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自身の髪の毛から甘い香りが取れないことが気になりつつ、竜はリビングに戻ってきた。
お風呂に入る前にあかり草がいたテーブルの上を見てみるがそこにあかり草の姿はなかった。
あかり草がどこに行ったのかとキョロキョロとリビングを見渡すと、中心部分が膨らんでいるタオルが部屋のすみに落ちていることに気がついた。
「あんなタオルあったか?」
不思議に思って竜がタオルに近づくと、タオルの中心の膨らみがわずかに動いているのが分かった。
それに合わせてなにやら小さな声のようなものも聞こえてくる。
「・・・・・・ここにいたのか」
「わぁ?!」
竜がタオルを取り上げると、そこには花の部分を赤く染めたあかり草が、まるで顔を隠すかのように葉を花の部分にあてて咲いていた。
あかり草が見つかったことに竜はホッと息を吐く。
自身の隠れていたタオルが取り上げられ、竜に見られていることに気がついたあかり草は驚きの声をあげて花の部分を葉で隠してしまった。
恥ずかしがる人間のような仕草をするあかり草に竜は首をかしげる。
「どうしたんだ?」
「わぁ!わぁ!」
竜があかり草を覗き込むと、あかり草はグイグイと葉で竜の顔を押し返した。
あかり草に顔を押され、竜は首をかしげながらあかり草から離れる。
竜はあかり草のことを気にかけながらコップを取り出して水を飲む。
お風呂から出たらコップ一杯分の水分をとる必要があり、その事を知ってから竜は必ずお風呂から出たら水を飲むようにしているのだ。
ちなみに、お風呂を出てから水分をとるのは季節に関係なくやるべきことで、夏だろうと冬だろうとお風呂に入って水分を消費することに違いはない。
そのため、そのまま寝たりしてしまうと寝汗などで脱水症状を起こしてしまう可能性もあるのでコップ一杯分の水分補給はした方がいいだろう。
「わぁ・・・・・・」
水を飲んでいる竜の姿をあかり草は葉と葉の間から覗くようにして見ている。
視線・・・・・・と言っても良いのか分からないが、あかり草はジッと竜の顔を見つめ、自身の花の部分の頂点、竜が指を突き刺した部分の入り口を軽く撫でた。
「・・・・・・・・・・・・わぁ」
あかり草は小さく声を発し、先ほど竜を咥え込んだことを思い返したのか花の部分をさらに赤く染める。
どうやら竜が指を差し込んだところはあかり草にとって大切なところだったようで、竜を咥え込んだのも大切なところに無作法に指を差し込まれたことに対する仕返しとして勢いのままにやってしまったようだ。
そのためにあかり草は恥ずかしさで竜の顔を見れなくなってしまっていた。
「なぁ、お前ってなにか食べるのか?」
「わぁ?!」
水を飲み終えた竜に声をかけられ、あかり草は少しだけ驚いたような声をあげつつ竜を見返す。
竜の言葉にあかり草は考えるように花の部分を揺らした。
「・・・・・・わぁ」
「うん?」
短く声を発してあかり草は竜の指に葉を伸ばす。
自身の指に触れる葉に竜は不思議そうに首をかしげた。
そしてあかり草は竜の指を葉で引っ張り、自身の花の部分に優しく押し当てた。
「・・・・・・俺がなにかを用意する必要はない?」
「わぁ!」
竜の言葉にあかり草は肯定するように花を揺らす。
あかり草の言葉に竜は頷きつつ、花の柔らかさを感じながら優しく撫でた。
「そっか」
「わぁ、わぁ!」
竜に撫でられ、あかり草は嬉しそうに花を左右に揺らす。
嬉しそうにしているあかり草の姿に竜は小さく笑みをこぼし、あかり草を撫で続けるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ