数時間後――。
ギャラクシーベースの司令室に、北野と島が訪れた。
そこでは、司令室で待っていた古代やタランが待ち受けていた。そして、この事態を心配した雪も、美雪を連れてその場にいた。
「北野、島。ご苦労だった」
北野と島は、古代に向かって敬礼し、そこにいた地球連邦防衛軍のメンバーは、皆敬礼で返した。
一通りの挨拶が済むと、北野と島は、亜空間ゲート内での出来事を報告した。
「ガトランティスの残党に、異次元空間の亀裂から、ブラックホール。それに、方舟とテレサの出現か。一体、何が起こっているんだ?」
古代は、あまりにも、多くの出来事が起こっており、困惑していた。
ムサシと回線が繋がっており、司令室のスクリーンに映る藤堂早紀は、報告を聞いて何か思案しているようだった。
最初に口を開いたのは、タランだった。
「皆さん。私は、ガミラス本星のバレル大統領に連絡して、ガトランティス戦争後の彼らについての情報を確認した」
その話に、全員が注目した。
「最近、小マゼラン銀河で、ガトランティス艦隊の目撃情報が、少なからずあったそうだ。その為、ガミラス軍は調査を始めたらしい。小マゼラン銀河にあった彼らの巨大要塞は、ズォーダーらが故郷に帰還した後、もぬけの殻になっており、遺棄されたものと考えられていた。しかし、今回新たに調査したところ、要塞があった位置に、それが無かったそうだ。つまり、何処かに移動させたものと考えられる。彼らの主な目的は、今回の情報で、以前と同様に、宇宙の科学技術の収集であることが推測される。ガミラス軍としては、最大級の警戒を行って、残党狩りを指示したばかりのようだ。亡くなったドメル将軍配下の生き残りで構成された部隊が、これの陣頭指揮を取ることが決定したそうだ」
古代は、誰のことを言っているかわかり、それに反応した。
「それって、バーガー少佐の部隊ですね」
タランは頷いた。
「バーガーくんを知っているのかね? 彼は、昇進して、今は大佐になっているそうだよ」
その場にいた雪も、この話に疑問を挟んだ。
「まさか、ズォーダーさんたちが、戻って来ているのでしょうか?」
タランは首を振った。
「残念ながら、そこまでは。だが、ガトランティス戦争の最終決戦で行われた、貴方やスターシャ女王らイスカンダル人、そしてテレサが行った精神攻撃は、時間が経ったから効果が無くなるような代物では無いと思う。冷静に考えて、効果が及んだ範囲が、限られていたと考える方が妥当だろう。ガトランティス戦争では、彼らは、ほぼ全ての戦力を、サレザー系に投入していたと思うが、一部が小マゼランの要塞に残っており、影響を逃れたものがいる、と考える方が、理にかなっている」
古代は、更なる疑問を口にした。
「そうなると、怖いのは、あの大彗星を再び開発して無いか、ということですね。もし、あれが再び開発されるようなことがあれば、あの、悪夢のような戦いが再現されてしまいます。非常に危険です」
タランは、苦笑いした。
「君の言う通りだ。そもそも、あれは、私がガトランティスに囚われている時に技術供与した人工太陽の技術が元になっている。私としても、他人事では済まされないと考えている。あれを兵器に転用した、優秀な科学者がガトランティスにはいたようだ。その人物が、その残党にいるならば、その懸念は現実のものとなる。そうならないように、残党狩りは必要となるだろうな」
古代は頷いた。
「そうですね。それに、方舟を探している部隊は、再び亜空間ゲートにやってくるかも知れません。今のところ、方舟は、ゲート内の次元断層内部の異次元に留まっているようですし」
タランは、困ったような顔をして、表情を曇らせた。
「バラン星から来たガミラス軍の部隊は、逃げ出したガトランティス艦隊を捕まえられなかったようだな。逃げ足だけは早い連中だったらしい」
スクリーンに映った藤堂早紀が、古代に話しかけて来た。ガトランティスの話題が一区切りするのを待っていたようだ。
「古代司令。我々は、方舟と、次元断層についての調査を行いたいと思っています。科学技術省としては、今回の一件は、重要な案件と捉えています。許可を頂けますか?」
古代は、島と北野の方を見て、彼らと話し合った。
「非武装艦が今行っても大丈夫か?」
島は、頭をかきながら言った。
「今なら大丈夫だと思うけど、戦闘不能なガトランティス艦が漂っているからな。護衛はつけた方がいいと思う」
「私も島さんと同じ意見です。しかし、ヤマトもイセも戦闘が、終わったばかりで、乗員を少し休ませたいのですが」
そこに、スクリーンに真田の姿が現れた。
「古代、そして、タラン司令。ガミラス艦の護衛を少しお借り出来ませんか? また、可能なら、次元潜航艦を出して頂きたい」
それを聞いた古代は、眉を潜めた。
「真田さん。次元断層の中に入るおつもりですか?」
真田は頷いた。
「方舟が、次元の亀裂を閉じようとしている。そして、そこにテレサがやってきたという。亀裂の向こう側のブラックホールのこと。何か、宇宙の存続に関わるような、重大な何かが、起こっているとも考えられる。実に興味深い。これは、我々としては、絶対に逃すことが出来ない機会だ」
古代は、タランの方を向いた。
「タラン副司令。我々の科学調査に、部隊を出して頂くことは出来ますか?」
タランは、快く頷いた。
「いいでしょう。私も、今回のことには興味がある。次元潜航艦の件も承知した。ただ、フラーケンの使う艦は、今ガルマン帝国に潜入中なので使えないのでね。しかし、実は開発中だった新型の次元潜航艦が一隻、完成したところだ。試運転を兼ねることになるが、行けると思う」
試運転と聞いて、古代は少し面食らった。しかし、そのやり取りを聞いていた真田が言った。
「古代。タラン司令ほどの科学に造詣の深い方がそう言っているということは、かなり自信があるんだと思うよ。私も、テストしていない新たな機能を提案する時に、同じようなことを言うから、どういう状態かはよくわかる。全く問題無い状態だと思う」
タランと真田は、何か通じ合ったものがあったらしく、互いににこやかに笑い合っていた。
古代は、少し悩んだが、真田の言う事を信じることにした。
「わかりました。タラン司令、それではご協力をお願いします」
「承知した」
「待って」
雪が、そこに割り込んで来た。
「私も同行させて下さい。いいですか? 藤堂さん、真田さん」
早紀は、彼女が、古代の妻だということは知っていたが、面識は無く、困惑していた。
「え、えーと……」
古代も、同じ様に困った様な顔をしていた。腕を組んで、雪に理由を尋ねた。
「雪、どうしてそんなことを? 行き先は、決して絶対に安全とは言えない状況だ」
雪は、古代を見つめて言った。
「うーん。古代くん。テレサがいると聞いて、行かなきゃいけないような気がするの。前に、テレサに初めて会った時にも、彼女に呼ばれたのを思い出したの。彼女が現れたのは、何か意味があるのかも知れない」
真田が、後を受けて、早紀に説明した。
「藤堂くん。彼女はヤマトの船務長を務めていた軍の人間だ。今は、育児休暇中だがね」
早紀は、それを聞いて納得したようだった。
真田は、更に雪と古代に語りかけた。
「そうだったね。君がいたから、以前テレサと接触出来た。私は、来てもらっても構わない。現在の状況は、ガトランティスの脅威はほぼ無いと言っていい状況だ。どうするかね? 古代」
古代は、真田にも言い包められてしまい、困惑した表情のまま、雪の方を見た。
「なら、僕も行くよ。君だけ行かす訳にはいかない」
雪は、笑顔で言った。
「当然ね。美雪も連れて行くから」
「ええっ? そ、それは……」
雪は、古代に顔を近づけて言った。
「何かあったら、皆一緒の方がいいでしょ。それとも、あなただけ残って、美雪をみててくれるのかな?」
古代は、完全に言い負かされていた。確かに、心配するぐらいなら、皆一緒の方がいい。そう古代も考えていた。
早紀は、そのやり取りを見て、駄目を押した。
「古代司令。これは、軍事作戦ではありません。科学調査です。特に問題ないと思いますよ」
タランが最後に言った。
「もし、基地のことが心配なら、その必要はない。それ程、長い時間はかからないだろう? 後のことは、私に任せ給え」
古代は、仕方なく抵抗を諦めた。組んでいた腕を下ろし、皆に言った。
「わかりました。では、藤堂さんと真田さんは、次元潜航艦に乗艦しますよね? 私と雪も同行します」
早紀は、真田と示し合わせて頷きあった。
「そうしましょう。分析が必要かも知れないので、ムサシも一緒に行きます。タラン司令、それでは、ガミラス艦の護衛と、次元潜航艦の件、よろしくお願い致します」
「わかった。では、皆さん。始めようか」
タランが宣言して、皆が動き出した。
古代は、諦め顔で、雪が抱く美雪の頭を撫でた。その美雪は、嬉しそうに笑っていた。雪も、笑顔で古代の方を眺めた。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。