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風呂のお湯はりのボタンを押し、竜は肩に花を咲かせたままリビングに戻ってきた。
リビングに着くと、花は再び潜っていき、テーブルの上に現れる。
花が潜っていく際になんの感覚もなかったことに竜は少しだけ驚くものの、そのまま花の前の椅子に座った。
「お前はいったいなんなんだろうな?」
「わ~ぁ!」
ツンツンと優しく花をつつきながら竜は呟く。
いつの間にかテーブルの上に咲いていて声を発し、自由に移動する。
すでに分かっているだけでもこれだけの普通の花との相違点がある。
考えても答えが出せるわけがないと分かりつつも、竜は花のことを考えてしまっていた。
「そういえば、名前とかあるんかね?」
「わぁ?」
竜につつかれながら花はキャッキャと嬉しそうに揺れる。
そんな花を見ながら竜はふと思ったことを言う。
竜の声に反応したり、言葉を理解して移動する。
明らかに普通の花とは違うこの花はいったいどんな名前なのか。
花びらの形状も竜の知るどの花とも違っており、まったくの未知の花だった。
竜の言葉が聞こえたのか、花はそっとテーブルの上に置いてある水の入っている容器に葉を伸ばした。
「ん、なんだ?」
「わぁ」
花が葉を伸ばしたことに竜は不思議そうに声をあげる。
竜に見られながら花は葉に水をつけてテーブルの上になにかを書いていく。
どうやら書いていたのは平仮名のようで、5文字の平仮名がテーブルの上に書かれた。
「えっと・・・・・・、あ、か、り、そ、う?あかり草っていうのか」
「わぁ!」
テーブルの上に書かれた文字を竜が読むと花────あかり草は嬉しそうに葉をピコピコと動かす。
聞き覚えのある名前だがおそらく偶然の一致だろう。
「あかり草はなんで家に来たんだろうな?」
「わぁ?」
ウニウニとあかり草の花の部分を親指と人差し指で優しく挟む。
朝の時点では咲いておらず、帰宅したらテーブルの上に咲いていた。
しかも移動が可能で移動の条件に地面がある必要がない。
偶然かもしれないしもしかしたら必然なのかもしれないが、竜の家に咲いた理由が分からなかった。
「・・・・・・えい」
「わ゛ぁ゛ッ?!?!」
ふと竜はあかり草の花の中心に興味本位で指を差し込んでみる。
普通の花であれば雄しべやら雌しべのある場所だが、竜の指の先にはそれらの感触がない。
どうやらあかり草にそれらの部分はないようだ。
竜に指を突っ込まれ、あかり草は驚きの声をあげながら花の部分を赤く染めた。
「ん、なんかしめってる?」
「わ゛・・・・・・わ゛ぁ゛・・・・・・ぁ゛っ?!」
差し込んだ指の先がどことなくしめっているように感じ、竜は不思議そうに指を動かす。
竜の動かす指に合わせて小さいながらも水音のようなものが聞こえてきた。
あかり草は竜の指の動きに合わせてビクビクと震えながら濁音混じりの声をあげていく。
あかり草がビクビクと震えていることに気がついた竜は花の部分から指を引き抜く。
「おおぅ・・・・・・。なんか、すまん」
「わぁ・・・・・・わぁ・・・・・・」
竜の指が引き抜かれるとあかり草はくったりとヘタレてしまう。
ヘタレながらあかり草は荒い呼吸をするように声を発する。
ヘタレてしまったあかり草に竜は驚きつつ謝った。
そしてお風呂のお湯が貯まった通知音が竜の耳に聞こえてきた。
「お、お湯はりが終わったか。じゃあ、俺は風呂に入ってくるから好きに待っててな」
「わぁ・・・・・・」
テーブルの上でヘタレているあかり草に声をかけて竜は風呂場へと向かっていった。
一日の疲れは風呂場で汚れと共に洗い流す。
これこそが人間の生活。
風呂場へと向かう竜の姿をあかり草はヘタレながらもジッと見つめていた。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ