宇宙戦艦ヤマト2199 ギャラクシー   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「ギャラクシー」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」の続編になります。


ギャラクシー1 艦長の心得

「艦長、次元断層に引き込まれた民間船から、通信。救援を急ぐように要請されています!」

「艦長、後方から、新手の敵艦隊がワープで現れました。急速接近中!」

 艦橋内は、クルーが慌ただしく動いていた。

 戦術長の土門が、艦長席を振り返って大きな声で言った。

「戦闘配置、完了しています! 艦長、攻撃命令を!」

 艦長席に座る北野は、技術科の方に確認した。

「シンマイ、前方の民間船の状況は?」

 技術科の席にいた新米は、センサーの表示を確認しながら回答した。

「前方の次元断層、閉塞中。あと、五分で救助が不可能になります!」

 北野は、考えを大急ぎで巡らせ、航海長に命令した。

「太田、次元断層開口部にぎりぎりまで寄せてくれ!」

「了解、回頭して、次元断層開口部に全速航行」

「シンマイ、波動防壁展開急げ!」

「了解、波動防壁展開します」

 北野は、艦長席のレーダースクリーンを確認した。次元断層の開口部へと艦が急速に接近している。しかし、後方からは、敵艦隊が追って来ていた。

 このままでは、背後から撃たれてしまう……。

 北野は、頭を振って、自らの判断が正しいと信じようとした。だが、あまり自信が無い。

 艦長なんて、俺にはまだ早かったんじゃないか?

 そんな疑念が、彼の脳裏に浮かぶ。

 その思考を、太田の声が遮った。

「艦長、次元断層開口部に停止させました。これ以上接近すると、本艦も次元断層に引き込まれてしまいます」

「分かってる。太田、ロケットアンカーで、民間船を引き寄せる。ロケットアンカーの狙いを民間船に合わせ、照準が合い次第、射出しろ!」

「了解」

 そこへ、西条未来が割り込んできた。

「艦長! 敵艦隊が、陽電子砲による攻撃を開始しました!」

 その途端、艦内が激しく揺れた。新米が報告した。

「波動防壁、正常作動中。陽電子砲は、効果ありません」

 北野は、新米に頷いて、太田に言った。

「ロケットアンカー、まだか!」

「今、射出します。ロケットアンカー射出!」

 艦内に、ロケットアンカー射出時の衝撃が響いた。

 北野は、再び艦長席のレーダーを確認すると、ロケットアンカーが早い速度で、次元断層に突き進むのが、確認された。太田が、命中までの時間をカウントダウンしている。

「命中まで、五、四、三、二、一……」

 北野は、祈るような気持ちで、見守った。

「ロケットアンカー、民間船に命中!」

 その報告を聞いた北野は、思わず拳を握り締めた。

「よし、早速、鎖を巻き上げて民間船を引き寄せろ!」

「了解、ロケットアンカーを巻き上げます」

 その時、土門が北野に話しかけてきた。

「艦長、敵艦隊接近中。至近距離から攻撃を加えてきます。反撃させて下さい!」

「必要無い! 波動防壁を信じろ! 今は、民間船の救助を優先する!」

 太田も報告してきた。

「艦長、駄目です。逆に艦が、次元断層に引き込まれます!」

 北野は、真っ青になった。

「太田、全速後進」

「了解、全速後進かけます!」

 艦内に、逆噴射の衝撃があり、艦が後退を始めた。しかし、次元断層の閉塞に伴って、内部の重力が増しているのか、次第に艦の後退が止まり、再び引き込まれ始めた。そして、周囲には、敵艦隊が集結し、激しい攻撃を受け始めた。その影響で、艦内は激しく振動している。

「敵艦隊の攻撃が、ロケットアンカーの鎖に命中しました。民間船、再び次元断層に落ち込みます!」

「本艦の次元断層への沈降止まりました。艦長、次の指示を!」

「艦長、次元断層の閉塞まで、あと三十秒。もう、間に合いません!」

 北野は、苦渋の表情でレーダーを確認した。これでは、民間船の救助は、絶望的だった。

 北野が、次の指示を出そうとしたところで、天井のスピーカーから、声が流れてきた。

「シミュレーション終了。北野、終わりだ」

 北野は、悔しそうな表情で、艦長席に両腕の拳を叩きつけた。

「くそ!」

 艦内と思われたその部屋が明るくなり、太田、土門、新米、そして西条の四人が、立ち上がった。

「北野、行こうぜ。こいつは、難しいよ。そんなに落ち込むなって」

 太田が、帰り際に北野に声をかけていった。土門と新米も、北野の様子を気にしながら、そっと部屋を出て行く。後に残った西条未来は、心配そうに、艦長席の北野に近づいた。

「北野くん、ほら、行こう? 仕方ないよ、こんなの難しすぎるよ」

 西条に差し出された手を、北野は素直に取れなかった。

「でも、これがイスカンダルの旅の出来事だったら? こんな失敗は、絶対に許されない」

 北野は、悔しさで顔を歪めたまま、西条の脇を通り過ぎて、とぼとぼと部屋から出て行った。

「……」

 西条は、黙ったまま、そっと彼の後に続いて部屋を出た。

 訓練用シミュレーションルームから出た北野を待っていたのは、古代だった。

「北野、お疲れだったな」

 古代は、微笑して北野を迎えた。

 しかし、北野は下を向いている。

「北野、どうした?」

 古代は、北野の肩を叩いた。

「失敗したと思っているのか? 心配するな。このシミュレーションは……」

 北野は、古代の方へ顔を上げると、大きな声で言った。

「納得できません! もう一度……もう一度、やらせて下さい!」

 北野は、決死の表情だった。しかし、古代のほうは、何故か微笑している。

「駄目だ。このシミュレーションは、何度もやっては意味がない。お前は、良くやったよ」

 そう言うと、古代は笑顔を浮かべたまま、北野を置いて去って行った。

「古代さん!」

 古代は、振り向かずに、軽く左手を上げて、そのまま立ち去った。

 がっくりと落ち込む北野に対して、西条は彼の背に手を触れ、そのまま背を押した。そうして、やっとのことで歩き始めた北野と一緒に、二人はシミュレーションルームを後にした。

 

 旧ガミラス銀河方面軍基地――。

 

 地球連邦政府は、銀河中央部に位置する旧ガミラス帝国銀河方面軍の宇宙基地を拠点とした、銀河中央方面総監部を設置する事を決定した。この付近には、古代アケーリアス文明の遺産である銀河系のゲートが存在し、ボラー連邦とガルマン帝国、及び両国の中立地帯が隣接した宙域がある。その為、地球連邦が現在進めようとしている銀河連邦構想において、重要な防衛拠点、そして銀河系各方面への前哨基地として利用されことになっていた。古代ら主要なヤマトクルーは、この命を受け、この基地に駐留することになったのである。

 しかし、既に、流浪の旅の途中の拠点として、同施設を活用していたデスラー元総統らと、共同利用する必要があった。地球連邦政府は、一筋ならでは行かないデスラーらとの数カ月後に及ぶ交渉によって、合意にこぎ着けていた。

 そして、ガミラス政府にも確認したところ、既に遺棄した扱いとなっていたその基地を、デスラー元総統が利用することを、特に問題視しなかった。むしろ、半年前に発生した地球連邦とガルマン帝国との軍事衝突において、ガルマン帝国を撤退させる要因を作った彼らを歓迎していた。なぜなら、ガミラス政府は、軍を銀河系方面へ派遣する余裕が無いかったからである。現在のガミラス政府は、大小マゼラン銀河の統治に関わる内政問題で手一杯の状態で、同盟国地球連邦との関係の維持する為に、渡りに船と言ったところだったのだ。

 この宇宙基地は、地球連邦とデスラーらと分割して利用する事になっていた。そして、基地の地球連邦側の司令官に任命されたのは、古代だった。古代は、ガミラス戦争時に、ガミラス人との平和的な交流を成功させ、ガミラスとの和平を結ぶ道のりに、大きな役割を果たしていたことが改めて評価され、宇宙基地に配置する最適な人材だと、防衛軍から太鼓判を押されていた。

 そして、古代を配置するにあたり、基地を防衛する艦隊も合わせて検討された。古代が長年一緒に行動を共にした、ヤマトを出す案が最初に検討されたが、これには慎重論もあった。何故なら、ヤマトは、地球を救った象徴であり、前線に配備すれば艦を失う可能性もあるからだ。防衛軍は、このような意見を一蹴した。それには、ヤマトに代わる象徴であるアンドロメダの存在が大きかった。

 そうすると、ヤマト艦長は、別の者を任命する必要があったが、古代は、長年ヤマトで戦術科を共にした、北野こそ相応しいと土方らに推薦をしていた。しかし、土方らは、テストを受けさせるように言ってきたのである。以前、古代がヤマト艦長に任命された時も似たような経験をしたが、今回は、基地の訓練設備を使った、より本格的なテストを実施する事になった。

 古代は、テストが終わった後の彼の様子を思い出して、昔の自分を見るようで、微笑ましい気持ちになっていた。

「あのテストは、全ての問題を解決する必要は無いんだけどなぁ」

 今日のうちに、土方に結果を報告し、後は正式に任命するだけだった。そして、既に、古代は北野を任命するつもりだったが、あの様子だと、早く伝えないとまずいな、と彼は考えていた。

 

「くそ!」

 案の定、その北野は荒れていた。テーブルの上のグラスが大きく揺れて、西条は、慌ててグラスを倒れないように押さえた。基地内のバーを訪れていた北野に、心配した西条が着いてきていたのである。

「あんなの、どうすればいいって言うんだ!」

 西条は、困った表情をしていたが、先程の古代の雰囲気からして、何となく想像がついていた。

「北野くん。私ね、さっきのテストって、解決出来ないんじゃないかと思ってる」

 少々、ふてくされた顔で、北野は西条の方を見た。

「西条さん、それってどういうこと?」

 西条は、少し考えてから言った。

「さっきの古代さんの様子、あれ、北野くんが良くやったって思っている時の顔だもん。多分、テストの目的が完璧に解決することじゃないと思うよ」

「そうかなぁ、俺のこと、残念だと思ってるんじゃない?」

 西条は、大きくため息をついた。

「いい加減に、そう言うの止めないと、女性に嫌われるよ?」

 北野は、それを聞いて、少し慌てた。

「な、何それ?」

「だって、格好悪いよ、さっきから」

 西条は、目を細めて北野の方を見ながら、自分のグラスを口にした。

 北野は、ますますしょんぼりしていた。

 西条は、そこで立ち上がった。

「ほらほら、もう帰ろう? そんなんじゃ、お酒なんて飲むと、もっと悪いこと考えちゃうよ?」

「わ、わかったよ。くそう」

「ほら、ほら。帰るよ!」

 店を後にした二人は、そのまま、居住区画へと向かった。しかし、西条の努力も虚しく、北野の足取りは、まだ少し重かった。

 

 翌日――。

 

 北野は、銀河中央方面総監部司令官の執務室を訪れた。そこはつまり、古代の執務室だった。

「失礼します!」

 執務室に入って来た北野を見て、古代は、立ち上がって開口一番に言った。

「どうした? 体調でも悪いのか?」

 北野は、昨夜殆ど眠れず、そのせいで少しやつれていた。これはいけない、と考えた北野は直立不動の姿勢で敬礼した。

「いえ。大丈夫です! 早速、ご用件をお聞かせ下さい!」

 古代は、北野のそばに寄って、少しだけ心配そうなそぶりをみせたが、すぐに気を取り直して、いつもの調子で言った。

「おめでとう! 君をヤマト艦長に任命する。階級も三佐に昇進だ。今後の活躍を期待しているぞ」

 北野は、大きく目を見開いていた。

「私は、てっきり、駄目だったのかと……」

 古代は、北野の肩を叩いた。

「昨日のシミュレーションのことだな? あの結果は、合格だよ。最後まで、民間船の救出を最優先で行動してくれた。それが決め手だ」

「し、しかし、結局救出には失敗しました」

 古代は、微笑した。

「その真面目さも、合格点だな。あのシミュレーションで、民間船を救出して、無事に脱出するのははっきり言ってかなり困難だ。評価のポイントは、艦長として適切に指示し、任務遂行の強い意志を持って行動したかだ。任務の成功か失敗かは関係ない」

「そ、そんな……。俺、一晩中悩んでたんですよ」

「それで、そんな疲れた顔をしてるのか。今日は、クルーにも、君の艦長就任をアナウンスする。シャワーでも浴びて、頭をはっきりさせて来い」

 北野は、慌てて敬礼した。

「あ、ありがとうございます。北野、ヤマト艦長の任に着きます!」

 古代は、笑顔で言った。

「頑張れよ」

 北野は、礼をして、部屋から出ようとした。しかし、ふと気になって、古代に質問をした。

「古代さんなら、あのテスト、クリア出来ますか?」

 古代は、困った様子で頭をかいていた。

「あれは、土方さんが考えたものだ。事前に、試してみたが、僕も駄目だったよ。クリアしたのは、五回目だったかな……」

 古代は、ついそこまで言ってから、北野の顔色を窺った。北野は、少々あ然とした表情をしている。

「ま、まぁ、とにかく、クリアすることが目的じゃない。何回もやっちゃ意味が無いんだ」

 北野は、頷いて無言で部屋を出て行った。それを見送った古代は、独り言を呟いた。

「大丈夫かな……」

 結局、部屋を出た後もしばらくの間、北野の脳裏では、あのシミュレーションの解法を何度も考えることになった。 

 古代は、執務室のデスクの椅子に戻り、端末で北野の艦長就任を登録していた。一仕事終えた古代は、デスクの上に飾っていた雪の写真を眺めた。雪は、産まれて間も無い娘の美雪を抱えて、いい笑顔をしている。

 その写真を見ながら、古代は、着任した日の事を思い出していた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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