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買い物袋を手に持ちながら、竜たちは竜の家の前に着いた。
竜の家の前を通ったときに工事の音が聞こえてきたことに茜たちは不思議そうにしていた。
「なんや、竜の家の前で工事しとるんか」
「そうなんだよ。いつの間にかこうなっててな」
「まぁ、気にしても仕方がないですし。行きましょう」
「・・・・・・・・・・・・あっ」
茜の言葉に竜は頷きながら家の向かいにある工事の幕を見る。
竜自身も家の向かいで工事をしていることに気がついたのは朝のことだったので、一切の情報を持っていないのだ。
いつまでも工事の幕を見ている意味もないので、ゆかりの言葉に竜たちは歩きだす。
歩きだした竜たちに遅れて、工事の幕を見ていた葵が不意に小さく言葉を漏らす。
その声はかなり小さく、竜たちが気づくことはなかった。
「あのマークって確か・・・・・・えっと、“き────」
「葵~、どうしたん~?」
「あ、今行くよー!」
工事の幕に書かれていたマークをどこで見たのかを思い出そうと葵は軽く頭に指を当てた。
もう少しで思い出せるかといったところで、葵がついてきていないことに気がついた茜に呼ばれ、葵は返事をする。
茜に呼ばれたことによって思い出そうとしていたことが中断され、葵はもう一度だけ工事の幕を見た。
「考えすぎ、かな。工事している会社がこれなだけだよね?」
そう呟いて葵は竜たちのもとへと早足で向かうのだった。
葵が気になっていた工事の幕。
そこには、星が2つずれて重なっているマークが書かれていた。
◇ ◇ ◇
竜の家の前から歩いてしばらくして、竜たちは“清花荘”に着いた。
「さ、竜とゆかりさんも入ってや」
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってお姉ちゃん!」
茜は自分と葵の暮らしている部屋の扉を開けて竜とゆかりを招き入れようとする。
そんな茜の行動に葵は慌てた様子で扉の前に立ちはだかった。
「なんや葵、早く2人を入れな失礼やでー(棒)」
「思いっきり棒読みなのやめて?!分かっててやってるんでしょ?!」
「・・・・・・あー、なるほど」
白々しいほどの茜の棒読みに葵は大きな声をあげる。
葵がなぜ怒っているのかが分からないゆかりは不思議そうに首をかしげ、昨日の出来事から何となく理由を察した竜は軽く頬を掻いた。
「とにかく!少しだけ待ってて!」
「しゃーないなぁ」
そう言って葵は扉を素早く開けて中に入っていった。
そんな葵に茜はやれやれといった様子で首を振る。
「えっと、葵さんはどうしたんですか?」
「あー・・・・・・、うーん、言わない方が良いだろうしなぁ・・・・・・」
葵の行動にゆかりは不思議そうに竜に尋ねる。
ゆかりの言葉に竜は葵の行動の理由を言って良いものかと頭を悩ませる。
「別に言っても構わへんって。ゆかりさんも
「そうなのか?」
「昨日のこと、ですか?・・・・・・ええ、葵さんが自宅ではだらしないことでしたら」
茜の言葉に竜は少しだけ驚きながらゆかりを見る。
昨日の葵のとんでもない姿は今でも思い出すことができる程だが、その事をゆかりが知っているとは思ってもいなかった。
竜に見られ、ゆかりは葵が自宅でだらしないと言うことを知っていると明かす。
「あー、まぁ、知られていたとしてもだらしない要素を見られたくないんじゃないか?」
「そういうものなんでしょうか?」
ゆかりの言葉に竜は少しだけ考えて、葵の行動の理由を推測して話す。
竜の推測を聞いたゆかりはそれでも不思議そうに首をかしげるのだった。
「普段から脱いだものを自分の部屋に置いておかんからこうなるんよ・・・・・・」
朝の部屋の状況を思い出しながら茜は呟く。
昨日のことに続いてこれも常日頃から言い続けていることなので、茜はため息を吐くしかなかった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ