変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

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UA30000を越えたので番外話です。

ヤンデレといっても作者のイメージするヤンデレですので好みが分かれるかもしれません。

それでもよろしければ読んでください。

なお、本編のネタバレも含まれますので気をつけてください。








UA30000突破・番外話・ヤンデレマキエンド

 

 

 

 

 嬉しそうに差し出される小さな包み。

 それは、自分がそうすることが当たり前だと思っているような笑顔で差し出されていた。

 

 申し訳ないと思いつつも竜はそれを受けとった。

 竜が受け取ったことで、一層のことマキは嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 

 

「なんつーか、いつもスマンな・・・・・・」

「良いの良いの。私がやりたくてやってることだからさ」

 

 

 竜の言葉にマキはヒラヒラと手を振りながら答える。

 マキが手をヒラヒラと振るのを見て、竜はあることに気がついた。

 

 

「それって、包丁で切ったのか?」

「え?・・・・・・ああ、うん。ちょっと考え事をしててね」

「マキさんが指を切るなんて珍しいですね?」

「料理中に考え事はあかんでー?」

「少しでも気を抜いたら怪我をしちゃうもんね」

 

 

 竜が見ていたのはマキの人差し指。

 マキの人差し指には絆創膏が巻かれており、マキが怪我をしたことがハッキリと分かった。

 竜の言葉にゆかりたちも不思議そうにマキの指を見る。

 指の怪我を指摘されたマキは、どこか触れてほしくなさそうに答えた。

 

 

「そんなことは別に良いから。お弁当を食べてよ」

「よくはないと思うんだが・・・・・・。まぁ、マキが良いなら良いか。それじゃあ、いただきます」

 

 

 マキの言葉に竜は本当に気にしなくて良いのかと首をかしげる。

 それでもマキ本人が気にしなくても良いと言ったため、とりあえずは気にしないことにした。

 そして、竜たちはお昼ご飯を食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ、隠し味も入れてあるから・・・・・・おいしいよね?」

 

 

 お弁当を食べる竜を見ながらマキは小さく呟くのだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

   

 なんの変哲もない一般家庭のキッチン。

 並べられているのは卵やお肉などの様々な食材。

 それと一緒に空のお弁当箱が2つ置かれている。

 

 

「ふんふんふ~ん」

 

 

 鼻歌混じりにマキは食材を調理していく。

 マキが作っているのは、ほぼ習慣となっている自分と竜のお弁当だ。

 いつも作っているだけあってその手際はよく、どうにも指を切ってしまいそうには見えなかった。

 

 

「ふふふ・・・・・・」

 

 

 料理をしながらマキの頭の中に浮かぶのは自身の作ったお弁当を食べて美味しいと言ってくれる竜の姿。

 その姿を思い浮かべるだけでマキは思わずニヤけてしまっていた。

 

 

「っと、いけないいけない。隠し味を入れないと・・・・・・」

 

 

 ふと、マキは入れ忘れたものがあったのか菜箸を置いた。

 なにを入れるのかは不明だが、マキは手早く容器を用意する。

 そして、マキは包丁(●●)を手に取った。

 

 

「秘密の隠し味・・・・・・」

 

 

 そう呟きながらマキは自身の指を包丁の刃で撫でた。

 包丁の刃が撫でたことによってマキの指に赤い線が刻み込まれ、ジワリと血が溢れてくる。

 自身の指から血が出てくるのを確認したマキは手慣れた様子で容器に血を垂らしていった。

 当然だが指を切っているので痛みもあり、マキの目の端には涙がうっすらと溜まっている。

 しかしそれ以上にマキは陶酔したような笑みを浮かべていた。

 

 

「竜くんの中に私が入り込んでいく・・・・・・。私が、竜くんのすべてを作っていく・・・・・・。ふふ、ふふふふ・・・・・・」

 

 

 自身の血を料理に混ぜ込みながらマキはお弁当を作っていく。

 

 竜のすべてを自分で染めていく。

 

 それだけを考えてマキは料理をするのだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 お昼休み。

 マキはいつものように竜にお弁当を手渡す。

 竜はマキからお弁当を受けとると、代金を手渡した。

 マキからすれば好きでやっていることなのだから代金を払ってもらわなくても良いのだが、これで竜がお弁当を食べてくれるならと仕方なしに納得していた。

 

 

「今日のお弁当も美味しそうだな」

「えへへ、ありがと」

 

 

 お弁当の中身は小さめの肉巻きアスパラや卵焼きなど、いくつかのおかずがバランスを考えられて詰められていた。

 竜に誉められ、マキは嬉しそうに微笑む。

 

 

「たしかにマキマキの作ったお弁当は旨そうやな。竜、どれかおかずを分けてくれへんか?」

「そうだな。ならこの卵焼きをひと────」

「ダメだよ」

 

 

 竜の言葉にお弁当箱の中を覗いていた茜がおかずを1つ分けてくれないかと竜に言う。

 茜の言葉に竜は複数個入っていた卵焼きを1つ分けようとした。

 しかし途中でマキに腕を捕まれてしまい、腕を動かすことができなくなってしまう。

 

 

「このお弁当は竜くんのために作ってきたの。だから茜ちゃんにも、他の誰にも分けてあげることはできないかな」

「なんや、ケチ臭い。おかずの1つくらいええやん」

 

 

 マキの言葉に茜は不満そうに頬を膨らませる。

 しかしそれでもマキは竜の腕を離さなかった。

 

 

「おかずが気になるなら竜くんのやつはダメだけど、私のやつをあげるから」

「むぅ・・・・・・。まぁ、入っとるんは同じっぽいからええか」

 

 

 不満そうな茜にマキは小さくため息を吐くと、自身のお弁当箱を茜へと差し出した。

 

 叶うのならば竜から貰う、もしくは食べさせてもらおうと思っていた茜だったが、ここで駄々をこねても仕方がないのでマキのお弁当箱から卵焼きを1つ貰う。

 茜が自身のお弁当箱から卵焼きを取ったのを確認したマキは、自分の方にお弁当箱を戻して竜の腕を掴んでいた手を離した。

 

 

「さて、マキマキの作った卵焼きはどんなもんなんやろうな・・・・・・、あむ」

 

 

 そう言って茜はマキから貰った卵焼きを口に運ぶ。

 マキの作った卵焼きの美味しさを知っている竜は、卵焼きを口に運んだ茜のリアクションを期待して食べるのを止めた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・ぅんまっ!」

 

 

 卵焼きを食べた茜は驚きのあまり目を見開く。

 茜自身も料理に自信はある方だったが、それでもこの卵焼きの味を真似できるかと聞かれれば首を横に振ることしかできない。

 それほどまでに卵焼きが美味しかったのだ。

 とはいっても茜のもっとも得意としている料理は揚げ物。

 それに関しては絶対の自信が茜の中にはあった。

 

 

「あかんわ・・・・・・。こんなん食べたら、うちの作っとる卵焼きが卵に失礼なんやないかと思ってまうわ」

「え、お姉ちゃん。マキさんの卵焼きってそんなに美味しいの?」

「料理が得意な茜さんだからこそ、それほどまでに驚いたんでしょうね」

 

 

 驚きの表情のまま茜は自分のお弁当の中に入っている卵焼きを見ながら言う。

 茜の言葉に葵は驚いて茜とマキを交互に見る。

 そんな2人の様子に、マキの料理の腕を知っているゆかりはうなずきながら茜が衝撃を受けていた理由を推測する。

 

 

「茜がそんな反応をするお弁当をいつも食えてるってスゴいことだよなぁ・・・・・・」

「そう言ってもらえると嬉しいなぁ」

 

 

 茜のリアクションを見て、良いお弁当を食べさせてもらっているなと竜は改めて考えた。

 竜の言葉にマキは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 そして、竜たちはお昼ご飯を再開するのだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

   

 学校の授業がすべて終わり、竜はバイトをするためにマキと一緒に“cafe Maki”にいた。

 平日の夕方ではあるものの、それでも客の人数は多く、バイトが終わる頃には竜はそこそこに疲れていた。

 

 

「ふいー・・・・・・」

「お疲れさま。今日もうちで晩ご飯を食べていきなよ」

「ん、助かるわ」

 

 

 バイトが終わり、椅子に座って休む竜にマキは苦笑しながら言う。

 マキ自身にも少しだけ疲労の色が見える辺り、今日は本当に客の人数が多かったのだということが分かる。

 マキの言葉に竜はうなずき、慣れた様子でマキの家の中へと入っていった。

 

 

「おかえりなさい。もうすぐ晩ご飯の準備を始めるから先に手を洗っておいてね」

「はーい。私は少しお母さんと話すから竜くんは先に行ってて」

「分かった。お邪魔します」

 

 

 玄関を開けた音に気がついたマキの母親がマキと竜に声をかける。

 母親の言葉にマキは返事をし、竜に先に洗面所へと向かうように言った。

 そして、竜が洗面所に向かったのを確認したマキは母親のもとへと向かった。

 

 

「お母さん。“アレ”もらえる?」

「あらまぁ・・・・・・」

 

 

 マキの言葉に母親は先ほどまでの優しそうな雰囲気からどこか蠱惑的な雰囲気へと変化する。

 その表情はマキの言葉が面白いとでも言うかのように微笑んでいた。

 そして、母親はポケットから小さな小瓶を取り出してマキに手渡す。

 母親から小瓶を受け取ったマキは大切にポケットにしまうと、何食わぬ顔で洗面所へと向かっていった。

 

 

「ふふふふ・・・・・・、やっぱり親子なのねぇ・・・・・・」

 

 

 洗面所へと向かうマキを見ながら母親は嬉しそうに呟くのだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 マキの家での晩ご飯はとても楽しいもので、基本的に家では1人で食事することの多い竜にとっては家族を感じられるものとなっていた。

 ちなみに竜の両親は別に死んでいるとかではなく単に単身赴任に両親で行っているだけである。

 

 

「あ、竜くん。飲み物がないね。持ってくるよ」

「すまん。頼んだ」

 

 

 竜のコップに飲み物が入っていないことに気がついたマキは竜のコップを持ってキッチンへと消えていく。

 マキが消えていったキッチンの方を竜が見ていると、不意にマキの父親が顔を近づけてきた。

 

 

「・・・・・・悪いことは言わないから、今のうちに早く帰りなさい」

「へ・・・・・・?」

 

 

 マキに近づくなといった感じの警告でも言われるのかと思っていた竜は父親の言葉に不思議そうに首をかしげる。

 どことなく落ち着きのない様子の父親。

 いつもとは違う父親の様子に竜は言い様のない不安を感じた。

 

 

「それってどういう・・・・・・」

「早く。マキが戻ってくる前────」

「あなた?」

 

 

 竜が尋ね返すと父親は説明する暇もないといった様子で帰るように促してきた。

 しかしその言葉は途中で母親に遮られてしまう。

 父親はビクリと肩を震わせると何も言わずに椅子に戻ってしまった。

 

 いつもと違う様子の2人に竜は違和感を感じ、2人を交互に見る。

 父親は椅子に座るとうつ向いてしまったために表情は見えないが、母親はニコニコと嬉しそうに竜を見てきた。

 

 

「あの・・・・・・」

「お待たせー。新しい飲み物を探すのに時間がかかっちゃったー」

「ああ、ありがとう」

 

 

 不思議に思って竜が口を開こうとすると、ちょうどマキが戻ってきた。

 そしてマキは飲み物の入ったコップを竜に差し出してくる。

 

 喉の乾きを感じた竜はマキにお礼を言うとコップに口をつけて飲み物を飲んだ。

 

 

「・・・・・・あえ?」

 

 

 飲み物を飲んだ直後、竜はくらりと視界が揺れたことに思わず声をあげた。

 体に上手く力が入らず、テーブルに上体を投げ出してしまう。

 それと同時に体が熱く、熱を持ったように頭がボーっとしてしまった。

 竜自身は飲んだことがないために分からないが、1番近い感覚としては酒を飲んだときだろうか。

 動けなくなってしまった竜にマキは嬉しそうに近づいていく。

 

 

「しょうがないなぁ。私の部屋で休んでいくと良いよ。  明日の朝には全部終わってるからさ」

「うぁ・・・・・・、まき・・・・・・?」

 

 

 マキがなにを言っているのかすでに竜は理解ができず、ただただマキにつれられてマキの部屋へと向かっていった。

 そして、マキの部屋に入ったところで竜の意識は完全に消えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小鳥の囀ずる音に竜は目を覚ます。

 どこか倦怠感を感じる体を起こして周囲を確認すれば自分の部屋ではない部屋。

 それと同時にゆっくりと昨日の出来事が思い出されていった。

 

 

「ここは・・・・・・、マキの部屋・・・・・・か?」

「ん・・・・・・」

「・・・・・・はぁっ?!」

 

 

 不意に聞こえてきた声に竜は声の聞こえてきた方を見る。

 

 最初に見えたのはキレイなさらさらとした金髪。

 

 そして続いて見えてきたものが問題だった。

 

 

 肌色。

 圧倒的な肌色とほんの少しの薄桃色。

 

 

 声が聞こえてきた場所は竜の隣。

 そこに弦巻マキが一糸纏わぬ姿で寝ていたのだ。

 

 

「どうなって・・・・・・」

「んぅ・・・・・・、おはよう。起きてたんだね竜くん・・・・・・。ううん、あなた」

 

 

 マキの肌を見ないように顔をそらしつつ竜は自分も服を着ていないことに気がついた。

 竜が自分も服を着ていないことに驚いていると、振動が伝わったのかマキが目を覚ました。

 

 目を覚ましたマキは目を軽く擦りながら竜にニコリと笑いかける。

 マキの言葉に竜は違和感を感じ、思わずマキの顔を見る。

 

 

「あなたって・・・・・・、どういう・・・・・・」

「あれ?覚えてないの?昨日、私とあんなに愛し合ったのに・・・・・・。ほらこれが証拠」

 

 

 そう言ってマキは布団のシーツを外し、赤黒く染まった布団を見せた。

 服を着ていない男女が一緒の布団で寝ており、布団には赤黒い染み。

 これだけで何があったのかは簡単に想像できてしまうだろう。

 

 

「まさか・・・・・・」

「ふふふ、夢じゃないよ。だからね?」

 

 

 何があったのかに思い至った竜は愕然とする。

 そんな竜にマキは微笑みかけながら強く抱き締めた。

 

 そして、竜の耳元でマキは小さく、しかししっかりと聞こえるように囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 イ ッ シ ョ ウ セ キ ニ ン ト ッ テ モ ラ ウ カ ラ ネ 」

 

 

 

 どこにも離しはしないと。

 

 どこにも逃がしはしないと。

 

 固くしっかりと縛り付けるような響きがその囁きにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






書く際にざっくりと決めた流れはこんな感じでした。


マキがお弁当を作ってくる
指先の絆創膏に気がつく
竜がお弁当を食べる姿に笑みを浮かべる

調理風景
指を切って血を入れる

バイトが終わり、竜を晩ご飯に誘う
親からもらった薬を盛る


誰のヤンデレが読みたいですか? その4

  • 琴葉姉妹
  • 弦巻マキ(母親が死んでいる世界)
  • 東北イタコ
  • 東北ずん子
  • 東北きりたん

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