『完結』(番外あり)ロクでなし魔術講師と帝国軍魔導騎士長エルレイ 作:エクソダス
「…お前ら、先に行け、時間は稼ぐ」
「え?グレン先生?!なぜ?!」
突然のグレンの発言により、システィーナは声を荒げる。グレンは今この瞬間、対峙したことで気が付いたのだ。この少年二人の
その異常性は、グレンたちでは絶対に勝てないと理解してしまったのだ。
「大丈夫、すぐ追いつくよ」
そう言いながら、セラは3人に微笑みを浮かべる。セラも理解しているのだ。本気でやっても、おそらく勝てる相手じゃないと。だからこそ、自分の生徒たちに後の事を託す。
「……」
「……二人とも、行こう」
その場で、すぐにシスティーナとリィエルの後押しをしたのはルミアだった。
「先生二人がこういってるんだもん、信じるのが生徒…、でしょ?」
「………ん」
リィエルはシュウとロクサスに集中するのをやめ、誰にも目をくれず突っ走る。
「………先生方」
システィーナのか細い声が、グレンとセラの耳に届く、2人は何も言わず、ただシスティーナの顔を見る。
「この人たちは…お願いします」
「…任せろ」
「…うんっ」
その言葉を聞いた瞬間、二人に笑顔の花が咲く。
そしてすぐさま、システィーナとルミアは、リィエルの後を追うべく走った。
「……あいつらの後を追わねえんだな」
「はい、追う必要性がないので」
グレンの問いに、シュウは楽しそうにくすくすと笑う。
「ふっ、皮肉なもんだな。こんな状況になんなきゃ…、恩師に手をかけずに済んだの似よ」
「…恩師?」
「グレン=レーダスの事さ」
ロクサスは拳銃を手遊びしながら話をつづける。
「なんだかんだ言っても、アンタには世話になったからな」
「だね、この人がいなかったら。僕も魔術なんて嫌いになってた」
「まさか……お前らも………」
グレンが聞き返そうとした瞬間。
グレンの首筋にシュウの剣先が触れそうになる。
「っ!」
どうにか察知したグレンは、当たる直前で体をずらし、どうにか攻撃を避けることに成功した。
「無駄話はそこまでです。あなた方がリィエルの意思に従って行動するように、僕たちも
「おっと、悪いが俺は違うぞ?
「……そっか」
その言葉を聞き、セラはやさしく、しかし儚げに笑った。
「…なんだ?」
「君たちが、
「…………はっ、ほざけ」
ロクサスは即座に拳銃をセラに向ける。セラもスッと表情が変わり、構える。
「さぁ」
「始めましょうか」
──────
────
──
─
「こんにちわ、過去の私たち。ま、歓迎はしないけどね」
「シスナ先生……」
3人の前にいるのは合計で4人、シスナ、ミアル、エザリー。そしてエルレイだ。
シスナは古びた椅子に腰を掛け、ミアルはその背後に立っている。
エルレイは遠くで精神統一をしていて、エザリーはその近くにいる。
「悪いことはいいません。とっとと学院にもどってください」
ミアルはそう言いながら、ピッと外のほうを指さした。
「エザリーさんからもう理由は聞いたはずです」
「………」
「…はい、聞いています」
リィエルが口を開けずにいる中、ルミアが口を開く。どこか決心したような目で。
「ですが!もう一度だけ!エルレイ先生と話させて下さい!」
システィーナの必死の懇願に、シスナは少し嫌そうな吐息を漏らす。
シスナだって、彼女たちの気持ちはわかっているつもりだ。いや、自分自身なのだ、わかってしまう。
「………いいわ。リィエル、きなさい」
「…………ん」
精神統一していたエルレイが、リィエル達に近づいてくる。その目はどこか赤く、まるで先ほどまで泣いていたかのようだ。
「……ねえね、い───」
刹那────
「「「っ!!」」」
エルレイは即座に生成した大剣をリィエルの首に突きつける。
「……ねえ…ね」
「前に言った、貴方達は邪魔」
エルレイは淡々と言っているようだが、その声はどこか震えていて、悲しそうだ。
「ねえね……、わたし…きらい?」
「……嫌い」
リィエルの問いに、エルレイは鋭い目で答えた。
「きらい、嫌い、キライ。貴方達全員キライ。システィーナも、ルミアも……リィエルも」
エルレイは全員の名前を呼びながら、言葉をつづける。
「貴方達といると………、私はおかしくなる」
エルレイはふと、自分の持っている大剣に力を入れる。
「貴方達といると……錯覚する。私が…
「……エルレイ先生」
悲しそうな眼をするシスティーナを、ミアルが背中をさする。
「幸せになっちゃ……、いけない。まだ……、何も終わってないの」
エルレイは、何度も目をこすりながら、震えた声を振り絞る。
「あの兄妹の償いも、私のやるべきことも…、何も…、それなのに……」
エルレイの目に、ぽろぽろと涙がこぼれる。
「こんな………、別世界の幸せなんて………認めないっ!!!!」
エルレイはついに泣き崩れてしまう、苦しいのだ。この世界と別れるのが、苦しくて苦しくて仕方がない。
「私はどうすればよかったんだっ‼‼私はただ……大切な人に傷ついてほしくないだけなのに‼」
エルレイは叫ぶ、まるで全てを吐き出すように。
「この世界に来て……
幸せ、それはこの世界にきたエルレイのすべてを繋げる言葉。この世界が本当に平和で幸せだったと、心から思った。
「そして……、素敵な人生の
エルレイは、1枚のトランプを見ながらそうつぶやく。それは、どこか自分と似ているようで、かけ離れている少女の記憶。
「そして……、
エルレイは、ポケットから何かを取り出す。それは、ビルデネアで開発された。ビルドドライバーという、エルレイがずっと兵器だと思っていたものだ。
「でも……、私は…、正義の味方になりたいわけでも…、幸せな人生を歩みたいわけでもないっ……」
「……エルレイ先生」
震えているエルレイの姿を見て、ルミアはつい声が出る。
「私は……、みんなに傷ついてほしくない………、ただそれだけ。それ以上の感情はないはずなのに…………」
「幸せになりたいって………、願ってしまう」
「なら、それでいい」
「え?」
突然のリィエルの言葉に、エルレイは間抜けな声を上げる。
「わたし……、馬鹿だけど、ねえねのやりたいようにやるの…一番だと思うから」
「……はい、私たちは。別にエルレイ先生を止めに来たんじゃありません」
「ただ、ありがとうございましたって……伝えに来ただけです」
エルレイは驚きを隠せなかった。何せずっと止められると思っていたからだ。
「……なんで。あなたたちは、馬鹿正直に私を………そこまで信頼できるの………?」
「なんでって……」
「そんなの…決まってますよ?」
「ん」
────
──
─
「はあ…………はぁ」
「くっ」
「そろそろ終わらせよう、シュウ」
「そうだね。兄さま」
膝をつくグレンとセラの前で、ロクサスは面倒くさそうに言う。シュウはそれに同意するかの如く、最後の一撃の体制に入る。
「………まだ……だ」
しかし、それでもなお。グレンは立ち上がった。
グレンだけではない。
「まだ……」
セラもだ。
シュウはあきれたようにため息をつく。
「あの、そろそろあきらめてくれませんかね?これ以上は手加減できませんよ?」
「……へっ…、上等だよ」
その威勢のいい言葉に、シュウは舌打ちをする。
「なぜ、そこまでアイツにこだわる?一体どうしてだ?」
ロクサスが、理解できなさそうに言葉を口にする。
「えへへっ…………そんなの決まってるでしょ?」
「ああ………」
「「「「「エルレイねえねの事が……大好きだから」」」」」
──────
───
─
「っ………」
エルレイはその言葉に、体を震わして口元を抑える。
幸せを認めたくない。でも幸せ。大切な人を守りたいから貴方達が邪魔、そんな言葉をすべて………この少女たちは認めてくれたのだ。
「ただし、また会いに行きますからね!何があっても」
そう言って、システィーナはまるで意地悪な友達のようにくすくすと笑う。
「はい!何があっても…!」
「ん。また、ねえねって…よぶ」
それにつられるように、ルミアもリィエルも笑った。
「………」
「……ふっ、一本取られたね」
エザリーは、何処か楽しそうに笑う。
「まさか、力づくで連れて帰ろうとすると思ってたのに、
「まったくだね」
そう言いながら、くすくすとシスナとミアルは笑った。
「………やっぱ、みんなキライ」
そう言いながら、エルレイは苦笑いを浮かべた。
「…それじゃ、約束。今度会ったとき、力づくで、私を講師にもどしてみて」
そう言いながら、エルレイはリィエルの頭をガシガシと撫でる。
「ま、殺戮人形の私を……できるものなら…だけど」
「ん……よくわからないけど……頑張る」
「目にもの見せてやりますよ!」
「覚悟しててくださいねっ♪」
そして、エルレイはリィエル。システィーナ。ルミアを抱きしめた。エルレイにとっては最後のつもりだ………。
今のところは。
「それじゃ、
「ん、
エルレイは、二度と会うことはないだろうという思いを込めて。
リィエルはもう一度会うという思いを込めて。
いちごタルトを渡し合った。
────
──
─
「……ねぇ、これでよかったんだよね」
「 い い わ け な い 」
帰ってきた6人は、草むらに寝っ転がりながら話をしていた。
変な顔をするリィエルに、エルザは苦笑いを浮かべる。
「あいつら、二度と会いたくない」
あいつらというのは、あの学院で知り合った者達の事だ。
リィエルは会おうとは思わない。自分の使命。イルシアとシオンの償い。そしてルミアたち、大切な人を助ける使命があるのだから。
「それにしては、すがすがしそうだね」
「…む」
シュウにそう言われ、リィエルは不貞腐れる。
「からかってやるなよ、エルレイねえねをよ」
「そうだよ?エルレイねえねが可愛そうでしょ?」
「ルミア、ロクサス。後で死」
リィエルはエルザの刀を奪い取り、二人に向けて構える。
「あんたら、ここで血だまり作られても面倒だから風呂場でやりなさい」
「少しは助けろ?」
システィーナの容赦のない物言いに、ロクサスとルミアはジト目をする。
「……ふふっ」
「どうしたの?」
「いや…別に」
いつまでこんな日常が続くかわからない、が。それでもリィエルには少しだけ、
生きる価値を見出した。償いや誰かを守るためではなく。
それは自分の生徒に、また会えるかも…というよくわからない。
─────
───
─
「ついに……この日が来た」
「ええ」
ある暗闇で、3人の女性たちは笑いあった。その女性たちは、一人は銀髪の猫のようなリボンをつけている女性。
もう一人は金髪のおしとやかそうな女性。
そしてもう一人、青髪の眠そうな女性だ。
「ルミア、アンタが
「なにそれ?もうちょっと感謝してよ」
そう言いながら、金髪の女性と銀髪の女性は笑いあう。
青髪の女性は、どうでもよさげにサクサクと赤い何かを食べている。
「………ん。はじめよ」
「ええ」
「だね」
そして、青髪の女性は……何か魔力の籠った
「さ、ねえね。強引に連れ戻す」