俺としのぶは幼馴染   作:ロゼ

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感想で頑張ってと言われてもう作者は元気もりもりです。ありがとうございます!



第3話 師範の謎

時間が流れは速く、しのぶに出会って、道場に通い始めて二年が経っていた。

 

時間の流れの速さをしみじみと感じている俺の脳天に竹刀が直撃する。

短いうめき声を漏らして脳天を手で押さえる。

 

「ぼ、防具も着用してない状態でそれはひどいです、師範!」

「ではもう少し集中してせんか!これで何回目だ!」

 

ぐうの音も出ないとはこのことだ。竹刀を握りなおして稽古に戻る。

 

 

 

 

 

 

「――今日はこれで終わりにする」

「「ありがとうございました!」」

 

声をそろえて感謝の意を述べるのが我が道場のしきたり、と師範が言っていた。

深くお辞儀をして、俺は師範を追う。

 

「師範、稽古お願いします!」

「またか…」

 

そう、俺は今日までの一年の間稽古が終わってから師範に特別稽古をつけて貰っているのだ。そのおかげで兄弟子と打ち合える程度に放っている。だがまともに打ち合えるのは一分がいいところ。

 

「翔よ」

 

師範と向き合って竹刀を構えたところで名前を呼ばれたので何でしょうか、と答える。

 

「お主は十分強い、そこで我慢できんのか」

「できません、俺はもっと強くならないといけないんです」

「まさか、翔、お前は…。いや、何でもない」

 

途中で言葉を切ると師範は蹲踞(そんきょ)の姿勢をとったのでそれを追うように俺も蹲踞の姿勢をとって出方を伺う。師範に動きが無いので先手を取ろうとするが師範から声が聞こえたので耳を傾ける。

 

「鬼、という存在をお主は信じるか」

 

俺は顔を上げて師範の方に顔を向けた、師範は鬼を知っているとでもいうのか。

 

「いや、やめておこう」

 

フルフルと首を振って俺を鋭い眼光で見る。あまりの気迫に後退りしてしまいそうだ。

 

「では、いつものようにかかってきなさい」

 

俺は師範の言動に困惑しつつも床を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、ヒュー」

 

床に大の字で倒れ空気を貪るように呼吸を繰り返す。

追加の稽古は一時間ほど休憩無しで続き、俺は限界に達し倒れているところだ。

 

「今日はここら辺にしておこう、もう夜も遅い。送っていこう」

「あ、ありがとうございます」

 

呼吸が整い、体のだるさがある程度なくなったところで竹刀と防具を手際よくまとめて背負う。

師範は先に道場を出ていたのでそれを追って急いで道場を出る。

 

「足元に気をつけなさい」

「あ、はい」

 

足元の小石をひょいひょいと避けながら師範の後ろをついて歩いていく。

こうして後ろから見ると師範は俺より数倍もでかい。俺は大体123㎝と平均より少しでかいが師範は俺の約二倍、2mはありそうだ。

大正時代の平均ってかなり低かった気がするんだが、どんなことをすればそこまで身長が伸びるのか。それと師範の口から『鬼』という単語が出てきたのも気になる。今は気にしても仕方ない、頭の隅に押し込んで薄暗い夜道を歩いていく。

不意に師範が俺に問いかけた。

 

「翔、お主はなぜ道場に通い始めた?」

「…なんとなくです」

「そうか、本当の答えが聞けるときを私は待つよ」

「え、」

「着いたぞ、では親御さんによろしく言っておいてくれ」

 

背中を押されて石に足を引っかけそうになりながら何とか堪えて師範に問いかけようと後ろを向くが、そこには誰もおらず、土煙が立っているだけだった。

 

「師範…?」

 

俺が驚愕のあまりそう呟き、ボーっと立っていると後ろから俺を呼ぶ声がした。

母さんだ。俺は溢れてくる疑問を振り払うように首を振って家に入った。

 

***

 

「…翔」

 

師範は鬼の存在を知っていた?それに本当の答えって…

 

「翔?」

「‥あぁ、どうしたの母さん?」

 

母に呼びかけられ俺は我に返り、返事をする。

 

「呼びかけても反応しないから…」

「か、考え事しててさ、ごちそうさま!」

 

箸を置いて自分の部屋に急ぎ足で戻る。

師範のことを追求しても何も出ない、その考えに至った俺はこれからのことを考える。

 

八歳、九歳辺りで鬼の襲撃がある。これは確実だ。

二年の間、いつ鬼が来るかはわからない。だから俺は八歳になったら夜練という名目の元、ここら一帯を巡回しようと思う。でも両親が了承してくれるかはわからないなぁ…もう一つ考えておいた方がいいか…?

 

顎に手を当て、考えていた俺だがドアから声がしたので顔を向ける。

そこにいたのは母でもなく、父でもなく、しのぶだった。

俺はあまりの驚きに椅子から落ちる。

 

「何してるの?」

「え、いや、しのぶこそ何してんだよ…」

 

二年の間で俺はしのぶとかなり仲が良くなった、俺個人の意見ではあるが。

 

「私?私は母さんたちが行くって言ってたからついてきたの」

「で、俺の部屋に来たのか」

 

うん、と頷いて俺の部屋の中を見る。

俺の部屋は机と椅子、布団と本棚というもの静かな部屋だ。

 

「前来た時より本増えてない?」

「しのぶが前来たのは一ヶ月前か、まぁ五、六冊ぐらいは増えたんじゃないかな」

「…ほんとに同い年か疑いたくなる」

「疑わないでくれよ…」

 

確かに俺は前世含めたら同い年ではなくなってしまうが、まぁ、そこは目を瞑ろう。

立ち上がり、しのぶに椅子を貸して俺は布団の上に座る。

俺は何となく窓の外を見る、未来の日本では見るのが難しい満天の星空。

 

「綺麗だよなぁ…あ、夏の大三角形だ…」

「何それ」

 

そうか、大正時代はまだ夏の大三角形が認知されてないのか。

俺は少し考えて何でもない、そう答える。

 

「変な翔。いつもだけど」

「うん、ってえぇ!?」

「ふふっ、嘘~!」

 

あまり見せない笑みを浮かべながらしのぶは俺の部屋から出て行った。

それを追うように俺も部屋を飛び出した。

 

 

――こんな日常がずっと続けばいいのに。

 

 

そんな叶わぬ事を胸に抱きながら。

 




あぁ、9歳までが遠い…あと2年…(翔、7歳。しのぶ、7歳)

追記
十三歳→九歳 に変更
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