『完結』(番外あり)ロクでなし魔術講師と帝国軍魔導騎士長エルレイ   作:エクソダス

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少しの油断

 

そんなこんなで、エルレイたちが担当する二組のクラスにて。

 

「そんなわけで、レオスぶっ飛ばして。先生全員でシスティーナを娶って、みんな(先生だけ)脳死ハッピーになろうぜ計画、を開催します。異議のあるものは?」

 

「「異議なーしっ!!」」

 

「「「「「何言ってんすかエルレイねえねえええええええええええええぇぇぇぇぇ!!!!!」」」」

 

エルレイが教壇に立つや否や、突然の謎発言に、グレンとセラの先生組は可決の声をあげたが、生徒たちからは阿鼻叫喚を受けることとなった。

 

「今、ねえね、って言った生徒。後で死」

 

「いやいや!俺らを巻き込まないでくださいよ!」

 

「それ先生方が売った決闘ですよね?!生徒を巻き込むのはどうかと思います!!」

 

ぶうぶうと文句を言う生徒達。

それも当然、本来の時間割ならば、ここから始まるのは黒魔術の授業だからだ。そんな生徒たちにエルレイは反論するどころか。

 

「ごめん…、やっぱり、迷惑……だよね」

 

エルレイは目を伏せ、落ち込む。

珍しいエルレイの無表情ではない悲しそうな顔に、クラスにいる全員どよめいた。

 

「分かってる。私が、臨時教師で、そんなことする資格なんてない…。ことくらい」

 

「え、エルレイ先生?あの…、そこまで落ち込まなくても」

 

優しい生徒の声をエルレイはさも聞こえていないかのように、濁った眼で床を見ていた。

 

「でも…、レオスが…魔術講師としての手腕で勝負するって……」

 

エルレイは目元を自分の手で拭った。

 

「私は…、みんなが…。誰にも負けないって…確信……、してるから」

 

「エルレイ先生……」

 

エルレイは顔をあげて、ニコッと、無理やり笑顔を見せた。

 

「でも…みんなを巻き込んじゃだめだよね。ごめん、わたしだけでどうにか……」

 

「野郎どもおおおおぉぉ!!!!!俺らのエルレイねえねを泣かせたレオスとかいう野郎をゆるすなああああああああああぁぁぁ!!!!!」

 

「「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!」」」」」

 

カッシュの言葉を筆頭に、クラスのエルレイ信者の馬鹿どもが一致団結した瞬間である。

エルレイは優しい微笑みをみんなに向けた。

 

 

勝った…。 計 画 道 理 

 

「汚い、レイちゃん珍しく汚い」

 

「嘘泣きってお前らしくもねえ……」

 

グレンとセラは、エルレイのやったことが芝居だとわかったようで、二人とも軽蔑の眼差しでエルレイを見ていた。

 

「システィーナの、人生がかかってる…これくらいは当然」

 

エルレイは眠たそうな目で無表情でない胸を張った。

そうすると突然システィーナが駆け寄ってきた。

 

「あの、わたしを気遣ってくれるのはありがたいんですけど…、あそこまでしなくても」

 

「私は、システィーナには、もっと魔術を知ってほしい、それだけだよ」

 

エルレイは笑顔をシスティーナに向け、いちごタルトをシスティーナに渡し、クラスのみんなに向き直った。

 

「じゃあ、今回は思考を変えて、魔導兵団戦の基礎、教える、あと、必勝法もね」

 

「「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」」」」」

 

「分かった、泣いた私が悪かった、いったん落ち着いて」

 

エルレイは一旦、みんなを落ち着けてから授業を始めた。

 

「しかし、どうするんです、このクラスには僕とかシスティーナとか、ウェンディとか、戦力にとして使える魔術師は数えるほどしかいませんよね?この模擬戦で使用可能な呪文は決まっていますから実質リィエルは戦力になりませんし」

 

ギイブルの遠慮ない物言いにクラス一同むすっとするが、エルレイだけは拍手を送り、いちごタルトを差し出す。

 

「よくできましタルト」

 

「……バカにしてます?」

 

「確かに、今の状況だと…使い物にならない人しかいない。ギイブルも例外じゃない」

 

「な──」

 

ほめるに見せかけてのバッサリとしたエルレイらしい物言いに、ギイブルは口をパクパクさせた。

 

「大丈夫、別に戦わなくても勝てるから」

 

 

 

エルレイはそういうと不敵に笑った。

 

 

 

 

 

★★★

 

「はい、セラ」

 

「うん、いただきまーっす……あむっ」

 

今日はセラに約束していた料理を作ってあげた。

献立は肉じゃが、に卵スープ、野菜炒めなど、栄養を取れるものを作ったつもりだ。

 

「ん~っおいし」

 

「そ、よかった」

 

セラが笑顔になり、エルレイも笑顔になる。

エルレイは一口水に口をつけてから向き直り、話を切り出した。

 

「ねえ、聞きたいことある」

 

「ん、なに?」

 

「…二匹の竜について、教えてほしい」

 

「……」

 

二匹の竜、雷の竜と赤い竜の事だとすぐにわかったのだろう。

セラは俯き、ことばを出した。

 

「ごめん、友達から『それは機密事項だから話ちゃダメ』って言われてるんだ」

 

「ん、変なこと聞いてごめん」

 

「こっちこそ、答えられなくてごめんね」

 

まあ、そう簡単に教えてくれるはずもないか…、そう思いながらエルレイは自分の作った肉じゃがを頬張る。

 

「……ん、まあまあおいしい」

 

「え?私とってもおいしいって思ったんだけど?レイちゃん不満?」

 

「私の知り合い、料理上手い人がいて。その人の料理とっておいしいの」

 

エルレイはそう言いながら心地よさそうにほほ笑んだ。

 

「もう…、何年もあってないけどね」

 

何年会ってないだろうか、学園卒業してからだから3~4年はくだらないだろう…。

 

そう肩を落として落ち込むエルレイを、セラが優しくポンと肩を叩いてくれた。

 

「いつか会えるよ…絶対ね」

 

「ん…そうだね」

 

セラの言葉により元気が出たのかエルレイは少し笑顔を取り戻す。

 

「ねえ、教えてよ、レイちゃんの友達の事!」

 

「…ん、暇つぶし程度に」

 

エルレイは今まで会ってきた友達、仲間、親友の話を覚えている限り全部した。

エルレイはずっと誰かに自慢したかった。自分が素敵な人たちに囲まれていることを、しかし関わる人が少なくなり、そんな機会未来にいたころはなかった。終始エルレイは楽しそうにセラに向かって自分の友達と経験した事話した。

 

「それで──」

 

「レイちゃん、ホントにその人たちが好きなんだね」

 

「!」

 

 

エルレイは突然その言葉で我に返り、時間を確認した。

1時間以上しゃべり続けていたようだ…。

 

「あ……、ごめん」

 

エルレイの顔が途端に朱色に染まる。

そんなエルレイを見ながらセラは無邪気に笑った。

 

「あははっ、友達の事だけじゃなくて初恋の人の話を何個か聞けるとは思わなかったよ~。とってもほのぼのした!」

 

「……//////」

 

自分としたことが…、饒舌にしゃべりすぎてしまったようだ。

自分でも顔が熱くなるのを感じた。

 

「もう寝よう、おやすみ」

 

「え~、もっと話していようよ~、それか布団の中で話そっ!」

 

「~~~~っ/////おやすみ!!」

 

エルレイはセラの声を聞こえないふりして、耳をふさぎながら足早に自分の部屋まで行って布団をものすごい勢いで被った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

 

「ん、こっちは大丈夫、そっちは」

 

『大丈夫だよ。基本的にうまく進んでる、アルベルトさんには何度か疑われたけど』

 

エルレイはその夜。セラの家を抜け出し、人通りのないところでエザリーと通信していた。通信をしながらサクサクといちごタルトを頬張る。

 

「ん、こっちも…、セラとグレン以外にはばれてないから、大丈夫」

 

『そもそも、隠さなきゃいけない理由があんまり私分かってないんだけど…そういう魔術があるって言いきればよくないかな?』

 

「……」

 

『疑心暗鬼でそこまで頭、回ってなかったね、リィエル』

 

「うるさい…、そもそもエルザがいなかったらまだ疑心暗鬼」

 

エルレイはエザリーのことばに少し不貞腐れる、エザリーは苦笑いをした。

 

『でも、今リィエル楽しそうだよね』

 

「……?そう見える?」

 

『うん、卒業した後は仕事に忙殺されてたイメージだったから、ちょっと安心したよ、こっちにきて』

 

「…そうかも」

 

確かに卒業した後は仕事に忙殺され、色々な趣味やお出かけができなかった。

でも大切な親友たちがくれた、イルシアではなくリィエルとして生きていていいという心の余裕。それをなくしたくなくてガムシャラに働きすぎたのかもれない。

 

『最近、リィエルは大人になりすぎだよ、もうちょっと誰かに甘えよ?』

 

「ありがと、その時はエルザに頼むね」

 

『ふふっ、楽しみにしてるね』

 

 

 

そんな二人だけの秘密の話をしていたその時。

 

「……!」

 

『リィエル?どうしたの?」

 

「ごめんちょっと切る」

 

『え、ちょ!!リィ──』

 

 

ブツン。

エルレイは強制的に通信を切り、ポケットにしまった後、目の前にいる謎の生物を睨みつけた。

 

【ガ……ガガァ‥‥】

 

それは見る限りでも30から40はくだらない、ゴキブリのような生物や、翼の生えた悪魔を具現化したかのような生物。そして蜂のような生物どれも人間と同じ大きさで、そしてそのすべては黒い光で輝いていた。

 

「…っ!」

 

エルレイは即座に愚者をカードをポケットから取り出し、距離を取りながら蜂のような物に投げる。

 

カンっ!

 

しかし愚者は発動せず、そのままひらひらと床に落ちる。

 

「タルパか…?」

 

 

タルパとは───それは錬金術の奥義、人工的に神や悪魔、精霊を生み出す技術である。

 

【ギガガ‥‥‥ガアアアアアアアアァァアッァ‼!!!】

 

突然、巨大ゴキブリが恐ろしい速さで襲い掛かってくる。それと同時に悪魔や蜂も…だ。

 

「っ!!《万象に希う・我が2つの腕手に・剛毅なる刃を与えたまえ》!!」

 

エルレイはそう叫び。

トン、と地面をたたくと大剣が二つ生成されてその二つを両手に持ち、即座にゴキブリに振りかざす。

 

「やぁぁ!!!」

 

その斬撃は後頭部に命中し、ゴキブリは四散するが、次々と、敵はおそいかかって来る。

 

「ふっ…、やあああぁ!!」

 

エルレイは焦らずにゴキブリの一体を足場にしてジャンプ、大剣を2つともブーメランの要領で投げ回転させ、空を舞っている悪魔や、蜂に命中させる。

その後エルレイ2本の大剣を持った後、着地し下がり…、建物の上から敵の数を把握した。

 

「…100は、居るかな」

 

パッと見100体以上はいるのを確認し、エルレイはため息をついた。

誰がこんなに生成したかはわからない。狙っているのはおそらく私、何故?

 

「考えても仕方ない……か」

 

エルレイはもう一度剣を握り直し、敵と思われる生物たちのもとへ降りて行った。

 

「いいいいいいいいいいぃぃやああああああああああああああああああぁぁ!!!!」

 

エルレイは容赦なく生物たちに武器を振り下ろす。

蜂は尾を切り取り中心部分を2等分にした。ゴキブリは確実に頭を狙い、羽根が生えているものは羽根に組み付き羽根を力で強引にもぎ取り、動けなくなってから首を刈った。

10体討伐、20体討伐………50体討伐。どんどん討伐数を増やしていく。

自分の服が血だらけになっても。

 

斬って…

 

 

 

 

 

 

 

 

斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って…。

 

 

 

 

そして───。

 

「《雷精よ・紫電の衝撃以て・拡散せよ》!!!」

 

「あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁ!!!!!!」

 

エルレイは剣から地面にショックボルトを伝わせて、地面をえぐり取る要領で大量の生物たちに当てる…、これで計250体。

 

「はぁ…、はぁ…」

 

「…っ!やああああああああああああああああああぁぁあぁ!!!」

 

もう何時間ここで殺り合っているのかわからない。

意識が朦朧として立っているのでやっとだ。

 

「ぁ…………ぁ………っ!」

 

エルレイはボロボロになった大剣2本を見ながら息を整えた。

いくら強いエルレイといえども、これ以上は体力の限界だ。

 

「………いいいぃぃ…やああああああああああああああああぁぁぁ!!!!!」

 

それでもエルレイは戦った。

何故ならここで逃がすと、グレンやセラ達に何をされるかわからないからだ。

 

「……っ、ああああああああああああやああああああああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!!!」

 

だからエルレイは斬る、斬って斬って斬りまくる。

斬れば斬るほど死体の山が出来上がり、エルレイの手が汚れていく。

 

「マナは……残ってないけどっ!!」

 

ボロボロになった大剣二本を敵にぶん投げて詠唱をし始める。

 

「───っ《万象に希う・我が2つの腕手に・剛毅なる刃を与えた───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プチュン…………!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間…。

 

 

エルレイの眉間に風穴が空く。

 

 

「…え?」

 

エルレイはそのまま何もできずに倒れこむ。

狙撃してきた相手の場所も、顔も見ることなく、エルレイは脳に直接ライトニング・ピアスが直撃し、目を開けたまま動かなくなった。エルレイの脳から醜く血が流れ、吹き出る。

 

 

 

手も、足も、心臓さえも動いていない…。

 

 

 

 

「思ったより、呆気なかったね」

 

倒れたエルレイの元に、黒い服を着たハットをかぶった青年。

元帝国宮廷魔導士団 執行官ナンバー11 ジャティス=ロウファンの姿があった。

 

「Project:Revive lifeを滅茶滅茶にしたって聞いてたから、一応期待してたんだけどなぁ」

 

そういうとジャティスはエルレイの頭を蹴った。

エルレイだった物は蹴られても顔が傾くだけで無反応だった──。

 

「ふっ…ホントに死んじゃった。悪いね、君に恨みはないけど…僕の正義を貫くためには…君が邪魔でしかないんだ」

 

そう言いながらジャティスは口元を抑えながら不敵に嘲笑う。

 

「さ~て、この子が死んだらグレンとセラはどんな顔をするかなっと」

 

そう言い残すとジャティスは暗い闇の中に姿を消していった。

 

 

 

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