『完結』(番外あり)ロクでなし魔術講師と帝国軍魔導騎士長エルレイ 作:エクソダス
エルレイちゃん、フィールを慰めてあげて!!
エルレイ2「御意」
作者「あ、ここでやるの?」
エザリー「ま、まぁ、コラボ未定だから仕方ない」
エルレイ2「フィーちゃん、辛いと思うけど、頑張って、見守ってる、でも無理して頑張りすぎないでね……フィーちゃんが殺戮人形になってしまうと思うと……辛いよ……」
エザリー「と、数話前に夢の中が人間の殺意に満ち溢れてた手遅れ系女子が言ってるよフィールちゃん」
エルレイ2「手遅れ系女子いうな、否定しないけども」
「さて…と」
教室にて、エルレイは作戦内容を思い出しながらため息をついた。
過去何があったかは思い出せないが、おそらくエザリーもいるので問題はないだろう。なのでエルレイが考えているのはそこではなかった。
「ダンス相手…、どうしよ」
そう、ダンス相手だ。
なんだかんだで久々のダンスコンペだ。昔、誰と組んだかすら覚えていないが、今回出場するのは、何故かルミアと一緒にグレンが出る……。と思うとなんとなく女として、負けた気がするからだ。
「こういう時、シュウがいてくれたら。話早いんだけどね」
エルレイはそう言いながら自分の髪を整えた。ギイブル、カッシュ、そのあたりを誘っても良いが、そうするとイヴの指示に動きずらくなる。
「ホント、どうしよ」
「レイちゃ~ん!!」
そう呟やいていると、突然扉が開き…、ばーんとセラが教室に入ってくる。
「グレン君にフラれた…」
「…イヴの話聞いてなかったの?グレンはルミアと組んでるんだって」
「そうかもしれないけど…」
「女の嫉妬は醜い」
「し、嫉妬じゃないよっ!?」
エルレイは怒るセラを見ながら苦笑いをした。
そういえばフィーちゃん、グレンの事をお父さんと言いかけてたな…、そして、なんとなくだが、セラに似てた気がする。もしかしたらあの子…、いや、考えるのはやめておこう、自分の中のグレシスが壊れかねない。
「そんなことはいい。用件は?もしかして愚痴りに来ただけ?」
「あ、そうだった、レイちゃん、私とダンス踊らない?」
「…セラと?」
「うんっ」
そう言われ、エルレイは考え込む。
悪く無い提案だ…、セラとの連携も取れるし、何よりセラと一緒なら違和感なくグレンとルミアの横に陣取ることができる。
「まあ、いいよ」
「やった!」
「でも私、男パートしかできない。それでもいいなら」
「え、逆になんで男パートだけできるの?」
「それは…」
あれ、なんでだっけ。覚えてないや…。
「ま、まあ。細かいことはいい」
「それもそうだね!さっそく外に出て始めよう!」
そう言ってエルレイとセラは外の中庭に出て、ダンスの練習をし始めるのだった。
「すごいねレイちゃん!王子様みたい」
「あ、うん」
そう言われても正直複雑な気分ではある、が悪い気はしなかった。今回は雰囲気を出すために髪型を整えて、服もいつもの服ではなく男っぽいグレンのような服を身にまとっていた。
「じゃあ、始めよっか!」
「ん」
セラのその掛け声とともにダンスが始まる。
エルレイはいつもルミアとやっているように手慣れた手つきでセラを誘導し、華麗に舞う。
(…ひさしぶりだからか。…わかんないけど)
疲れる超疲れる。
この人のダンスヤバイ、妙にリズムが早く心が躍るので、体が勝手に激しく舞ってしまう。ダンスってこんなのだっけ?妙にやってて楽しい、変な感じ。
「すっごい!ここまでレイちゃんダンスうまかったんだ!」
踊っているにも関わらず息を切らせることなく、セラがそう言ってきた。
うまいと言われるのはうれしいが、躍り終わってからにしてほしい。少しイラっとしたので仕返しをする。
「ダンス中は身をお任せください…。お姫様」
「…ふぇぇ!!」
エルレイはわざとセラを抱き寄せて、耳元でそうささやいた。
★★★
『やあ、リィエル、ご機嫌いかが?』
「最悪…」
エルレイはその日の夜に自分の部屋でシュウ。現在名のハルと通信をやっとの思いで取っていた。
『何かあった?』
「セラのダンスが……」
そうとぎれとぎれに言いながら、エルレイはベッドにダイブした。
もうこのまま眠ってしまいたいが少し我慢。
『ああ、あの人のダンスはなかなかハードだからね』
「…疲れた」
『あはは…。おつかれリィエル、偉いよ』
「…ん」
そのハルの声はエルレイにとってとても心地いいものだった。
ずっとこの人の声を聞いていたい、ずっと話していたい、そんなことを考えながらも、きちんと切り替えて話の本題に入った。
「そろそろ情報交換しよう」
『わかった、なにから話そうかな…』
エルレイはハルの出来事を色々と聞き、それと同時にエルレイはハルがいなくなってからの事をできる限り話した。
『そっか……特務分室なくなっちゃったんだ』
「ん」
『まあ、仕方ないね。力を持ちすぎると邪魔になる、人間どもの考えそうなことだしね』
ハルはそう言って笑った。
特に気にしてないようだ。彼はエルレイの世界では特務分室の執行官ナンバー44 殺戮剣と呼ばれていて、かなりエースだったのでガッカリするのかと思っていた。
「シュ…ハルのほうはどう?」
『シュウでいいよ。しいてあげるなら僕の事情を知らせた人物はイヴ姉様くらいだってことくらいかな、あとはエルザが来てくれたから成り行きで特務分室のみんなに』
「…そ」
成程、私を簡単に信用したのはハルの影響だったのか。
イヴは少し弟に甘いというか、信頼しすぎてる部分があるからそれが出たのだろう。
『あとは最近だと料理のレパートリーが増えてきてね、またいつかリィエルにも食べてほしいなって思ってたり───』
「…ふふ」
『……ん?どうしたの?』
「何も」
少しエルレイは笑みをこぼした。
なにせ初恋の人と喋っているのだ、笑みもこぼれるというもの、とても話してて心地いい。やっぱり私は、この人を好きなのを諦めきれないんだと少し苦笑いをした。
『リィエルは大丈夫?声が少し疲れてるよ?布団の擦れる音がするからもう疲れてベッドに入ってるのかな?ご飯は食べようね?後お風呂と歯磨き___」
「乙女気分、返して」
ハルはダメ人間製造野郎だ。
繰り返す、ハルはダメ人間製造野郎だ。
こういうところがハルはあるから、昔からエルレイに恋しているのかすらどうかもわからない。あのエルレイ好きのエザリーにさえ恋愛相談をしたら『あの人ってリィエルのお兄さんでしょ?禁断の恋?』と割と真面目に言われたほどだ。
「そういうところがあるからシュウは……」
『あはは…ごめんごめん、それじゃあ、そろそろ少しヤバい話していいかな?』
「…いいよ」
『…兄様と接触した』
「!? ロクサスと…」
エルレイはそのハルの発言に驚愕の声をあげた。
★★★
「…ふ、ふふふふ……。まさかこれほどとは…、おそらくエルレイ様やアルベルト様と同等。いえ、それ以上かもしれませんわね…」
エレノア・シャーレットは、破壊された研究所があったと思われるクレーターの場所である男と対峙していた。
その男は青髪の両手に古式な拳銃を二丁構えていた。
「かなり、本気を出したつもりだったのですが…」
「きひひ…あれで本気か、ぬるすぎるぞエレノア・シャーレット」
エレノアの体にはかなり傷があり、服も破れていることから相当ダメージを負っているのがわかる。
しかし一方の男は全く傷はついておらず、息すら乱れていない。まるでエレノアと戦闘してなどいないと思えるほどに無傷だ。
「これ以上の戦闘は無意味ですね」
エレノアはそう言いながらため息をついた。
「恐ろしい御方です。いっそ我らの研究会に入りませんか?」
「断る」
「貴方のような御方なら、きっと我々の研究の意味が───」
「人間に興味などない。とっとと絶滅しろ下等外道生物」
その男は見下すように親指を下に下げ、エレノアを見ながらそう吐き捨てた。
エレノアが少し驚いていると次の瞬間───。
「《武装展開》いくよファイさん」
『yes、my master』
その声と共にエレノアの真後ろから、紫色の剣を持ったハルがエレノアの首を目掛けて刃を振り下ろした。
「っ!」
咄嗟の判断でエレノアは避けて、距離を取る。そこには三人いて、イヴ、ハル、エザリーの三人がこの場所に集結していた。
「貴女方まで来ましたか…面倒ですね、そろそろ下がらせていただきますわ」
そう言い残すとエレノアは夜の闇へと消えていった…。
「ったく、白けることすんなよ弟よ」
「女性の服をあそこまで引きちぎってるほうが、よっぽど白けるよ?兄様」
そう言いながら二人の男は笑いあう。まるで先ほどまで殺し合いなどしてなかったかのように。イヴはこの状況についていけてないのか、少し口を開けている。
「…あいつは?」
「シュウく……ハル君が、転生した……人間というのは、聞いてますよね?あの人はロクサス…。私…とエルレイの、時代にいたハル君の…。義兄弟です」
エザリーは震えながらそう言った。
「震えてるわよ、エレノアと対峙してたやつだからって特務分室の人間がそこまで震えるんじゃないわよ」
「む、無理です…。あの方だけは本当に…‘‘人間じゃない‘‘んです」
エザリーは震える自分の手を抑えながらそう言った。
「おいおい、俺がお前になんかしたか? エ ザ リ ー よ?」
「ひっ!!!」
「兄様。エルザを怖がらせないで」
恐ろしくドスの利いたロクサスの声に、エザリーは身を震わせているところをハルは優しく背中を摩った。するとエザリーはそのままハルの後ろに隠れてしまう。
「それで?お前らは何しに来た」
「兄様の破壊したこの施設の調査だよ、なんで壊したの?」
ハルは特に怖がることも無くロクサスに尋ねる。
「俺の邪魔になったから壊した、ただそれだけだ」
そういうとロクサスは不敵に笑った。
「それが分かんないんだよね…基本的に人間に無関心な兄様がなぜ壊した?」
「あらかた検討はついてんじゃねぇのか?シュウ」
「…」
「…まあいい、あとイヴ・イグナイト」
そう言ってロクサスはイヴのほうに顔を向ける。
「なによ」
「お前らが何をやっても知ったこっちゃねぇが、俺の邪魔になることがあったら即刻消すからな、特務分室もろとも」
「…アンタにできると思って?」
「試してみるか?」
そういうとロクサスは銃をイヴに向ける。イヴも炎を出し、戦闘態勢に入るが。
「姉様、待って」
「ハル、なんで止めるの?」
「ここで兄様と争っても何の得もないし、それにあいつは‘‘本体‘‘じゃない、そして本体じゃなくても姉様は兄様に勝てない」
「本体?どういうことよ、あいつがリィエルと同じ人形だとでも?」
「はは…その程度だったらどれだけ気楽か、とにかく戦闘は避けよう」
「…アンタがそういうなら信じる」
そういうとイヴは炎を消した。
「はっ、随分弟に従順だなイヴ・イグナイト。イグナイト家が聞いてあきれるぜ」
ロクサスはそう言いながらニヤっと不敵に笑った。その光景を見てエザリーはやっとの思いで口をひらく。
「ロクサスさん…だって、わざわざ…私たちと戦う必要はないでしょう……?」
「まあな」
「兄様、そろそろ消えてくれない?わざわざここで‘‘ストック‘‘を減らすことないだろ」
シュウはいつの間にかロクサスの背後に回り、ロクサスのクビに剣を突き付ける。
「それもそうだな、あ、そうだ、最後にシュウ」
「…何?」
「今度のダンス・コンペ…楽しみにしてると良い。きひひひ…、面白いものを見せてやる」
そう言い残し、ロクサスは自分の影に吸い込まれるようにしてだんだんと姿を消した。
★★★
「面白いもの…?」
『うん、そう言われた』
なんだ、いったいロクサスは何を企んでいる。私たちと敵対する気か?そもそも…いや、今は考えないようにしよう。
「一つ確認、シュウは今‘‘ストック‘‘いくつ?」
『234、まだ残ってる、でも』
「ロクサスと対峙するとしたら心もとない…ね」
『そういう事』
実際問題、ロクサスが敵に回るとしたら強敵という問題では済まされない。最悪 ‘‘世界が滅ぶ‘‘ 危険性だって十分にある。いや、その話をしだしたら。
(シュウも同じ…か)
ハルもロクサスに匹敵するほどの実力者、剣の実力ならば《剣の姫 エリエーテ》すらも ‘‘敵わない‘‘ のだ。この二人は普通じゃない、人外と呼ぶにふさわしい二人なのだから。
『大丈夫、全部僕が何とかするよ。リィエルはただただじっと見ててくれたらいいから』
「…ん」
そういうところだ。
昔から誰にも頼ろうとせず、自分一人で何とかしようとするところ、頼ってほしいのに…助けてあげたいのにいつの間にかシュウもロクサスも、自分の手を血で汚して平然と帰ってくる。
そういうところが本当に見てて辛い、私には何もできないのだと…、私がいても足手まといなだけだと思ってしまうから、しかし…。今は覚悟が違う。
二人よりも早く敵を排除し、二人の手を汚させなければいい。
エルレイはそう、心の中で強く決心した。
「そのためには、私も‘‘ストック‘‘をためておかないと」
エルレイはハルに聞こえないようにそうつぶやいた。
★★★
「………」
「…大丈夫?」
忘れていた。
正直忘れていた、今エルレイは、いつもエザリーとくるバーでエザリーの背中を摩っていた。
「こわいこわいこわいこわいこわいこわい…」
ずっとそんな言葉を連呼している。相当ロクサスにトラウマがあるのだろう。
「そこまで、怖い?」
「だ、だって…あの人。死んでも死なないし…」
これはエザリーの言い過ぎだと言いたいところではあるが残念ながら本当だ。
基本的にあの男は死なない、頭を銃で撃とうが、剣で真っ二つにしようが基本的に『いたいじゃねえか』『死なないったって、痛いんだからな?』と言われるのが関の山だ。
「それ言ったら、シュウどうなる?」
「シュウ君は…ええっと……」
そう、ロクサスが死なないという話をするとハルもそうなのだ。
基本的に死なない、死なないというよりは…攻撃が当たらない、というのが正しいだろうか、ハルに当たろうとすると攻撃の軌道がそれたり、すり抜けたりする。
「…なんで、リィエルってあの二人と一緒に居て平常心保てたの?…ハッキリ言って化け物だよあの二人」
「なんでだと思う?」
「…わかんない」
「わ た し が い ち ば ん 知 り た い 」
★★★
「さて、そろそろ行こうぜ」
どこかもわからない暗闇の中、ロクサスは目の前の金髪ロングの女性に向けて言葉を出した。
「うん、でも…。あはは、私にできるかなその作戦…」
「はっ、弱気だな‘‘ルミア‘‘」
ロクサスがルミアと呼んだその女性は、満面の笑みを浮かべた。
「そりゃあね、大事な旦那様の目の前で演奏だもん♪」
「…からかうな」
ロクサスの顔が少し赤くなる。
「そっちこそ、ちゃんとエスコートしてね?」
「…ったく、言われなくてもわかってるよ」
「ふふっ」
ルミアと呼ばれた女性は笑った。
その顔はとても晴れやかで、この人さえいればなんだってできる、何も怖くない、そんな感情が顔からでも読み取れるようだった。
「…さてルミア、俺たちの」
「うん…私たちの」
「「