『完結』(番外あり)ロクでなし魔術講師と帝国軍魔導騎士長エルレイ 作:エクソダス
優しさを知りすぎた者 エルレイ
これは、リィエルがまだ親友や殺戮に執着していなかった頃のお話・・・・・。
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
「・・・ん」
「リィエル、起きた?」
リィエルが起きると目の前には赤髪の肩に風と書いてあるバッジをつけている少年がいた。
「・・・おはよ、シュウ」
「おはよ・・・じゃないよ、もう皆帰っちゃったよ?僕らも帰ろ?」
「・・・ん」
リィエルはどうやら授業中に退屈して寝てしまったようだ、リィエルは目をこすりながら欠伸をした。
「ご飯何がいい?」
「いちごタルト」
「だめ」
シュウとリィエルは互いの事情がかぶり、一緒に生活している、シュウはイグナイト家から家出して一人暮らしをしているところにリィエルがルミアの護衛に選ばれてそれから一緒に生活している。
「ん、じゃあ、カレー」
「了解」
そういうとシュウはリィエルを抱きしめた、優しく、まるで子供をあやすように撫でながら。
「よし・・・よし」
「・・・」
リィエルはなんとなく嫌な気持ちになったが、抱きしめられているのが嫌というわけではないので、そのまま黙って抱きしめられた。
「はい、寝起きいちごタルト」
「・・・ん」
シュウは、どこからか出したいちごタルトをリィエルに渡してそれを受け取ったリィエルがサクサクと頬張る。
★★★
「あむ・・・んっ・・・おいし」
「そっか、良かった」
リィエルは素直な感想をシュウは嬉しそうに微笑んだ、シュウはもう食べ終わり、お皿を洗っていた。
「最近、リィエルが楽しそうでうれしいよ、ルミアたちとも仲いいみたいだし」
「ん、楽しい」
シュウは宮廷魔道士団特務分室のメンバーで一番リィエルとコンビを組んでいた人物なのでリィエルのことをよくわかっていた。
「楽しいなら良かった」
「シュウは?」
「なに?」
「シュウは・・・楽し?」
「・・・」
シュウはなぜか言葉に詰まったあと、お皿を片付けてから。
「勿論、リィエルと一緒に学院生活できて楽しいよ」
そういった、リィエルはそれ以上は何も聞かず、ただ眠たそうに。
「・・・そ」
それだけ答えた。
「それじゃあ、そろそろお風呂入ってきて、僕は後で入るから」
「一緒にはいろ?」
「え?」
「ん」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「「・・・・・・・・・・」」
その後の会話はなかった。
★★★
「起きてリィエル」
「・・・ん」
リィエルが目を覚ますと目の前にはシュウがいた、どうやら起こしてくれたようだ。
「今日は、新発売のいちごタルト食べに行くんでしょ?早く並ばないと食べれないよ?」
「・・・ん」
リィエルは目をこすりながらフラフラとシュウのところまで行き、シュウにもたれかかった。
「・・・眠い」
「眠い・・・」
「新発売のいちごタルト食べれなくていいの?」
「・・・行く」
リィエルはそう言いながら欠伸をした・・・・もたれかかったまま。
「リィエル、動いてくれないと困るんだけど・・」
「・・・力が出ない」
「・・・はい、いちごタルト」
「わぁい」
流れるようないちごタルトでリィエルはシュウに乗っかるのをやめてサクサクといちごタルトを食べ始めた。
「・・・これだから兄様に甘すぎるって言われるんだろうね」
「?」
シュウが苦笑いしている事を横目で見ながらリィエルは無心になっていちごタルトを頬張った。
ところ変わって街についたリィエルたちはまずそのあたりの服屋やデパートをブラブラして散歩をしていた、恋人などに見えるということは一切なく。
「あの服・・・ほしい」
「だめ、これにしよ?」
「・・・こどもっぽい」
・・・・・
「この包丁いいな、でも結構高い・・・いまお金カツカツだし・・・ううん・・・」
「・・・すう・・すう」
こんな感じで恋人というよりは兄妹か父親と娘のような、そんな感じだった。
そんな事をしながらもリィエルたちは目的地について、お店にはいり、二人してさくさくといちごタルトを食べ始めた。
「・・・」サクサクサクサクサクサクサクサク
「どう?おいし?」サクサクサクサクサクサクサクサク
シュウもサクサクと食べながらリィエルの顔色を伺う、しかし無表情・・・でもなにか不満のようだ。
「・・・シュウのやつのほうが美味しい」
「・・・嬉しいけど店内でそういうこと言わないで」
シュウは少し赤くなりながらリィエルの頭を優しく撫でた。
「・・・店内で撫でるの、だめだと思う」
「あはは・・・ごもっとも・・・ん?」
「どうしたの?」
「イヴ姉様から通信だ」
そう言いながらシュウは通信魔導器を取り出し、話始めた。
「もしもし、何、姉様・・・うん・・うん・・・了解、すぐ向かう」
「なんて?」
「特務分室の邪魔になる奴らを潰しに行ってこい、だって」
「・・・」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
「リィエル、僕と兄さまはみんなを守りたいだけ、それだけなんだ、ほかはゴミ同然」
そういうとシュウはリィエルを抱きしめた。
・・・温かい。いつも感じている感触なのになぜか今回の抱きしめは怖くて、苦しくて、辛かった。
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
ああ・・・またか、またあんな見たくもないシュウを見なければならないのか
「リィエル?どうしたの?」
「・・・何でもない、いこう」
そう言うとリィエルは少し辛そうな顔をしたあと、シュウの横に陣取った。
★★★
「おそい」
ある倉庫の中で、シュウは人を殺した。
「・・・いいいいいいいいいやああああああ!!」
リィエルも負けじと錬金した大剣を使い敵をなぎ倒す。
「く、くそ・・・化物がっ・・・!」
リーダー角の男が怯えたようにそう吐き捨てた。もうその倉庫の中にはその男しか残っておらず残りはほとんどシュウが殺してしまい、リィエルは数人しか殺していなかった。
「そろそろ降参してくれないかな」
「ちっ、帝国の犬が・・・っ!」
「仕掛けてきたの、そっちでしょ」
そういいながらシュウはため息をついた。
「はっ!!正義の味方を気取っているつもりか?人殺し野郎がっ!!」
「正義の味方・・・ねえ」
「お前ら帝国宮廷魔道士団は正義の味方じゃねえ・・・人殺しだ、どうしようもないクソ野郎だよっ!!!!!」
「・・・・・」
その言葉に、シュウは黙り込む。
「・・・シュウ」
「どうした?なにか言ってみろよ人殺し」
シュウは沈黙後・・・・なぜか剣をおいた。
「君たちがなんのために戦っているの知らない、そこまで指示うけてないしね、帝国軍を嫌うのも別に普通の感情だと思う」
「・・・シュウ?」
シュウの想定外の発言にリィエルの目は丸くなる。
「ねえ、リィエル、正義っての対義語ってなんだと思う?あ、対義語っていうのは反対の言葉って意味ね」
シュウはボールペンとメモ帳を1枚切って取り出し、正義と書いて見せてから裏面を見せた。
「・・・悪?」
「それ、それが人間共の腐った価値観だよ」
そう言うとシュウは男の前までほぼ丸腰で歩み寄り。
「はっ!!!正義の味方らしく敵も改心させるってか?ご苦労なこ・・・っ!?!?・・・が・・・あ・・・ぁ・・・が・・・っっ!!」
途中で男の声が途切れた、そこには
無表情でペンで男の喉元に押し付けて、
そのまま喉から血が溢れ出るほどガリガリと・・・
ガリガリと。
★★★
「リィエル、さっきの話の続きしよっか」
「ぁ・・・ぁ・・・・」
シュウは優しいが、敵と判断した者には容赦しないことは知っていた・・・だが、今回は殺し方が残酷すぎる。
「あ・・・ごめんね、怖かったね」
シュウは怯えているリィエルに気づき、優しく抱きしめる。
「・・・ん」
「じゃあ、ちょっとだけ解説するね、正義の反対
正義の反対は、正義なんだ」
「・・・・え?」
リィエルは突然のシュウの言葉に目が丸くなる。
「簡単に言うとね、正義を名乗っているということは何かを敵だと見なしてるってことだよね?」
「・・・うん」
「そういうところなんだよ、妙な正義で『自分が正しい』と思っている自己中共が相手を悪とみなし、攻撃を開始する、戦争がいい例だね」
そう言うとシュウは少し苦笑いをした。
「僕はどうしても好きになれないんだ、正義って言葉」
「・・・そっか」
リィエルはそれ以上の事は聞かなかった、聞いたら怖い、シュウが壊れていく気がして・・・なんとなく聞きたくなかった。
「さあ、そろそろ帰ろう、ご飯早く作らないとね」
「・・・ん」
そういうとシュウはリィエルの手を握り、自分の住むアパートへと足を運んだ。
★★★
「おお・・・リィエルの手料理」
「ん・・・頑張った」
シュウは確かにリィエルに料理を教えたりしたが、リィエルの手料理を食べるのは初めてだった。
「いただきます・・・・うん、美味しい」
「そ、良かった」
リィエルが料理を作ったのはなんとなくだ、なんとなくシュウに顔が暗い気がしたから、本当になんとなくだった。そしてその料理には少し特殊な隠し味を入れた。すぐに効果は表れてくれた。
「ねえ、リィエル、僕が一回死んだって言ったら・・・信じる?」
「シュウのいうことなら」
「そ、その断言はびっくり」
シュウはそういうと苦笑いをした。
「・・・・今から話す内容は、作り話だからね」
「・・・ん」
「あるところに兄弟がいました」
「うん」
「その兄弟はとても仲がよく、喧嘩なんてしないくらいに仲良しでした、そんなとき、そのお兄さんが死んでしまいます」
シュウは少し悲しそうな顔をしたあと続ける。
「その弟はその寂しさのあまり兄の後を追って1週間後に自殺してしまいます」
「そして死の世界にはなぜかお兄さんはいなく、その弟は自分の魂を神様に差し出すことを条件に、兄を探す旅に出ました」
「・・・なんか、ぶっ飛んでるね」
「あはは・・ごもっとも」
そう言うとシュウはリィエル頭を撫でた。
「そして、世界を10個以上回ったところでようやくお兄さんを見つけましたとさ、めでたしめでたし」
「・・・変な話」
「あはは、まじでそれ」
リィエルはなんとなくわかった、シュウの声のトーン、顔の動き、すべてが冗談で童話を話しているとは思えない・・・リィエルは、これはシュウの話だと確信した。
(自白魔術、作ったかいがあった)
「その人は、なんでそこまでお兄さんを、求めたの?」
「さあ、なんでだろうね……寂しかっただけかもしれないね」
結局その後は何も聞けず、辛そうなシュウの顔を見ながら、リィエルはいちごタルトを頬張った。
★★★
「よぉ、弟よ、ご機嫌はどうだい?」
「まあまあかな兄様」
そう言いながらシュウとロクサスは教室で笑いあった。
「・・・・」
「アイツら仲いいわよね」
「そうだね」
ルミア、システィーナ、リィエルが二人を見つめるがその顔はどこか心配そうな、おびえたような顔だった、この三人は知っているのだ。この二人が戦闘を始めたらどうなるかを、しかし三人は何も言わない、3人ともシュウとロクサスに何度も救われたので嫌うことも、拒絶することもしない。
「・・・いつか本当の意味で二人とも笑えたらいいわね・・・」
「・・・うん」
そうルミアとシスティーナが話していると突然ロクサスとシュウにリィエルが口をひらく。
「ねえ・・・二人って・・・一回死んだの?」
その言葉にシュウとロクサスは少し驚いたような顔をする。
「!!・・・はあ、シュウ、口滑らせたな?」
「あれは・・・だから、作り話だって」
システィーナとルミアはこの状況についていけず、口をポカンと開いている。
「リィエル、二人が一回死んだってどうゆう事?」
「二人が死人だって言いたいの?」
システィーナとルミアがそう尋ねてくる、それに答えたのはロクサスだった。
「システィーナ、お前、 ‘‘転生者‘‘ って知ってるよな?」
「え、ええ、それって小説とかで出てくる死んで違う世界に行くっていう王道的な奴よね?」
「ああ、それだ、俺ら、まんまそれでな、もともと死んだ兄弟なんだよ」
「「・・・は?」」
2人が目を丸くする、リィエルは昨日の事で少し予想はついてたのであまり驚いた様子はなかった。
「兄様、いいの?」
「いいんだよ別に、遅かれ早かれ気付かれることだ、それに今教えたほうが面白い気がするしな・・・きひひっ」
そういうとロクサスは不敵に笑った。
「リィエルの言う通り俺たちは死んでる、王道な転生者ってやつだ、ま、王道だが俺TUEEEEEってやつだな、ただ普通の俺TUEEEEと違って、代償にメンドクセェ物があるがな」
「・・・自分で俺TUEEEEEEEっていう?普通」
「今俺が言った」
そういうとロクサスとシスティーナは笑いあった、少し空気が和んだようだ、よかった。
「・・・」にこっ
前言撤回だ、リィエルとシュウは隣りのルミアの顔を見て笑顔を引きつらせる、それに気付いたシスティーナは苦笑いをした。
「そんな顔しなくてもアンタの彼氏をとらないわよ、いらないし」
「なっ・・・!」
「はぁっ?!!!」
そういうとロクサスとルミアの顔が真っ赤になる。
「なななななな、なな、なに言ってるのシスティ!!」
「ふふふふふ、ふざけんっな!!誰がこんな女とっ!!!」
「あ・・・そ・・っ・か・・・、うん、そうだよね」
「あああああああああああああもう!!!そんな顔されたら否定しずれぇダロウガあああああああああああああああぁぁぁ!!!!」
そんな夫婦漫才のようなものを見て、システィーナ、シュウ、リィエルは同時にこう思った。
(((うっざ・・・色々な意味で)))
★★★
「……よし」
エルレイはセラが寝静まったのを見計らって、退職届を夜中に書き上げた。
「……」
先程は仮眠をとって懐かしく、温かい、そして何より辛い昔の事を夢で見てしまった。
「今思うと・・・あの面倒な代償って、魂の事だったんだ」
使えるようになって分かったことを思い返しため息をついた、あの二人はあの頃に何人も殺していたと思っていたが、まさかそれが力の代償だったなんて、夢にも思わなかった。
「……助けるためには、あの学院は足枷になっちゃう」
エルレイにとって、もうあんな辛そうなシュウを見るのは二度とゴメンだ……エルレイはそう思いながら退職届をポケットにしまった。
「辞めなきゃ…」
エルレイにとってはあの学院はこの世界で生き抜くための《利用手段》ただそれだけだった。私の味方をしてくれているシュウ、そしてエルザ、何がしたいのか分からず、理由も告げずに自分の手を汚すのはロクサス、そして自分のよく知るルミア、皆を連れて、帰るんだ。システィーナやグレンのもとへ、それにあの学院にいることは害でしかない、そう分かっている
分かっているはずなのに………
「なんで……やめたくないって、わたし思ってるんだろう」