・」
「あはは、それが女性というものなんだよ。男はそれに付き合っていくしかないのさ」
「そうかもしれないけど・・・・・・ん?」
きゃっきゃと会話をしている4人の姿を見ながら竜が呟くと、その声に返事が帰ってきた。
聞こえてきた声に竜はキョロキョロと辺りを見回す。
今の声は茜たち4人の声とは全く違っており、男性の声であった。
竜が辺りを見回すと、自分たちが座っているテーブルの隣の通路に見慣れない男性の姿があることに気がついた。
「えっと、こんにちは・・・・・・?」
「ああ、こんにちは」
突然現れた男性に、竜は困惑しながら挨拶をする。
男性の手もとを見ると飲み物とケーキの乗ったトレイを手に持っており、それを運んでいるところなことが分かった。
「あ、お父さん」
「お友だちと楽しそうに話してたね。マキの分を持ってきたよ」
男性がいることに気がついたマキは嬉しそうに声をあげる。
マキが気づいたことによって男性、マキの父親はニコリと笑いかけて持っているトレイをマキの前に置いた。
マキの前に置かれたのはカフェオレとミルクレープだった。
それらを見てマキは嬉しそうに目を輝かせる。
「マキさんは本当にそれが好きなんですね」
「ほへぇ、それがマキマキの好物なんやね?」
「とっても美味しそうだね。今日は別のものを頼んでるから今度来たときに頼もうかな?」
「これ、クレープ生地を焼くの大変そうだな」
マキの前に置かれたものを見て竜たちは口々に感想を言う。
自分の目の前に好物があるということと、自分の好物に興味を示されているということを嬉しく感じ、マキは小さく笑みを浮かべる。
「ふふふ、この2つはマキが小さい頃からの好物でね。悲しいことがあったり、落ち込んだときなんかもこれを食べたらすぐに機嫌を良くするんだよ」
嬉しそうなマキの姿を見ながら父親は自慢げに言う。
確かに自分の作ったものを食べて嬉しそうにしてもらえれば作った甲斐があるというもの。
父親の気持ちが何となく分かった茜と葵は納得するように頷いた。
「それじゃあ、私は仕事に戻るよ。みんなも“cafe Maki”にこれからも来てくれると嬉しいかな」
「うん。お父さん、ありがとう」
「もちろんです」
「まだ気になるもんもあるから当然やでー」
「ボクもお姉ちゃんとまた来ます」
「常連になるかもです」
父親の言葉に竜たちは笑みを浮かべながら答えた。
竜たちの言葉に父親は満足そうに頷くとキッチンに向かって歩き始める。
不意に父親が立ち止まって竜の方を見た。
「常連になるのは嬉しいけど・・・・・・、うちのマキを目的に来るなら話は変わってくるからね?」
「え、あ、はい・・・・・・」
「お父さん!」
先ほどまでの雰囲気とはガラリと変わって威圧するような父親の言葉に竜は怯みながら答える。
豹変した父親の様子に茜たちは驚き、竜とマキ、そして父親のことをキョロキョロと見回している。
父親のこの行動はマキが男友だちをつれてくるたびにやっているため、マキは呆れ混じりに怒るのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ