『完結』(番外あり)ロクでなし魔術講師と帝国軍魔導騎士長エルレイ 作:エクソダス
え、なんで最近サボり気味なのかって?
いや…そもそもこの小説リィエルのところで失踪しようと思って(殴)
「ここが、タウム天文神殿のプラネタリウム…」
遺跡調査開始から6日目、おそらく最終日になるだろうその日、一同はついに最深部──プラネタリウム場へとたどり着いていた。きれいに磨き抜かれた半球状の大部屋の中心に謎の巨大な魔導装置が鎮座し、その傍らには黒い石板のようなモノリスが立っている。
「ここのプラネタリウムはすごいらしいぞ?グレン、セラ、エルレイ」
「あ、ああ、そうなのか?」
「へぇ~一回見てみたいですねっ」
「……」
「む、エルレイまだ何か悩み事か?」
エルレイはセリカの問い、に少しため息をしながら答える。
「ん、大したことじゃない」
「ホントに大丈夫か?お前、最近ぼけーっとしてること多くなってるぞ?」
グレンにまでそう思われていたとは心外だ。
「今回のはホントに大したことじゃないんだけど…
「え?それって昔リィエルちゃんとしてきたことないってこと」
セラの言葉にエルレイは首を横に振る。
「多分、昔の事だから思い出せないだけ…」
「……ま、昔の事は忘れそうだからな、お前」
「ちょ、ちょっとグレン君!その言い方はレイちゃんに失礼じゃない?」
グレンとセラの夫婦漫才?を聞きながらエルレイは何度も見渡す、やはり見覚えがない。結局何日たってもレオスの事件の後、何があったか思い出せないままでいるのだ。
(ま、いいか)
思い出せなくて不都合が生じることはないだろう、エルレイはそう思いながらいちごタルトをサクサクと食べた。
「あの…先生、せっかく『タウム天文神殿』にやってきたんだし、このプラネタリウムで夜空を見てみませんか?」
「あ、それ賛成!!」
プラネタリウム場に足を踏み入れるなりシスティーナがそんなことを言い始めた…セラは見る気満々のようだ…。
「はぁ?星空?めんどくせえなぁ…」
「いいじゃん、別に減るものでもないでしょ。動かすのは私やるから」
いちごタルトを食べ終えたエルレイはそう言って、プラネタリウムをいじり始める。
「ねえね、これ、動かせるの?」
「まあ、ね」
「「「「「エルレイねえね流石っす!!!」」」」
「……いやだから、そういうの良い」
エルレイは恥ずかしそうに頭を掻きながら、魔導装置の機能を制御するモノリスの正面に指を走らせ、コマンドを書き込んでいく。
エルレイは覚えてるところはのまま適応させ、忘れてしまったところは頭で再構築し、起動させようとする。
「よし」
固唾をのんでみんなが見守る中、エルレイはモノリスの表面にとある光文字の一文を叩いた。
するとプラネタリウム装置が低い駆動音を立てて起動し始め──
ふっ……、と室内が塗りつぶされたかのような深淵の闇に包まれ、次の瞬間世界が変わった。
(……すごい)
見たことはあるハズなのに新鮮で幻想的、子供のころには理解できなかったが大人になって真の良さがわかるようなそんな感覚…。星雲が、惑星が、流星が、圧倒的な臨場感と迫力を持っていた。
「こ…古代人てのは、超高度な魔法文明を築いておきながら、時々、こんなどーでもいいことを、すげー大掛かりでやるよな…なんでだ?」
「多分、人間の性なんじゃないかな、そもそも本当なら殺し合いとかじゃなくてこんなロマンチックにつかわれるほうがよっぽどいいはずなのにね」
「文化や意識の違いなのか…何らかの宗教儀式的演出か…もしくはセラの考えと同じで単なる娯楽か…そのあたりが通説になっているがな」
そんなグレンたちの話声や、生徒たちのうれしそうな顔にエルレイは微笑みながらモノリスを操作する。装置が停止し、たちまち周りが元の姿に戻った。
「遊ぶのはここまで、最終調査開始」
「「「「はいっ!!!」」」」
そもそもここには遊びに来たわけではなく、グレンのクビ阻止のために来たのだ。
エルレイが指示をすると全員素直に調査を始めてくれる。床の紋章や碑文を写し取ったり、読み取ったり、そんな単調な作業が始まる。
「どう、システィーナ、勉強にはなりそう」
「あ、エルレイ先生!はい、本物に触れるなんてめったにない機会なので、頑張って思考してます」
「それは良かった、ルミア、君は順調?」
「はいエルレイ先生、とても勉強になってます」
「みんな。頑張りすぎ注意、いちごタルトここ置いとく」
「「「「うっす!!!あざっす!!!エルレイねえね!!」」」」
「だ、だから、ねえねやめて」
またからかわれて顔が熱くなっているのは一旦置いておいて、みんななかなか順調にやっているみたいだ、良かった。
「…って、先生が板についてきてる……私…」
エルレイは苦笑いをしながら生徒たちを見守り、自分も解読などをしている時。
「アルフォネア教授!どうか…あのプラネタリウム装置を…教授がもう一度調べてください!」
突然、システィーナの声が聞こえた。どうやらあのプラネタリウム装置について何か思うところがあるのだろう、だがあれはエルレイが見た限りでもプラネタリウム装置以外の何物でもない。
「お願いします、アルフォネア教授…どうか!」
「お、落ち着いてよシスティーナちゃん、これはただのプラネタリウム装置で他には何もないんだよ?」
思いつめたような顔でセリカに頼むシスティーナを見かねて、セラが落ち着かせようとしている。
「私からも、お願いします、生徒の好奇心を無下にしたくないので」
「レイちゃんまで……まあ無下にはしたくないけどね…」
「わかった、やってみよう」
何故かやる気を出したのか、セリカがプラネタリウム装置の前に立つ。
「お、いいのか?まあ、お前がそういうなら頼むわ。ひょっとしたら、お前が何か見つけるかもしれないしな」
グレンの期待のこもった言葉に、セリカは頷き、《ファンクション・アナライズ》──魔術機能分析、解析の術を唱え、モノリスに手をついた。
エルレイたちはじっとセリカを見守る。
やがて小一時間ほどたち、セリカが口をひらいた。
「……ダメだな」
「あ~、セリカさんでもダメでしたか」
その言葉にセラは残念そうに肩がガクッと下がった。
「私もできる限り念入りに、この装置を隅々まで調べたが…プラネタリウム装置としての機能以外は、見つからないよ」
「そう……ですか」
「ああ、残念ながらな」
システィーナが肩を落とし、何故かセリカも表情を曇らせて息を吐く。
(ま……そうだよね)
エルレイはそう思いながらため息をついた。
思い出せないとはいえ、こんなところに何か重要な物があるわけがない、殺意の正体は少し気になるが、この程度ならば印象が弱く、思い出せなかった、で片付く。
(さて、そろそろ、戻る号令を……)
そうエルレイが思い、手をぱんぱんと叩こうとした…その時。
きん、きん、きん──
辺りに突如、魔力反響音が響き…一瞬、床の紋様をなぞるように蒼い光が走った。
「!!」
エルレイが慌てながら振り返ると、プラネタリウムは起動しているではないか──。しかし。
(動きが……おかしい)
エルレイが想定していないプラネタリウム装置の動きをしていたのだ。プラネタリウム装置は先程と同じように室内を夜空を投射し、星空が徐々に加速しながら回転していき、やがてすべて狂ったように頭上を暴走回転し、銀線となって無数の同心円を描き……。
やがて星空が消えていき───。
「なっ!!」
プラネタリウム場の北側の空間に、青い光で三次元に投射された扉が出現していた。
(《封解主》?《デウス空間》?《時喰みの城》?どれとも違う)
エルレイが自分が知っているありとあらゆる技術を巡らせるが、どれとも一致しない。
「…ほ、星の…回、廊?そうだ……星の回廊だ……っ!!」
セリカは何かぶつぶつと呟いている。
まずい、何故かわからないが非常にまずい、何とかしなくては、直感的にそう思ったエルレイは詠唱を開始する。
「っ!!!《我目覚めるは・デウスと赤龍帝の力を信じし・殺戮人形なり──》」
エルレイは詠唱を開始して、何もないところの空中からチャックのようなものが開く、この技術は、‘‘転生者‘‘シュウ=イグナイトとロクサス=ティンジェルの能力を二人のとある経路に接続し、力を借りるという、魔術では無しえない技術。しかしこの技術は時間がかかる……。
(っ!間に合わない!!!)
そう思ったのもつかの間……。
「セリカっ!!!!」
「セリカさんっ!!!」
「「アルフォネア教授っ!!!」」
セリカは扉の向こうへと消えてしまった。
★★★
この緊急時にグレンは一旦生徒をまとめ、野営場まで戻った。現在テント内にエルレイ、グレン、セラ、システィーナ、ルミア、リィエルがいた。
「さて、まず、システィーナ、あのとき何したの?」
「え……っと」
エルレイは事の発端をすべて聞いた。
どうやらシスティーナとルミアでこっそり、あのプラネタリウムを魔術分析したらしい。
「ごめんなさい…っ!ごめんなさい、先生…っ!わ、私が勝手にあんなこと…」
「ううん、システィは悪く無い……軽い気持ちで力を使った私が……」
「ふ、二人は何も悪く無いよ!」
「…くそっ!あの耄碌ばばぁ!あいつ一体何考えてんだっ!一人で勝手に突っ走りやがって……っ!?」
「ねえね……どうするの?」
悔しそうにするみんなを見て、エルレイは立ち上がる。
「考えても仕方ない、私がどうにかする、みんなはここで待ってて」
この状況でエルレイが何とかできれば万々歳、もしできなくても、その後に情報さえ通信で渡せればたとえ私が一度死んだとしても何とかなる。
「………またかよ、、エルレイ」
エルレイがそういうとグレンは何かイラついてるように、ぼそっと答える。
「また?」
「また、全部背負い込むのかって聞いてんだよっっ!!!」
そういうとグレンはエルレイの胸ぐらをつかむ。
「お前はいつもいつも…っ!!人の気も知らねえで1人で何でもかんでも背負いやがって!!」
「気のせい、落ち着いて、今は怒鳴ってる場合じゃない」
エルレイは一度グレンを落ち着かせようと、いちごタルトを取ろうとしたが次のセラの言葉でその手が止まる。
「ぐ、グレン君の言う通りだよっ!!私たちはレイちゃんの味方だって何度も言ってるよ?」
「お前は……俺たちがそんなに信用できないのかよ……、リィエルっっ!!!」
「なんで、信用できると思ったの?」
「「「「「っっ!!??」」」」」
エルレイのその言葉に全員顔をこわばらせた。
「私は、人間じゃない、利用されてきた人形、人間が憎い、私は人間を信頼したことなんて、一度もない、お前たちみたいな、外道下等生物を信頼したことなんて」
エルレイはそう言いながらグレンを見つめている。
その目は濁っていて、とても同じ人間なのか疑うほど変わり果てた目をしている。
「それなのに私が?お前たちを信頼する?人間であるお前たちを?………笑わせないで」
エルレイはその場で刀を高速で生成し、グレンの首に向けて突きつける。
「……ねえね」
「「エルレイ先生…」」
三人の生徒の声が重なる、声が少し強張っている、怖がられている…それで良い、その反応が欲しかった、これで事はうまく進む。
「憎い憎い憎い憎い憎い憎い、何もかも、人間が憎くて仕方ない……私の主や、とっても優しい私の大好きな人、研究が好きで理不尽を知らなかった親友…そして優しいはずなのにお前たち人間のせいで素直になれなくなった人……私の大切な人を狂わせたお前たちが」
憎 く て 憎 く て
仕 方 な い
そういうとエルレイはその場テントを去っていく。
「え、エルレイ先生!!」
「おいまてっ!!!話はまだ………っ!!!」
システィーナとグレンが止めるが聞かない。
テントを出るとそこにはカッシュたちが盗み聞きしていたようだ。生徒が全員いる。
「エルレイ先生…」
「……邪魔」
エルレイは強引にカッシュたちを跳ね除け、手を前に出し、詠唱を始める。
「《万象に希う・我が背に取り付け・大いなる翼となって羽ばたかん》」
エルレイはそう詠唱すると、エルレイの背中から銀色をベースに蒼い色が各所についた羽がエルレイから生えた、よく見てみるとリィエルの大剣をつなぎ合わせ、羽にしたもののようだ。
……エルレイは振り返ることなく。その場から羽ばたいた。
★★★
「いいいいいいいいいぃぃぃやあああああああああああああああ!!!!」
扉に入ったエルレイは、天井、床、壁、すべてが石造りで出来ている場所で大剣を振り回していた。相手はミイラ、おそらくすべて魔術師だろう。
「《雷精よ・紫電の衝撃以て・拡散せよ》!!!」
エルレイは右腕で大剣を振るいながら左手で詠唱し、ショック・ボルトを改変して拡散させ、ミイラに攻撃する。
「アイツサエ──アイツサエ──イナケレバァァァァ──!!!」
金切声のような声をあげる。ミイラにエルレイは容赦なく大剣を振るう。
「そ、じゃ、死」
エルレイは死体にムチを打つように何度も何度も斬った、何度も何度も。
その顔は斬るのが何よりも楽しそうな…、そんな表情だ。
(やっぱり…いい……生き物を斬る感覚……タルパの時とは違う……この殺った時の高揚感)
心地良い、この感覚、斬るという満足感、この手を人間の言うところの汚く染めるというこの感覚…楽しくて楽しくて仕方がない。
「はぁぁぁぁあああ!!!!」
エルレイは無尽蔵に湧いて出てくるミイラを容赦なく、四散させていく。
「……ふっ……シュウとロクサスに…似てきたかな私?」
最近、シュウとロクサス…二人の人間が憎い、醜い、存在価値なしの理論がなんとなくわかる。
(確かにミイラにまでなって憎悪を燃やしてるのは…見苦しいね)
エルレイがそう感じているとエルレイの来た道から人影が5人……。
「レイちゃん!!」
グレン、セラ、システィーナ、ルミア、リィエルだった。
「エルレイ!!無事か」
「なんだ、ついてきたんだ」
エルレイはそう言いながらため息をついた。
「信頼してないといったハズ、なんでついてきた?」
ついてきてしまってはわざと遠ざけた苦労が水の泡だ。嫌われてもいいからここを1人で切り抜けようと思っていたのに、これでは何かあっても記憶を頼りに守ることができない……。
「エルレイ先生!!よかった…」
ルミアが安堵の声を出す。まるであの時の言葉を水に流したかのように。
「レイちゃん、みんなにレイちゃんが、リィエルちゃんだってこと…話させて貰ったからね」
「…あっそ」
「レイちゃん……リィエルとして…、あの実験の成功例として何かあったのは察するよ。でも私たちは…それでもレイちゃんの味方を、やめないから」
「……俺も。なんだかんだ言ってお前の兄貴分だ。こんなことで諦めれるほど出来た人間じゃねえよ」
エルレイはその言葉を聞き唇をかみしめた。
優しい、優しすぎる、だからこそ、怖い。お願いだから自分の存在理由である殺戮を奪わないでほしい。そして汚いこちら側に来ないでほしい、殺戮しなくなったら私はどうやって大切な人を助ければいいか、分からなくなる、満たされなくなる。
「うるさいとっとと消えろ、邪魔
「「「だが、断る」」」
「「「……え?」」」
突然そんなことを言い始めたのは誰あろう、まさかのルミア、システィーナ、リィエルだった、先生の3人は全員口を開けて、素っ頓狂な顔をしている。
「私たち三人が最も好きな事の一つ…」
「自分が絶対的有利だと思っている奴に…」
「……NO,と、断って、あげる事」
システィーナ、ルミア、リィエルの順に変なごごごごごごごごご。という効果音の中妙な決め台詞を言った。
「…え、うん」
流石にエルレイも素に戻る。
これには目を丸くするしかなかった。
「…やった!エルレイ先生が言っていた一度は行ってみたいセリフ第四位!!」
「言えたね!!」
「ん、きまった」
三人ともぴょんぴょんしながら大はしゃぎしている。
てかなにそれ、そんなもんいつ決まったの、グレンたちに助けを求めても2人ともよくわからないようでキョトンとした顔をしている。
「…ええっと……ちなみに一位何?」
「白犬ツッコむとこそこじゃねえぞ!!」
「……死、だよ」
「…それ、なんだ」
エルレイはただただ苦笑いをした。確かに一度こんなことを言った気がする、すっかり忘れていた。
「…わかった、信用するんじゃなく、駒としてなら使う」
「……!うん、それでレイちゃんが私たちを頼ってくれるなら!!」
エルレイがそういうと、セラもグレンもシスティーナもルミアもリィエルも優しい笑顔を見せてくれた。
「でも、今からいう行動しなかったら、即切り捨て」
「ほう……言ってみろ」
「まず、私の見える範囲からいなくならないで、そして敵を見つけたらすぐに私に報告、自分で戦おうとしないで、体力が切れてきたらすぐ言って、いちごタルト渡す、疲れたらいって、おんぶくらいはする、あとこのあたり寒いから、できるだけあったかい服を──」
「「「「過保護かっっ!!!!!」」」」
リィエル以外の全員にそうツッコまれた。
よろしければ評価、感想よろしくお願いします、励みになります。
エルレイ2「…私、この世界で好かれすぎたかも」