クラスメイトは全員思春期   作:キラ

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今回ギャグ少なめです。ごめんなさい。


軍人少女はきれいな少女

≪新機能≫

 

「おお、これはいいな」

 

 放課後のアリーナで、俺はひとり白式の動作確認を行っていた。昨日束さんにアップデートしてもらったことによる変化を確かめるためだ。

 

「束さんにはお礼言っておかないとな」

 

 これなら今までよりも面白い動きができそうだ。月末には学年別の個人トーナメントが控えているし、できるだけ早めに機体に馴染んでおきたい。

 驚いたことに、シャルロットはフランスの代表候補生、ボーデヴィッヒさんはドイツの代表候補生なのだそうだ。本人から直接聞いたわけじゃないが、複数のクラスメイトが同じことを言っていたので間違いないだろう。

 ということは、あのふたりも鈴やセシリアクラスの実力の持ち主なわけで。俺も男として負けてられないなーなんて考えが浮かんでくるのである。

 

「えっと……追加されたものはあとひとつか」

 

 白式を装着した際、束さんからのメッセージが同時に表示された。それに記されていたアップデート内容を今まで確認してきたわけだが、それも次で最後だ。

 

「なになに……この機能をつけるのに手間取っちゃった、か」

 

 あの人が手間取るってことは、かなりすごい代物なのかもしれない。期待が高まる。

 

「まず右手をフリーにする」

 

 右手に持っていた雪片を粒子化させる。

 

「次に空いた右手を胸のあたりに持っていく」

 

 特定の動作を行うことで現れる機能なんだろうか。

 

「そして右手の位置を次第に下げていく」

 

 胸から腹へ、さらにその下へ。

 

「股間まで達すると股に砲台がセットされ、白濁した粘液が飛び出す」

 

 ドピュッ。

 

「そのまま股間をこすり続けるともっと飛び出す」

 

 ドピュッ、ドピュドピュッ。

 

「どう? 喜んでくれた?」

 

 そこでメッセージは終わっていた。

 

「………」

 

 だからこれで喜ぶのはあんたの妹だって!

 

「しかも臭っ! 再現度高すぎるだろ!」

 

 どんなところに手間かけてるんだあの人は……

 実際粘液のねばっこさは結構なものだから実戦で使えないこともないかもしれんが、絶対に使いたくない。使用した瞬間いろんなものが失われる気がする。

 

 

≪シャルロットと雑談≫

 

 自主訓練を終えた足で寮の食堂に向かったところ、偶然にも入口のところでシャルロットと鉢合わせた。

 

「一夏も今から夕食?」

「ああ。一緒に食べるか」

 

 ここの食堂を初めて利用するシャルロットに簡単な説明をした後、お互い好きなものをとって適当な席に着いた。

 

「いただきます」

「いただきます。……やっぱここに来る外人さんはみんな日本語上手だな」

「授業が日本語だからね。IS学園に入る以上、ある程度は学んでおかないと」

 

 立派なものだと思う。俺なんて英語とか全然できないのに。

 

「すごいなあ」

「そんなことないよ。語学は量を重ねればちゃんと結果に出るんだから」

「その量を重ねるってところが普通の人には難しいんだよ」

 

 単語帳とか見てるとすぐに眠気が襲ってくるから。

 

「何か集中力を持続させるコツみたいなのってあるか?」

「うーん……僕の場合は、日本語で書かれた本を読んでるうちに自然と身についたって感じだけど」

「へえ、本か」

「特に漫画とかね。絵を見て内容が気になって、じゃあ頑張って訳してみようって気分になるから」

 

 なるほど。勉強と言われるとやる気がなかなか出ないけど、そこに娯楽を混ぜ込めば頑張って取り組めるというわけか。

 

「僕が日本語を学び始めたのは9歳くらいの頃だけど、それも母さんの持ってた日本の漫画に興味を持ったのがきっかけだったしね」

「そうなのか。どんな漫画だったんだ?」

 

 参考までに聞いておく。もしかしたら俺も読んだことのあるやつかもしれない。

 

「普通の恋愛漫画だよ」

「恋愛か。俺はほとんど読まないな」

「おすすめだよ。愛し合うふたりが数々の障害を乗り越えて、最後は幸せなゴールインを迎える作品なんだけど」

「純愛ものか」

「うん。クライマックスの主人公のセリフは感動したなあ。『男同士で何が悪い!!』って」

「多分それ普通の範囲から外れてるよね」

 

 

≪本当は≫

 

「にしても、最初の自己紹介には驚いたぜ。本当に男が入って来たのかと思った」

「そういう反応をもらえるとこっちもうれしいよ」

 

 食事中、話題が男装のことに移った。ちなみにシャルロットは今も男子用の制服を着ている。

 

「明日もそれ着て登校するのか?」

「もちろん。一夏との毎日の何気ないコミュニケーションが想像のネタになるからね」

「そ、そうか……できればあまり変な想像はしてほしくないな」

 

 漫画の中だろうがなんだろうが、自分を模したキャラクターが同性愛に走るのは勘弁願いたい。

 

「男装といえば……ここだけの話、僕が男として転入するってプランもあったんだ」

「……え? それってどういう」

「つまり、書類とかいろいろ捏造して『シャルル・デュノア』という人間を作り出して、男のふりをした僕が学園に入るってこと」

「それって普通にまずくないか?」

「まあ、ばれたら僕は牢屋行きだったと思うよ」

 

 じゃあ、なんでそんなことを? 話が突飛すぎて理解が追いつかない。

 

「デュノア社はいろいろ経営に苦労してるからね。社長……僕の父だけど、彼も相当精神が参ってたんだよ。深い理由は考えない方がいい」

「よ、よくわからんが、考えない方がいいんならそうするよ。でもシャルロットが女としてここにいるってことは、その計画はなしになったんだよな?」

「一時は本当に実行手前まで来てたんだけどね。僕が男装して父さんの前に立ったら、急に向こうの気が変わったみたいで」

「どうしてだ?」

「『お前の男装は気持ち悪いほどに完璧だ。だが、それでもお前に漂う女の空気は消せないように見える。これではすぐにばれるから実行する価値もない』だってさ。失礼しちゃうよね、僕は結構隠し通せる自信あったのに」

 

 マジか。俺を含めてクラスの人間全員が全然気づけてなかったレベルなのに。それでもシャルロットの父親の目には彼女が男として映らなかったのか。

 

「親子だからってことなのかもな」

「え?」

 

 ふと漏れた俺のつぶやきに、シャルロットがえらく大きな反応を示した。

 

「いや、父親は娘のことをよく見てるから、男装しようが何しようが娘は娘のままに見えちまうのかなってこと。いわゆる親の愛ってやつ?」

「………」

「シャルロット? どうかしたのか」

「う、ううん。なんでもないよ。……そうだね。そうかもしれないね。希望的観測だけど、悪くない考えだ」

 

 呆けたような表情をしたかと思えば、今度はうれしそうに微笑む彼女。俺も思わず戸惑ってしまう。

 

「俺、なんか変なこと言ったか?」

「そういうわけじゃないよ。一夏は気にしないで。……そうだ、今度僕の描いた漫画を見せてあげるよ」

「お、おう。それは楽しみだな」

 

 何かごまかされたような気もするが、本人が話したがらないのなら深入りする必要もないか。

 

 

≪ルームメイト≫

 

 IS学園での初日の授業が終わり、私はほっと一息をついていた。

 生まれた時からほぼずっと軍用施設で過ごしてきたゆえ、異国の学園という環境に身を置くことに少なからず不安はあった。しかし、担任は以前お世話になった教官――織斑千冬先生であったし、日本語で行われる授業にも問題なくついて行ける。それがわかって、さしあたっての問題はなくなったと言っていい。

 

「あ、ボーデヴィッヒさん。やっぱり僕達同じ部屋みたいだね。これからよろしくお願いします」

 

 そして、たった今新たな問題が浮上した。

 

「そ、そうか……私のルームメイトはデュノアか。よろしく頼む」

「うん。随分帰りが遅かったけど、どこか行ってたの?」

「少し資料室で調べ物をな」

「そうなんだ。じゃあ晩御飯はまだ?」

「いや、帰りに食堂で食べてきた」

 

 シャルロット・デュノア。薄々予測はできていたが、よりによって彼女が私の相方とは。

 ……胸を張って言うことではないが、私はあまり他人と積極的にコミュニケーションをとるのが得意ではない。だから、彼女のような初対面からガンガン絡んでくるタイプの人間には苦手意識を持ってしまう。

 加えて、私は性的な知識も経験も足りていないので、朝のような話をされると戸惑ってしまうのだ。

 これらふたつの要素が重なって、デュノアへの対応の仕方がいまいちつかめない状態である。

 

「ボーデヴィッヒさん。朝はごめんね。いきなりあんなこと言われたら困っちゃうよね」

「ん……まあ、そうだな。今後は気をつけてほしい」

「わかった。もう男装を頼んだりはしないよ」

 

 さてこれからどう接していこうかと考えていた矢先、向こうから謝罪の言葉が飛び出した。根は悪くない人間だとわかって、少し安心する。

 

「お互いの荷物の置き場所とか相談しようか」

「うむ。ところでひとつ聞きたいのだが……先ほどから聞こえるモーター音はいったいなんだ?」

 

 部屋に入った時から、ヴイイインという小さな音がずっと響いている。

 

「あっ、ごめんごめん。ロー○ーのスイッチ入れっぱなしだった」

「?」

 

 ろうたあ? いきなりそんな単語が出てきたが、いったいなんのことなのだ?

 

「ボーデヴィッヒさん、もしかして知らない?」

「ああ。説明してもらえるか」

 

 私はデュノアから状況説明を受けた。

 

 数分後、私は部屋から飛び出していた。

 

「な、なななんてはれんちな……!?」

 

 やっぱりあいつは苦手だ!

 

 

≪弟子と弟、ご対面≫

 

「うわっ」

 

 寮の自販機でジュースを買って部屋に帰る途中、うっかり誰かとぶつかってしまった。

 

「ごめん、大丈夫か?」

 

 見ると、ぶつかった相手は本日転入してきたドイツの代表候補生、ボーデヴィッヒさんだった……が、どこか様子がおかしい。

 

「し、信じられん。あんなものを股に入れて痛いどころか気持ちいいだと? ま、まったく想像すらできん……」

「おーい、本当に大丈夫か?」

「んにゃっ!? な、なんだ!」

 

 俺とぶつかったことにも気づいていないらしい。あんまり廊下で考え事にのめりこむと危ないんだけどな。

 

「いや、今俺の腕が君に当たっちゃったからさ。ごめん」

「む、そうか。こちらこそ不注意だった。すまない、織斑」

「えらく悩んでたみたいだけど……というか顔色悪いぞ?」

「少し衝撃的な出来事があっただけだ。たいしたことでは……いや、たいしたことではあるのだが、とにかく他の者が気にするようなことではない」

「ふーん。よくわからないけど、疲れてるんなら部屋に戻った方がいいと思うぞ」

「それが普通なのだろうが……今、戻りたくないのだ」

 

 ふむ。事情はいまひとつ理解できないものの、彼女に休む場所を提供した方がいいというのはなんとなくわかった。

 

「じゃあ、俺の部屋来るか?」

「お前の部屋にか?」

「別に下心とかはないからな。それに、ひとり部屋でスペース余ってるんだ」

「……まあ、それなら厚意に甘えさせてもらおう」

 

 というわけで、ボーデヴィッヒさんを部屋に招くことが決定。彼女を連れて自室までの道のりを歩きはじめる。

 

「念のため確認しておきたいことがある」

 

 その途中、彼女が不安そうな声を漏らす。

 

「お前は、エッチな話はしないだろうな?」

「エッチな? はは、そんなことしたらセクハラだろ」

「うむ、それを聞いて安心した」

 

 話しているうちに俺の部屋の前に到着。鍵を開けたまま来たのでそのままドアに手をかける。

 

「おかえり一夏。待っていたぞ」

 

 中にはなぜか箒がいた。

 

「だからなんで女豹のポーズでいるんだお前は!?」

 

 しかもセクシーポーズでお出迎え。これ前にもあったぞ。

 

「あれから私なりに理想的な体勢を追求してみたのだ。忌憚なき意見がほしい……む? うしろにいるのはボーデヴィッヒではないか」

「はわ、はわわわわ」

「よくわからんがオーバーヒートしている! 箒、今すぐそのポーズやめろ!」

 

 

≪弟子と弟、お話しする≫

 

「粗茶だけど、どうぞ」

「緑茶か」

「あ、もしかして嫌いだったか」

「いや、むしろ好みだ。近頃周囲で日本食ブームが起きていてな。その一環でこういった茶も口にしてきた」

 

 あれから箒はすぐに出て行った。どうやら女豹のポーズを披露するためだけに待っていたらしい。

 静かになったところで、ボーデヴィッヒさんを座布団に座らせてお茶を淹れた。よく考えたら外国の人にいきなり緑茶はどうかとも思ったが、どうやら杞憂だったらしい。

 

「ふう……少し落ち着いた。ここに招いてくれたこと、感謝する」

「たいしたことじゃないから気にしなくていいぞ」

「そうか」

 

 言葉遣いは堅いけど、態度はそんなでもない。自己紹介の印象とは結構違うように感じられた。シャルロットに男装をすすめられて動揺してたし、そういう子なんだろうな。

 

「お前は教官の弟なのだな?」

「教官?」

「ああ、すまない。ここでは織斑千冬先生だったな。どうも昔の癖が抜けない」

「千冬姉なら確かに俺の姉だけど……」

 

 ドイツ出身で、あの人のことを教官と呼んでいる。とすると、もしかしてボーデヴィッヒさんは。

 

「なあ、もしかして君は軍隊の人間なのか?」

「そうだ。今は一応部隊の隊長を務めている。織斑先生には以前大変世話になった」

「隊長!? すごいじゃないか」

「それもこれもあの人の指導があってこそだ。もし織斑先生がドイツ軍に来ていなければ、今の私はなかったと言ってもいい。部下に慕われるような地位にもいなかったはずだ」

 

 数年前、千冬姉は一時期ドイツ軍でISに関して教鞭をふるっていたらしい。その間にボーデヴィッヒさんと出会っていたみたいだ。

 

「本当に素晴らしい方だ。それだけに、すでに現役を退いてしまったのが悔やまれる。最後の試合が棄権ではもったいないだろうに」

「………」

 

 残念そうに彼女が語っているのは、2年前に行われた第2回モンド・グロッソ――ISの世界大会のことだ。その大会の決勝戦を突然棄権した後、千冬姉は現役を引退した。

 そして、あの人が試合を放棄した理由は。

 

「どうした、浮かない顔をして。誤解しないでもらいたいが、私はお前を責めているわけではないのだぞ」

「……知ってるのか」

「誘拐された織斑一夏の情報を提供したのはわが軍だからな。その一構成員として、私の耳にもその話は入っている」

 

 決勝戦の当日、俺は謎の組織に誘拐された。そんな俺を助けるために、千冬姉は大事な試合を投げ出して駆けつけてくれたのだった。そのことに関しては、今も申し訳なく思っている。

 

「ブリュンヒルデという名誉よりも、教官はお前という肉親を選んだ。それまで乗っていたレールから外れる行為だったのかもしれないが、決して間違っているとは言えないだろう。むしろ私は、あの人がそういう人間だということをうれしく思う」

 

 ……この子、ええ子やな。

 

「ありがとう。千冬姉のことを褒められると俺もうれしい」

「そうか……ところで、なぜ私の頭を撫でている」

「はっ! すまん、つい反射的に」

 

 あまりの純真な言葉に庇護欲をかきたてられてしまった。

 ジト目を向けられ、すぐさま手を引っ込める。

 

「まあ、別にかまわんが。一夏がしたいのなら続ければいい」

「そ、そうなのか? あ、というか今名前で」

「やはりこちらで呼んだ方がしっくりくる。織斑というとどうしてもあちらの方が浮かんでしまうからな」

「なら俺の方もラウラって呼んでいいか? ボーデヴィッヒだとちょっと長いし」

「好きに呼ぶがいい。私はどちらでも気にしない」

「じゃあラウラ、これからよろしくな」

「うむ。こちらこそよろしく頼む」

 

 やはり実際に話してみないとわからないもんだ。自己紹介の時にはこんなにいい子だとは思わなかった。

 

「そういえば、さっき日本食ブームが起きてるって言ってたけど。あれって部隊の中でってことか?」

「そうだな。部下のひとりが日本好きで、そこから流れ込んできたのだ」

「へえ」

 

 日本好きな人がいるのか。今度会ってみたいな。

 

「どんな人なんだ?」

「優秀な副官だ。指示も的確で他の者からの信頼も厚い。私がいない間、留守は彼女に任せている。……ただ」

「ただ?」

 

 ラウラの表情に陰りがさす。どうかしたのだろうか。

 

「『モエ』だのなんだのよくわからないことを言って、私にバニーガールの格好をさせようとしてくるのだ。しかもその時の目が怖い。朝のデュノアと同じような感じだ」

「……なんというか、お前も苦労してるんだな」

 

 なんか俺達、すごく仲良くなれるような気がする。

 




シャルとラウラの背景説明してたら下ネタの量が少なくなってしまいました。次回はちゃんとギャグ多めでお送りしますのでお許しください。

普段アホなことばっかり言ってますけど、みんなそれぞれ抱えているものがないわけではないのです。

感想等あれば気軽に書いてもらえるとうれしいです。
では、次回もよろしくお願いします。
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