荒野の番犬   作:ジャック伍長

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第五章 GALM 2

空戦を終えたのち俺は羽衣丸へ向かっていた。正確に言えば『俺たち』だが。振り向いて左後方に目をやると赤い主翼が見える。相変わらず正確な操縦で俺との距離を保ちながら着いてきている。違うのは機体がイーグルではなく飛燕だというくらいだった。

<<ピクシー チャンネルを変えるぞ>>

そう言ってピクシーに羽衣丸との交信に使用している周波数を教えてチャンネルを変えた。すぐにサネアツ副船長の声が聞こえた。

<<あぁやっと繋がった…急に通じなくなったから墜ちたんじゃないかと心配してたんだよ>>

<<すまないな副船長 昔馴染みが空賊に襲われてたもんでな 一緒に降りても大丈夫か?>>

<<大丈夫だけど…悪い人じゃないよね?>>

<<大丈夫だ… 多分な>>

交信を終了して羽衣丸の船尾に接近する。後部ドアが開いて飛行甲板が見えてくる。前の空戦では空の駅に不時着したので久しぶりの着艦だ。機速を下げていきフラップとギアを展開する。

羽衣丸のトンネル型の飛行甲板に飛び込むたびにアヴァロンダムのトンネルに潜ったことを思い出す。穴のサイズ自体はアヴァロンよりも小さかったがこちらの方は攻撃もしてこないし燃料ある限りやり直しがきく分簡単に思えた。

だんだんと飛行甲板の後端に近づいていく。少し飛び出た後部ランプに向かって機体を操作していく。羽衣丸の後部で一瞬視界が暗くなった瞬間にキュッとタイヤが甲板を擦る音がする。スロットルを絞りフットペダルを踏み込んでゆっくりとブレーキをかけていく。

甲板の中程の駐機スペースに差し掛かるあたりで機体を完全に停止させ燃料を遮断してエンジンを切ると整備班が近寄って来て駐機スポットに移動する準備を始めた。いつ見ても素早く訓練されたいい動きだと思った。ヴァレー基地の整備班と同等かそれ以上の統率された動きだった。

シートベルトを外して機体から降りようとしたところでナツオ班長が機体に登ってきて頭を叩かれた。

「このばかたれ!組んだばかりの機体でいきなり全開の空戦する奴がいるか!」

「悪い班長…でも班長だって『弾も装填済みだ』って言ってたろ」

「あれは万が一絡まれたときにためだ!慣らし飛行であそこまでやる奴がどこにいるってんだ!」

「…悪い」

怒鳴りつける班長に言い返す事も出来なかった。ふと目を別な方向に向けると自機の整備に来ていたであろうキリエとチカがこちらを見てニヤニヤと笑みを浮かべていた。まるで同類を見つけたかのような笑顔だった。

駐機スポットに着いた機体から降りると次の機体くるぞという整備班の声が聞こえた。その声を聞いて飛行甲板の後ろ側に目を向けると飛行甲板に近づいてくる機影が見えている。やがて機影が大きくなっていって甲板に脚をつけた。夢でも幻でもなく間違いなくそこにその機体は存在している。

俺の近くで右翼を赤く染めた機体が停止して男が飛行甲板に降りたった。

「サイファー、久しぶりだな」

そう声をかけてきた懐かしい声のその男を思わず俺は思い切り殴りつけていた。先程まで俺を見て笑っていたキリエとチカが驚きの声をあげるのが聞こえた。二人だけではなく整備作業をしていた整備班もこちらに視線を向けていた。俺に殴られた左頬を押さえながらピクシーが言った。

「ひさびさに会った相棒にずいぶん手荒い歓迎をするんだな相棒」

甲板に倒れているピクシーに手を差し伸べながら俺は言った。

「これはあの日俺に無断で隊を離脱した分だ、これで全部チャラにしてやる」

ピクシーが俺の伸ばした手を掴んで立ち上がる。その光景を見ていたキリエの声が耳に入ってくる。

「え、どういうこと?」

 

副船長にピクシーのことを話すと頭を抱えながらもピクシーのラハマへの同乗を許可してくれた。流石に副船長に色々迷惑をかけすぎたかもしれないと思ってきた。

ラハマまではもう目と鼻の先と言う距離まで来ている。副船長のところへ行った後ピクシーと二人で俺の船室にやってきた。ここなら落ち着いて話ができる。

「で、どうしてお前がこの世界にいるんだ?ピクシー」

前置きもせず本題に入る。ピクシーが口を開いた。

「アヴァロンダムでお前と交差した直後に目の前に突然『穴』みたいなのが現れてな、躱すことも出来ずに突っ込んで気がついたらこの世界の空を飛んでたんだ」

こいつも俺と同じだった。続けてピクシーが口を開く。

「とはいえお前が与えたダメージでそれ以上飛ぶのは無理だった。相変わらず正確な攻撃だったな。俺の完敗だ」

ピクシーが苦笑しながらそう言った。

「そりゃどうも。で?その後はどうしたんだ?」

続きを早く言うようにピクシーに催促する。

「そのまま墜ちようかとも思ったんだが…生存本能ってやつかな、気がつけばレバーを引いて機体から脱出していた。痛む身体を引きずって彷徨ってたところを近くの街の奴らに助けられたんだ」

ピクシーが今まで見たことのない優しい目でこちらを見た。

「相棒、俺はお前に感謝してるんだ。あの時止めてくれてありがとう」

そう言ったこいつの顔つきはとても穏やかだった。昔のこいつとはどこか違ってた。

「らしくないじゃないかピクシー、あの皮肉屋のお前はどこへ行ったんだ?」

「まあ…俺も少しは歳をとって落ち着いたとでも思ってくれ。お前の方はどうしてたんだ?」

さっき俺に殴られた左頬をさすりながらピクシーが聞いてきた。

「あの戦いから1年くらいはヴァレーに居たよ。それでお前と同じように穴に飛び込んでこっちに来たって訳だ」

「なるほど、奇妙な縁だな。かつて袂を分かった者が同じ世界に飛ばされるなんてな」

こうして別世界で顔を合わせるのはピクシーが言うとおり奇妙ではあった。何者かが作為的に俺たちをこの世界に飛ばしたとも考えられなくはないがそんな事ができるものなのだろうか。そんな事を考えていると再びピクシーが口を開いた

「にしてもお前がオウニ商会なんてでかいところで飛んでるとは思わなかったな」

「今回だけの雇われだよ。色々なとこで飛びながら帰る方法を調べてる。そういうお前は今何やってるんだ?」

そう俺が聞き返すと何も言わずピクシーが奥の座敷になってるところを指差した。どういう意味か分からなかった。座敷には机と棚くらいしか置いてない。

「あー…家具職人とかか?」

「違う、どうしてそうなる…その机の上に乗ってる方だ」

ピクシーに言われて机の上を見ると本が3冊置いてある。俺がポロッカの書店で買った本だ。余計に頭が混乱してきた。

「まさか作家か?…お前が?」

「そのまさかだよ。その机にあるうちの一つ、『グッドフェロー』って著者が俺だ」

思わず笑ってしまう。こいつが本を書いて売るようなことをするとは思っても見なかった。

「お前は書く側じゃなく読む側だろう」

「笑うなよ。あの戦いの後で色々思ったんだ。生き残ったからには実際に色々なところを訪れて境目の意味を探すのもいいかもしれないってな。…流石に笑いすぎだろ相棒」

未だに笑いが止まらない俺を見てピクシーが眉をしかめた。なんとか笑うのを抑える。

「は〜…久々に笑わせてもらったよ。なんだかお前を墜とした事に悩んでたのがバカらしくなってきた。じゃあ再会を記念して一杯飲みに行くか。『グッドフェロー先生』?」

「茶化すなよ相棒。じゃあ久々に奢ってもらおうか。相変わらずお前は稼いでるみたいだしな」

そうして二人で船室を出てサルーンへ向かった。もうあの悪夢は見なくなりそうだ。

 

サルーンの扉を開けるいつもどおりコトブキがいた。その近くのテーブルにピクシーと一緒に着いてリリコにビールを注文した。すぐに彼女がジョッキを持ってきたが、俺たちのテーブルにビールが着いた途端にキリエとチカから質問攻めにあった。

「サイファー!穴の向こうから来たってほんと!?海ってどんな感じ!?サカナとか食べたことある!?」

「穴の向こうにアノマロカリスっている!?ていうかそのおっさん何者!?」

いきなりの二人からの質問攻めに答えを返すことが出来なかった。たじろいでいるとレオナが二人を制止した。

「二人ともやめないか。すまないなサイファー、一応コトブキのみんなには話したんだが」

「ありがとう。まあそりゃあこうなるよな」

「相棒、彼女達がコトブキか?」

ピクシーが彼女たちを見て聞いてきた。

「そういえば自己紹介がまだだったな。こいつはピクシー、俺の仲間だ。前に話した喧嘩別れした奴がこいつだ」

「よろしく頼む。歴戦の用心棒って聞いてたからどんなアマゾネスかと思ったら案外若いんだな」

ピクシーが手を差し出してレオナと握手する。その後レオナが他のメンバーを紹介した。一通り終わってから彼女達に自分達のことを話し始める。

「で、まあレオナにも言ったが穴の向こうから来たってのは本当だ」

そうして俺は遭難した時にレオナに話したことをコトブキに語り始めた。ひととおり話し終えたがやはり少し困惑しているようだった。

「以前イケスカで穴を見たとはいえ実際に目の前に穴の向こうから来たという人物がいるのは奇妙なものですわね」

エンマが紅茶に口をつけながら言った。

「アレンの研究にはなかった情報、興味深い」

「私たちが知ってるユーハングとはだいぶ違うみたいね」

ケイトとザラがそう言った後にキリエが質問する。

「でもさ、変じゃない?同じ世界の二人が別々のタイミングでイジツにやってくるなんて」

「たまたまじゃないの?」

「えー、でもそんなたまたまある?」

キリエが言った言葉が少し気になった。たしかに俺とピクシーが時間は違えど同じ世界に迷い込んだのは少し気になっていた。だが外部からあの穴を操作するなんてことが出来るだろうか。

「サイファーはラハマに着いたらどうする?」

レオナが今後の動きを聞いてきた。

「とりあえずはマダムに事を話すのとケイトの兄さんに会ってみるかな。ピクシー、お前はどうする?」

「こうしてまた会ったのも何かの縁だろうしな。しばらく執筆は止めてお前に着いて行くよ」

ピクシーがビールをを口に運ぶ。一人でも今までやってはこれたがこいつが2番機になってくれるならこれほど心強いことはなかった。

「というわけでまずはマダムに会う。今回の報酬も受け取らなきゃいけないし」

「そうか。マダムならきっと力になってくれると思う」

レオナが自分のコップに口をつける。少し不安な気もしたがなるようになると思うしか無かった。

 

船室で荷物をまとめていると羽衣丸が高度を下げ始めた。長く感じられた旅路がようやく終わる。往復合わせて1週間程度しか経っていないのにとてつもない長旅に思えた。

地上に着いた羽衣丸に係留作業が行われてタラップが装着される。降りるためにピクシーと共に船橋で待っているとそこにキリエとエンマもいた。キリエのボヤキが聞こえる。

「あーもう今回疲れたよ…いつも以上に空賊襲ってくるしさ〜」

「招かれざる客こそ多く来るものですのよキリエ。私が今までの人生の中で思い知らされた教訓です」

そんな二人の会話を聞いているとタラップからマダムルゥルゥが上がってくるのが見えた。手には新聞のようなものを持っている。

「あらちょうどいいわねサイファー。ちょっと社長室まで来てちょうだい。キリエ、副船長とレオナに社長室に来るように伝えてもらえる?」

「はーい」

疲れのせいかいつもどおりかは分からないが間延びした返事をしてキリエがレオナを呼びに行く。俺はマダムの後に着いて社長室へとやってきた。マダムがデスクについて細長いパイプに火をつける。すぐあとに副船長が入室した。

「失礼します」

程なくしてノックが聞こえてレオナが入って来る。

「すみませんマダム。遅れました」

彼女が入室するとマダムがパイプを置いて先ほど見かけた新聞を机に置いた。

「三人を呼んだのは他でもないわ。今後のことについてよ」

「今後のことですか…?」

副船長が聞き返す。彼を呼ぶということは羽衣丸に関わる重要なことのようだ。

「その新聞の一面を見てちょうだい」

マダムに言われて副船長が新聞を取る。俺とレオナもその新聞に目をやる。 一面にはサクラガオカ騎士団という組織が襲撃を受けたという記事がデカデカと載っていた。写真を見る限り拠点にしている街ごと手酷くやられたようだ。

都市が攻撃を受けるということはこの世界では珍しい、だがこの記事が俺たちの今後にどう関係しているのだろうか。

「見ての通りサクラガオカ騎士団が攻撃を受けたわ。そしてその前日に新聞社にに声明文が送られてきてたそうよ。」

マダムが声明文の写しを副船長に渡して読み上げるよう言った。

「えーなになに、『我々は自由博愛連合の正統なる後継者である。現在イケスカで堕落している自由博愛連合を名乗る組織を我々は認めない。議長イサオの思いを継ぎ世界を正すべく我々は立ち上がった。先の戦いで自由博愛連合に反抗した都市、組織は世界の平和と安寧を求めるものにとっての敵である。我々はこれらの敵に対して宣戦を布告する』これって…」

「書いてある通りよ。つまりラハマも我々も狙われるということよ」

マダムが再びパイプに火をつけながら忌々しそうに言った。声明文だけならただの脅しだと思えたが、この写真を見る限り彼らは本気のようだ。

「等のイケスカの自由博愛連合はなんと?」

「知らぬ存ぜぬよ。イケスカも一切関係ないと言い張ってるわ」

マダムが口から紫煙を吐き出す。

「ここからが本題。一つ目は今後の輸送業務のこと。これは通常通り行うわ」

「しかしこの状況で通常通り輸送するのは危険すぎませんか…」

副船長が心配そうに言った。マダムが話を続ける。

「危険は承知よ、羽衣丸の乗組員には危険手当も出すわ。その上で二つ目。現状羽衣丸の護衛はコトブキ一隊だけれど増やそうと思うの」

そう言ったマダムにレオナが疑問を投げかける。

「また六人の隊を増やすという事ですか?」

紫煙を吐きながらマダムが答える。

「流石にもう六人増やすのは手間がかかるし費用もかかるわ。できるなら二人ぐらいがベストね」

そう言ってマダムが机から契約書を取り出して俺に向けて机の上に置く。

「今回の輸送で契約を打ち切ってもいいし、これからもしばらくオウニ商会にいてもいいし、自由に選びなさい。返事はすぐじゃなくていいわ」

答えはもう決まっていた。だがマダムの机にあるペンを借りて書類にサインしようとするとマダムが呼び止めた。

「もしサインをするのであれば、私にあなたの事をちゃんと教えてちょうだい。全てね」

「全てですか」

「そう全て、これはあなた達を守る意味でも必要な事なの」

そう言われて俺はレオナに話した事をマダムに語った。この人なら大丈夫だろうと思いながら。

「できれば最初の契約の時に素直に話してもらいたかったわね。まあいいわ」

書類にサインをして彼女に言った。

「またしばらく世話になることにします。今度は二人でね」

書類をマダムに返す。マダムが受け取って机の中にしまった。

「次の輸送は5日後、アレシマ行きよ。それまでは色々準備しててちょうだい」

そう言われて俺たちは社長室を後にした。

「さて…これからどうするかな」

俺がそうぼやくとレオナが言った。

「そういえば私はみんなにこのことを話したら頭の検査のために病院に一度行くんだが一緒に来るか?アレンに会ってみるんだろう?」

「そうだな…一度色々聞いてみたいと思ってたし…そっちがよければついて行くよ」

「わかった。みんなにさっきのことを話してくるまで船内で待っててくれ」

そう言ってレオナは船室の方へ向かった。船橋の入り口に向かうとピクシーが待っていた。

「よう、話ってのはなんだったんだ?」

そう聞いてきたピクシーに俺はさっきマダムから聞かされた話を聞かせた。

「って訳でまだしばらくラハマを拠点にオウニ商会で働くことになった。次は5日後だ。俺一人で決めて悪いな。」

「どのみち俺はお前について行く…とは言ったんだがサイファー、少しラハマを離れてもいいか?」

よくよく考えればこいつとはさっき不意に会ったばかりで何も整理できていないのだった。

「大丈夫だ。次の出航に間に合うなら構わない」

「じゃあ一度離れさせてもらう。3日後には戻ってくる」

そう言ってピクシーは船橋から降りて羽衣丸から降ろされた自分の飛燕に向かっていった。

 

ピクシーと別れて船橋で待っているとレオナがザラとケイトを連れてやってきた。

「すまない、待たせた」

「来たか、案内頼むよ」

彼女達をの後をついてラハマの病院へと向かう。ポロッカを見た後だとすごいこじんまりとした街に思える。ふと前を歩くケイトに目がいった。疑問に思ったことを彼女に聞いてみる。

「そういえばケイトの兄さんはなんで入院してるんだ?」

「アレンは以前、穴を研究するための飛行中にイサオから攻撃を受けた。その不時着時の怪我で現在下肢が不自由」

「治りそうにないのか?」

「完治の見込みは少ない」

感情が表に出ず淡々と俺質問に答える彼女だが心の中ではどう思っているのだろうか。

「そういえばイサオってのは名前はよく聞くけど実際はどんなやつだったんだ?」

その問い答えたのはザラだ。

「飄々としてて人の痛みが分からないような人だったわね。ただ戦闘機の腕前だけは飛び抜けてたわ」

そう言ったザラに続いてレオナが言った。

「私は彼に一度助けられて…そして一度墜とされた。…私を助けてくれた時の彼があんなことをする人だとは思えなかったが…」

彼に墜とされたことを話すレオナの顔はどこか悲しげだった。

「…彼に憧れてたのか?」

「憧れか…そうかもしれないな。あの背中に追いついてみたいと思ったのも確かだ」

「今はレオナが追いかけられる側だものね」

「追いかけられる側?」

「ああ、ユーカ達のことか」

聞いてみればレオナの孤児院の後輩がハルカゼという飛行隊を立ち上げたそうだ。そんなことを話しているうちに病院に着いた。

「それじゃあ私はここで。サイファーはケイトに着いてアレンのところへ行ってくれ」

「ああ、お大事に」

レオナとザラを受付に残してケイトに続いて入院棟の方に向かった。少し歩いて一階の部屋の前でケイトが扉を開ける。中には病院着を着た銀髪の男がベッドに腰掛けていた。

「おかえりケイト。そっちの男の人は誰だい?」

「サイファー、今オウニ商会に所属している戦闘機パイロット、穴の向こうから来た」

ケイトが俺のことを彼に紹介する。

「サイファーだ。よろしく」

右手を彼に差し出すと彼が握り返す。

「よろしくサイファー、穴の向こうから来たってのは本当なのかい?」

「本当だ、ただしユーハングから来たわけじゃないんだ」

そう言うと彼の目が輝いた。

「穴が別の世界に繋がったってことかい?それは興味深いね」

「そこでに率直に聞くが…穴はいつ開くかってのわかるか?」

結論が早く知りたかった。

「あいにくだけど以前イケスカ上空に開いてからは僕が知る限り開きそうな兆候は見られないね」

予想はしてたが残念な答えが帰ってきた。そこにアレンが付け加える。

「ただ、君が来たってことは開く可能性がゼロじゃないってことだ。もう少し気長にこっちでの生活を楽しんでもいいんじゃないかな」

「こっちの世界を楽しむか…」

それもいいかもしれない。いっそのことこの世界に骨を埋めるのも手だと少し思った。自由に空を飛んで気ままに仕事を受けながら生きていくのも悪くはない。そんな事を話している間にケイトが持っていたカバンから小さな瓶を取り出してアレンに渡した。

「それでもし良ければそっちの世界の話を聞いてみたいんだけどいいかな?」

「ああ、構わないよ」

そう答えるとアレンが酒瓶の蓋を開けてコップに注いで渡してくれた。

「病人が酒なんか飲んでいいのか?」

「僕は飲んだ方が治りが早いんだ。それじゃあ乾杯」

コップが心地いい音を立てて鳴った。それに口をつけて俺は何度目かの思い出話を始めた。1時間程度話しているとレオナとザラがやってきた。

「アレン、元気そうだな」

「やあレオナ、ザラも久しぶり」

「レオナ、頭の傷は大丈夫だったか?」

「ああ検査の結果は異常なしだ。傷もほとんど塞がってる。あの時は助かったよ」

レオナがそう言ってくれて安心した。彼女が傷つくと少し辛く感じた。それからしばらく彼女たちとアレンの話をして俺たちは病院を出た。あたりは暗くなっていた。それぞれが自分の家へと帰っていく。俺も一度ラハマで部屋でも借りるべきかもしれない。そう考えながら羽衣丸に戻った。

 

ラハマに戻ってきてから3日が過ぎた。予定では今日ピクシーが帰ってくる予定だ。イサオの後継者を名乗る組織の襲撃はこの3日間無かった。俺は昼食後に娯楽室であいつが書いた旅行記を読んでいた。イヅルマ、カイチ、タネガシ、インノ、アレシマ、ドルハ。様々な土地をあいつが回っていたことが読んでるとわかる。

今日はコトブキと訓練飛行をする予定だ。班長達がすでに機体を外へ搬出していた。そろそろ行くかと本を閉じて娯楽室を出ようとするとサイレンが鳴り響き始めた。何事かと思い窓から外を覗くと自警団が慌ただしく格納庫へ走っていく。

「こちらの呼びかけに応じない複数の大型機が接近!自警団は迎撃に上がれ!」

格納庫近くに止めてあった機体のエンジンがかけられる。

「これは訓練ではない!繰り返す!これは訓練ではない!」

サイレンが鳴っていたスピーカーから叫ぶ声が聞こえた。急いで船橋の出口に向けて走り出した。その辺の空賊がリスクを冒して街を襲うなんてことは滅多にない。まして普通の空賊が大型機を持つことはほとんどない。となるとおおよその想像はついた。数日前にサクラガオカ騎士団を攻撃した連中がこちらを狙いを定めたのだ。

地上に出ると自警団の九七式がが空へと上がっていくのが見えた。それに続いて駐機位置から滑走路にラハマの切り札たる雷電が進入していく。俺よりも早く出たコトブキが既に機体に搭乗して始動準備を行なっていた。6機の隼のエンジンが次々始動していく。それを眺めながら自分の機体のエンジンを始動する。こういうスクランブル発進のために俺の機体は一人で始動できるようになっている。

ハンドルを回してカウルフラップを開く。時間があればマグネトーチェックなどもしたかったが省いた。今は空へ上がることが最優先だ。排気煙を見る限りエンジンは大丈夫そうだ。滑走路へコトブキの隼が進入していく。コトブキが上がっていく間に動翼のチェックをしておく。スティックとラダーペダルを操作して三舵とも正常に動くことを確認する。

コトブキが全機滑走路から離れたのを見てスロットルを少し開いて前進する。尾輪式はこういう時に前を見づらいの難点だ。滑走路へでる間にフラップを一度着陸位置まで出して正常稼働を確認する。滑走路の中央へ出た段階で停止せずに離陸位置にフラップをセットしてスロットルを押し込んでいく。機体が加速していき尾輪が地面から離れる。スティックを軽く引くと二本の主脚も地面から離れて空に機体が解き放たれる。脚をしまいフラップを格納して低空でフルスロットルで一気に加速させていく。215knまで加速したところでスティックを引いて30度ほどの角度で上昇していく。F-15のような推力はないから垂直上昇することは叶わない。だがイジツの機体の中で言えばこいつはよく登ってくれる機体だ。

 

15000ftほどまで上昇してコトブキとラハマ自警団に追いついた。

<<すまない 遅くなった ついに来ちまったみたいだな>>

コトブキの隼の左横に機体を進める。

<<どうやらそうみたいだ 何としてもラハマを守るぞ!>>

レオナがそう声を上げる。それに続いて聴き慣れてない声が聞こえた。

<<こちらラハマ自警団団長 敵の機数が確認できた 飛龍5機 機種は不明だが護衛戦闘機が12機ほどだ>>

なかなかの大所帯だ。5機も爆撃機を飛ばすというのはこっちでは滅多に見ない。一方のこっちは隼が6機、九七式が7機、雷電と俺の紫電改が1機ずつの編成だ。

<<飛龍って前にアレシマを爆撃しようとしたやつだっけ?あれが5機かぁ…>>

<<なに キリエビビってんの?>>

<<ビビってないし!!>>

<<二人とも集中して>>

キリエに絡むチカをザラが止める。

<<富嶽ではないとはいえ5機…油断できませんわね>>

こっちの火力を考えるとなかなかきつそうだった。それを踏まえてどう戦うかを言おうとした時ケイトが言った。

<<火力の高い雷電と紫電改は飛龍の攻撃に集中させるべき>>

それを聞いて団長が言った。

<<よし トキワギ!お前の雷電は彼の紫電改と爆撃機の攻撃に回ってくれ それ以外の自警団は護衛機の気をそらす!>>

<<わかった!>>

続いてレオナがコトブキに指示を出す。

<<私たちは隊を二つに分ける 私とエンマ ケイトで飛龍を狙う ザラとキリエとチカは戦闘機を頼む>>

<<了解!>>

戦法は決まった。だがやはり火力は心許ないと思った。せめてピクシーの飛燕がいてくれればまだマシだったかもしれない。そんなことを思いながらふと視線を動かすと左翼側に一機の機影が見えた。同時に無線から声が響く。

<<よう相棒 待たせたな>>

無線の発信元の機体が俺の機体に近づいてくる。だが飛燕ではなかった。俺と同じ2色の制空迷彩に塗った紫電改。右翼の中程から赤く塗装されている。前の飛燕よりも懐かしい彼のF-15の塗装だった。

<<ピクシーお前…3日いなかったのはそれのためか>>

<<同じ機体の方が戦闘面でも整備面でも都合がいいだろう>>

そう言ってピクシーが俺の左後ろに着くのを見ると雪山の上で初めてこいつと編隊を組んだ日のことを思い出す。あの日も爆撃機の迎撃任務だった。

<<さて感傷に浸るのは終わった後にするか>>

<<そうだな 指示は頼んだぜサイファー あんたがガルム1だ>>

懐かしいセリフを言いやがると思ってるとレオナが敵機発見を報じた。

<<11時方向敵機!行くぞ!コトブキ飛行隊 一機入魂!>>

<<はい!>>

コトブキの隼が左へ旋回していって自警団がそれに続く。最後に俺たちが旋回を始める。

<<お財布握りしめて待ってろよ>>

左へ旋回しつつ俺とピクシーは上昇を始めた。コンバットボックスを組んだ爆撃機の編隊に突入するなら低速では狙い撃ちにされる。幸い今回の爆撃隊はそれほど高高度を飛んでるわけではないので上は簡単に取れる。

<<トキワギ お前はあの二機の紫電改についていけ>>

<<わかった!>>

雷電のパイロットがしわがれた声で返事をして俺たちの後ろに接近する。上昇ながら軽くロールして下を見ると敵機編隊がだんだんと大きく見えてきた。

<<向こうもこちらに気づいたみたいだ>>

レオナがそう言うと同時に護衛戦闘機がこちらに向けて上昇を開始する。

<<そう見たいね 敵は五式と三式みたいね>>

ザラが機種を報告する。どちらもなかなかいい機体だ。油断はできない。

<<よし 作戦通り行くよ ザラたちは援護を頼む>>

敵編隊より2000ftほど上でスティックを横に倒してロールする。機体が逆さになったところでスティックを引いて敵編隊へと飛び込んでいく。

目の前から数機の飛燕がこちらに向けて上昇してきていたがザラの編隊が機銃をばらまいて進路を妨害する。降下で速度が乗ってるこちらに比べて敵は上昇で速度が落ち込んでいた。飛んできた曳光弾を回避しようと旋回したがその影響で余計に速度が落ち込んだ。

この隙を見逃すコトブキではない。キリエが動きが鈍くなった敵の進行方向へ機銃を放つ。曳光弾がよろめいてる飛燕の主翼とラジエーターに綺麗に吸い込まれていった。タンクから火を吐いて飛燕が落ちていく。

よく見ればこいつらの機体には以前に羽衣丸を襲った零戦と同じ帯状のマーキングが主翼に施されていた。

<<星一つ!>>

キリエの声が無線に響く。本日1機目の撃墜は彼女に取られてしまった。それを横目に見ながら降下して敵爆撃機に肉薄していく。編隊を組んだ飛龍の対空機銃が曳光弾を吐いて弾幕を形成する。だがベルカ戦争時に飛んだグラティサント要塞の対空砲火に比べれば緩いものだ。臆せず弾幕に飛び込んで飛び込む。

<<レオナ 俺は編隊長機を狙う 編隊が崩れたら飛び込め>>

<<分かった>>

短くレオナと交信する。

いけるか…とそう呟きながら編隊の先頭を飛ぶ飛龍に狙いを定める。200ydまで接近してスロットルについたトリガーレバーを引いた。主翼から四筋の光が放たれる。飛んで行った弾丸が飛龍の燃料タンクを貫いて炸裂する。主翼が根元から折れて機体が姿勢を崩して墜ちていく。

<<ガルム1が敵機撃墜!>>

飛龍編隊の下を過ぎたところでピクシーが声を上げた。編隊長機が墜ちたことで編隊が姿勢を乱した。弾幕が一時薄くなったところにレオナ達が飛び込んで攻撃を開始する。一機の飛龍の左翼エンジンに命中して火を噴く。俺たちより小口径の機銃でよくやるものだと感心した。

一機遅れていたトキワギの雷電がまた別の飛龍に機銃を撃ち込んだ。だがこちらは命中した場所と数が悪くわずかに敵機の速度が低下する程度だ。

次の攻撃に移るためにスティックを引いて機首を上げていく。ここで焦って急に引くと速度を失って不利になる。ジワリと操縦桿を動かして飛龍の下から攻撃するように体勢を整えた。攻撃を受けづらいベストポジションだ。あとは近づいて撃つだけと思ったその時だ。

<<サイファー!後ろに着いてるぞ!>>

ピクシーの声が聞こえて振り返るとラハマの九七式をやり過ごした五式戦が俺の後ろを取ろうと高速で近づいてきてた。

<<ピクシー!ケツは頼んだ!>>

この体勢まで来たからには飛龍に一撃加えたい。ピクシーにケツに着いた五式戦の相手を頼むことにした。

<<ウィルコ!任せておけ>>

左後方に着いてきてたピクシーが左へブレイクする。それを見届けてから眼前の飛龍へのサイティングに集中する。後ろはピクシーに任せて意識も向けなかった。狙うのは翼の付け根からエンジンの辺りだ。降下の時についた速度とエンジンのパワーで一気に駆け上っていく。200ydでトリガーを引いた。右翼エンジンに命中して一気に炎が立ち昇る。そのまま薄くなった弾幕の隙間を潜って飛龍編隊の上側から一度離脱する。

振り返ると左右の推力バランスが崩れた飛龍が緩やかに右に傾きつつ爆弾を投棄した。そのうちポロポロと搭乗員が飛び降りていった。

<<こちらサイファー 爆撃機を撃墜>>

コトブキの撃墜と合わせればこれで半分、ようやく折り返し地点だ。振り返ると俺を追いかけてきてた五式戦をピクシーが翼を折って撃墜したのが見えた。ピクシーが無線で報告する。

<<こちらピクシー 敵機撃墜>>

その直後にトキワギからの無線が聞こえた。

<<クソ!後ろに着かれちまった!>>

見回してみると雷電の後ろに五式戦と飛燕が張り付いて射撃の機会をうかがっていた。

<<待ってなおっさん!>>

援護を買って出たのはチカだ。機体を加速させてトキワギの後ろに着いてる飛燕に一気に近づく。気づいた飛燕が急旋回で躱そうとするがコトブキで一番ハイGターンが出来る彼女には敵わない。急旋回で速度を失った飛燕にチカの隼が急接近する。衝突寸前のところで飛燕のエンジンを撃ち抜いた。エンジンから出火した飛燕が錐揉みを起こして重力に引かれて地面に吸い寄せられる。

<<よし!>>

もう一機の五式戦の相手はザラだ。降下して雷電と五式戦の間に機体を滑り込ませた。五式戦のパイロットがそれに気を取られた隙にトキワギが機体を旋回させて五式戦の射線から抜け出した。

雷電を見失った五式戦はザラに狙いを変える。だが一瞬意識を雷電側に向けていた隙にザラはバレルロールで背後を取り返し始めていた。慌てた五式戦だがすでに遅かった。ザラの隼の機銃から放たれた弾丸が五式戦の翼に吸い込まれた。たちまち炎が上がりコントロールを失い地面へと墜ちていく。

<<星ひとーつ>>

コトブキの援護で二機から逃れたトキワギが先ほど仕留め損なった飛龍へ向かう。

<<慌てるなトキワギ!訓練通りにやるんだ!>>

<<分かってる!>>

先ほどよりもしっかりとした機体姿勢でトキワギが射撃位置についた。絶好のポジションだ。機銃弾が速度の落ちていた飛龍を襲う。明らかに撃ちすぎで左右の燃料タンクに弾が当たり両翼から火を噴いて飛龍がコントロールを失った。これで残りは2機。

残りの飛龍を攻撃しようとした時また後ろに敵機が着こうとした。今度は飛燕だ。自動空戦フラップを作動させる位置にフラップレバーを操作して格闘戦に持ち込む。

何度か左右への旋回を行うと敵機が距離を詰めてきた。ある程度詰まったところの左への切り返しの時にラダーペダルを左に蹴りながら左手前にスティックを引いてスナップロールして270度ロールして右に切り返す。同じ機動を描いていた敵機と機動がずれてシザースに入る。操縦桿を強めに引き相手よりも相手を前に押し出すように内側へ入り込む。2度ほど交差したところで敵が絶好の位置に来た。交差する一瞬にトリガーを引くと敵機がバラバラに砕けて墜ちていった。

爆撃機の数が減るたびに残りの爆撃機を守ろうとする敵の攻撃が激しさを増した。ここからが難しいところだが俺たちなら出来る。いつ敵機に絡まれてもいいようにフラップは自動位置のままにした。飛龍へ機首を向けようとすると既にピクシーが一機を撃墜していた。

<<爆弾は大事に抱えたまま墜ちてくれ>>

そう敵を皮肉るピクシーの声が聞こえた。

<<ふう…これであと一機ですわね>>

エンマがため息をつきながら言った。

<<ようやくってところね でも油断しちゃダメよ>>

流石に敵弾幕と戦闘機を相手取るのは疲れがたまる。

<<もう一息だ 油断しないで行くぞ!>>

レオナが隊員たちの気を引き締める。ラハマまではあと20マイルほどだ。

<<サイファー 私たちはもう弾が残り少ない 最後の飛龍はそちらの隊に任せる>>

レオナから飛龍攻撃のバトンを渡される。

<<了解だ ピクシー行くぞ!>>

<<ウィルコ!終わらせよう!>>

再びエンジンをフルスロットルにして上昇を開始する。その俺たちの後ろを追う戦闘機はコトブキが引き受けてくれた。

<<ピクシー 背中はあいつらに任せて俺たちは飛龍に集中するぞ>>

<<ピクシー了解 前方に火力を集中させる>>

飛龍の左上方2000ft上空まで上がったところでロールしてダイブを開始。二機で一気に飛龍の懐へ一気に飛び込む。サイトから敵機がはみ出るほどの距離でトリガーを引いた。翼に弾が当たって弾けるのがすぐ近くに見える。そのまま飛龍の脇を二人で下に駆け抜けた。振り返ると飛龍の両翼とエンジンから出火してるのが見えた。すぐにパイロット達が機体から飛び降り始め、コントロールを失って機体が大地に引き寄せられていく。

<<こちらサイファー 最後の爆撃機を撃墜した!>>

<<こちらラハマ管制塔 こちらでも大型機の機影の消失を確認した>>

<<こちらレオナ 敵機離脱を確認 深追い無用>>

敵戦闘機隊が編隊を組む暇もなく離脱していく。こちらもコトブキ飛行隊を基点に編隊を組み直した。コトブキと俺たちは無事だったが自警団の九七式は4機ほど居なかった。そこに管制塔から連絡が入った。

<<撃墜された自警団員は全員無事だ 今残っていた自警団員で救助活動にあたってる>>

その言葉を聞いた九七式の自警団員が歓声を上げた。

<<帰ったら墜ちた連中に俺の活躍をたっぷり聞かせてやる!>>

トキワギがそう言うとチカがからかった。

<<おっさん一機しか墜としてないじゃん!>>

<<それを言われるときついぜチカ姐さん>>

それを聞いて団長が言った。

<<だがいい活躍だったぞトキワギ 聞かせたら墜ちた連中も気が晴れるだろう>>

それを聞いてトキワギが大きく笑った。

<<流石に疲れましたわね 早く戻ってシャワーでも浴びたいですわ>>

エンマに続いてザラも口を開いた。

<<同感ね 冷たいビールをキューっといきたいわ>>

<<ザラが空戦後にビールを飲む確率は97% 残りの3%は羽衣丸のビールサーバー故障のため>>

<<ザラってそんなに呑んでたんだね…>>

<<それでよくその体型維持できるよね キリエのパンケーキ腹より締まってんじゃん!>>

<<私そんなに太ってないし!!>>

コトブキたちがいつものように会話に花を咲かせている。そんな中レオナだけが浮かなそうだった。ザラがレオナに呼びかける。

<<レオナ どうしたの?>>

<<ん…いやなんでもない>>

<<前にも言ったでしょ もっと相談してって ビール片手に聞くわよ>>

<<別に悩んでる訳じゃない 少し疲れただけだよ>>

<<じゃあビールだけでも付き合って ね?>>

<<ああ…>>

誘いには応じたレオナだったがやはり浮かない声をしていた。彼女の悩みを聞いてみたいとそんなことを考えながら俺たちはラハマへの帰路へ着いた。

 

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