八雲学園の七不思議   作:南宮

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プロローグ:絵画の謎


 薬品と古紙の香りで充満する化学準備室の中で、気だるげな青年と活発な少女の声が飛び交っていた。

 

「森近先生。

 最近、学校の七不思議というモノが流行っているそうですが、化学教師としてどう思いますか?」

 

「別に良いんじゃないかな?

 その手の噂話なんて、そこかしこに転がっているじゃないか。

 真に受けるなんて少々素直過ぎないかい...

 二年生にして剣道部主将に任命された期待の新鋭、魂魄妖夢さん?」

 

 言外に怖いのかと皮肉を言われているのに気が付かず、褒められたと受け取った妖夢はむず痒そうに少しだけ朱に染まった頬を指で掻く。

 森近先生こと、八雲学園の化学教師である森近霖之助は、その様子に呆れた様にしながらも目線を手元に広げている古文書から話す事は無かった。

 

 この二人は生徒と教師という間柄だが、妖夢が幼少よりお世話になっている白玉楼と呼ばれる道場で開かれる宴会に度々呼ばれていた霖之助と妖夢はそれなりに合う機会があったのだ。

 霖之助は元々の気質なのだろうが、騒がしい宴会というモノがあまり好きではなく、呼ばれたは良いものの何だかんだと理由を付けて道場の縁側に逃げていたのだ。

 それを幼い妖夢が見つけ、不審者と間違えて騒いだところから二人の付き合いが始まったのだ。

 ...所謂、腐れ縁というモノか幼馴染と言うモノだろう(もっとも、10歳近く歳の離れた者も幼馴染と言うのならだが)

 

---閑話休題---

 

「あっ!

 こんな話をしに来たんじゃないですよ、私は!!

 私は『八雲学園の七不思議』について、森近先生に聞きに来たんですよ!」

 

「知らないよ...

 ボクはこの古文書の解読で忙しいんだから、気になるのならば新聞部の部長とか剣道部の副部長とかと一緒に行けばいいだろう?

 何も、無理にボクと一緒じゃなきゃダメだという理由がある訳じゃあないんだ」

 

 このままではマトモに取り合ってくれないと分かった妖夢は、霖之助から古文書を取り上げる。

 

「何のつもりかな?」

 

「このままだと、まともに話を聞いてくれそうになかったので」

 

 そういうとばつが悪そうに顔を背ける霖之助に対して、今度は妖夢が呆れた様な顔をする。

 案外この二人は似た者同士なのかもしれいない。

 

「...それで、その七不思議とやらがどうしたのかな?」

 

 如何にも早く話をして古文書を返してくれと言った様子の霖之助に対して、妖夢は溜息を吐きながら話を切り出す。

 

「森近先生って、除霊師みたいなのをやってたらしいじゃないですか。

 だから、この話を森近先生にしてるんですよ?

 なんでもこの怪談には本当にそういったモノが絡んでいるらしいので、いざという時の為に付いて来ていただこうと...」

 

「...除霊師じゃなくて、神主の真似事だよ。

 それに、それを言ったのは紫だろう?

 言ってはアレかも知れないが、良くあの胡散臭さの塊みたいな存在の言葉を信じたね」

 

「この話はお母様と理事長が昔話をしているのを聞いた話ですし、お母様も違和感なくお話に花を咲かせていたので間違いではないと思いました。

 この七不思議の話してくださったのは理事長補佐の藍さんで、決して夕暮れ時以降は校舎に立ち入らないようにとの事でしたので間違いないはずです!」

 

 たしかに、それならば信じられだろう...と納得した様に小首を傾ける霖之助。

 

 しかし、本人がいざという時と言うように、本来ならば霖之助はついていかなくとも問題が無いはずなのだ。

 何故かというと、妖夢は行方不明(と言う名の武者修行)になった祖父から譲り受けた御神刀『楼観剣』と『白楼剣』の二振りを扱う妖夢にとって幽霊が出たとしても切り払ってしまえるのだから。

 とはいえ、幽霊以外が出てしまうと未だに御神刀を扱いきれていない妖夢では対処がしきれないという事で、霖之助を誘ってとしても可笑しくなないのだろう。

 ---実際のところ、妖夢は夜の校舎を霖之助と一緒に散策したいだけなのだが、

 

「わかった。

 それじゃあ、今日中に七不思議すべてを調査しよう」

 

「それが、七不思議は一夜に一つしか起こらないらしく、本日は夜の美術室で絵画が此方を凝視してくるというモノらしいのです。

 なんでも、部屋の四隅へ行こうとも絵画の目の部分だけが此方を見てくるというだけの実害がない怪異ですが、いずれ何かが起こってからでは遅いので今夜討滅しましょう」

 

「そんな非効率な怪異なんて聞いたことが無いんだが...

 怪異って言うのは、大抵が理不尽の塊なんだ。

 そんな当番制とかシフト制みたいな事がある訳がないだろう?」

 

「ですが、実際に被害にあった方々は曜日毎に被害にあった内容が完全に分かれていますので仕方がないですよ。

 これは文先輩からの情報なので信憑性はかなり高いですよ」

 

 新聞部部長という肩書を持った文が言うのならば信憑性は高いだろう。

 何せ彼女は下手な情報屋よりも世情に詳しく、そして何よりもしっかりとしたソースがある上にそれらを証明する証拠すらも用意してしまうのだから。

 とはいえ、どうやってそれらの証拠品を揃えているのかは考えない方が良いのだろう。

 

 それはそれとしても、どうもこの件は怪しいのだ。

 こう、裏で手を引いている者が居る様なそんな感じの感覚が霖之助を襲うのだ。

 故にこそ、それなりの付き合いがある妖夢を一人でこの面倒事に対処させるわけにはいかないのだ。

 いくら彼女が強いとはいえ、実際の怪異に当たってしまったら彼女では対処できなくなるのだから。

 

「わかった。

 ボクも手伝おう。

 ただし、もしもの時の為に幽々子さんと理事長には声を掛けておくと良い。

 実際そうなるかはわからないんが、もし校舎が壊れたりした時の後処理をお願いしたいからね」

 

「わかりました!

 それでは早速、お母様と理事長に連絡してきます!!」

 

 それだけ言い残して、足早と化学準備室から出て入った妖夢を見て呆れる霖之助だが、古文書を返して貰っていない事に後程気が付いて頭を抱える事になるを今の彼は知らなかったのだ。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 夕暮れを過ぎて夜の帳が舞い降り、怪しげに輝く三日月が雲の隙間から顔を覗かせる。

 そのような時間帯だというのに周囲の家には灯りが灯っておらず、暗いままだ。

 本来ならばあり得ない状況だが、この異界に於いては寧ろこの状況こそが正常なのだ。

 この異界とかした学園の敷地は八雲学園の理事長兼創設者である八雲紫が張った結界の内側であり、内のモノを外へと出さない為の結界だ。

 とはいえ、ただそれだけだと中に迷い込んでしまった者が出られないので、特定の条件を満たすことによって出入りが可能となるのだ。

 そもそも、条件を満たしていないと結界の作用により学園に行こうとすらも思えなくなるのだが、それはそれだろう。

 

---閑話休題---

 

 ともかく、その様な異常な空間と化した学園の敷地内に人影が二つあったのだ。

 一つは和服に西洋風と中華風を取り入れたかのような特徴的な服装をして、明らかに実践向きではない様な宝飾が施された宝剣を帯刀している男性。

 一つは白いワンピースに緑のノースリーブを組み合わせたような服装をし、四尺(=約132㎝)を越える程の長さの太刀と一、二尺程度(=約33cm~66cm)の短刀を背に携えた少女。

 

 ---すなわち、森近霖之助と魂魄妖夢の事である。

 

 二人は日中に八雲学園の七不思議を解き明かし、七不思議に関わっているといわれる怪異に対して除霊などの対処をするという事になったのだ。

 今夜解き明かす怪異は、美術室の凝視してくるという絵画だったのだが...

 

「それでご丁寧に結界が張っているのを越えて来た訳だけど、これはどういう事かな?

 明らかに凸レンズを利用しただけの悪戯じゃないか。

 あの面倒臭がり屋な紫が結界を張っているのだから何かしらの怪異が居ると思って来たは良い物の、ただの悪戯で初日が終わるなんて先が思いやられるよ」

 

「...ですね。

 とはいえ、これで凝視してくる怪異の正体が分かりました。

 そもそも七不思議なのに8つある時点でどれか一つはただの悪戯だろうとは思っていたので、一番最初にいたずらだと分かってよかったじゃないですか」

 

「そういう事は先に言ってくれないかい?

 まあ、確かに初回で悪戯に当たれたのは良かったよ。

 後はもう怪異しかないのだから、変に肩透かしを喰らう事もないだろうからね。

 それじゃあ、今日はもう帰ろう。遅いから送るよ」

 

 霖之助の提案に気の抜けた声を上げる妖夢。

 なんだかんだで夜の校舎でプチデートだと期待していた妖夢にとって、この提案は寝耳に水であった。

 とはいえ、送ってくれるというのならば遠慮はせずにしっかりお願いする妖夢であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--- 絵画の謎:解明 ---

 

 

 




大体の構想は既に練っているので、この落ちは決まってました。
このお話は導入の様な物なので割とあっさりと改名されましたが、次の怪異はどうなるんでしょうね。

---三次創作として書かせて戴いているので、出来る限り完結させたいです。

  エタらないように頑張ります!
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