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テーブルの上に茜の作った料理が並べられ、晩御飯の準備が終わる。
テーブルの上に並んでいるのは味ぽんと水で煮込んだ鶏肉のさっぱり煮、ワカメとキュウリの酢の物、ニラと卵のスープ、そしてこれにご飯を加えて全部だ。
「彩りもキレイで美味しそうですね」
「そうだな」
並んでいる晩御飯を見てゆかりは言う。
さっぱり煮はやや薄い茶色。
酢の物はキレイな緑色。
ニラと卵のスープは黄色と緑。
料理ごとに色が分かれており、見ているだけでも美味しいことが分かりそうなほどだ。
「さ、準備もできたから食べよか」
「そうだね」
晩御飯の準備を終えてテーブルに着いた茜の言葉に葵は頷く。
そして4人は手を合わせて食事を始めた。
「ん、この鶏肉はそこまでしょっぱくないんですね。パサッともしてなくて美味しいです」
さっぱり煮を口に運んだゆかりは驚き混じりにさっぱり煮を食べた感想を言う。
味ぽんを使って煮込んだと言うことでしょっぱそうなイメージが少しだけあったのだが、そんなことは全然なく。
ほどよいしょっぱさでとても食べやすかった。
「あ~、酢の物も旨いな。簡単に作れるのは知ってるんだが、切ったり混ぜたりがめんどくさくて中々作らないんだよなぁ・・・・・・」
ワカメとキュウリの酢の物を口に運びながら竜は呟く。
酢の物の作り方はワカメとキュウリを食べやすい大きさに切って酢と混ぜるというとても簡単なもの。
調理手順だけ見ればとても簡単なのだが、それでも面度臭がりには充分にやる気が削がれるレベルだった。
「ニラと卵のスープも美味しいよ。ボクとしては卵はもう少し固まりでも良かったんだけど・・・・・・」
ニラと卵のスープを飲みながら葵は言う。
このスープも作り方はとても簡単で、小さめに切ったニラを鍋で煮て途中でだしの素と醤油を入れ、最後に溶いた卵を流し入れるだけで完成する。
茜はこの卵を入れたタイミングで鍋の中をかき混ぜて卵をかなり細かくするのだ。
そのため葵はかき混ぜないでほしいなと少しだけ思っていた。
「どれも旨いな」
「ちゅーても簡単なものばっかやけどね」
竜の言葉に茜は謙遜しながらも嬉しそうに答える。
作った側からすれば美味しいや旨いと言ってもらえるのはとても嬉しいもの。
しかもそれが想い人などの大切な人間からの言葉ならばさらに嬉しいものとなるだろう。
「私にはできないことですから茜さんが羨ましいです」
「練習すれば誰にでもできることやって。ゆかりさんも頑張って練習するしかないなぁ」
少しだけ遠い目をしながら言うゆかりに茜は苦笑を浮かべながら答える。
茜自身も最初から料理ができていたわけではなく、練習を積み重ねてきたからこそ今の茜の腕があるのだ。
茜の言葉にゆかりは少しだけ悩むような表情を浮かべた。
「練習、ですか・・・・・・」
「せや。千里の道も一歩から、日々の積み重ねが大切なんやで」
ゆかりの呟きに茜はウンウンと頷きながら言う。
良いことを言ってはいるのだが、普段が宿題をギリギリにやっているだけにいまいち説得力がなかった。
千里の道も一歩からと言うのならば宿題をキチンとやって勉強の一歩一歩をキチンと踏んでほしいものである。
「・・・・・・そう、ですね。苦手だからと避けていては成長できませんし、頑張ってみましょうか」
「その意気やで!」
ゆかりの見せたやる気に茜はグッと手を握って応援する。
そんな2人のやり取りを見ながら竜と葵は箸を進めていた。
「・・・・・・そういえば、葵は料理はできるんだっけ?」
「ボクはお菓子作りの方が得意かな。今度作ろうか?」
ふと、思い出したように竜は葵に尋ねる。
茜が家事で料理を担当しているとは聞いていたが、葵も料理をできるのかが気になったからだ。
竜の言葉に葵は提案するように言う。
なお、提案をしてはいるのだが葵の頭の中ではすでに作ることが決定されていたりする。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ