変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

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第80話

 

 

 

 

 なぜ朝は来るのだろうか。

 

 現実的なことを言ってしまえば地球が自転をしているからなのだが、そのような現実を突きつけられても目を逸らしたくなってしまうのが人間だ。

 

 かくいう竜も布団の中でゴロゴロとしながら少しだけ憂鬱になっていた。

 まぁ、そうなった理由は“DEAD BY DAYLIGHT”に熱中して眠るのが遅くなって寝不足だからなのだが。

 

 

「・・・・・・・・・・・・はぁ、起きるかぁ」

 

 

 布団でゴロゴロとしながらスマホを弄っていた竜は諦めたようにため息を吐いて布団から起き上がる。

 布団に寝転がったままでは二度寝を始めてしまいそうでもあったため、こればかりは仕方のないことだった。

 

 そして、竜は着替えと朝食を終えてスクールバッグを持って家を出る。

 家を出た竜は正面を向き、驚きに固まってしまう

 

 昨日の時点ではまだ工事中で幕もかかったままだったはずの向かいの家。

 それがなんと完全に幕が取れて家が完成していたのだ。

 まだ家が完成するとは思っていなかっただけに、目の前に建っている家に竜は本当に驚いていた。

 と言っても家が完成しただけでまだ住んでいるわけではないようだが。

 

 

「竜くん、おはようございます。おや、向かいの家が完成したんですね?」

「ああ、おはよう。そうなんだよ、こんなに早く建つとは思っていなかったがな。くぁ・・・・・・」

 

 

 ゆかりに声をかけられ、竜は返事を返す。

 返事をするのと同時に竜はアクビをしてしまう。

 アクビをする竜の姿にゆかりは小さく微笑んだ。

 

 

「寝不足なんですか?」

「おう、新しく買った“DEAD BY DAYLIGHT”って言うゲームが面白くてな」

「ああ、DbDですか。あれは楽しいですよね」

 

 

 眠そうな竜の姿にゆかりが尋ねると、竜は軽く首を回して少しでも眠気を飛ばそうとしながら答える。

 竜の言ったゲームのタイトルを知っていたのか、ゆかりは頷きながら肯定する。

 

 

「ゆかりも知ってたか。昨日はそれで遅くまでやっててな」

「そうなんですか。実は私も昨日初めてDbDをやったんですよ。よかったら今度一緒にやりませんか?」

「良いな。昨日は野良でやってたんだけど何回か切断で味方がいなくなってな・・・・・・」

 

 

 “DEAD BY DAYLIGHT”の野良は魔境である。

 そこまで多いというわけではないが1度吊られただけで切断して逃げ出してしまう生存者がいるのだ。

 1度吊られただけで諦める生存者を思いだし、竜は少しだけ顔をしかめた。

 

 

「ああ、それは私も経験がありますね。あれは本当に困りますよね」

「中にはすごい人もいたけどな。『BUTA860』って名前の人とか『SUKIYAKI』って名前の人がすごい逃げるのが上手くてな」

 

 

 救助や発電機の修理を素早くおこなっていく上半身裸の生存者。

 1人で開幕から出口を開くまで殺人鬼から逃げ回るどことなくアメリカンな生存者。

 

 昨日、偶然マッチングしたとても上手い生存者を思い出しながら竜は言う。

 殺人鬼から逃げる上手さは個人の技術が如実に現れるので、この2人は本当に上手かったのだろう。

 

 

「まぁ、なぜか『BUTA860』って人の方は殺人鬼に追いかけられてるときに他の生存者の方にめっちゃ向かってきてたけどな。『SUKIYAKI』って人の方は1人で他の人の近くに行かないように気をつけてたみたいなのに」

「・・・・・・それって上手い方に入れて良いんですかね?」

 

 

 救助や修理の速度が早いにしても殺人鬼から逃げる際に他の人に擦りつけようとする。

 これは本当に上手い人に入れていいのだろうか。

 竜の言葉にゆかりは曖昧な表情を浮かべながら首をかしげた。

 

 

「なんだかんだで逃げきったりしてるから上手いで良いんじゃないか?」

「そうなんですかね?」

 

 

 その後も竜とゆかりは“DEAD BY DAYLIGHT”の話をしながら学校に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰のヤンデレが読みたいですか? その16

  • 佐藤ささら
  • 鈴木つづみ

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