宇宙戦艦ヤマト2199 ギャラクシー   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「ギャラクシー」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」の続編になります。


ギャラクシー5 初任務

 それから、地球時間で一週間程が経過した。

 

 バラン星、ガミラス軍宇宙基地――。

 

 バラン星は、天の川銀河とマゼラン銀河の中継地点として、今も、重要な道標の役割を果たしている。

 ガミラス軍は、新政府になってから、バラン星付近に新たな宇宙基地を設けていた。目的は、天の川銀河等からの敵性種族の侵入を監視する為である。そして、地球―ガミラス航路が結ばれた事により、地球からの民間船の出入りも、新たに監視対象になっていた。

 基地司令のボース中佐は、地球連邦から事前連絡を受けていた民間船が現れない、という情報を受けて、監視部隊の小隊を、バラン星の銀河方面ゲート付近に配置した。しかし、待てど暮らせど、何者もゲートから出てくる気配は無く、監視部隊のガミラス駆逐艦小隊からは、付近の宙域に、船影が無いと報告して来た。

「困ったな。このまま放っておく訳にもいかんか……」

 ボース中佐は、通信士に指示をした。

「天の川銀河内の宇宙基地を呼び出せ」

 通信士は、端末を操作して通信を行った。

「先方が応答しました」

 ボース中佐は、スクリーンに、亜空間通信による映像を受信するのを静かに待った。そのスクリーンには、ヴェルテ・タランと古代が現れた。

「何かね?」

 タランは、無表情に通信に応えた。

 ボース中佐は、かつてガミラス帝国で国防相を務めていたタランへの緊張を隠せなかった。

「タラン司令官。地球連邦から通達を受けた民間船が、まだこちらに到着しておりません。少々時間が経ちすぎているので、状況を確認させて頂けますか」

 タランは、少しだけ眉をひそめた。

「ふむ。確かに、地球連邦の民間船が、こちらの銀河系ゲートを通過したのは確認している。まだそちらに現れていないのかね?」

 ボース中佐は頷いた。

「はい。このような行方不明の事案は、危険な兆候の可能性もあります。警戒するに越したことはありません。私は、念の為、偵察部隊を出そうと思いますが、そちらからも逆方向から部隊を派遣してもらえませんか?」

「ボース中佐。君の懸念は理解した。しかし、残念ながら、我々は、ガミラス本星とは袂を分かっている。そのような要望に応える義務が無い」

 ボース中佐は、無下に断られたのを残念に思ったが、タランの言う事も、もっともだと理解した。

「分かりました。では、我々だけでも、偵察を行います」

「ちょっと、待ち給え」

 スクリーンに映るタランは、古代の方を見て、何やら小声で話している。

「丁度いい。紹介しよう。地球連邦防衛軍の古代二佐だ。数週間以内に、基地司令の立場は、彼が担うことになる」

 ボース中佐は、古代の方へ注意を向けた。二佐ということは、階級は自分と同じ、ということを意識していた。

 古代は、スクリーン内で会釈していた。

「古代です。今後、この基地は、地球連邦とガミラス回遊艦隊とで共同運営していきます。現在、この基地の司令の役割について引き継ぎを行っているところです。先程頂いた民間船が行方不明になっているのでは、という情報は、大変ありがたいと思っています。地球連邦としても、憂慮すべき事態です。ここは、我々防衛軍からも捜索部隊を出すので、共同で捜索をやりましょう」

 ボース中佐は、思わぬ展開に少し驚いたが、タランと話すよりは、ずっとやりやすそうな相手でほっとしていた。

「分かりました。これから、こちらからは、五隻の駆逐艦小隊を出し、バラン星から銀河系外縁部のゲートへ向けて出発させます」

 古代は、どうするか少し悩んだ。基地に着任後の初めての任務だ。信頼する島のイセを出すか、それとも新艦長北野を迎えたヤマトを出すか。

 決意した古代は、スクリーンの向こう側のボース中佐に返事をした。

「ボース中佐。こちらの持ち駒は限られています。単艦での任務に慣れているヤマトを向かわせます」

 ボース中佐は、ヤマトの名を聞いて驚いているようだった。

「ヤマト? あの宇宙戦艦ヤマトですか? ガミラスの危機を二度も救ったという……」

 古代は、少し照れているようだった。

「ま、まぁ。そう思って頂けるのは光栄です」

 その横にいたタランは、一度目のその危機を起こした張本人であるデスラーのことを思い浮かべて、苦笑した。

「ボース中佐。二度目は、我々も協力したので、一度目のことは、そろそろ忘れてもらえるとありがたいのだがね」

 ボース中佐は、そう言われて、かつての危機を懐かしんでいた。

「タラン司令。そうでしたね。大変失礼しました。ガトランティス戦争の時は、私も本星防衛艦隊に所属していました。あなた方が、ガトランティスに対抗してくれたのは、この目で見ていましたので」

 タランは、少しだけ誇らしげに微笑して頷いた。

「ま、昔話はこのぐらいにして、両者でこの問題の対応を行ってくれたまえ。私からは以上だ」

 古代と、ボース中佐は、互いに地球式とガミラス式に敬礼し、通信が切れた。

 古代は、早速、司令室のガミラス人通信士に、簡易指揮所にいる地球連邦の通信士に連絡するように伝えた。通信に相原が出ると、すぐに指示を出した。

「今は相原が担当だったか。ゲートを通過した民間船の行方が分からなくなった。ヤマトに捜索任務の指示を出したい。至急、北野に連絡して、発進準備をするように伝えてくれ」

「分かりました。北野艦長に伝えます。今の時間は、訓練航海の準備をしているので、すぐに出発出来ると思います」

 通信に出た相原は、てきぱきと連絡をおこなった。

 

 ヤマトでは、相原と交代で市川純が勤務していた。市川は、先日ゲートに入った時に通信でやり取りした民間船のことを思い浮かべて、少しだけ心配そうな表情をしていた。

「艦長、古代司令からの命令です。先日銀河系ゲートを通過した民間船が行方不明になっており、ヤマトで銀河間空間の捜索活動を行うように指示を受けました」

 艦長席にいた北野は、少し驚いていたが、すぐに表情を引き締めた。

「分かった」

 北野は、艦内通信のマイクを掴んだ。

「総員、訓練航海を中止する。これより、行方不明の民間船捜索活動の任務に変更する。これは訓練ではない。繰り返す、これは訓練ではない。以上だ」

 マイクを切った北野は、第一艦橋の乗員に指示をした。

「太田。民間船の捜索活動は、ゲートを超えた先の銀河間空間だ。航路の変更を急いでくれ。それから、土門、訓練から実戦に変更する。ヤマト兵装の実弾への変更急げ」

「了解、艦長」

「分かりました!」

 北野は、続いて指示を出した。

「徳川機関長、補助エンジン、波動エンジン共に全力運転用意」

 機関士の席にいた徳川太助は、すぐに返答した。

「分かりました。問題ありません」

「レーダー、長距離に切り替え。周囲の警戒を厳とせよ」

「承知しました!」

 レーダー席にいた西条未来は、北野を振り返ってにっこりと笑って敬礼している。何やら、褒められているらしい。北野は、苦笑して軽く敬礼を返した。

「シンマイ、民間船のデータはあるか?」

「今、基地に連絡して、データ受信中です」

 北野は、満足げに頷いた。

 さすがは、ヤマトの士官だ!

 ヤマトは、補助エンジンを吹かして、ギャラクシー脇の宇宙港から発進した。そのまま、速度を上げて基地を離れると、波動エンジンを咆哮させ、一気に飛び去って行った。

 

 ちょうどその頃、司令室には、島が訪れていた。島は、普段着の随分とラフな格好だった。

 島は、タランや、ガミラス士官らに、にこやかに挨拶すると、古代の傍にやって来た。

「古代。……あーいや、古代司令。今、ヤマトが出発したよな? 何かあったのか?」

「ああ。ゲートを通過した民間船が行方不明かも知れないという情報が、バラン星のガミラス軍から報告があった。ヤマトを捜索任務で先程出発させたところだよ」

 島は、司令室のレーダーチャートを眺めて、ヤマトがゲートに突入して行くのを見守った。

「非番で外を眺めてたら、ヤマトが発進して行くんでな。置いてかれた! って一瞬焦ったよ」

 古代は苦笑していた。

「ヤマトに戻るか?」

 島は首を振った。

「やめとくよ。太田が俺の後をしっかりやっているみたいだからな」

 島は、レーダーチャートに再び注目して、少し考えを巡らせた。

「古代、北野の奴、艦長になってから初めての実戦だよな。ちょっと心配だから、俺も、発進準備をしておこうか?」

 古代は、島の提案を思案した。確かに、古代も少し心配だった。

「分かった。頼むよ、島」

「任せとけ」

 島は、簡単に敬礼して、司令室を大股で出て行った。しかし、一度出て行った島は、再び司令室の入口から頭を覗かせた。

「古代。お前、顔色悪いぞ。ちゃんと休んでるのか? 基地司令なんて大役任されて、張り切り過ぎてるんじゃないのか?」

「大丈夫だよ」

「そうか? じゃぁ、俺は行くぞ。雪さんに心配かけるんじゃないぞ」

 島は、最後に敬礼してから去っていった。

 古代は、確かに疲れを感じていたが、基地運営が軌道に乗るまでは、頑張らないと、と思っていた。しかし、そんな古代を、タランはじっと観察していた。

「古代司令。島くんの言う通りだと思うよ。少し休みたまえ。君の部下はよくやっているようだ。ここは、私が引き受ける。何かあれば、すぐに君に知らせるよ」

 古代は、少し悩んだ。確かにその方がいいのは自覚していた。

「分かりました。では、お言葉に甘えて、今日はこれで休みを頂きます」

「うむ。ではまた、明日な」

 

 古代は、司令室を出ると、疲れた足取りで自室へと向かった。そこは、雪と美雪の三人暮らしをすることになった為、家族がいるクルー用の少し広い部屋だった。

 この基地に来てから、古代は忙しい日々を送っていたので、雪は一人で、まだ赤ん坊の美雪の面倒を見ることになっていた。以前は、太陽系外縁パトロール艦隊と地球の家とで離れ離れだったことを思えば、今は、こうして傍に居られるので、以前よりはかなり家族との時間をとれるようになっていた。

 部屋に戻った古代は、雪に「ただいま」と声をかけると、すぐにベッドに向かおうとした。しかし、入口にやって来た雪に呼び止められた。

「疲れてるとこ、悪いけど、ちょっとこっちに来てくれる?」

 古代は、雪の表情が、いつもより険しいのを感じ取り、素直に従った。その雪は、部屋のリビングとして使っている部屋に入った。そして、すやすやとベビーベッドで寝ている美雪のそばに古代を連れて来た。

「古代くん」

 古代は、雪が無表情に見つめているので、これは怒られるのだろうか、と内心心配をしていた。

「何?」

 雪は、美雪を起こさないように、そうっと抱き上げると、古代に渡した。古代は、両腕で恐る恐る美雪を抱き抱えると、彼女の寝顔を見つめた。

「少し、大きくなったと思わない?」

 確かに、抱き抱える美雪の体重は、以前より重くなっているように感じた。

「本当だ。子供っていうのは、どんどん大きくなるんだなぁ」

 雪は、少し呆れ顔で言った。

「嘘。そんなに急には変わらないよ」

 古代は、やはり雪に怒られるのかな、と内心で冷や汗をかいた。しかし、もう少しだけ、仕事に集中させて欲しいのだが、と彼は考えていた。

 長い沈黙があって、ようやく彼女が口を開いた。

「私ね。昨日の夜、おかしな夢を見たの」

 怒られると思っていた古代は、雪が何を言い出すのか、少し興味を持った。

「もう、美雪が大きくなっていて、あなたと別居してるの。あなたは、任務で宇宙に出たきり、戻って来ない。私は、あまり寂しいとは口に出さないようにしてたんだけど、美雪は、許せなかったみたい。すごく怒ってた」

 雪が、目を細めて睨んで来た。

「このままだと、本当にそうなっちゃうかもよ?」

 古代は、困惑していたが、よく考えれば、そのような夢を見るように、自分がそうさせたのに違いなかった。彼は、申し訳無さそうな表情になった。

「雪。ごめん」

 雪は首を振った。

「仕事を優先しなければならない時があるのは、理解してるつもりだよ。今は、確かにそういう時かもね。でも、落ち着いたら、ちゃんと美雪のことや、私のことも、考えてもらいたいかな。夢で見たような未来は、私は望まない」

 雪の瞳は、真剣そのものだった。

 古代は、頭をかいていた。

「分かってる。もう少しだけ、待っていてくれるかい?」

 雪は、古代をまだ睨んでいる。しかし、急に相好を崩した。

「私も、美雪が一歳の誕生日を迎えるまでは、お休みするつもりだけど、その後は、復帰するつもりだから。ここの保育所なんだけど、ガミラス人の保育士さんたち、思いの外、優秀だったの。安心して任せられそうかな」

「すまない。君も、早く復帰したいよな。僕も、育児休暇を取れれば良かったんだが……」

「やりたかったんでしょ。この基地の司令官。育児休暇で休んでたら、他の人がやってたかもね。島くんとかに取られちゃったかも。私も、そんなことは分かってるから」

 雪は、美雪の頬を撫でた。古代も片手で美雪の小さな手に触れた。

「私ね、この子に会えて本当に良かったと思ってるんだ。家族三人の幸せと、地球の歴史上、初めての太陽系外の宇宙基地の仕事。ちょっと欲張りだけど、全部大切にしたい。だから、あなたと話し合って、こんな遠いところまでやって来た。それは、あんな夢の中のような未来にする為じゃない。それを、忘れないでね?」

 雪は、古代が触れる美雪の手に、自分の手を重ねた。そして、彼に顔を近づけると、そのまま軽くキスをしてきた。古代は、不意打ちを食らって、少し目を丸くしていた。

「でもね。ちょっとぐらい、我儘を聞いてもらってもいいでしょ?」

 雪は、悪戯するような表情で笑っている。古代は、彼女の欲張って全部大切にしたいという言葉に、確かにそう話し合って、ここでの勤務を志願したことを思い出していた。忙しさに任せて、初心を忘れそうになったことを、古代は恥じた。

「本当に、ごめん。僕も、君と、そして美雪と出会えた事は、本当に良かったと思ってる」

 古代は、美雪を片腕に抱き抱えて、もう片方の腕で、雪を抱き寄せた。二人は、美雪を挟んで見つめ合って笑いあった。

「じゃぁ、君に相談があるんだけど。副司令官を任命して、負担を分担するよ。誰がいいと思う?」

 雪は、少しだけ考えてから言った。

「あなたが一番信頼する、相応しい人が、もう少ししたら、こっちに来るじゃない」

 古代は、もう少しで来る相応しい人と言うのを思い浮かべた。

「そうか! 真田さんか。それはいいかも知れない。でも、科学技術省の人にそれを頼むのはどうかなぁ」

「あなたが、かこの司令官でしょ。ここは、地球の歴史上でも、初めての太陽系外の宇宙基地だもの。前例なんて何も無い。あなたが、それを作って行けばいいと思うよ」

「そうだな。ありがとう、雪。そうしたら、もっと時間を作れるようになるよ」

 雪は、にっこりと笑っていた。

「じゃぁ、どうやって、真田さんや、防衛軍を説得するか、作戦を考えておかなきゃね……」

 

続く…

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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