『完結』(番外あり)ロクでなし魔術講師と帝国軍魔導騎士長エルレイ   作:エクソダス

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コラボ自体は終わった!
更新していきますのでよかったらこちらへ! https://syosetu.org/novel/235414/

 さてさて、今回は挿絵あります!

感想が……、ほしいです!!




決断

「ぅ……はな…れて」

 

「うにゅ……」

 

 

 エルレイは、まず上に乗っかっているリィエルをひっぺがす。

 

 

「あー………」

 

「あー、じゃない」

 

 

 リィエルは力ない声を上げながら、コロコロと地面を転がる。その光景に、エルレイは苦笑いしか出ない。

 

 

「さて…、とりま」

 

「すぅ……すぅ…」

 

「んぅ……すぅ……」

 

 

 エルレイは、一度リィエルをベッドに戻し、自分だけ布団から出て、台所に向かう。

 

 

─────

───

 

「……ん」

 

 

 エルレイが朝ごはんを作っいると、どうやらシスティーナが起きたようだ。

 

 

「あ、おはよ?」

 

「……ぁ、おはようございますエルレイ先せ…うぇええええ!!!」

 

 

 驚いた表情を見せ、システィーナは5、6歩後ずさる。

 

 

「あっ!」

 

 

 その瞬間、システィーナはバランスを崩してしまい、倒れそうになる。

 

 

「お……っと」

 

 

 しかし、即座に反応したエルレイがシスティーナの肩を抱き寄せる。

 

 

「大丈夫?」

 

「は…はい、だ、大丈夫です」

 

 

 システィーナは少し顔を赤らめながら、エルレイの腕から離れた。

 

 

「えっと、ありがとうございました」

 

「ん、大丈夫、ところで。なんで私の布団に?」

 

「え、えっと……」

 

 

 その問いに、システィーナは言いよどむ。

 

「……システィーナ、口開けて」

 

「え?」

 

 

 ひょい。

 

 

「んむっ!」

 

 

 その瞬間、システィーナの口の中にさわやかなやさしい甘味が広がる。

 

 

「卵焼き、お味はいかが?」

 

「んむっ……んっ…あっはい…おいしいです」

 

「そ、なら、食べながら、何があったか聞かせて」

 

「…………はい」

 

 

 システィーナは、少しくらい表情の中、椅子に座る。

 あとの二人は……、後でいいか。

 

 

「昨日…、シスナ先生………エルレイ先生にとっての私と、ルミアと…、話したんです」

 

「…………続けて」

 

 

 

 

 

 

─────

────

──

 

 

「さて、システィ、そろそろ帰るよ」

 

「ん、もうかえるの?」

 

 

 シスナはミアルの言葉に首をかしげる。

 

 

「ちょっと面倒なことは、ロクサスが終わらせてくれたっぽい」

 

「さすがルミア専用鬼神」

 

 

 からからと笑うシスナをよそに、ミアルは少しだけくすっと笑った。

 

 

「ふふ、でも。その前に」

 

 

 ミアルは、近くの木に微笑みながら目を向けた。

 

 

「そうね、さすがに()()()()()()()()()()()どうにかしないとね」

 

 

 その瞬間、見られていた木がビクンと跳ねる。

 

 

「あんたら、出てきなさい」

 

 

 そして、出てきたのはこちらの世界のシスティーナ。ルミア。リィエルだ。

 

 

「……ど、どうも」

 

 

 ルミアが軽くお辞儀をする。

 

 

「全く、盗み聞きするにしても、もっとばれないようにやんなきゃ駄目ですよ?」

 

 

 くすくすと笑うミアル。やはり、どこかルミアに似ている笑い方だ。

 

 

「あ、あの……シスナ先生」

 

「何?」

 

 

 恐る恐るといった表情のシスティーナに、シスナは木に背中を預けながら聞く。

 

 

「貴方と、この金髪の人って……もしかして」

 

「その解釈で間違いと思うけど、今はただの一人の講師よ」

 

 

 シスナは、片手間に本を読み始める。

 

 

「ん……」

 

 

 リィエルはただぼーっとするだけで、何も言う気配はない。

 

 

「それで、盗み聞きしてた理由は何かしら?」

 

「え、ええと……」

 

 

 システィーナが気まずそうに口をもごもごさせる。

 

 

「ねえね、いなかったから、心配だった」

 

「……なるほどね」

 

 

 ミアルはリィエルの頭を撫でながら、髪をいじる。

 

 

「それで、私たちの話声が聞こえたって訳ね。耳年増だこと」

 

「な、余計なお世話です!!」

 

 

 嫌味のようなシスナの発言に、システィーナは顔を真っ赤にして起こり始める。

 

 

「し、システィ、どうどう」

 

 

 ルミアがやさしくシスティーナをなだめる。

 

 

「あの………、一つだけいいですか」

 

「言ってみて下さい」

 

「エルレイ先生……、リィエルは、どうしてあんな性格になっちゃったんですか?」

 

「「…………」」

 

 

 ルミアの問いに、ミアルもシスナも黙り込む。

 当然といえば当然の質問だ。エルレイをリィエルとするならば、いくら何でも性格がかけ離れすぎている。何処か凶器的なまでに冷静で、手段をいとわない。それはエルレイの感情とは別のものだ。

 

 それは、エルレイの退職騒動の事件が物語っている。

 

 

「あいつは……ああなるしかなかったのよ。あの子の望む償いのためには…ね」

 

 

 シスナはそうつぶやく。

 シスナはどれだけつらくても、エルレイのやっていることや。エルレイを止めようとするミアルは絶対に止めない。なぜなら、

どちらも正しいって信じてるから。

 

 

「貴方達がリィエル…、エルレイの生徒だというのなら…()()()()()()()()()()()()()()()()()。それが…、あの子の望みのはずです」

 

 

 そう、エルレイはこの世界の人々と接し、自分が狂人だと心の底から知った。だからこそ、自分のようになってほしくないと心の底から思っているはずだ。

 

 

 

─────

────

──

 

 

「…なる」

 

 

 エルレイは、その言葉をただ聞き、そしてシティーナの頭を撫でた。

 

 

「……エルレイ………せんせい………」

 

「大丈夫、今はただの講師…、大丈夫…」

 

「私……、怖いんです…、もし、リィエルがエルレイ先生みたいになったら…」

 

 

 システィーナはエルレイ先生の事は大好きだ。いや、システィーナだけじゃない。ルミアもリィエルも。みんな大好きだ。

 だが、それはエルレイとしてであって、()()()()()()()()()()()

 

 誰もが無意識に、エルレイがリィエルだと知っているにも関わらず、別物として頭の中で分けてしまう。

 

 この世界は…、エルレイを一人のリィエル=レイフォードとして、見られていない。

 このエルレイ(リィエル)は、この世界にとっては異物でしかない。

 

 

(……ここが潮時か)

 

 

 エルレイは、ルミアやシスティーナ、リィエルの頭を撫でながら、悲しい表情を浮かべた。

 

(そろそろ、ここにいるのも限界だね)

 

 

 

─────

────

──

 

 

「えー、今日は見学者が来てるわ、みんな。きちんと勉強するように」

 

「こんにちわ♪どんな授業をしてるのか楽しみですっ」

 

 

 教室でシスナが親指でミアルを指さす。(超めんどくさそうに)

 はーい、と元気なリリィ学院の生徒の声が響いた後、ミアルは教室の後ろでニコニコしている。

 

 

(((………どうしてこうなった???)))

 

 

 エルレイ、システィーナ、ルミアの思考が完全に一致した。

 本当にどうしてこうなったのだろう、たまにミアルのやっていることがわからなくなる。

 

 

「本日はよろしくお願いしますね?エルレイ…ねえね」

 

「っ〜!」

 

 

 ミアルに耳元で囁かれ、一瞬エルレイは取り乱すが、それ以上の反応は見せなかった。

 

 

「姉御〜、今日はどっちがやんの?授業」

 

「うーん、そうね…」

 

 

 コレットの言葉に、シスナは腕を組んで考える。

 

 

「よしっ、今日は私が稽古をつけてやるわ。覚悟しなさい」

 

「ぅ…、シスナ先生の稽古ですか…」

 

 

 エルザが苦い顔を見せる。どうやら全員シスナにしごかれているようだ。目が死んでる。

 

 

「うぃーっす。ま、お手柔らかに」

 

 

 ジニーがゆるーく答える。

 

 

「アルザーノの方々はどうしますの?」

 

「勿論、そいつら込みの稽古よ。大丈夫、優しめにしてあげるから」

 

 

 そう言いながら、フランシーヌに笑みを返すシスナ。

 

 

「最初は『ショックボルト』1000発ね」

 

「「「「きついぜシスナの姉御ぉ──!!」」」」

 

 

 リリィの生徒の楽しそうな悲鳴が全体に木霊する。

 

 

「あははっ、草」

 

「えと…、いま笑う所ですか?」

 

 

 呑気に笑うミアルを横目で見て、少し引き気味に言うルミア。

 

 

「はぁ…」

 

 

 この状況に、エルレイはため息しか出ない。最近本当にため息多い気がする。

 

 

「……むっ」

 

「あれ?どうしました?」

 

 

 突然不思議そうな顔をするミアルに気づき、システィーナがミアルに目を向けて、話しかける。

 

 

「システィ…、シスナ先生。エルレイ先生。授業は始めれないかもしれませんよ」

 

「そうね」

 

「ん」

 

 

 突然のミアルの問に、シスナ、エルレイは軽く答える。

 

 

「えっ?一体どういう…。」

 

 

 一人の生徒がその理由を聞こうとした────次の瞬間。

 

バンッっ!!!

 

 突如、黒服のコートを着て、フードで顔を隠した男が約数人。

 

 

「なっ!なに?!」

 

 

 咄嗟のことで、エルザは反射的に刀を手に取ろうとする。だが、シスナに腕をつかまれ静止した。

 

 

「エルザ、待ちなさい。あんた達、何のよう?」

 

 

 シスナが威圧するかの様に睨みつけると、ボスであろう者が話しかけてくる。

 

 

「我々は、ルミア=ティンジェルにようがある」

 

「なるほど」

 

 

 エルレイは、その言葉を聞き呆れる。ルミアの力を欲するやつ多すぎだろ……。

 

 

「……」

 

「私が行く、過去の私(あなた)は待っていて」

 

 

 ミアルは、ポンポンとシスティーナ、ルミア。リィエルの頭を撫でてから、男たちの目の前に立つ。

 

 

「私です。私がルミアです」

 

「は?はっはっは!!!まだ幼いらしいぞ、正義の味方気取りはやめるんだな」

 

 

 ルミアを狙う者たちは、ゲラゲラと大きな声で笑い出す。

 

 

「金髪のねーちゃん。ホントのことを教えてくれないかなー?さもない───」

 

 

 

 

 

 その瞬間、その男は一人動かなくなった。

 

「お、おい。どうした?」 

 

 

 男の仲間が、動かなくなった者に近づく。

 

 

「き、気絶してる!」

 

「「「「っつ?!?!」」」」

 

 

 ミアルの実力を知っているエルレイとシスナ以外は、声にならない驚愕をひねり出す。

 いったいなにが…?

 

 

「それで…、私はなにをされちゃうんでしょう」

 

 

 そのからかうような顔は何処かの狂気的で、最悪トラウマになってしまいそうな顔だ。

 

 

「ったく、相変わらず《強引ね》」

 

 

 刹那───

 突然、どこからともなくゲイルブロウが気絶した男を軽々しくふわり…、と動かし、他の男へ直撃。

 

 

「ぐっぅ!!!」

 

「やっ」

 

  

 間髪を入れず、早くも錬成を完成させていたエルレイは、男たちを的確に、気絶させるように仕向ける。

 

 

「……ったく、コイツらといると、いつもいつも…」

 

 シスナは『めんどくせ…』と心の中で思いながら、軽々と戦闘を開始する。

 

 

「こ、こいつら…」

 

「や、やべえぞ…!」

 

「に、にげ…!」

 

 

 次の瞬間。学院が光だし、魔法陣が展開される。

 

 

「なっ?!」

 

 

 これをやったのはミアルだ。怪しい者たちを隔離に成功…。後は…。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「「潰すだけ」」

 

 

 

 考えることは同じなエルレイとミアル。その顔は何処か恐怖を駆り立て、クラスの人間でさえも恐れてしまう。

  

 

「…………はぁ」

 

 

 シスナはまるでいつもの事かのように、ため息をついた。

 

 

 

───

──

 

 

 その後。なんやかんやあって、結局退学を回避できたリィエル。

  というわけで、全員揃ってリィエル達の『お帰りパーティー』が学院の図書室で行われていた。

 

 

「「「「「おつかねえねイェェアァァ!!!!」」」」」

 

「か、乾杯の掛け声が………変」

 

 

 変な掛け声をする自分の生徒たちに、少し苦笑いで、しかしどこか恥ずかし気な表情を見せるエルレイ。

 

 

「レイちゃんお疲れ様!リィエルとシスティーナちゃん、ルミアちゃんもよく頑張ったね!」

 

 

 セラは三人の頭をよしよしと撫でまくる。

 

 

「ん」

 

「せ、セラ先生!子供扱いしないでください!」

 

「えー、だって子供だよ?」

 

 

 セラはそう言いながら微笑みを浮かべる。このような天然はセラの専売特許だろう。

 

 

「エルレイ、お疲れ」

 

「………ん」

 

 

 グレンの言葉に、エルレイは軽く返す。

 

 

「おい、どうした?」

 

「………別に」

 

 

 エルレイはグレンにそっぽを向いて、あたりのみんなを見渡す。

 ワイワイガヤガヤと、そんな音が聞こえてきそうなほどはしゃいでいる。

 

 

(…………やはり潮時、これ以上は)

 

「グレン」

 

「あ?」

 

「いつもありがと」

 

「なんだそりゃ、成長したお前にさ。感謝なんて言われる筋合いはねえよ。すべてお前の努力だ」

 

「ん……………あり……がと」

 

 

 

 

────

───

 

 

 

 

「……………揃った」

 

 

 真っ暗な夜中の倉庫、エルレイは全員が来るのを待ってから呟いた。

 今ここにいるのは、エザリー、シュウ、ミアル、ロクサス、シスナの未来組が勢ぞろいだ。

 

 

「騎士長、全員揃いました」

 

「ん」

 

 

 エザリーの言葉に、エルレイは頷く。

 

 

「さて、呼んだ理由、わかる?」

 

「当然だよ。そろそろ()()()()()()()()()()()()。でしょ?」

 

 

 エルレイの問いに、チョコレートを頬張りながら答えるシュウ。

 

 

「よろし、エルザ」

 

「はっ」

 

 

 エザリーは地図を広げ、一つの場所に小石を置いた。

 

 

「調べた結果、ここに我々の倒すべき敵がいます」

 

「その敵って、何か聞いていいかな?」

 

「Project:Revive lifeの()()()、ライネルです」

 

 

 ミアルの問いに、エザリーは淡々と答える。

 

 

「リィエル、仕留めそこなったのか」

 

「違う」

 

 

 エルレイはロクサスの言葉を否定する。

 

 

「このライネルは、こっちの世界じゃなく、私たち()()のライネル」

 

「あー、そういえばあいつ生かしてたな」

 

 

 すっかり忘れていた。と言わんばかりにロクサスはため息をついた。

 

 

「シュウ、手紙の送り主は、私…、この世界のリィエルの未来、でいいんだよね」

 

「うん。どうにか心を開かせて教えてもらった。この世界の成長したリィエルにね」

 

 

 エルザにチョコレートを渡しながら言うシュウ。

 

 

「手紙の送り主が俺たちをここに呼んだ理由は、『未来で知り合ったねえねが悲しそうで、それを変えたいと願った』らしい」

 

 

「ライネルの目的は、多分ルミアでしょうね」

 

 

 シスナはボソッとため息をつく。

 

 

「なら、ライネルを殺してから。そのままこの世界とはおさらばしようぜ」

 

「ん……」

 

 

 エルレイは少し悲しそうに頷く。

 エルレイはこの世界に良すぎた。だからこそ『この世界の未来リィエル』が、その依存から私を呼び出し、どうやってかライネルがそのあとをつけてきた。

 だから、エルレイ=レイフォードがとれる最善策は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これ以上、ここには居座らないで、さっさと帰ることだ。

 

 

 

 




さて、突然だと思われるかもしれませんが、このシリーズは9巻には突入せず、次回からの最終章で実質的に終わりを迎えます。
 この作品を閲覧、本当にありがとうございます。

 よろしければ後数話だけ、お付き合いください。

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