宇宙戦艦ヤマト2199 ギャラクシー   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「ギャラクシー」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」の続編になります。


ギャラクシー7 星巡る方舟

 銀河系外縁部――。

 

 天の川銀河外縁まで戻って、ワープアウトしたヤマトの目の前に、それはいた。

「見ろ!」

「あれは!?」

 ヤマトのスクリーンには、それが拡大映像として映っていた。

「あれは……方舟じゃないのか」

 巨大な宇宙船、シャンブロウが銀河系を背に、その実体を現していた。

 他の者と同じように呆気にとられていた太田が、我に返って報告した。

「先程の空間の揺らぎの速度、進行方向から予想された出現地点です。間違いなく、あれがその正体だったのだと思います」

 西条未来が、緊迫した声で報告した。

「レーダー、物体が大きすぎて、正常に表示されません」

 先程と同様に、レーダーは真っ白に表示されている。

 新米もそれに続いた。

「全長二十万キロもの巨大な天体です。現在、完全に停止しています。艦のデータベースと照合しました。イスカンダルの帰路で目撃した宇宙船シャンブロウに間違いありません!」

 北野は、驚きの余り、立ち上がって目を見張っていた。気を取り直して、艦長席に再び座ると、土門に命じた。

「土門、全艦戦闘配置を発令してくれ。だが、武器システムは、まだ起動してはならない。総員の持ち場への配置だけをすすめてくれ」

 艦橋の窓の外を凝視していた土門も、我に返って返事をした。

「りょ、了解です」

 土門は、艦内通信のマイクを掴むと命令を発した。

「全艦、戦闘配置! 但し、武器システムの起動は厳禁だ。繰り返す、全艦戦闘配置……」

「艦長!」

 新米が、大きな声で報告した。

「方舟、動き出しました!」

 北野がスクリーンを見上げると、ゆっくりとシャンブロウが動いていた。その先端と思われる部分を、天の川銀河方向へ向けるように、回頭し始めているようだ。

「徳川、波動エンジンの全力運転の用意」

「はい。既に準備は完了しています」

 北野は、徳川太助に向かって真顔で頷いた。

 そして、ヤマトの乗組員が見つめる中、シャンブロウは徐々に移動を再開した。

 太田が、その航路を確認して発言した。

「艦長、方舟の移動先ですが、この方向は、銀河系のゲートです。ゲートを抜け、銀河系中央部を目指している可能性があります」

「わかった。あれがゲートに入るなら、そのまま追って行くぞ」

「わかりました!」

 北野は、続けて指示を出した。

「市川、ギャラクシーに連絡。方舟を発見し、これを追って銀河系ゲートに戻る。民間船行方不明事件との関連の疑いあり。頼む」

「わかりました!」

 市川は、自席の通信端末を操作し、ギャラクシーに連絡を取った。亜空間通信リレーが接続するのに少し間があったが、無事に先方に繋がった。

「こちら、ヤマト。応答願います」

「こちら、ギャラクシー、相原です。市川さんだね。民間船は見つかったかい?」

「相原さん、大変です! 方舟を発見しました!」

「な、何だって?」

「民間船は全然、見つからなくて。そんな時に方舟を発見したんです。今、関係があるかも知れないと追って来ましたが、銀河系のゲートの方へ向かいそうです。ヤマトは、このまま追跡して、そちらに戻るかも知れません。そちらでも警戒をお願いします」

「わかった。古代司令にすぐに伝えるよ。市川さんも気をつけて」

「はい! ありがとうございます!」

 

 ヤマトとの通信が切れた後、司令室で勤務していた相原は、市川純がおさげの赤い髪を揺らして笑顔で答えている様子が目に浮かんで、自然と自分も微笑みがこぼれてしまっていた。相原は、ヤマトで長い付き合いの彼女に対して、同僚以上の感情を持っていた。相手も、自分をそう思っているのではと思っていたが、上司と部下という関係性が、もう一歩先に進めるのを躊躇させていた。

 しかし、先日初めて出会った藤堂早紀に対しては、一目惚れとも言える感情を抱いてしまい、相原はここ数日、彼女のことばかり考えていた。その彼女は、すぐ後ろで、古代や真田らと談笑している。

 頭を振って、邪念を払った相原は、すぐに古代に報告した。

「古代司令。ヤマトから入電」

 相原の報告を聞いた古代は、しばらく絶句していた。

「相原、了解した。ヤマトがゲートに入ると連絡がつかなくなるな。今、簡易指揮所に林はいるな? ヤマトの現在座標から、こちらまでの到達予想時間を計算し、報告するように伝えてくれ」

「わかりました」

 古代は、ちょうど司令室に来ていた真田と新見薫、そして藤堂早紀にそのことを報告した。

「方舟が……? なるほど、興味深い」

「先生。私は、二度と、遭遇することは無いと思っていました」

「方舟……って何ですか?」

 早紀は、話についていけず、そんな疑問を口にした。

 それには、そこにいたタランも、同様だった。

「私も知らないな。方舟とは何だね?」

 タランは、デスラーのガミラス臣民の虐殺未遂事件の際に、共にガミラス星を離れて、その後に起きた事件のことを知らなかったのである。

 古代は、二人に簡単に説明をした。

「ガトランティスが探していた静謐の星、というのはご存知ですか?」

 タランは、頷いた。

「それなら、知っているよ」

 早紀の方は、それも知らないようで、まだ困惑した表情をしている。古代は、静謐の星についても、簡単に説明した。

「ガトランティスは、伝説の謎の星、静謐の星というのを探していました。彼らは、この宇宙で高度なテクノロジーを求めて旅していたので、そこに何か大事な物があると推測していたようです。結果的に、ヤマトは、イスカンダルへの旅の帰路で、その静謐の星を、ガミラス、ガトランティスと共に発見しました。その正体は、古代アケーリアス文明が遺した巨大な宇宙船でした。この宇宙船が、通称、方舟と呼ばれています。宇宙船の内部には、惑星シャンブロウと呼ばれる惑星を有しています。どれ程、巨大な宇宙船かは、ご想像下さい。今は、惑星シャンブロウを聖地としていたジレル人という種族の生存者が方舟を使っています。ジレル人とガミラス人と私たち地球人は、皆、アケーリアス文明が種を広めた同族である、というのがその時に明かされました。ジレル人たちは、方舟で、何処か宇宙の彼方へと旅立って行ったので、我々も、もう二度と会うことは無い、と考えていました」

 タランは、興味深そうに聞いていた。

「それは、知らなかった。私がガミラスを離れている間にそんなことがあったのだね。ぜひ、詳しいことを知りたいものだね」

 真田は、タランに言った。

「もちろんです。よろしければ、私から、後で詳しく説明しましょう」

「君が説明してくれるなら、助かるよ」

 早紀は、ようやく理解したようだった。

「古代アケーリアス文明が宇宙のあちらこちらに遺した種によって、銀河系やマゼラン銀河に住む人々の多くが、実はヒューマノイド型の同族である、という話は聞いたことがあります。遠い昔に、その方舟を使って、種を撒いたということでしょうか?」

 古代は頷いた。

「恐らくは。少なくとも、ジレル人たちは、そう考えています」

 早紀は、真田の方を向いて言った。

「真田さん!」

 真田は、早紀が考えていることをすぐに察知して言った。

「そうだね。我々科学技術省としては、この上ない調査の機会だ。我々も出港出来るように準備しておこう」

 早紀は、嬉しそうに頷いた。

「はい!」

 古代は、念の為、釘を刺した。

「藤堂さん。我々、防衛軍が安全だと判断するまでは、近づいてもらっては困ります」

「駄目なんですか?」

 そこへ新見が割り込んだ。

「駄目ではないけど、ただでさえ、民間船が行方不明になっていて、防衛軍としては、二次被害を出す訳にはいきませんからね。ここは、古代司令の言うことは、ちゃんと聞かないと、ね」

 早紀は、未知の古代異星文明の宇宙船を調べてみたくて胸を躍らせていたが、少し出鼻を挫かれる形となった。

「申し訳ありません。安全だと判断するまで、しばらくお待ち下さい」

 古代は、少しがっかりとしている早紀に、優しく声をかけた。

 早紀は、気を取り直して古代の方に顔を向けた。

「はい。それまで、ムサシの発進準備をして、待機させて頂きます」

 

 銀河系外縁部――。

 

 宇宙船シャンブロウは、その巨大な船体を、銀河系の亜空間ゲートへと滑り込ませて行った。ヤマトも、そのすぐ後ろから、それを追っていく。

「太田。ゲート進入」

「了解。ゲート進入します」

 ヤマトもまた、完全にゲートに入ったシャンブロウを追って、ゲートに飛び込んで行った。

 

「艦長、先行した艦より報告。発見したようです!」

 ガトランティスの旗艦のメダルーサ級がワープアウトすると、すぐに報告があった。

「静謐の星か!?」

 艦長のガレンは、通信士に確認した。

「はい。天の川銀河外縁にて発見したとのことです」

「やっと見つけたか。これで、ダガーム家の汚名を払拭出来ると言う物だ」

 ガレンは、感慨深くその報告を聞いた。彼は、かつてヤマトと交戦して、戦死したゴラン・ダガームとの血縁関係にあった。早る気持ちを抑えて彼は言った。

「静謐の星の現在位置を言え!」

「銀河系外縁から移動して、亜空間ゲートに入ったようです」

 ガレン艦長は、意外に思っていた。

「銀河系の中にゲートが? おかしい。あれは、銀河間空間にしか存在しないものと思っていたが」

 ガレンの艦の科学士官がそれについて、意見を言った。

「今の所、天の川銀河とマゼラン銀河間のゲート以外では、小マゼラン銀河と大マゼラン銀河間のゲートを確認しています。見たことはありませんが、我々の祖先は、アンドロメダ銀河から、マゼラン銀河に渡った際に、やはりゲートを使ったと言われています。この一帯の差し渡し一千万光年の範囲の局所銀河群では、亜空間ゲートのネットワークが構築されていると言いますが、全貌は掴めていません」

 ガレンは、スクリーンに表示されたゲートの分布状況を示す三次元図を眺めた。

「古代アケーリアス文明は、この局所銀河群で、ヒューマノイドの種を散布したと言われています。このゲートのネットワークも含め、何か大きな目的があったことが推測されますが、はっきりした事はわかっていません」

 ガレンは、にやりと笑って言った。

「それはどうでも良い。我々は、そのアケーリアスの遺したお宝を奪取するのみだ。天の川銀河の亜空間ゲートへ進軍せよ!」

 ガトランティス艦隊は、ガレンの号令と共に、全艦が天の川銀河系内に侵攻を始めた。

 

 後方から、ガミラス艦隊の小隊、駆逐艦三隻もワープアウトしていた。

「ガトランティス艦隊、天の川銀河系に向かっています」

 ヤリム少佐は、レーダーでガトランティス艦隊の動きを確認した。

「奴ら、我々には気づいているのか?」

「恐らく、レーダーでは探知されていると思います。それを無視する理由が、彼らにはあるのではないでしょうか」

 ヤリム少佐は、通信士に確認した。

「ヤマトには連絡がついたか?」

「ヤマトとは連絡がついていません。代わりに、ギャラクシーに連絡がとれました」

「スクリーンに出してくれ」

 亜空間通信リレーが接続して、スクリーンに、古代の姿が映った。

「こちらは、ガミラス艦隊のヤリム少佐です」

 古代は、敬礼して言った。

「こちらは、地球連邦防衛軍、宇宙基地ギャラクシー司令の古代です。民間船は見つかりましたか?」

 ヤリム少佐は首を振った。

「見つかっておりません。それよりも、我々は、民間船捜索中に、ガトランティス艦隊に遭遇しました」

 古代は、驚愕した表情をしていた。

「ガトランティスですって!?」

 ヤリム少佐は頷いた。

「ガトランティスの目的はわかりませんが、二十隻程の艦隊で、天の川銀河へと向かっています。我々は、数時間前に交戦することになり、火焔直撃砲によって駆逐艦一隻が大破し、死傷者が数名出ています。我々も奇襲攻撃を仕掛けましたが、ガトランティス側の損害は軽微です」

 古代は、開いた口が塞がらない状態だったが、すぐに気を引き締めた。

「わかりました。ご連絡ありがとうございます。こちらも、警戒態勢をとります。こちらでは、先程宇宙船シャンブロウを発見したと、ヤマトから報告がありました。シャンブロウは、銀河系のゲートに進入したようです。恐らく、ガトランティスの目的は、シャンブロウだと思います。現在、ヤマトもこれを追って、ゲートに入っています」

 今度は、ヤリム少佐の方が驚いていた。

「なるほど。奴らの狙いは、静謐の星、ということですね? これは見過ごせませんね。我々も、これからゲートに入ります」

「わかりました。くれぐれも、お気をつけて」

「ありがとう。そちらも」

 通信が切れた。

「よし! 全艦、これより、我々はガトランティス艦隊を追って銀河系ゲートに進入する! 全艦、戦闘配置!」

 ガミラスの駆逐艦艦隊三隻は、銀河系ゲート方面へ速度を上げた。

 

 ヤリム少佐との通信が終わった古代は、そばにいたタランに言った。

「タラン司令、今の通信聞きましたか? そちらのガミラス艦隊でも、警戒態勢に入ることをおすすめします」

 タランは、訝しげな顔で、疑問を口にした。

「彼らは、故郷のアンドロメダ銀河に帰ったはずなのに、どういうことだろうね?」

 古代も、それには困惑していた。

「もしかしたら、テレサの精神攻撃が及ばなかった者たちがいたのでしょうか?」

 タランは、首を傾げた。

「その可能性はあるな。しかし、情報があまりに少ない。あまり気が進まないが、私も、本星のバレル大統領に、ガトランティス戦争後の彼らの情報を確認してみよう」

 古代は、頷いた。

「助かります」

 古代は、続いて相原に命じた。

「相原、島に、このことを連絡してくれ。イセと、無人艦隊全艦を銀河系ゲートの出入口付近に向かわせるように指示してくれ」

 通信席にいた相原は、古代の方を向いて「わかりました」と返事をした。

「こちら、ギャラクシー司令室の相原です。待機中のイセの島艦長に連絡……」

 

「相原、了解した。これより、イセは発進して銀河系ゲートに向かう」

 島は、イセの艦内の艦長室にいた。艦内通信のマイクを掴むと、艦橋にいる戦術長に連絡した。

「金田、ガトランティス侵攻の恐れがある。無人艦隊と共に、緊急発進で、銀河系ゲートに向かう。艦内に伝達して、準備を始めてくれ。あと、加藤が艦内にいなければ、すぐに呼び戻してくれ」

「わかりました! 発進準備を進めます」

 通信を切った島は、立ち上がって艦長服に袖を通した。

「ガトランティスとは、冗談じゃない。奴らが、あの火焔直撃砲を使ったら、この基地はひとたまりもない」

 島は、大急ぎで、艦長室から出ていった。

 

 その時、加藤は非番で家族と基地内で買い物に出かけていた。携帯端末に連絡を受けた加藤は、悪態をついて横にいる真琴と翼を驚かせた。

「サブちゃん、どうかしたの?」

 加藤は、言いにくそうに頭をかいていた。

「真琴、すまない。緊急事態らしい。仕事に行ってくるよ」

 真琴は、一瞬困惑した表情をしていたが、すぐに笑顔で言った。

「わかった。気をつけてね」

 真琴と手を繋いでいた翼が、不安そうな表情で言った。

「パパ、何処か行っちゃうの?」

 加藤は、困ったなぁという表情をして、翼の目線まで腰を落とした。そして、翼の両肩を掴むと、力強く言った。

「皆に、危険が迫っているらしい。父ちゃんな、皆を守るために行かなきゃならない。だから、お前に頼みがある」

「僕に頼み?」

 加藤は、大きく頷いた。

「俺がいない間、お前がママを守ってくれ。頼めるか?」

 翼は、駄々をこねようとしていたが、それを聞いて、真剣な顔になった。

「わかった。僕に任せて」

 加藤は、嬉しそうに翼の頭を撫でた。

「それでこそ、父ちゃんの子だ」

 加藤が顔を上げると、真琴が目を潤ませていた。翼の言葉に感動しているようだった。

「つ、翼ちゃん。ママを守ってね」

「大丈夫、僕がついてるもん」

 加藤と真琴は見つめ合って、互いに頷き合った。

「じゃぁ、行ってくる!」

 走り去ろうとする加藤に、真琴と翼は大きな声で言った。

「パパ、頑張ってね!」

 

 その後、三十分後には、イセはギャラクシー脇の宇宙港から緊急発進して飛び立って行った。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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