銀河系亜空間ゲート内――。
ヤマトは、銀河系ゲートに進入し、シャンブロウを追跡していたが、ゲート進入早々に、見失っていた。
「シャンブロウは、どうした?」
北野は、西条未来と新米に尋ねた。
「艦長、レーダーの反応は不安定です。シャンブロウの姿を捉えられません」
「センサーの反応も不安定です。一部の機能で外部の様子を探っていますが、シャンブロウは見失いました。再び、何らかの技術で不可視状態になったものと思われます」
北野は、苦渋の表情で、前方を見つめた。
「わかった。引き続き、警戒を怠るな」
ゲート内部では、大したことは出来ない。本格的な捜索は、ここを出てからだな、と北野は半ば諦めていた。
ゲートの通過には、数時間を要す為、総員戦闘配置のまま、緊迫した時間が流れて行く。それでも、シャンブロウの姿を発見することは出来なかった。
その時、新米が何かを発見して、北野に報告してきた。
「艦長。前方にゲート内の亜空間とも異なる時空の歪みがあります。これは……次元断層と思われます。空間に亀裂があります」
北野は、太田に向かって言った。
「太田、新米と連携して、その亀裂付近に艦を近づけてくれ。次元断層に引き込まれる恐れがあるので、距離に気をつけてくれよ」
「了解。とーりかーじ」
ヤマトは、若干左舷方向へ艦首を向けて、真っ直ぐに進んで行った。
しばらくすると、太田が艦に制動をかけた。
「これ以上は、次元断層に引き込まれる恐れがありますので、艦を一時停船させます」
西条は、レーダーに捉えたものに驚いていた。
「艦長、空間の裂け目の内部に、民間船を発見しました!」
北野も、驚いて西条の席のレーダーの表示を眺めた。確かに、次元断層の方向に、船影を示す光点が映っていた。
「ここで次元断層に捕らわれていたから、探しても見つからなかったということか? なら、シャンブロウは、俺たちをここに連れて来てくれたのか?」
北野は、考察を口にしたが、本当のことはすぐにはわからない。彼は、シャンブロウのことは一旦横に置き、まずはどうやって救助するかに注力しようとした。
その時、市川純が報告してきた。
「民間船が通信で呼びかけてきました」
「何? 繋いでくれ!」
民間船からは、映像は出ず、音声のみの通信が繋がった。通信状態が悪く、酷い雑音混じりだった。
「こちら、地球―ガミラス連絡船コロンビア。船長のハロルドです。次元の裂け目に捕らえられて航行不能に陥っています。船がこれ以上沈降しないようにエンジンを全開にして脱出を試みています。しかし、先程から裂け目が徐々に大きくなって、重力も大きくなってきています。これ以上は、持ちそうもありません。すぐに救助をお願いします」
北野は、努めて冷静な声で回答した。
「こちらは、地球連邦防衛軍、宇宙戦艦ヤマトです。これより、救助活動を開始しますので、諦めずに頑張って下さい」
「ヤマト? それは、心強い! お願いします。こちらはもう、限界だと思います」
通信を切った北野は、対策に動こうとした。しかし、西条が、振り返って北野の顔を見た。彼女の顔は、恐れの表情だった。北野は、その表情を見て、彼女が何を言いたいのかすぐにわかった。
……これは、あのシミュレーションと状況が酷似している――。
だが、そんなことを気にしている場合では無かった。民間船をここで発見したのなら、ヤマトの任務は、これを無事に救助することだ。
「シンマイ、民間船を脱出させるのに、ヤマトが取れるオプションを教えてくれ」
新米は、しばし考えていたが、あまりいい案は無いようだった。
「ヤマトの装備では、ロケットアンカーを使うのがベストだと思います。ガミラス艦に装備されているような牽引ビームがあればいいのですが」
北野は、市川純に言った。
「ギャラクシーに連絡は取れるか?」
「先程から、試していますが、上手く繋がりません。ゲート内は、あらゆるヤマトの機能が不安定になるので、そのせいかと思います」
こうなると、ギャラクシーにいる、イセやガミラス艦隊に応援を求めるのは難しいかも知れない。北野は、腹を括った。
「よし。ロケットアンカーを使う。太田、狙いが着き次第、ロケットアンカーを射出してくれ」
「了解、艦長。ロケットアンカー射出準備をします」
その時、西条未来が、レーダーで発見したものを見て叫んだ。
「艦長……。後方から、艦隊が接近中」
「もしや、バラン星のガミラス艦隊がここまで来てくれたのか?」
西条は、注意深くレーダー端末を操作して、艦のデータベースで確認した。
「艦種識別……。艦長、大変です! これはガトランティス艦隊です!」
「何だって!?」
「駆逐艦、巡洋艦、空母からなる二十隻の艦隊です。一隻、火焔直撃砲搭載艦がいます!」
何故、こんな所にガトランティスが?
北野は、そんな疑問を考えている余地が無いのをすぐに悟った。
「ガトランティス艦隊は、武器システムを起動しています!」
新米の報告を受けて、北野は矢継ぎ早に指示を出した。
「土門、こちらも、艦の武器システム起動! シンマイ、波動防壁をいつでも展開出来るようにしておいてくれ!」
「了解!」
北野は、はたと気がついて言った。
「そういえば、亜空間ゲート内では、ビーム兵器がまともに機能しなかったな?」
土門は、艦長席を振り向いて言った。
「大丈夫です。防衛大で勉強しました。主砲、副砲、三式弾に切り替え済みです。それから、ミサイルも有効だと思います」
北野は、土門が優秀なので安心した。
「わかった。そのまま迎撃体制で待機しろ。シンマイの方はどうか?」
新米は、波動防壁の準備で第三艦橋と連絡中だった。
「間もなく、準備完了します。しかし、亜空間では、動作が不安定になると予想されます」
「それでも無いよりはいい。準備出来次第、展開してくれ」
「わかりました」
北野は、太田の状況を確認した。
「ロケットアンカーはまだか?」
「準備出来ました。射出します!」
「任せる!」
太田は、操舵席の端末を操作し、ロケットアンカーの発射操作を行った。
「射出!」
ヤマトの艦首両舷のロケットアンカーが、大きく向きを変え、同時に前方に発射された。
「ロケットアンカー、民間船の舷側を目指して飛行中。命中まで、五、四、三、二、一……! 命中!」
太田は、にこやかに振り向いて言った。
「錨を巻き上げて、民間船を牽引します!」
「よし、そのまま続けてくれ。西条さん、ガトランティスはどうした?」
「ガトランティスは、停船しています。こちらの様子を窺っているように思われます」
北野は、この好機に、民間船を一気にヤマトの影まで移動させられることを祈った。
「新米!」
「はい、たった今、波動防壁展開しました! しかし、やはり不安定です。艦全体を覆うことが出来ません」
「構わない。ガトランティスのいる方に集中的に展開しろ」
メダルーサ級の艦橋では、艦長のガレンが、ヤマトの動きを睨んでいた。
「あれは、ヤマッテで間違いないな。何をしているか、推測出来るか?」
レーダー手が、ヤマトの様子を窺っていたが、彼は首を振った。
「この距離では、確認出来ません。ヤマッテの近くの空間に次元断層があるのは科学士官が確認済みです」
その科学士官は、自身の席の端末で懸命に状況を確認していた。
「次元断層に、静謐の星が隠れているとも考えられます。しかし、ここからでは観測出来ません。もっと近づいて下さい」
ガレンは、以前、ゴラン・ダガームを倒したヤマトの実力を警戒していた。しかし、このまま、ここに留まっていても、何も始まらない。それに、たった一隻の戦艦に怯えているなどと部下に思われる前に、行動に移さねばならなかった。
ガレンは、決断した。
「接近して、前方の戦艦を撃沈しろ!」
艦内は、一気に活気づいた。
「主砲発射用意!」
他の艦も一斉に攻撃態勢に入った。前衛を務めるガトランティスのククルカン級駆逐艦は、回転砲塔がヤマトに狙いをつけている。
ガレンは、全艦隊に号令を発した。
「前衛の駆逐艦、攻撃開始!」
前衛の十隻の駆逐艦は、一斉にヤマトに突進して、回転砲塔から砲撃を開始しようとした。
しかし、発射した陽電子砲の光線は、発射したそばから消えてゆく。そして、発射を繰り返した砲塔は、終いには、逆に砲塔が爆発してしまう。
「どうした!? 何が起こっている!」
ガレン艦長は、次々に火を吹く駆逐艦の様子を見て、叫んだ。
「どうも、攻撃しようとしても、ビームが発射した瞬間に消えてしまうようです。爆発しているのは、砲塔内でエネルギーが逆流しているからではないかと推測します」
「馬鹿な……!?」
ガレンは、まだ何が起こっているのかわかっていなかった。この亜空間ゲート内部で、このような事象が発生することを、彼らは知らなかったのだ。
「敵艦隊、攻撃を開始しましたが、ビーム兵器が機能せず、砲塔が爆発を起こしています!」
西条未来の報告を聞いて、北野は考えた。
敵は、既にヤマトへの攻撃を開始した。これで、大義名分は、地球連邦側にある。しかも、彼らは、ゲート内部でビーム兵器が使用出来ないことを知らないようだ。
北野は、あのシミュレーションでの失敗が頭をよぎった。あの時、敵艦隊の攻撃をしなかったことが、敗北の原因だと、あれからずっと考えていたのだ。北野は、この隙を逃すべきでは無いと判断した。
「土門、艦防衛の迎撃体制から通常の戦闘体制に移れ。新型の一式弾を使う。三式弾からの入れ替え急げ!」
土門は、嬉しそうに返事をした。
「わかりました! 各砲塔、砲弾を一式弾に切り替え急げ!」
ヤマトは、ロケットアンカーを民間船に接続したまま、少し敵艦隊に対して並行するように左舷方向へ回頭した。そして、主砲、副砲が一斉にガトランティス艦隊の方を向いた。
新型の一式弾は、従来よりも貫通性能と弾頭の炸薬を増した強力な砲弾である。銀河系ゲート付近にヤマトを配置するのに辺り、ゲート内で戦闘が発生した場合に備えて開発されたものである。
土門は、各砲塔の照準を合わせ、自動追尾を設定した。
「目標、前衛の駆逐艦。自動追尾設定完了! 主砲、副砲発射準備完了!」
北野は、こうしている間にも、ガトランティスの駆逐艦が急速接近する様子をスクリーンで確認した。
「土門、十分に引き付けろ!」
「はい!」
土門は、砲の発射指示装置を手に握って、ガトランティスの駆逐艦が視認出来る程接近するのを待った。
北野は、遂に号令を発した。
「撃ち方始め!」
「撃ちー方始め! 主砲、副砲、連続砲撃開始!」
土門は、手に握り締めた発射指示装置のトリガーを引いた。
その瞬間、ヤマトの主砲、副砲が次々に火を吹いた。
一斉に計九発の一式弾の砲弾が、亜空間を飛んだ。
高速に撃ち出された砲弾は、一斉にガトランティスの駆逐艦に命中し、艦体に突き刺さった。そして間髪入れずに砲弾が爆発した。
ヤマトが、一式弾を連続斉射していた為、駆逐艦は次々に被弾し、大破した艦が火花を散らして、次々に航行不能になっていった。
一瞬の間に、ヤマトに突進した十隻の駆逐艦らは、全て亜空間を漂って沈黙していた。
「やりました! 敵艦隊の半数が大破して航行不能です!」
土門は、嬉々として報告している。
北野は、残った艦隊に、強力な艦が残っていることを警戒した。
「まだだ! 奴らにこの空間での戦い方を悟られるかも知れない。次弾装填して後衛の艦隊に狙いをつけろ!」
「了解です!」
メダルーサ級の艦橋でその様子を眺めていた艦長ガレンは、驚きのあまり、開いた口が塞がらなかった。
「何だ! 一体、何が起こっている!?」
科学士官が、ヤマトの動きを観察しながら発言した。
「艦長、ヤマッテは、どうやら実体弾を使用しているようです。原始的な砲弾による攻撃です」
「そ、そんなもので、我らと戦っているというのか!?」
科学士官は、思案してから言った。
「ヤマッテは、この亜空間でビーム兵器が役に立たないことを知っていたと推測されます。その為の装備ではないでしょうか」
ガレンは、憎々しげに吐き捨てた。
「野蛮人め! ならば、この艦の主砲も、火焔直撃砲も使えんというのか? 対抗方法を今すぐに出せ!」
「実体弾が有効ということなら、ラスコー級巡洋艦のミサイルで対抗可能だと思います。また、艦載機によるミサイル攻撃も有効かと」
ガレンは、大きく頷いた。
「それだ! 巡洋艦五隻を、ヤマッテにむけて突撃させろ! 空母からも、艦載機を至急発艦させろ!」
「艦長! 後方から、ガミラス駆逐艦三隻が接近!」
ガレンは、レーダー手の方を睨みつけた。
「奴ら、まだ追って来るのか。だが、たかが駆逐艦三隻。こちらを攻撃する素振りを見せたら、ミサイルで対抗しろ!」
後方からやって来たガミラス駆逐艦艦隊三隻は、速度を上げて、ガトランティス艦隊を右舷方向へ迂回しながら航行していた。
「艦長、前方でガトランティスとヤマトが交戦中のようです!」
「方舟は?」
「位置が掴めません。ヤマトのすぐ近くに、次元断層が存在しています。もしかしたら、そこに何かあるのかも知れません」
「ヤマトに連絡は取れるか?」
「呼びかけています。繋がりました! スクリーンに出します!」
スクリーンに、北野の姿が映った。
「我々は、バラン星守備艦隊から派遣された民間船捜索隊のヤリム少佐だ。そちらの状況は?」
スクリーンに映る北野の苦渋の表情は、苦戦しているのを窺わせていた。
「こちら、ヤマト艦長の北野です。民間船を、目の前の次元断層の入口で発見し、現在救助活動中。その最中に、突如現れたガトランティス艦隊と交戦中です。宇宙船シャンブロウは、現在行方不明。ご覧の通り、可能なら、共同でガトランティスに対抗してもらいたい」
状況を理解したヤリム少佐は、スクリーンに映るガトランティス空母から、多数の艦載機が飛び立つのを睨みながら、この場でどう動くか思案した。数の上でも、戦力差からも、とても太刀打ち出来ない相手だが、強力な戦艦であるヤマトの存在は大きい。
「北野艦長、要請を受け入れる。これより、こちらの艦隊をヤマト周辺に配置し、共同作戦を展開しよう」
「助かります。こちらは、民間船の救助活動中で、思うように動けません」
ヤリム少佐は、頷いて通信を切った。
「全艦、ヤマトに接近し、共同でガトランティスを叩く。行くぞ!」
ガトランティスの巡洋艦五隻は、急速にヤマトを取り囲むように接近していた。そして、次々にミサイルをヤマトに向けて放った。
「ガトランティス巡洋艦五隻、ミサイルを発射しました。三十基のミサイルが飛来して来ます!」
西条の報告を聞いた北野は、土門に叫んだ。
「土門!」
「了解! ミサイルで迎撃します!」
土門の指示で、ヤマトの舷側のミサイル発射口から、ミサイルが連続発射された。
ミサイルが飛び交い、ミサイル同士が命中して、亜空間内に激しく光が交錯した。
「撃ち漏らしたミサイル、ヤマトに命中します!」
「くそ! パルスレーザー砲が使えないので、これ以上迎撃出来ません!」
北野は、艦内通信のマイクを掴んだ。
「総員、衝撃に備えろ!」
飛来したミサイルは、一部は、波動防壁で爆発四散したが、残りは波動防壁が薄い箇所を通過して、ヤマトに次々に命中した。ヤマトの艦内は、ミサイルの爆発により、激しく揺れた。
「被弾!」
北野は、艦長席のパネルにしがみつきながら叫んだ。
「状況報告!」
新米が、艦内に鳴り響く警告音に負けじと、大きな声で報告した。
「第七デッキから第八デッキまで被弾、艦載機発着口、被弾!」
それを聞いた土門は、急いで航空隊に連絡した。
「篠原さん! そちら無事ですか!?」
少し沈黙の後、篠原が回答した。
「こっちは、大丈夫。軽傷者が数名いるぐらい。下からの発艦はこりゃあ無理そうだ。一応、上のカタパルトに隊員を俺ともう一名の二名配置しておく。他は、待機所へ避難させておくよ」
「わかりました」
土門は、同期の揚羽もどうやら無事だったようなので安堵したが、ガトランティスの巡洋艦の攻撃が止まず、ヤマトの艦内は揺れ続けた。土門は、懸命に攻撃指示を続けた。
「主砲、副砲、巡洋艦への攻撃開始!」
しかし、ヤマトの砲弾による攻撃に気がついたガトランティス側も、懸命に迎撃を行い、囲まれたヤマトとの間で、激しい砲雷撃戦が展開された。
そこに、ようやくガミラスの駆逐艦三隻が到着し、下からミサイルでガトランティスの巡洋艦を攻撃した。ミサイルは、ガトランティスの巡洋艦の艦底部に次々に命中し、彼らに甚大な被害を与えていた。
しかし、ガトランティス巡洋艦も、ガミラス艦への反撃を行い、辺り一帯は、乱戦の様相を示していた。
その時、ガトランティス空母から発艦した艦載機も飛来していた。
激しく揺れる艦内で、西条が敵航空機隊が接近するのに気がついた。
「敵、空母から発艦した艦載機多数、少なくとも三十機が飛来して来ます!」
土門が悲痛な声を上げる。
「艦長、これ以上は、持ちこたえられません!」
「波動防壁が不安定です。もう、それ程長くは保ちません」
北野は、艦長席の椅子の肘当てを強く握りしめて歯ぎしりした。
少なくとも、民間船を今すぐ放棄すれば、自由に動けるようになり、まだ打てる手もあるだろう。しかし、次元断層の重力が大きく、ロケットアンカーの巻き戻しにも時間がかかっている。ガミラス艦隊も苦戦していて、艦載機の攻撃を受ければ、ひとたまりもないだろう。
このままでは、全艦撃沈される――。
北野は、皆を救う手立てが何かないかと必死に考えた。
待てよ……。
北野は、一つのアイデアを閃いた。
「シンマイ、一旦、次元断層へ進入した場合、脱出は可能か?」
新米は、突然の北野の案に驚いていたが、すぐに検討を始めた。
「それは、考えていなかったですね。少しお待ち下さい……」
その間にも、艦外ではミサイルがぶつかり合う光が交錯し、艦の揺れが続いた。
新米は、振り返って言った。
「ヤマトの記録で、次元断層に入った時のデータがありました。次元断層内の異次元空間で、波動エネルギーの流出が起こり、ヤマトは航行不能になりそうになったことがあります」
北野は頷いた。
「それだ。その時、ヤマトの波動砲で、異次元の壁を破って脱出した」
「ヤマトは、波動エネルギーを完全に失い、ガミラス艦に牽引してもらって脱出したようです。私が、乗艦する前の出来事ですね。しかし、次元断層の内部がその時と同じ特性を持っているか、データが少なく、判断が出来ません」
新米は、自信が無さそうな顔をしている。
「だが、このままでは、俺たちは共倒れだ。助かる可能性に俺は賭けたい」
新米は、真剣な表情で、北野と見つめ合った。
「わかりました。私は、データを集めて、検討を進めておきます。すぐにやって下さい」
北野は、大きく頷いた。
「市川さん、ガミラス艦隊に連絡。我々は、一旦次元断層の内部へ逃げ込む。必ず脱出する方法を見つけるので、一緒に同行して欲しいと伝えてくれ」
「わ、わかりました!」
そして、北野は艦内通信のマイクを掴んだ。
「総員、これよりヤマトは、次元断層内部へと退避する。進入して内部を少し進んだ後、波動エンジンを停止する可能性がある。準備しておけ。以上だ」
北野は太田に言った。
「太田、次元断層への進入コースを設定してくれ。合図したら、発進する」
太田は、引きつった笑いをしながら返事をした。
「了解、艦長!」
「土門、進入中が、一番危険な状態になる。内部でも、ガトランティスが追ってきた場合に備えてくれ」
「わかりました!」
「市川さん、ガミラス艦隊はどうか?」
「はい。たった今、了承を頂きました!」
「よし! 行くぞ、皆! ヤマト発進!」
「了解。ヤマト、発進します!」
ヤマトは、波動エンジンを全開にして、その場を離れ始めた。そして、艦首を次元断層の開口部に向けて、真っ直ぐに進み始めた。少し遅れてガミラス艦隊も、速度を上げて、ヤマトに並走した。
その背後から、ガトランティスが放ったミサイルが次々に飛来し、ヤマトとガミラス艦隊は、必死に応戦していた。
ガトランティス空母の艦載機は、ヤマトらの追跡を続けるうちに、次元断層の重力に捕まり、バランスを崩して一緒に引き込まれて行った。
民間船コロンビアは、この事態に焦って通信を送って来たが、市川は、彼らを安心させようと懸命に説明をおこなっていた。
「一体、そちらはどうなっている!? このままでは、次元断層へ落ちてしまうぞ!」
「大丈夫です。我々も、一緒に行きます。必ず、助け出します!」
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。