八雲学園の七不思議   作:南宮

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第二之怪異:女子トイレの謎

--- 前回までのあらすじっ!---

 

 なんやかんやで居候が増えた化学教師の霖之助(25歳児)は、付喪神の姉妹に土日を使って常識を教えることになったの。

 それに対して、剣道部主将を任されている魂魄妖夢(17歳ヒロイン)が霖之助では教えられない類の常識を教える為に霖之助の家にしばらく居候することになったわ!

 

(釘宮理恵ボイス)

 

--- 本編 ---

 

 週が始まった初日だというのに若々しい明るい空気が皆無な空間では、毎度お馴染みな怪異対策会議(という名の逢引き)が行われていた。

 

「それで、今回はどんな怪異なんだい?」

 

「そうですね。

 今回はなんでも2階の女子トイレで清掃員の方が獣の爪で切り裂かれたかのような傷を負ったらしいです。

 これが初めて実際に被害が確認された怪異みたいですよ」

 

 ・・・これはいよいよ本格的な荒事になりそうだね。

 口の中でそう呟く霖之助の真剣な表情を見て妖夢も緩みかけた釣られて顔を引き締める。

 とはいえ、いくら引き締めようとしても霖之助の真剣な顔を見てまたほおを緩めてしまっているのだが...

 

「霖之助さん!

 今日のお昼ご飯作られてなかったんですけど!!」

 

「姉さん、今そういった雰囲気じゃないから...ね?」

 

 やはりというか、シリアスな雰囲気は長く続かないらしい。

 シリアスな雰囲気を壊したのは先日解決した音楽室での怪異を起こしていた付喪神の姉妹であった。

 

「まったく。

 君たちは自分で作るという選択肢を思い浮かばなかったのかい?」

 

 あっ!と今気が付いた姉の弁々に対して、妹の八橋は少々冷ややかな目線で見ていた。

 ・・・この妹、明らかに確信犯である。

 

「というか、八橋は分かっていて付いて来たんだろう?」

 

「...だって、霖之助さんが作ったほうが美味しいですし」

 

「なっ!?

 霖之助さんの手作り料理...!?

 (私もしばらく食べていないのにそれを毎日食べているなんて、羨ましい!!)」

 

「ねえねえ、ご飯まだ~?」

 

 シリアスな雰囲気はたったの数十秒で跡形もなく消し飛んでしまった状況に対して、頭を抱える霖之助。

 しかし、このような状況も悪くないと心の何処かで秘かに思っているのは、霖之助本人も気が付いていない。

 このような日常がいつまでも続いてほしい。

 そう思う霖之助であった。

 

--- Now Loading To Night School ---

 

「ふ~ん。

 なんか不気味な空間ね」

 

「確かにお昼には人間が居たはずなのに精気の欠片も感じない空間なんて違和感しかないけど、そういう結界が張られているという事なんだから気にしても仕方ないと思いますよ?」

 

「...君達は少し緊張感を持った方が良いと思うよ。

 もし不意打ちを喰らったら君達も含めて守れる程余裕があるとは限らないからね」

 

 いつも霖之助と妖夢のコンビに加えて付喪神姉妹も今回の異変に付いて来るという話になったのだが、正直な話足手纏いになる気しかしない霖之助は前もって忠告をするのだった。

 

「ところで、僕が女子トイレに入るのってどうなんだい?

 正直、通報されたら現行犯逮捕になってしまう気がするんだけど...」

 

「・・・そうですね。

 そうなったら切ります」

 

 適度に緊張を紛らわそうと軽い冗句を言った霖之助に対して妖夢は片手を柄頭に添えながら"切る"言ったのだが、これは別の事案が発生しそうだ。

 それはそれとして、実際に"女生徒(17歳)と共に女子トイレに入る男子教諭(25歳)"という状況だけを切り出した場合、完全に事案である。

 

「つい先日携帯を契約したので、その現場を撮って良いですが?」

 

「止めてくれ。

 流石にそれは言い逃れが出来ない」

 

「切りますか?」

 

「ちょ!?

 私の妹を切ろうとしないでよ!?」

 

 つい先日の怪異とは打って変わって和気藹々としているが、周囲に対して警戒を怠っていないので問題は無いだろう。

 

 

--- 閑話休題(わだいてんかん) ---

 

 適度に談話をして緊張を解した一行は無事2階の女子トイレの前に到着したのだが、此処で一行は作戦会議をしていた。

 

「・・・本当に入るのかい?」

 

「霖之助さんに付いて来て貰った理由は不測の事態になった時の保険という事になってますから、仕方ないですよ...」

 

「撮影準備OKですよ~」

 

「バカッ!

 切られるわよ!?」

 

 もう少しシリアスに出来ないのだろうか?

 んんっ!

 一行が作戦会議をしている間に怪異の方から出てくるという事は考えていないのだろうか...

 

「あ、あのぉ...」

 

「そうはいっても女子トイレに男のボクが入るのは抵抗が、ねえ?」

 

「早く怪異を解決して帰りましょう。

 ...其処の京都土産は後で斬るので、覚悟しておいてください」

 

「悪さをしていない怪異を滅するのは"特例妖魔措置法"に違反するらしいですけど?」

 

 突如現れた気弱そうな声に気が付かず作戦会議(笑)をしている一行は、徐々に剣呑な雰囲気になり始めていた。

 というか、八橋(名前)だからと言って京都土産扱いはどうなのだろうか?

 それにしても、何処の日本庭園で庭師している並行世界みたいに辻斬りの(さが)が目覚め始めていないだろうか?

 霖之助が胃薬を常飲する日々は遠くないかもしれない。

 

「あっ、あの!」

 

「異変解決と言ってもねえ。

 正直な疑問だけど、今回の怪異って本当に危険なのかい?

 此処まで来て未だに邪気が感じられない」

 

「ですが実際に被害にあった方は傷を負っていましたし、紫さんからもその様に聞きましたから...」

 

「なんであの胡散臭いオバさ...ッ!」

 

「八橋ィ!!

 アンタそれ以上言ったら消されるわよ!?」

 

「妖夢...

 紫の言葉を鵜呑みにするのは止めなさい。

 アレはかなりの悪戯好きだからねえ。

 例え事実だとしても面白くなるように一部だけを抜き出して話す事もある。

 紫と話をする時は話半分で聞くようにすると良い」

 

「気が付いてるんですよね!?

 気が付いてて無視してるんですよね!?!?

 ・・・お願いですから、無視しないでくださいぃ」

 

「「「「え?」」」」

 

 ようやく気が付いたこの一行は、いったい何を警戒していたのだろうか?

 いや、気が付かなかったのは理解できない事もない。

 正直彼女の気配が薄い事に加えて彼女はかなり気が弱い。

 それは怪異にとって致命的なレベルで欠点なのだ。

 恐れられなければ怪異は"怪異"として成立されない。

 つまり、彼女は"怪異"としては致命的に向いていないのだ。

 それはつまり、彼女の存在が希薄だという事なのだ。

 

「えっ...

 もしかして、気が付いていなかったんですか...」

 

「すまない。

 正直、全く気が付かなかったよ」

 

「なんというか、申し訳ございません...」

 

 本格的に泣きそうになってきた謎のケモミミ少女に荒事と言った雰囲気が霧散した。

 

「取り合えず、名乗って貰えないかな?

 名前が分からないと会話するにも困るからね」

 

「あっ、はい。

 私は今泉影狼と申します。

 一応"日本狼のウェアウルフ"です」

 

 さりげなく怪異に対して真名を名乗らせるという外道。

 でも、仕方がないと言う他ない。

 だって、名前が出て来ないとコミュニケーションが取り難いのは常ですし...

 

「それで、どうして清掃員を襲ったのかな?

 君の性格上そういった事をするとは思えないのだけど...」

 

「あの...

 言わなきゃダメですか?」

 

「そうだね。

 言ってもらえないと君を滅しないといけなくなるから、言ってもらえないと...

 ねえ?」

 

 笑顔で泣いている少女(ケモミミ)に凶器(退魔の札)を突き付ける成人男性の図。

 またしても事案ですね。

 やったね霖ちゃん!余罪が増えるよ!!

 

「あの、流石に止めてあげましょうよ...

 この絵面を第三者が見たら確実に通報案件ですよ?」

 

「っ!

 女神様!!」

 

「いや、ソイツただの辻斬りよ!?」

 

「姉さん、少し黙りましょ?」

 

 なんで!?っと騒ぐ弁々に対して、またも冷ややかな目で見る八橋。

 この姉妹はどっちがボケなのかが分からなくなってきた気がする。

 

「...取り合えず後で斬る。ボソッ

 影狼さん。話してくれますよね?

 霖之助さんに言い難い事でしたら、私が代わりに聞きますのでお話しいただけませんか?」

 

「は、はいぃ」

 

 影狼を連れて少し離れたところに行った妖夢たちだが、その位置では霖之助に筒抜けになるのだが...

 

[あの、私が・・・時に・・・で・・・だったのですが、ソレをその・・・男性の方が・・・でつい。

 あと満月の夜という事もありまして・・・]

 

[それは仕方ないですね...

 後で紫さんに清掃員の方を処してもらわないといけなくなりましたね]

 

 どうやら、そういう事らしかった。

 後で人事部を精査するように紫に言っておこうと思う霖之助であった。

 

「霖之助さん。

 彼女は特に悪くはないと判明しました。

 ついでに、清掃員の方は処します」

 

「彼女が言うと斬首にしか聞こえないのが不思議だわ」

 

「清掃員の方は紫に言いなさい。

 まあ、彼女が悪人じゃないって言うのはわかってた事だからね。

 妖夢が私情でこういった事を決めるとは思えないから、妖夢の言を信じよう。

 ・・・ああ、住む場所も無いんだよね。

 暫くの間、ボクの家に来ると良い」

 

「は?」

 

「ひあぁぁ」

 

 同情の目で影狼を見ていた妖夢は眼の色を変えて、影狼を射殺せそうな目で見ていた。

 また影狼も救世主であったハズの妖夢から殺気を向けられてパニックになったのか、霖之助の背後に隠れてしまった。

 これは修羅場不可避である。

 

「は?」

 

「   」

 

「妖夢、ストップだ。

 それ以上は流石に見逃せない」

 

 向けられた殺気に耐えられなくなった影狼は気絶し、それを見かねた霖之助が仲裁に入る。

 九十九姉妹はソレを丁度良い娯楽だと思ったのか、高みの見物を始めていた。

 今宵の怪異はこれにて解決という事になるのだろうか?

 ...逆に新たな怪異が生まれそうな気配がするが、気のせいだという事にしましょう。

 

 

 後日、影狼と妖夢の因縁(勘違い)を解決しようとした霖之助に対して影狼が惚れてしまい因縁(真)になる事態が勃発するのだが、それはまた別のお話である。

 

 

 

 

--- 女子トイレの謎:解明(?) ---

 

 

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