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洗面所に着いた竜は服を脱いで入浴の準備をしていく。
とくに変わったものもなく、なんの変哲もない普通の風呂場。
竜はお湯をすくって体にかけていく。
入浴する前に体にお湯をかけて汚れなどを浮かせ、石鹸で完全に体を綺麗にする。
これはお風呂に入るのであれば必ずやるべきことであり、体を洗わずに入浴するのはマナー違反だと言えるだろう。
「とりあえず、あかり草はどうするかな・・・・・・」
体を洗いながら竜は呟く。
いつの間にか家に入ってきてテーブルの上に咲いていて、自由に移動することのできるあかり草。
ハッキリと言って。動きをコントロールしたりすることは不可能だと思える生き物・・・・・・いや、植物だ。
一応、言葉が通じるようなので入らないで欲しいところなどには口頭で説明するしかないだろう。
「・・・・・・そういえばあかり草はどうやって栄養を取るんだ?」
体の泡を流しながら竜はふと気になったことを呟いた。
普通の植物であれば根から地面の水分や栄養を補給する。
しかし、あかり草は地面ではない場所に咲いている。
もしかしたら栄養補給の際は地面に移動するのかもしれないが、それすらも不明だ。
可能ならば栄養補給の手助けなどをしたい、竜はそう考えていた。
そして体を洗い終えて、頭を洗い始めた竜の背後にあかり草が姿を現した。
頭を洗うために目を閉じていた竜は自身の背後に現れたあかり草の存在に気づかず、頭を洗い続けている。
自身が現れたことに竜が気づいていないと理解したあかり草はソッと竜に向けて花と葉を伸ばしていく。
「ぶぇっ、ぺっぺっ・・・・・・。口に泡が・・・・・・」
頭の泡を流し、うっかり口に泡が入ってしまい、竜は唾を吐き出す。
石鹸特有の苦味に竜は目を閉じながら顔をしかめる。
そんな竜の頭上にあかり草の花はたどり着いた。
「・・・・・・ふぅ。・・・・・・あ?」
「わぁ!」
頭の泡が完全になくなり、竜は置いておいたタオルで顔を拭く。
そして顔をタオルで拭いて目を開けた。
直後、竜の視界は闇に包まれる。
竜がなにも見えなくなる前に最後に見えたのは巨大な花びらだった。
「むぐぅっ?!ッ~~!!ッ~~?!?!」
「わぁわぁ!」
先ほどまでとは比べ物にならないほどに大きくなったあかり草は竜の頭に花の部分で食らいつき、葉の部分で竜の体を拘束していた。
あかり草によって拘束され、竜は声をあげることしかできない。
風呂に入る前に竜が指を差し込んでいた部分に今度は竜自身が入り込んでいる。
なにも見えない状態で体を拘束され、ややヌルリとした液体で頭を包まれる。
指を差し込んだときには気づかなかったが、舌のようなものが顔を舐めている感触もある。
いきなりのこともあって状況を理解できないままに竜はなぶられていた。
「わぁっ」
「ぷぁっ・・・・・・、はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
声を発しながらあかり草は竜の頭を花の部分から解放する。
ヌルリと粘りけのある液体に頭を包まれながら竜は荒い息を吐く。
あかり草の花の部分と竜の頭を繋ぐように透明な液体が橋を作っていた。
荒い息を吐いて腰砕けになっている竜に頬擦りをすると、あかり草は風呂場の床に潜り込んで姿を消した。
「はぁ・・・・・・、はぁ・・・・・・、なんだったんだ・・・・・・?」
どうにか息を整え、竜はあかり草の消えたところを見る。
頭に絡み付く粘りけのある液体をぬぐいながら竜は呟いた。
粘りけのある液体からはほのかに甘い香りが感じられる。
もしかしたらこれがあかり草の香りなのかもしれない。
その後、竜はお湯で液体をすべて洗い流してお湯に浸かる。
流した液体によって風呂場の中が甘い香りに満たされ、竜は食らいつかれたときに顔をなぶられたことを思い出してしまうのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ