クラスメイトは全員思春期   作:キラ

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基本はあらすじにあった通りの話になっています。


本編
ファースト幼なじみは思春期


≪はじまりは彼女の第一声から≫

 

 インフィニット・ストラトス――これまでの科学の常識を覆したパワードスーツ。通称IS。女にしか動かせない。

 IS学園――そんなISを操縦する者や整備する者などを育成する場所。日本に存在。ただひとりの例外を除き、女性しか在籍できない。

 

 俺の名前――織斑一夏。IS学園新入生。性別:男。

 

「こんにちは。今日から1年間、皆さんのクラスの副担任をやらせていただくことになりました。山田真耶です」

 

 現在の状況――女の園に、野郎が最前列で孤立無援。

 

「それでは、出席番号順に自己紹介をお願いします」

 

 誰もが思うだろう。この状況はおかしい、と。だが現実だ。なんやかんや諸々の偶然と自己責任が重なり、俺はISを動かせる男としてIS学園に強制入学させられてしまった。

 クラス中から向けられる好奇の視線がすごく辛いが、ため息は心の中だけに留めておく。さすがに教師の真正面で入学初日から辛気臭い態度はとらない方がいいだろう。

 

「はい。では次、織斑一夏くん。お願いします」

「は、はい」

 

 やば、考え事しているうちに自己紹介の順番が回ってきてしまった。何を話せばいいのか全然思いつかないぞ。

 

「お、織斑一夏です」

 

 より一層強まる女子達の視線。いったい何を言ってくれるのかと期待している空気が、痛いほどに伝わってくる。

 

「………」

 

 でも何も出てこない。無難に趣味でも話せばよさそうだが、あいにく俺には趣味らしい趣味がない。これは完全に詰みか……?

 

「先生」

 

 自分の中身のなさに軽く絶望していた矢先、ひとりの女の子の声が教室に響いた。反射的に、俺含む全員が声の主を探す。

 

「あ……」

 

 彼女の姿を見た瞬間、思わず声が漏れてしまうほど驚いた。

 整った顔立ち。凛とした表情は、意思の強さを感じさせる。そして、特徴的なポニーテール。

 

「えっと、篠ノ之箒さんですね。どうかしましたか?」

「織斑が話す内容に困っているようなので、私から質問してもいいでしょうか」

 

 間違いない。俺はあの子を知っている。小さい頃、とても仲良くしていた記憶がしっかり残っているのだ。最後に会ったのは小4の終わりだったけど、すごく美人に成長してる。

 しかも、どうやら俺に助け舟を出してくれる様子。ありがたい、これが幼なじみの力か!

 

「だそうですが、織斑くんは構いませんか」

「あ、はい。もちろん」

 

 質問さえしてくれれば、こっちはそれに答えるだけでいい。実に簡単な話だ。にこにこ笑顔で箒の言葉を待つ。

 

「ではまずひとつ」

 

 対してあっちはなぜか神妙な面持ちになり、すーはーと深呼吸。たっぷり間を置いて、ようやく口を開いた。

 

「あなたは童貞ですか」

 

 ………え?

 何か今、想像の斜め上どころか異次元までぶっちぎった質問が飛んできたような。

 

「あなたは童貞ですか」

「………え?」

 

 思わず聞き返してしまうと、箒はそれを俺がよく聞き取れなかったと判断したらしい。

 

「あなたは! 童貞ですかあああああ!!」

 

 超エキサイティングに、1階の廊下全体まで響くようなシャウトを披露してくれた。

 凍りつく教室。呆然とするクラスメイト達。

 同時に、俺はとてもとても大切なことを思い出していた。

 

「ああ、そうだった」

 

 篠ノ之箒、俺の幼なじみは……小さい頃から下ネタが大好きだったということを。

 

 

≪担任教師登場≫

 

「まったく。どこの馬鹿が下品なことを叫んでいるかと思えば……まさか私のクラスの生徒とはな」

 

 箒の発言に戸惑っているうちに、教室に入ってきたこのクラスの担任教師らしき人物が制裁を加え、俺の回答の義務は消滅した。

 

「い、痛い……」

 

 出席簿で頭を叩かれた箒はちょっぴり涙目になっている。でも自業自得なので同情の気持ちはかけらもわいてこない。だいたい、数年ぶりに会った幼なじみにまず聞くことがそれかよ。

 

「さて諸君。私が1年1組担任の織斑千冬だ。まず初めに言っておくが、教師の言うことはよく聞くように」

 

 壇上では、織斑千冬――俺の姉による挨拶が始まっていた。

 第1回のモンド・グロッソ、つまりISの世界大会で優勝し、ブリュンヒルデの称号を持つ我が姉は、世界でもその名が通るほどの有名人。彼女の弟であるということが、もともとマックスだった『ISを動かせる男』への注目度をさらに上昇させることとなった。

 

「もちろん意見は許す。逆らうことも構わない。だが最終的に我々の言葉が正しいと理解できたなら、その時は素直に従え。たとえ納得ができなくてもだ」

 

 背筋を伸ばして語る姿から、厳しさが痛いほど伝わってくる。プライベートでも言葉に迫力のある時の多い千冬姉だが、仕事中となるとそれが5割増しだ。

 これならきっと、箒のトンデモ発言で変になった空気を締めてくれるはず。

 

「キャーー! 千冬お姉様素敵ーー!」

「千冬様のクラスに当たって感激です!」

「私、お姉様になら処女を捧げる覚悟です! もしくは私が処女を奪います!!」

 

 なんかすごいガバガバな空気になった!

 

「まったく、どうして私のクラスにはこんな奴ばかり集まるんだ……」

 

 飛び交う黄色い声援に呆れたように頭に手を当てる千冬姉。心の底からうんざりしてるな、あれは。

 

「そうですよ」

 

 隣にいた山田先生も頷く。

 

「織斑先生の処女は私がもらうんですからね!」

「どうして副担任までこんな人間なんだろうな……」

 

 俺、なんでこんな学園に入っちゃったんだろうな……

 

 

≪数年ぶりの再会≫

 

「久しぶりだな、箒」

「一夏! やはり私のことを覚えていてくれたのだな!」

 

 休み時間。俺の周りには女子の輪ができていたが、それを振り切って箒と一緒に教室を出た。とりあえずは、再会できた幼なじみと話したいと思ったからだ。。

 

「小学校の頃、よく遊んでたからな。忘れるはずねえよ」

「そうか……うれしいぞ」

「俺もだ」

 

 満面の笑みを浮かべる箒。少しドキッとしてしまう。

 

「本当にうれしい」

 

 前に会った時は子供だったから、そこまで意識した覚えはないけど……やっぱり箒って可愛い顔してるよな。笑うとそれがさらに際立つ。

 

「こんなにうれしいのは、へそが私の性感帯だとわかった時以来だ」

「俺のときめき返せ」

 

 

≪聞きたかったこと≫

 

「それにしてもお前、なんでいきなりあんなこと聞いてきたんだよ」

「あんなこと?」

「だから……お、俺が童貞かどうかって話」

 

 女の子に面と向かって童貞という単語を口にするのは、俺にはなかなかハードルが高い。なので、言葉が尻すぼみになってしまう。

 

「! そうだ、すっかり忘れていた! 一夏、結局お前は童貞なのか」

「……ああ、そうだよ。いまだに彼女も作ったことないし」

 

 というか、中学卒業して間もない時点で童貞も卒業してる男の方が少ないと思うんだが。

 

「そうか、それならいい。ずっと気になっていたんだ」

 

 でも、箒にとってはかなり関心の深い事柄だったようだ。

 

「なんでそんなに気にしてたんだよ」

「え? そ、それはだな……小さい頃の男友達が、知らないうちに大人の階段昇ってたらショックだろう?」

「まあ、それはそうかも」

「だから最初に聞いておきたかったんだ」

 

 それにしたって、みんなの注目が集まる場でわざわざ聞くことはない気がするけどな。箒も思い返して恥ずかしかったのか、少し頬が赤くなっている。

 

「あ、ちなみに私も処女だぞ」

「いちいち言わなくていいっての」

「こちらだけ教えてもらうのも不公平だろう。……どうした、顔が赤いぞ」

「き、気のせいだ」

 

 いかん、一瞬不埒なことを考えてしまった。こいつは幼なじみなんだ、そういう妄想には使いたくない。

 

「そうそう、もうひとつ聞きたいことがあったんだ」

「え?」

「後ろの穴は処女のままか?」

「なんでそれ聞こうと思った? あ、言ってみ?」

 

 

≪聞きたかったこと その2≫

 

「俺も聞きたいことがあったんだ」

「む、なんだ」

「剣道、まだ続けてるのか?」

 

 箒の家は剣道場で、小さい頃は俺も厳しくしごかれた。けど、自分がだんだん強くなっていく感覚がたまらないからやめることはなかった。

 道場の先生の娘である箒は、俺が行くとほとんどかならず竹刀で素振りをしていた。それだけ熱心にやってたということだ。

 

「ああ、もちろんだ。もっとも、あまり大会には出られなかったが」

「ん? どういうことだ、それ」

 

 不可解なセリフに突っ込むと、箒はちょっぴりバツが悪そうな表情になる。

 

「お前と別れてから、私は偽名を使っていたんだ。姉さん絡みで、妙な連中に目をつけられないように」

「あ……じゃあもしかして、突然引っ越したのも」

「日本政府の重要人物保護プログラムとやらの影響だ。まったく、姉さんにも迷惑をかけさせられる」

 

 箒の姉は、何を隠そうISの開発者である。そして現在絶賛姿くらまし中。ISの核となる部品を作れるのはあの人だけなので、世界中の政治家やら研究者やらが行方を探しているはずだ。

 そういう事情も手伝って、箒に政府の監視やらがついて不自由な生活を送っていたとのこと。

 

「去年の剣道の大会も、県優勝までは行ったんだ。だがあまり目立って顔が知れるのはまずいと言われ、あとの大会は辞退させられた」

「それは……残念だったな」

「もう終わったことだ、気にするな。このIS学園でなら、ガードが堅いから偽名を使う必要もない」

 

 明らかに理不尽な目に遭わされているのに、箒は本当に何も気にしていない様子だ。もうとっくに割り切ってるのだろうか。

 

「強いんだな、お前」

 

 なんにせよ、立派だと思う。

 

「そうでもないさ。それにな、一夏」

 

 そこでいったん言葉を切ると、箒はにっこりと笑って。

 

「見られているというのは、存外興奮するものだぞ?」

 

 あーもう台無しだよ!

 

 

≪大きくなったな≫

 

「それにしても、しばらく見ない間に大きくなったな。一夏」

「箒もな」

 

 お互い成長期だったから、この5年のブランクは大きい。昔の面影はちゃんと残っているものの、名前を聞かされなかったら俺はこいつを篠ノ之箒だと断定できた自信はない。

 

「きっとまだまだ大きくなるのだろうな」

「ま、もう少し伸びてほしいのは事実だな」

 

 最低でも平均は切らないことを一応望んでいる。

 

「ところで、もう皮は剥けたのか?」

「お前今までどこの大きさの話してたんだよ」

 

 

≪よろしくな≫

 

「まあとにかく、ここでお前とまた会えてよかったよ」

「ああ、私もだ」

「昔みたいに仲良くしてくれると助かる。男ひとりって状況は辛いから、頼れるやつがいると全然違うんだ」

「もちろんだ。存分に頼れ」

 

 千冬姉は教師という立場だし、やっぱり同じ生徒に知り合いがいてくれたのはデカい。いくらか今後への不安も軽減された。

 

 キーンコーンカーンコーン。

 

 おっと、もう2限開始の時間か。教室に戻らないとな。

 

「箒」

 

 その前に、改めて一言『これからもよろしく』と言っておこう。

 

「これからもよろシコ」

 

 ……あ、噛んじまった。

 

「一夏……その下ネタはさすがにどうかと思うぞ」

「お前にだけは言われたくねえよ!」

 

 ジト目で睨む箒に向かって吠えながら、早足で自分の席に戻った。

 




なんでこの作品を書こうと思ったのか→ISと生徒会役員共って結構声優かぶってるなー。以上。

本当はもっと生徒会役員共風味の作品にしようと思ったのですが、僕の力では氏家先生の作風を再現するには程遠かったこと、よしんば再現できたとしてもそれISでやる意味なくないか?と考えた結果、こんな感じになりました。なので下ネタだけじゃなくて真面目な話をやったりすることもあります。一応「ISの二次創作である」という点は意識しているつもりです。

しかし、このIS←生徒会役員共の組み合わせはすでに偉大な先駆者様がこのサイトにいらっしゃるんですよね。ある程度構想を終えた段階でその事実に気づき、僕がやってもただの二番煎じになるんじゃないかと思ったのですが、もったいないという気持ちと二次創作ってもともと全部二番煎じだろという開き直りによって投稿するに至りました。

次回はセシリアさんが出てくる予定です。
感想等あれば、気軽に送ってもらえるとうれしいです。
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