のんびりと続き~
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最近通い始めた落ち着いた雰囲気のカフェ。
注文したコーヒーを飲みながらホッと息を吐く。
コーヒーの入ったカップをテーブルの上に戻し、チラリと視線をあげる。
視線の先にいるのはクラスでも人気のさとうささらさん。
彼女は友人であるすずきつづみさんと注文したものを口に運びながら楽しそうに話をしていた。
「いつか、ボクもあんな風に……」
ふいに口から出てしまうのは自分がささらさんと楽しそうに話している姿への願望。
叶うのであればつづみさんの場所に自分が入りたいと思ってしまうのも男の
そんなすぐに叶うわけでもない願いを妄想しながら小さくため息を吐く。
コーヒーをもう一度口に運んでその味を楽しんでいると、ささらさんが大きく手を上げて店員へと声をかけていた。
なにか新しく注文をするのだろうか?
でも彼女たちはいつも最初に注文をしてそれを楽しみながら雑談をしていたはず。
いつもとは違う行動をするささらさんの様子に思わず首をかしげてしまう。
「……え?」
ど う し て か の じ ょ は カ レ に わ ら い か け て い る ん だ ?
次の瞬間、自分の目に飛び込んできたその光景に頭の中が真っ白になる。
ささらさんはクラスで話しかけられると笑顔で応えはする。
でもそれは友人であるつづみさんに向けるような笑顔とは少し違う他人に向けた笑顔。
しかし今彼女が店員に向けている笑顔はそれに近しいものを感じられるような笑顔だった。
いや、むしろ店員に向けている笑顔はどこかペットが飼い主に構われて嬉しくしているかのような雰囲気さえ感じられる友情以外の感情が見えるような笑顔にも見える。
自分や友人であるつづみさんに向ける笑顔とはまた違った笑顔を見せるささらさんの姿に、自分の中のなにかが音を立てて崩れていくような感覚を抱くのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ありがとうございましたー」
ふらふらとどこか幽霊のようになっている男子学生を竜は見送る。
先ほどまで注文したコーヒーを普通に飲んでいたはずなのだが、いつの間にやらまるで幽霊のようになってしまっていたのだ。
突然のお客さんの変化のしように驚きはしたものの、深入りするのも良くはないだろうと判断して竜はなにも言わずに男子学生を見送っていた。
「ちょっと良いかしら」
「どうかしましたか?」
男子生徒を見送った竜が次の仕事に移ろうとしたとき、ふいにつづみが声をかけてきた。
見ればささらの姿がないためお花摘みにでも行っているのだろう。
「そろそろ彼女がどうしてああなったのか教えて欲しいのだけど」
「いや、そういわれてもなにも分からないんですって」
ジトっとした目を向けながらつづみはささらがどうして“あんな”ことになってしまったのかの説明を竜に求める。
まぁ、もともとは普通に明るくて元気な友人がいつの間にかどこかネチャッとしたネバついた視線を特定の男子に向けるようになっていれば気になるのも仕方がないことなのだろう。
とはいえ、竜からしてみてもささらとの関りは、生霊を体に戻すために毎度毎度その胸を思い切り平手打ちしているくらいのものでありつづみに尋ねられても答えられないのが現状なのだった。
ちなみに、なぜ胸を叩いているのかというと他の場所を叩いたりしてみたことはあったのだが簡単に体に戻っていかず、最も簡単に体に戻す効率が良かったのがささらの胸を引っ叩くことだったのだ。
その関係で竜は仮にささらの胸を触ることがあってもそこまでなにかを感じるようなことはなくなってしまったのだが、とくに問題はないだろう。
どうしてささらがあんなことになってしまったのかが分からない竜とつづみは互いに顔を見合わせてため息を吐くのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ