視点はなしで
学園で用意された寮のある一室にいる二人組と一匹の猫
朝食を取り終え、すぐに準備をしていた。着慣れない制服に違和感を覚えながらも十代はこれからどんなことがあるか楽しみにしていた。だが、遊星は少し緊張しているようだ
彼は今まで一度も教育機関に通ったことがないからだ。そんな遊星を見て、十代は笑顔で話しかけた
「そんな顔するなよ。これからいいことや悪いこと……まあ、何があるかわからないけど、たくさんの思い出ができるんだからさ、笑顔で行こうぜ」
「……そうですね、ありがとうございます、十代さん」
遊星はその気遣いにただ感謝したかった
「十代君、あんまり座学で寝ていると千冬先生に叩かれるらしいから気をつけた方がいいんだにゃ~」
大徳寺は笑いながら、忠告した。彼らが検査している時に、上級生の人たちの噂話を聞いていたらしい。それを聞いて二人は苦笑をしていた
だが、どうあれリラックスできたのは間違いないと思う。彼らはそのまま教室に向かわず、職員室に行くことになっている。そこで千冬と合流し、教室に向かう
「「大徳寺先生(さん)、いってきます」」
「うん、しっかり頑張ってくるんだにゃ~」
職員室の前についたが、まだ会議中らしい。中の人に待っているよう言われたので、少し待つことになった。その間、いろいろな視線が彼らをとらえていた。興味や疑問、中には羨望のものもあった
(……十代さん、学校ってこういうものなのですか? 何か見られているようですが……)
(いや、違うけど……たぶん男が珍しいからじゃないのか? ほら、本来ISって女にしか使えないし、そもそも女子の学校に男子がいるのも変な光景だから)
その言葉に納得する遊星だった
「すまない、会議が今終わった。これから私が受け持つクラスに行く。お前たちはそこのクラスだ。当然、一夏も一緒だ」
千冬は、すぐに教室に向かって歩き出した。その姿は仕事のできる人、というのが背中から伝わってきた
「さてと、行こうぜ、遊星! 相棒! ここから学校生活が始まるんだ。楽しくいこうぜ!」
「はい!」
(クリ~)
元気よく返事をして、千冬の後について行った
先に千冬が教室に入るとすぐに出席簿で攻撃した音が聞こえた。この音を聞いて二人は
((千冬さんを怒らすと大変そうだ……))
そう感じた
「さて、緊急で決まったことだがこのクラスに新たに2名生徒が追加される。入れ」
そう言われすぐに入る二人。二人が前に立つと千冬以外の人は驚いた
やはり二人が男だからだろう
「自己紹介をお願いする。まずは遊城から」
「はい、遊城十代といいます。少し事情があり、IS学園に入ることになりました。一応俺もそこにいる一夏と同じくISを動かすことができます。後は……自分の機体も一応あります。これから1年よろしくお願いします」
一礼する。すぐに遊星が話し始める
「不動遊星です。俺も十代さんと同じ事情でIS学園に入学することになりました。自分の機体を持ってはいるのですが、原因不明なため動かすことができません。しかし整備のほうでは役に立つと思います。学校には初めて通うので、分からないことも多いですが、よろしくお願いします」
喋り終えると、少しの間の後……黄色い歓声が響いた
「きゃぁぁぁぁ、男子が二人も入った!!」
「しかもかっこいい、なんだか大人っぽい」
「うんうん、私このクラスでよかった」
他にもさまざまな言葉が飛び交っていた。遊星と十代はその光景に少し呆れた
「静まれ、バカ者ども。遊城は……そこの真ん中の列の空き席だ。不動は……廊下側の空き席に座れ」
すぐに座り、最初の授業が始まった
「久しぶりですね、十代さん、遊星さん」
「ああ、お前も元気そうだな。一夏」
一時間目が終わり、休み時間になると十代と遊星は一夏の席に集まっていた。何かと固まっていると気が楽になる。すぐにそう思えたのだ
「しかし、ここの生徒……すごいよな。何というか……」
「そうですね……俺もこうなるなんて予想してなかったですから」
周りには女子がグループを作って三人の男を見ている
どうやって話そうか、誰が好みだ、友達になれないか、等々
そんな雰囲気に少し疲れそうになる三人だった
「それにしても二人ともISが使えたなんて知りませんでしたよ。どうして最初に言ってくれなかったんですか……」
「ああ、まあいろいろあって……? 誰だ?」
十代が誤魔化しながら言おうとすると、一夏の後ろにポニーテールの子が立っていた
「少しいいか?」
どうやら彼女は一夏に用事があるようだ。一夏によると彼女は篠ノ之箒、一夏の幼馴染らしい
せっかくの再開の時間をつぶすのも悪いと思い、行くように一夏に告げた
「さて、次の授業の準備でもしますか……あ~あ、大丈夫かな? 俺」
「頑張りましょう、十代さん」
そう遊星に励まされた十代はゆっくりと席に戻った
ちなみにすぐに一夏は戻ってきて、また叩かれていた
本格的なISの授業が始まった……しかし、理解のできていない生徒がいるらしい
それに気が付いたのか山田先生がここまででわからないところがある人と聞くと二つの手が上がった。十代と一夏の手だ
「えっと……どのあたりでしょうか?」
「「ほとんどわかりません」」
口をそろえて言う。しかしわからないのはこの二人だけらしい
「……織斑、遊城、入学前の参考書は読んだか?」
千冬の質問に素直に答える二人
「古い電話帳と間違って捨てました」
パアン! 一夏はもちろん殴られる
「えっと、参考書なんてもらってないと思うのですが……俺と遊星は今まで検査ばかりで……」
遊城の答えに千冬は思い出した。昨日の夜に研究員の一人が二人に参考書を渡しそびれたと言っていたことを
「それはすまなかった……ん? 不動ももらってないはずだが……大丈夫なのか?」
「俺は今の話を聞いているだけで全部とは言いませんが、大体理解はしています」
その言葉に驚くクラスメイトと副担任。予習なしでわかる内容ではなかったはずと思っていたからだ
「そうか……とにかく後で再発行しておくから一週間以内に覚えておけ」
「「「わかりました」」」
次の休み時間、今度は十代の席の近くに集まっていた
「しかし、電話帳くらいの厚さの本を一週間以内か……ああは言ったけどきつそうだな」
十代の言葉にうなずく一夏。
千冬を怒らせたくない。そう思って先ほどはすぐに返事をしたが、現実問題厳しそうだ。
そのとき、一人のわずかにロールのかかった金髪の女子生徒が十代たちの元にやってきた
「ちょっとよろしくて?」
「誰だ? あんたは?」
十代の聞き方に機嫌を悪くしてしまったその女性
「まあ、何ですの、その口のきき方は? わたくしに話しかけられただけでも光栄なのですからそれ相応の態度というものがあるんではないのかしら?」
そのセリフを聞いただけで、十代と遊星は心の中でため息をついた。すぐに自分がエリートの人だということを自慢する人だと分かったからだ
「悪いな、俺たちは君が誰か知らない。大体十代さんたちは、自己紹介の時いなかったじゃないか」
一夏の言葉にさらに不機嫌になってしまった
「わたくしを知らない? このセシリア・オルコットを? イギリスの代表候補生にして入試主席のこのわたくしを!?」
「候補生だかなんだか知らないけど、俺たち今話しているから後にしてくれ」
十代はさっさと話を切り上げた。その様子を見てセシリアは不満そうに自分の席に戻った。それと同時にチャイムが鳴った
「さて、授業を始める前にこのクラスの代表者を決めておかなければならない。まあ、簡単に言ってしまえば、クラス長ということだ。一度決めたらその一年はそのままだからな。自他推薦は問わない……と言いたいところだが、事情で遊城と不動を代表者に選ぶことはできない」
その言葉に少しざわついたが、すぐに代表にしたい人の名前が出てきた
「織斑君がいいと思います」
「私もそう思います」
「では、織斑。それでいいな?」
一夏が反論しようとしたとき、一人の生徒が立ち上がった。セシリアだ
「お待ちください! なぜ男が代表にならなければならないのですか? そんな屈辱をわたくし、セシリア・オルコットに受けろとおっしゃるのですか?」
「大体、実力を考えればわたくしが代表になるのが当然! こんな極東の猿に代表をやらせるなんて……おかしいですわ! そもそもこんな文化が後退している国に暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしは耐え難い苦痛ですのに……」
「イギリスだって大したお国の自慢がないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」
セシリアの暴言に黙っていられなくなった一夏は反論した
「あなた……私の祖国を侮辱しますの!?」
「お前から侮辱し始めたじゃないか、セシリア」
「大体、そんなに優秀なエリートがなんで誰からの推薦もないんだよ? 少なくとも俺はあんたに推薦する気はないけどな」
セシリアの言葉に遊星と十代も加勢した。彼らにとっても気持ちの良いものではなかったからだろう
ここまで言われるとは思っていなかったため、彼女の怒りは爆発した
「あ、あなたたち…………決闘ですわ! 代表の座をかけて!」
その言葉を聞いて千冬は少し考え
「……分かった、ならば織斑とオルコットは戦えばいい」
「わかった。やってやる」
「ちょっと待ってください、なぜ残りの二名の名がないのですか?」
一夏は同意したが、十代と遊星の名前がないことにセシリアは気づき反論した
「さっき言っただろう。これは代表者を決める戦い。代表になれない奴らを戦わせる理由がないだろう。そもそも不動の話を聞いてなかったのか? あいつのISは今使えないんだ」
「しかし……」
「いいぜ、俺はやってやるよ」
十代の言葉に驚くクラスの人たち
「このお嬢様はそうしてくれないと納得しないんだろうし……そうだな、俺が勝ったら一夏が代表ってことでいいか?」
「いいですわよ。まあ、たとえ二人がかりでかかってきたところで負けはしないんですけどね」
セシリアは鼻で笑った
こうして、代表を決めるための戦いが約束された
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