『完結』(番外あり)ロクでなし魔術講師と帝国軍魔導騎士長エルレイ 作:エクソダス
「さ………いくぞっ───!!」
刹那───
エルレイは常人とは思えない速度で謎の女性に接近し始める。
「っ!?!?」
そのスピードは、エルレイの限界。
「いいいいいいいいいぃぃぃやああああぁぁぁ────!!!」
エルレイの剣が、容赦なく女性を斬る。
「ぐっ………」
「はあぁ!!」
間髪入れず即座にエルレイは回し蹴り、ハイキックを女性の腹部に直撃させる。
「っ!!」
しかし、相手も黙って食らっているだけではなく、的確にエルレイに攻撃を入れてくる。
「ぐぁ!!!」
エルレイはダメージを受け、その場に膝をつく。
「やるね……、さて……」
薬が欲しい薬が欲しい薬が欲しい薬が欲しい薬が欲しい薬が欲しい薬が欲しい薬が欲しい薬が欲しい薬が欲しい薬が欲しい薬が欲しいクスリガホシイクスリガホシイクスリガホシイクスリガホシイクスリガホシイクスリガホシイクスリガホシイクスリガホシイ。
「そろそろ…………限界……カナ」
エルレイのこの奥の手は、所詮麻薬に手を染める人間としてやってはならない行為。すぐに限界が来ることなんて明らかだった。
うまく口が回らない。
苦しい
「っ」
エルレイはそんな自分の体などお構いなしで女性に攻撃を加える。しかしどんどんとその攻撃には覇気がなくなっていく。
「………」
瞬足────
「ガっ!!」
女性の攻撃は殺意を増し、エルレイを壁まで飛ばす。エルレイは壁に当たり、その場で倒れ伏す。
「キキキキ……ココココココ……コレハ…ムリダネネネネネ」
体が薬によって汚染されていくのがわかる。これ以上の戦闘は無理だろう。
「…………」
ゆっくりと、力なく倒れているエルレイに女性は近づいていく。
そして…………。
ぽとり。
「………?」
女性に、突然違和感が走る。目の前が、なぜか赤く染まっている。あるべきものがそこにはない。
何故、地面に腕が、落ちている?
「っ!?!?」
ようやく状況を理解した女性は自分のなくなった肩を押さえつける。
「ったく、面倒かけんなよ」
どこからともなく、闇の中から出てきたのは一人の男だ。その男は青髪で、エルレイには見覚えがあった。
「ロク……サス?」
そう、エルレイの親友であり、
「っ!!」
どすっ………
女性はすぐさま剣を拾い上げ、ブスリ……、とロクサスの腹部に命中させる。
「めんど、
ロクサスは
「っ!」
その光景に、女性は驚愕の声を上げそうになる。
そして、ロクサスは古式拳銃を取り出す。
「お前に要はねえ、とっとと消えろ」
女性を指で『あっちにいけ』と忠告した後。
ロクサスは古式拳銃をエルレイ目掛けて発砲した。
「……ぅ」
その瞬間。エルレイの体は、まるで
「………ロクサス」
「さて。少し話すか、リィエル」
──────
────
──
「………」
謎の女性は、分が悪いと判断したのか。それとも何か別の理由か、ロクサスの言葉通り、その場を去っていた。
「ねえね………結局わたし…………くそっ」
女性の悔しそうな声が暗い付近に響き渡る。
「ありゃ、結構派手にやられちゃったね?」
「……?」
突然出てきたのは、赤髪の10代くらいの男…、シュウだった。
「大丈夫だよ、敵じゃないから」
シュウはそう言うが、女性は警戒して1、2歩下がる。
「………」
「とりあえず、傷の手当させてよ。話はそれから」
その言葉に、女性は首を振る。誰が好き好んでこんな怪しい男の話に乗るだろうか。
ぱちん
「はい、これでいいよ」
「……え」
女性が変な声を上げ、自分の体を見てみると、傷がすべて治っていた。
「
そういって、シュウはからからと笑った。その笑い顔は、どこか薄気味悪い。
「あと、少しくらいなら
「ね?こっちの世界の、
──────
────
──
「あうふ」
図書室のあたりで、エルレイはため息をついた。ロクサスにこってりと絞られて、かなり疲れた。
「それにしても……」
あの女性は何だったのか、なぜ姫と同じ剣を持っていたのか、そしてあの技を使えたのか。考えれば考えるだけ、謎が深まるばかりだった。
「……ん?」
真夜中の学院の見回りのつもりだったが、誰かいる、本を読んでいるものが一人と、その近くで眠っているものが一人。
「あ、エルレイ先生」
そこにいたのは、どうやらエルザとリィエルだったようだ。エルレイを見た瞬間、エルザは苦笑いをする。
「あはは…、すいません。こんな時間に」
「勉強熱心、いいこと。だけどやりすぐダメ」
エルレイはエルザを見てため息をつく。
「えへへ…、すいません。どうしても、エルレイ先生の自習の話聞いたら興奮しちゃって……」
居てもたってもいられなくなり、勉強をしているというわけか。エルザが真面目なのは昔から知っているが、ここまでだと少しあきれてくる。
「エルレイ先生はどうしたんですか?」
「ん、散歩けん、みまわり」
そう言って、エルレイはリィエルをおんぶする。
「あはは、エルレイ先生とリィエルって、本当に姉妹見たいですよね。すこし羨ましいです」
「姉妹……ね」
──────
────
──
「25322」
「……はい?」
突然の訳の分からない数字に、コルワは素っ頓狂な声を上げた。
「あの、その数字。何ですか?」
「Project:Revive lifeで被害を受けた人たちの人数。死人、生存者含める」
リィエルはそう言いながら書類を整理し始めた。
「えっと……」
「ん、愚痴ってほしいって言ったの。あなた」
「???」
確かに愚痴ってほしいとは言ったが、よくわからない事を言われて、コルワは頭にはてなマークを浮かべることしかできない。
「このProject:Revive lifeはね?私の
リィエルはコーヒーを飲みながら、ため息をついた。
「私が作られなければ…………イルシア姉さんも……シオン兄さんも……」
そして、リィエルはクスっと笑みを浮かべた。
「ごめん、聞かなかったことにして?」
「え?了解……しました?」
コルワにはProject:Revive lifeのことは教えていない。
あの記憶は抹消されるべきなのだ。
──────
────
──
「私に、誰かの家族になる資格なんてないよ」
私は所詮人形。
作られた人形、誰が何と言おうと、魂のない、生きる価値がない人形だ。
私が生きる価値があるというものは、あの兄妹が無駄死にだと言われているようで腹が立つ。
私が、あの二人のやってしまった汚点を、私が無くさなければ。
しかし、それは最速で、できるだけ私が早死にしなければならない。私が生きているということ自体が汚点なのだ。
そして、ルミアたちも命を懸けて守らなければならない。
だから、命を懸けても、薬や悪魔に頼っても。もっと早く…早く……。
──────
────
──
「よぉ」
刹那────
ロクサスから放たれた。世界を覆いつくしそうな火の玉は、シュウが軽く手をなびくと何もなかったかのように四散する。
「どった?兄様」
「どうしてあの女を助けた?」
「………」
ロクサスのその言葉に、シュウは言葉を失う。
「助ける義理なんてないだろ、お前には」
「…兄さまには関係ないことだよ」
シュウは、ロクサスの頭目掛けて剣を振り、頭を真っ二つにする。
しかし、真っ二つにした場所はすぐに何事もなかったように元道理になる。
「ていうか、『全知全能の本』でも見ればいいじゃん。そんなに気になるなら」
「やだ。面倒」
「全く」
ロクサスは楽しそうにかっかと笑う。シュウは呆れながらため息をつく。
──────
────
──
「………ん」
もう朝のようだ。エルレイは背伸びをし、朝の準備をしようとするが。
「………?」
重い、どこか重い。恐る恐る布団をぺらっとめくってみると、そこに現れたのは…………。
「すぅ……すぅ……」
「くぅ……ん…すぅ……」
「すぴー………」
システィーナ。ルミア。リィエルだった。
「 お も い 」
エルレイはため息しか出なかった。