『完結』(番外あり)ロクでなし魔術講師と帝国軍魔導騎士長エルレイ   作:エクソダス

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ここから追想日誌に入ります、文章が短くなりますがご了承ください。


追想日誌
友の義兄弟の記憶、蛇


……

エル………

…………リィエル……。

 

誰かの声が聞こえる…、誰か私を呼ぶ声が聞こえる。知っている声だ…。リィエルは眠たい目を擦りながら声の主を確認した。

 

「やっと起きた、もうすぐ試験なんだから頑張って」

 

声の主は赤い髪が特徴的で小柄で痩せていて、肩に風と書かれたバッジをつけている少年、わたしはどうやら試験勉強中に寝てしまったようだ。私は一度欠伸をしてから、彼の名前を呼んだ。

 

「ん、シュウ、ごめん」

 

わたしがそう言うと、シュウは怒ることもなく笑顔でポケットから取り出したいちごタルトを、私の机の前へ差し出した。

 

「これ食べて、もうちょっとがんばろ?」

 

「……ん」

 

わたしは差し出されたいちごタルトを無心でサクサクと食べ始める。そうしていると、隣から声が聞こえる。

 

「おいおい、あんまり甘やかすなよシュウ。リィエルのためにならんぞ?」

 

食べながら誰か確認すると、青い髪のキリッとした目…、そして片手に魔導書のような物を抱えている少年。わたしはその少年の名前を呼んだ。

 

「ロクサス……疲れた」

 

わたしがそういうと、ロクサスはため息交じりに手を上にあげた後……。ペチッ!と私のおでこの辺りを叩いた。

 

「痛い」

 

「お前これ以上点数悪かったら留年コースだぞ?」

 

わたしは叩かれたおでこをさすりながら、仕方なくペンを手に取った。

 

「兄様、乱暴すぎ」

 

「お前が甘すぎるだけだ」

 

わたしはこの義兄弟の二人をボーっと見ながら、もう一度欠伸をした。この二人は…ルミアやシスティーナに劣らないくらい、私の大切な人。

だから、もう一度二人と会いたい……。

 

 

 

 

 

─────────

 

「……ん」

 

エルレイが目を覚ますと、そこは見慣れた職員室だった。

どうやらうとうとして眠ってしまったらしい、エルレイは一度、ゆったりと背伸びをする。

 

「夢…か」

 

エルレイは眠ってしまった時に汚れてしまった、机の上を片付け始めた。今の時間はお昼ちょっと前くらいだろうか…。

 

「シュウ、ロクサス」

 

エルレイは、過去の自分の同級生の名前を口にした。

彼らは訳があり、今旅をしているので卒業してから会っていないが…。それでも、自分の大切な友達であることには変わらなかった。

 

「そういえば…このクラスには二人が…」

 

そう思っている矢先、突然職員室のドアが開き。

 

「し、失礼します!!!」

 

慌てた様子でテレサが入ってきた。エルレイは色っぽく息が上がっているテレサの背中をさすりながら、事情を聞く。

 

「どうしたの?何かあった?」

 

「エルレイ先生!!大変なんです!!…システィーナが……システィーナが──」

 

「落ち着いて、どこにいるか案内して」

 

 

★★★

 

テレサに案内された場所は保健室だった。ノックしてから中に入るとグレン、セリカ、ルミア、リィエル、セラの計五人がいた。そしてその五人は同じベッドを見ている、その先には──。

 

「──っ!システィーナ!!」

 

「あ…、レイちゃん」

 

システィーナが動かずに横たわっていた。

セラの悲しそうな声が聞こえず、エルレイはすぐにシスティーナの近くまで駆け寄った。

 

「そん…な…」

 

セリカは、白いベッドの上に糸が切れた人形のように横たわるシスティーナを、沈鬱と諦観に満ちた表情で見つめていた。

 

「もう…ダメなのか?」

 

「あぁ」

 

憔悴したグレンの問いに、セリカは感情の色が見えない頷きを返す。

 

「おい、冗談やめろよ。お前は大陸で五本の指に入る第七階梯の魔術師なんだろう?何とかしろよ…何とかしてくれよ…!」

 

「第七階梯が人間をやめた魔術師だと言っても…神じゃない、死んだ人間は…救えない」

 

「くそぉ……っ!畜生!!」

 

グレンが苦痛の声をあげる。しかしエルレイは何かが引っ掛かっていた。

 

(…なにか、おかしい)

 

エルレイはすぐさまシスティーナの脈を測る…。

 

正常。

 

心臓確認……。

 

 

正常。

 

最後に応答確認。

 

「大丈夫?」

 

「あ、エルレイ先生…。はい、頭痛くて、気持ち悪いですけど」

 

……反応〇。

症状は頭痛、吐き気。

 

ここでようやく、セラとルミアは苦笑いしていることに気が付いた。

 

「あはは…」

 

「エルレイねえね、グレン達なにやってるの?」

 

「レイちゃん…これはね?」

 

そんな完全理解したエルレイを他所に、グレンとセリカはまだ芝居を続けていた。

 

「奇跡には大小が必要だ、グレン…。お前に彼女を救うために己の命をささげる覚悟があるのか?」

 

「こいつには…俺と違って未来があるんだ……いいぜ。こいつの未来のために…持って行けよ!!俺の命!!!」

 

「御託いい…そろそろ何があったか、教えて」

 

グレンとセリカの芝居を完全に無視し、エルレイは冷たい目でグレンとセリカを見続けた。

 

 

────

 

「…なるほど」

 

「そういうことだ。いやー俺はなんっにも悪く無いんだけどな!勝手にこいつが壊しちゃって~」

 

まとめると、授業をしている時にクシナ蛇に噛まれたらしい。蛇嫌いなシスティーナに蛇でからかっていたら、蛇が脱走してしまい…今に至るらしい。それを聞いたエルレイは俯いたまま、しかし棘があるかのように呟く。

 

「みんな…とりあえず、私が看病する。出てって」

 

「は?いやいやそんなに強い毒じゃねえし」

 

「出てって」

 

「落ち着くのだエルレイよ。確かに死ぬ可能性はあるが滅多には……」

 

プチン。

 

グレンとセリカの言葉に…エルレイの何かが切れた。

 

「出 て け っ!!!!!」

 

「「「「「す、すいませんでしたあああああああああああああ」」」」」

 

そのエルレイの大声に全員ビビってしまい、システィーナとエルレイ以外は、保健室からものすごい速さ出てってしまった。

 

「はあ……システィーナ体温、測らせて」

 

「………ぁ」

 

「ご、ごめん、システィーナまで脅かすつもりは……」

 

エルレイはやりすぎたことに後悔しつつ体温計でシスティーナの体温を測る…すると。

 

「38.5か…」

 

熱はかなりあるようだ。

日ごろの疲れが毒で外に出てしまったのだろう。エルレイは体温計をしまい、ポケットからあるものを取り出す。

 

「エルレイ…先生…それは……?」

 

「ルラート草、これを煎じて飲めば…明日には良くなってる」

 

「あ、あはは…。エルレイ先生はすぐに対処法を教えてくれますね…」

 

「緊急時だからね。ちょっと待ってて」

 

エルレイは、ルラート葉を魔術で生成したやかんに入れ…作り始める、飲みやすいように色々、工夫をしながら。

 

「あの…先生……」

 

「なに?」

 

システィーナのか細い声にエルレイは反応し、ベッドまで近づき目線を合わせる。

 

「関係ない話になっちゃうんですけど…先生にとって…魔術って何ですか?」

 

「商売道具」

 

「あ……、えっと…」

 

軽い冗談のつもりだったが、いまいち受けなかったようだ…、システィーナは動揺した顔を見せる。一度エルレイは落ち着かせるため、システィーナの頭を撫でる。

 

「ごめん、冗談」

 

「あ……はい」

 

「ん……高次元の領域、でいいかな」

 

「……」

 

それを聞いて、あまりシスティーナはいい顔をしなかった。なぜならばもう彼女は、魔術の闇の部分を知っているからだ。

 

「例えば、火が魔術で使えるようになったから、炭とかを減らすことができて森林伐採が少なくなった。医療とかも手軽になったね」

 

「…はい」

 

「そんな感じで、人に役立つ魔術はいっぱい…見えないだけなの。でも…、色々なものを補える魔術が作られても、人間自体が高次元になったわけじゃない」

 

それを聞いたシスティーナは首を傾げた。何が言いたいのかわからないのだろう。

 

「雷の魔術があれば、電気の供給ができる。でも最初に習う魔術は?」

 

「ショックボルト……です」

 

正解したのでいちごタルトをあげようとしたが、体が弱っているのでやめておこう。

 

「ん、よくできました。最初に学ぶのは同類である人類を痛めつける魔術」

 

「…」

 

「魔術も使い方次第で、いいようにも悪いようにもなる、使い方を間違えれば……」

 

ビリっ!!!!

 

エルレイはショックボルトを撃ち、保健室によくある人体模型に命中させる。すると人体模型は粉々になってしまった。

 

「こうなる」

 

「はい…」

 

「だから、使い方を完全に間違わないようにするのが、私たち魔術師が高次元に行くための永遠の課題……。それが答えでいいかな?」

 

「…はい、とても勉強になりました」

 

そんな話をしているとピ───!!と湯が沸いた音がした。

すぐにやかんを手に取り、魔術で氷を作り軽く冷やしてからシスティーナに渡す。

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます、頂きます……んくっ…んっ……はぁ……。お、おいしい」

 

「作る前、ルラート草に味遮断魔術をつけておいたから」

 

「そんなのあるんですか?!」

 

「グレン言ってたよ。高度な自己暗示って」

 

エルレイはそのままシスティーナの手を握る。

 

「火、氷、鉄。今煎じた道具とかはすべて、魔術で生成したもの」

 

「エルレイ先生…」

 

「どう?捨てたものじゃないでしょ、魔術」

 

「……はいっ!!」

 

システィーナは大きく頷いた。

 

「さてと…」

 

システィーナが元気になったことを確認すると、エルレイは立ち上がった。

 

「あとは安静にしてれば大丈夫だよ」

 

「ありがとうございます…」

 

「ん、私することあるからもう行くね」

 

「はい、ありがとうございました」

 

システィーナはドアに向かうエルレイに対して、何度もお辞儀をした。

 

 

 

★★★

 

 

「エルザ」

 

「リィエル、急に呼び出して…何かあった?」

 

エルレイはエザリーを呼び出し、ほとんどだれも通らない道の陰にあるバーに来ていた。

 

「探してほしい人いる」

 

「探してほしい人?」

 

そういうとエルレイはエザリーに写真を渡した。そこには赤髪の少年と、本を持った青髪の少年が二人で写っていた。

 

「シュウ君とロクサス……さん?」

 

「なんでロクサスさんづけ?」

 

「だ、だってあの人怖いから」

 

確かに、ロクサスはいろいろ問題児でちょっと悪さしてたなとエルレイは思い出し、苦笑いをした。

 

「この二人は学院にいるんじゃないの?」

 

「なぜかいない」

 

エザリーは写真を眺め、カクテルを一口飲んだ。

 

「わかった、一応調べておくね」

 

「ありがと、エルザ」

 

エルレイが飲んでいたチューハイを飲み干し、会計をしようと立つと。

ぎゅっ……。

突然、エルレイの背中に柔らかい感触が当たった。振り向いてみると、少し赤くなっているエザリーが上目遣いで見つめていた。

 

「リィエル…無茶はしないでね……。せっかくまた会えたのに…死んじゃうなんてやだよ……」 

 

……完全に酔ってらっしゃるようで。

 

「大丈夫、絶対二人で元の場所に戻ろう」

 

エルレイはエザリーの頭を優しくなでた。

 

今まで鍵がかかったように思い出せなかった、自分知り合いの義兄弟。

そしてセラの生存、この食い違いが絶対に何かあるはずだと、考えを模索しながらエルレイはセラのもとへ帰っていった。

 

 

★★★

 

サクサクサクサク。

 

「…」

 

サクサクサクサク

 

「…」

 

 

エルレイは、誰もいない教室で黙々といちごタルトを頬張っていた。いちごタルトはおいしいが考え事をしていて、ほぼ無意識に食べている。

 

(あの義兄弟を見つけるには……どこにいけばいいの?シュウ、ロクサス、どこにいるの)

 

そんなことを考えていると、教室のドアからひょこっと誰かが顔を出した。

見てみるとそれはシスティーナだった。

 

「システィーナ、もう大丈夫?」

 

「はい、おかげさまで!」

 

かなり元気が良さそうだ。もう大丈夫だろう、とエルレイは安堵する。

 

「そういえば、保健室のほうが騒がしいんですけど…何かありました?」

 

「システィーナがベッドから出てるの確認したから」

 

「はい」

 

「ベッドに花束おいた」

 

「うわぁ……」

 

そういうとシスティーナは苦笑いをした。

そんなこと知ったことではないといった感じに、エルレイは顔を背けながら吐き捨てる。

 

「システィーナを危ない目に遭わせた。少しくらい悲しんでもらう」

 

「だからってそれはやりすぎでは?」

 

「そうかもね」

 

そんなことを話しながら、エルレイとシスティーナは笑いあった。本当に一日で元気になってよかったと心から思う。

 

「先生」

 

「…ん?」

 

「私、もっと魔術を極めたいです……。エルレイ先生みたいに正しい魔術師になりたいです!!」

 

その言葉を聞いて、エルレイは少し噴出した。システィーナが一番魔術の事について詳しいと思っていたから、自分にそういうことを言うのがとても新鮮なのだ。

 

「ちょ!!なんで笑うんですか?!?!」

 

「ごめん……ごめん」

 

怒ったように顔をそらすシスティーナに、エルレイはポケットからあるものを差し出す。

 

「病み上がりタルト」

 

そう、いちごタルトだ。

システィーナは、最初は子供扱いしないでください!みたいな顔で見てきたが、割とすぐに。

 

「いただきます」

 

食べてくれた。その行動が微笑ましくてまた笑った。そしてエルレイは、その場でゆったりと背伸びをし。

 

「そろそろ。ドッキリでどんな顔してるか…拝みに行こ」

 

「ふふふっ…。はい!」

 

二人は互いに手をつないで保健室まで向かった。

 

 

★★★

 

「お前は…っ!!これからだろうがっ!!こんな事でっ!こんな所でくたばってる場合じゃねえだろうが!!!」

 

「うぅ……あぁぁ……システィーナちゃ~~~んっ!」

 

「あ……あ…しすてぃ……あぁぁ」

 

「システィーナ………うぅぅっぅぅぅ…」

 

 

そこには昨日いたメンバーがほとんどいて、セリカがいないだけだった、そしてグレンの手には…。

 

 

「あれ…、ルラート草…」

 

エルレイはそうつぶやいた。

そう、グレンはあの後、ルラート草を探していたのだ。エルレイとシスティーナは苦笑いする…、そしてそそくさと、二人はグレンとセラのもとに歩み寄る。

 

「「あ…っ…」」

 

気付いてしまったリィエルとルミアには、シーっとエルレイが口でジェスチャーをする。

すると何事もなかったかのように黙ってくれた……そして。

 

「「わああああああああああああああああぁぁぁっっっ!!!!!!!!!!!」」

 

「「ぎゃああああああああああああああああああああああああ………お、おばけええええええええええええええええええぇぇ!!!!!!」」

 

二人とも期待道理の反応すぎてシスティーナとエルレイは後にツボに入って笑いまくった。




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エルレイ「やっと、帰る手がかり、掴めそう」
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