クラスメイトは全員思春期   作:キラ

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連載期間約2ヶ月。最終回です。


クラスメイトは全員思春期

≪物足りない?≫

 

 いろいろあった臨海学校が終わった翌日。今日から通常授業に戻って、来週には期末試験が待っている。ここがIS学園だとはいえ、英語とか数学の勉強をしなくちゃならないのは普通の高校と同じなのだ。

 というわけで、らしくなく朝のホームルーム前に英単語帳を眺めたりしているわけだが。

 

「うーん」

「おはよう、一夏。朝から難しそうな顔してるね」

「シャルロットか、おはよう。いや、なんか落ち着かないんだよな」

「落ち着かない?」

 

 合宿の途中から、箒と束さんのことで手一杯だった。思い返してみると、ここ数日の間ヘビーなボケを聞いていない気がする。いつもはツッコミに疲れていたけど、なくなったらなくなったで変な感じだ。

 

「箒がおとなしかったからかな。ツッコミ足りない気がしてさ」

「えっ」

 

 なぜか目を見開くシャルロット。続けてこれまたなぜか顔を赤らめる。

 

「あ、あのね、一夏。突っ込み足りないのなら、僕のお尻の穴を使ってもいいんだよ?」

「目の覚めるようなボケをどうもありがとう!」

 

 一気に日常に引き戻された。

 

 

≪また会えるよ≫

 

「おはよう、一夏」

 

 ホームルーム5分前、箒が教室にやって来た。

 

「おっす……お、今日もつけてくれたのか、そのリボン」

「お前からのプレゼントだからな。大事に使わせてもらう」

 

 俺から箒に贈った誕生日プレゼントは、赤のラインが入った白いリボンだった。あんまり自分のセンスには自信がなかったんだが、一昨日あれをもらった時にすごく喜んでくれていたし、昨日からつけてくれてるから大丈夫だったみたいだ。

 

「今日からまた普通の授業だな」

「うむ、そうだな。昨日まで、本当に濃厚な4日間だった」

 

 箒にとっては特にそうだろう。長年うまく接することができなかった姉との関係が大きく変わったのだから。

 昨日、旅館をあとにする時の箒と束さんの会話を思い出す。

 

『では、学園に帰ります。しばらくお別れになりますね』

『寂しいねえ。でも大丈夫、またすぐ会えるから』

 

 普通の姉妹のやり取り。箒にとっては、それがとても大事なことだったに違いない。

 

「次に会えるのはいつだろうな」

「いまだに行方不明扱いだからな。予想するのは難しいだろう」

「だよなあ」

 

 その数分後、ホームルームにて。

 

「はいはーい、転校生で天才の束さんだよー。自己紹介終わり」

 

 思ったよりもずっと早く再会できた。

 

「えええええっ!?」

 

 クラス中に驚愕の声が響き渡ったのは当然の話。

 

 

≪2○歳、学生です≫

 

「で、なんで転校生なんですか」

 

 1時限目の休み時間。早速箒とともに束さんに詰め寄った。

 

「箒ちゃんが今の生活楽しいって言ってたから、その幸せをわけてもらおうと思ったんだよ」

「わ、私の……? し、しかし今まで姿をくらませていたのは」

「やめちゃった。IS学園なら滅多なことじゃ干渉されないし平気平気。ま、一応ここの警備は強化させてもらうつもりだけどねー」

 

 強化させてもらうって、相変わらずさらっととんでもないことを。

 

「そうですか……とにかく、うれしいです。今まで避けていた分、姉さんとの時間を増やしたいと思っていたので」

「あぁん、可愛いなあ箒ちゃんは。今までは行動を真似たりしてただけだけど、今日からはいろんなことを一緒にできるからね」

 

 行動を真似る?

 束さんの言葉に、何か引っかかりを覚える。これまでに、この人がまるで箒みたいな行動をとったことといえば……

 

「あの、束さん」

「ん? なに、いっくん?」

「ひょっとして、俺の白式に新機能を取り付けたのは」

「あーうんうん。あれは箒ちゃんの性癖を参考にした結果だね」

 

 やっぱりそうか。前に箒も言ってたけど、そもそも束さんは下ネタがあまり得意でないし好きでもなかったはずなんだ。

 

「箒ちゃんが幸せそうに生きてるから、どこかに理由があるのかなって、とりあえず一番目立つ部分を真似してみたんだよ。結局効果は感じられなかったけどねー」

「でもあの竿は大好評でしたよ。私もセンスのよさを感じました」

「本当? じゃあまた白式になんかくっつけてみようかな」

「いいですね。その時はぜひ私も協力してアイデアを」

「俺のISで遊ばないで、お願いだから!」

 

≪困ったものだ≫

 

「驚きましたね。まさかあの篠ノ之博士がうちにやって来るなんて」

「しかも生徒でな。まったく、自分が無理を言えば道理が引っ込むことを理解しているからたちが悪い」

「そういう立場の人ですからね」

 

 職員室で真耶相手に愚痴をこぼす。話題はもちろん、今朝転校してきた馬鹿者について。

 

「ただでさえ変わり者が多いというのに、さらにトラブルメーカーが増えてしまった」

「織斑先生がしっかり手綱を握る必要がありますね」

「先が思いやられるよ」

 

 先ほど淹れてもらったコーヒーをすする。

 ……だが、どこで何をやっているかわからないよりは、目の届く範囲に置いた方がいいのかもしれない。

 

「まあ、放っておけないのも事実か」

 

 あいつが私の近くに留まるというのは、何年ぶりのことだろうな。

 

「………」

「ん? 山田先生、どうかしたか」

「愛を感じます」

「は?」

 

 難しい顔をしている真耶に声をかけると、よくわからない返事がかえって来た。

 

「表面上はツンツンしながらも、内心は篠ノ之博士への暖かい感情が見え隠れしています」

「いや、別にそんなことはだな」

「私、負けませんから! 付き合いは向こうの方が長いかもしれませんけど、今の織斑先生のパートナーは副担任の私ですし! だから織斑先生の愛を受けるのも」

「すまない山田先生。私は時々君の言うことについていけなくなる」

 

 

≪友達作り≫

 

「ねえそこの短髪」

「ははははい!? な、なななんでしょうか、篠ノ之博士」

「いや、別に呼んでみただけ」

「そ、そそそうですか。し、失礼しますっ」

 

 束さんに声をかけられた女子(相川さん)は、ガチガチに固まったままその場から退散する。

 

「ひょっとして、束さん怖がられてるのかな?」

「ひょっとしなくてもそうです」

「怖がられているというよりは、姉さんに萎縮していると言った方が正しいでしょうね」

 

 まあ、いきなりISの生みの親がクラスメイトになったら誰でも戸惑うよな。しかも束さんの他人を寄せつけない性格は意外と世間に知られていたりするし。行方をくらます前には、この人の内面を記事にしたものとかが結構出回ってたんだよな。

 

「箒ちゃん。やっぱり、他人とコミュニケーションとった方が楽しいの?」

「それは人によるとは思いますが……少なくとも私は、それで世界が変わりました」

「ふーん。それなら試してみたいんだけどな」

 

 とはいえ、今の状況だとそれもなかなか難しそうだ。

 

「私にいい考えがあります」

「おお、さすが箒ちゃん!」

「これから私の言う通りに動いてください。まずは――」

 

 数分後、再び束さんが相川さんに話しかけた。

 

「ねえ、キミ」

 

 耳元でささやくところから入り。

 

「は、はい! なんでしょう」

「そんなに肩に力入れないで。何かするわけじゃないんだからさ」

 

 ねっとりとしたしゃべりで相手を誘惑。

 

「怖がらなくていい。私と友人になってくれないかな」

「で、でも、いきなり篠ノ之博士の友達だなんて。どうすればいいか」

「ノンノン。深く考える必要なんてないのさレディー。キミに新しい世界を見せてあげよう」

 

 仕上げとばかりにそっと肩を抱いて。

 

「さ、私にすべてを委ねて。清香」

「は、はい……束お姉様」

 

 こうして相川さんが友達になった。

 

「うむ! やはり私の作戦勝ちだな」

「なんか無駄にエロい」

 

 なんで口説き落とす感じになってるんだよ。

 

 

≪まだ早い?≫

 

「一夏さん。これ、お返ししますわ」

 

 夕方に部屋でごろごろしていると、セシリアが訪ねてきた。

 

「あ、この漫画か。どうだ、面白かったか?」

「ええ、とても。たまには少年漫画というものも悪くないですわね」

 

 楽しんでもらえたようでなによりだ。

 

「しかし、セシリアの男性恐怖症もすっかり改善されたな」

「……そうですわね。とりあえず、一夏さんと触れ合うことには慣れましたわ。あとは、他の殿方に対しても落ち着いていられるかです」

 

 入学当初は近づくことすら拒否していたのに、今じゃこうして物の貸し借りまでやっているくらいだ。かなり仲良くなれたと思う。

 

「もう、俺に触られても平気なんだよな」

「はい。誰かさんの荒療治のおかげで、ですけど」

「その件はもう許してくれよ」

「ふふ、冗談ですわよ。わたくしももう気にしていません」

 

 個人トーナメントの例の事件については、俺の方もダメージを受けているから思い出したくない。

 まあとにかく、触ってもいいんならあれができるわけだよな。

 

「なら、マッサージしてやろうか? ここまで症状が改善した記念ってことで」

「マッサージ、ですか? 一夏さんが?」

「こう見えても結構テクニックには自信あるんだぜ」

「そうなんですの? それなら、お願いいたしましょうか」

 

 よしきた。普段千冬姉の凝った体をほぐすことで鍛えられた俺の腕、とくと堪能してもらうとしよう。

 

 

 翌日。

 

「あれ、セシリアどうしたの? 顔赤いよ?」

「いえ、少し昨夜のことを思い出していまして」

「? 昨日何かあったの?」

「まさかあそこまでわたくしの体が敏感に反応するなんて……危うく快楽の渦に飲み込まれるところでしたわ。やはり殿方に体を許すのはまだまだ早かったようです」

「え? 快楽? 体を許す?」

 

 なんかすっげー誤解されそうな発言が聞こえてきた気がする。

 

 

≪平和≫

 

「この国では野球が流行っているのだったな」

 

 休み時間にラウラと話していると、ふと思いついたように彼女がつぶやいた。

 

「先日町を歩いていたら、宣伝用の張り紙が数多く目に入った」

「そういえば、今年のオールスターはここの近くの球場でやるんだったな」

 

 夏に行われるプロ野球のお祭り。投票で選ばれた選手達がチームの枠組みを超えて協力するのがオールスターゲームである。

 

「野球はやったことがないのだが、基本的には棒で球を打つスポーツと考えていいのか?」

「ものすごく簡潔に言うとそうなるな。その棒はバットって名前がついてるんだ」

 

 俺も中学の頃までは友達とよくプレーしたもんだ。思い出したら久しぶりにやりたくなってきたな。

 

「バットを力強く握りしめて、鋭く速く振る。そうして球を思い切り飛ばすんだ。相手が守ってるところに飛ばすと駄目だな」

「ふむ。では野球は、バットという棒と球があれば遊べるのか」

「いや、あとはグローブが必要だな。球を捕るための道具だ」

「なるほど」

 

 夏休みに弾達を誘って野球やりたいな。そのためには人数集めないといけないけど。

 ……あ、夏休みといえば。

 

「ラウラ。俺、7月の末に海釣りに行こうと思ってるんだが、一緒に来ないか」

「釣りか。せっかくの誘いだが、あいにくと私は釣りをした経験がない」

「そこは大丈夫だ。俺がちゃんと教えるから。竿の持ち方からレクチャーできるぜ」

「ふむ……それなら、参加させてもらおうか」

「決まりだな」

 

 ひとりで釣るのもいいけど、話し相手がいた方がもっと楽しい。一緒に行くメンバーができてよかった。

 

「………」

「……どうした。えらく穏やかな表情になっているが」

「いや、こうやって普通に脱線しない会話ができるって癒されるなー、と」

「?」

 

 

≪いったいどうやったの?≫

 

「それにしても驚いたわ。まさか篠ノ之博士が私の後輩になるなんて」

「誰も予想できませんよね」

 

 廊下で偶然会った会長と話していると、自然と話題が束さんのことに移っていった。

 

「1年生の合宿先に現れたって聞いていたけれど……一夏くん、ひょっとして何かした?」

「何かって……別に俺は何もしてませんよ」

「本当? 何か魔法の言葉で博士をこっちに引き込んだとか」

「ないです」

 

 俺は背中を押しただけで、実際に束さんがここに来るきっかけを作ったのは箒だ。

 

「おねーさん、口は堅いわよ?」

「だから何もないですって」

「ふーん……まだ信頼度が足りてないのかしら。あっ、そうだ。下の口も堅いわよ?」

「なんでそれで信頼度上がると思ったんですか」

 

 相変わらず何考えてるかよくわからない人だ。

 

 

≪いつかは≫

 

「箒、すっかりお姉さんにべたべたね」

「今までぎくしゃくしてたぶん、一緒にいる時間を増やしたいんだそうだ」

 

 楽しそうにおしゃべりしている篠ノ之姉妹を遠目に見ながら、俺は教室に遊びに来た鈴と語り合っていた。

 

「最初に見た時は、関係冷え切ってそうでどうなることかと思ったけど、変われば変わるもんね」

「きっかけひとつだからな。箒が胸を張って束さんに向き合えるようになったから、全部が変わったんだ」

「向き合う、か。そうよね、家族だもんね」

 

 すっと目を細める鈴。心なしか寂しそうに見えるのは、多分俺の気のせいではないだろう。

 

「あたしも、もう一度父さんと会うことがあったら……その時は、ちゃんと向き合いたいな。今度は、中2病なしで」

「……ああ。鈴ならできるさ」

 

 鈴の両親は、俺達が中学の頃に離婚してしまっている。当時の彼女はその現実を受け入れられず、中2病を発症していた。

 中2病自体は捨てるべきじゃないと俺は言ったけど、できることなら家族とはありのままの姿で向き合うべきというのも事実だ。

 そして、きっと鈴ならそれが可能なはずだ。

 

「ありがと」

「どういたしまして」

 

 俺はただ、背中をそっと押してやるだけでいい。

 

「自分を隠さずに、胸を張って……」

「………」

「………」

 

 なぜか会話の流れが止まる。

 

「今、張るほどないだろって思わなかった?」

「自意識過剰すぎ」

 

 

≪懐かしい思い出≫

 

「へえ、中2病かあ」

 

 束さんがまじまじと鈴を見つめる。つい先ほど、またもやいつもの症状が出たところである。

 

「またまたまたやってしまった……」

「道は険しいな」

「私はやめる必要がないと思うのだが」

 

 落ち込む鈴をフォロー? する箒。一方束さんは、目を閉じて微笑を浮かべていた。

 

「懐かしいねえ。ちーちゃんとの学生時代を思い出すよ」

「え? なんでそこで千冬姉が出てくるんですか?」

 

 俺と箒は困惑するが、鈴だけは心当たりがあるようで、何やらハッとしていた。

 

「だって、ちーちゃんも中学の頃は」

 

 束さんの言葉を、俺達は最後まで聞き取ることができなかった。

 突如として一陣の風が吹き荒れ、気づけば束さんの姿が消えていたからだ。

 ちなみに、教室の窓は開いていない。

 

「なんか今、スーツ姿の女性が横切ったような」

「ついでに髪は黒かった気がするわ」

 

 呆然と立ち尽くす俺達3人。箒と鈴が見たという人影は、俺も目撃していた。

 

「というか、束さんはどこに」

「ただいまー」

 

 ようやく頭が回転し始めたところで、教室の入口から束さんが帰ってきた。

 

「姉さん、いったい何が」

「いやー、やっぱり他人のプライバシーをどうこうするのはよくないね。はい、さっきの話は終わり!」

 

 そこで俺達は気づいた。

 あの束さんが、冷や汗をかいている。

 

「……世の中には、あまり詮索しない方がいいこともあるってことだな」

「私も同感だ」

「あたしも」

 

 悪寒を感じたので、これ以上の深入りはやめることにした。

 

 

≪抑えきれない感情≫

 

「ありがとう、一夏」

「急になんだよ」

 

 廊下で箒と話していると、唐突にお礼を言われた。

 

「これまでのことを思い返していたら、どうしても言いたくなったのだ」

「束さんとのことなら、合宿中にも散々感謝されたぞ」

「それでもだ。私の友達になってくれたこと、生き方を変えてくれたこと、そして姉さんのこと。私は何度もお前に助けられてきた」

 

 箒に言われて、俺の方でも今までの出来事を振り返ってみる。

 まず、箒の友達になったこと。あれは別に、ひとりでいる箒がかわいそうとか、そんなことを考えたわけじゃない。木登りがうまくて、いろんなことを知っているこの子と仲良くなれたら、きっと楽しいだろうなと思っただけだ。

 生き方を変えたことも、束さんとのことも、俺はその手伝いをちょびっとやっただけにすぎない。箒が箒だったからこそ、すべてがうまくいったのだ。

 

「今のお前があるのは、間違いなくお前自身の力のおかげだ」

「私自身の、だと?」

「ああ……まあ、あれだ」

 

 箒はよく笑うようになった。それにつられるように、彼女の周りには人が集まるようになった。必然的に、面白いことも増えた。

 

「それだけ、お前の笑顔が魅力的だってことだろ」

 

 こういうことを言うと、なんだか口説いてるみたいで恥ずかしい。なので、照れを隠すために笑っておいた。たまたま廊下に誰もいなくて助かったな。

 

「……はぅ」

「箒?」

 

 俺の言葉を聞いた箒は、うつむいて黙り込んでしまった。今のキザな発言、もしかして引かれてしまっただろうか。

 

「悪い。ちょっと言い方がおかしかったかもしれ」

「我慢ならん」

「え?」

「もう我慢ならん!」

 

 ぐわっと顔を勢いよく上げる箒。その頬が真っ赤に染まっているのは、夕焼けのせいではないっぽい。

 

「一夏、好きだ! 大好きだ!!」

「えっ」

「理解できないなら言い方を変えてやる。愛している、でどうだ!」

「え、えええええっ!?」

 

 ちょ、待て、いきなりすぎて理解が追いつかない!

 俺は今、告白されてるのか?

 

「お前がそばにいると楽しい。ずっと一緒にいたい」

「え、えっとだな……とりあえず、うれしい。そういう風に言ってもらえるのは、本当に」

「一夏はどうだ?」

 

 ぐい。距離を詰められる。

 

「断ってもいい。だからとにかく、お前の気持ちを聞かせてほしい」

 

 ぐいぐい。俺が後退したぶん、さらに箒は前に出てきた。

 

「待ってくれ。俺にも心を整理する時間というものが……うおっ」

 

 距離が縮まりすぎたせいで、互いの脚がもつれた。そのまま俺は、箒に押し倒されるような形で廊下に寝転んでしまう。

 

「す、すまない一夏! つい興奮しすぎて」

 

 腰のあたりに箒の体重がかかっており、床との板挟みで結構痛い。でもすぐにどいてくれそうなので、これでこいつが落ち着いてくれたと考えればいいか――

 

「箒さんが一夏さんを押し倒していますわ……!」

 

 セシリアに現場を目撃されたのは、まさにその瞬間だった。

 誤解度100パーセントの彼女の声はよく通り、ぞろぞろと他の生徒達も集まってくる。

 

「ほ、ほんとに押し倒してる!? ちょ、ちょっと待ちなさいよ! あたしだって一夏のこと」

「あれは……騎○位!?」

 

 鈴にシャルロット。

 

「お、お前達、はれんちだぞ!」

「あらあら、青春ね」

 

 ラウラに楯無会長。

 

「放課後の校舎で、なんて大胆な……」

「あれくらいが普通なの? 女子校出身にはわからないわ」

「イクのか! イクのか! とりあえずスクープね」

 

 さらに加えて、大量の野次馬のみなさん。

 

「ああもう、こっちは告白されていっぱいいっぱいだってのに!」

 

 本当にまったく次から次へと……!

 クラスメイトその他もろもろ、全員まとめて思春期すぎる!

 




冒頭のシャルのセリフはおホモだち的な意味で言ったものであって、決して女として尻を捧げようとしたわけではありません。「男同士の絡みを妄想するために男装している」って設定、忘れられてそうで不安です……

最後をタイトル締めにすればとりあえず終わった感が出る。
というわけで、「クラスメイトは全員思春期」これにて本編完結です。ここまでお付き合いいただいた読者の皆様、本当にありがとうございます。10万字ちょいの中編になりましたが、無事当初のプロット通りに終わらせることができました。全然最終回っぽくないという意見もあるかと思いますが、普段通りのネタの消化で締めることにしました。

作品全体のあとがきを述べる前に、今後の予定について。
まだ拾いきれていないネタが残っています(主にシャルとラウラ)ので、番外編としてそのうち投稿するつもりです。おそらく真面目成分多めになるのではないかと思われます。彼女達ふたりのストーリーは本筋とも若干外れていますので、ぐだるのを恐れて本編からは外しました。シャル編、ラウラ編は個別ルートみたいな扱いになりそうです。

では、ここからはあとがきに入ります。別に興味ないという方とはここでお別れです。僕の作品を読んでいただいてありがとうございました。


この作品のテーマのひとつはもちろん、「ISと下ネタの融合」です。そっちは今さら語るまでもないと思うので、裏テーマの方について説明したいと思います。
最終回直前にああいう話を挟んだのでだいたい予想のつく方も多いと思うのですが、僕がこの作品を書くにあたって一番大事にしたキャラは篠ノ之箒です。
ISと生徒会役員共を混ぜるのはいいけど、それだけじゃゴール地点が見えづらい。何かもうひとつ本筋となる要素が欲しい。そんなことを考えながらISを読み直していて、あることに気づきました。
箒って笑ってるシーン少ないなあ、と。
そういう性格のキャラなので仕方ないのですが、旧装版1~7巻、新装版8巻を見直して彼女の笑っている挿絵がゼロというのはいくらなんでも寂しすぎる(見落としてたらごめんなさい)。
そこで、どうせ下ネタ言わせまくるのならついでに底抜けに明るいキャラにしてしまおう、と思い立ったわけです。
しかし、原作でああいうキャラである箒をなんの理由もなく性格改変するのはおかしい。そういう性格になった背景を描きたかったので、18話の過去回の内容が生まれました。

こうして、裏テーマ「箒を笑わせる」のもと、作品内の箒ちゃんが誕生したのでした。ひとりだけタグに名前が入っていたのはそういう事情です。

他のキャラもいろいろ大胆に変わっているのですが、全部挙げていくとキリがないのでやめておきます。

ストーリーについては、基本ギャグでたまに真面目な話という構成でした。ギャグ寄りに振った作品を書くのは初めてだったのでいろいろ不安だったのですが、最後まで書けたのでとりあえずは良しとしておきます。
シリアス部分については言及しないでおきます。あとがきで結論とか語っても味気ないような気がしますし。でもひとつだけ言うとしたら「楽しいことは案外近くにある」ってところですかね。

長くなりましたが、これくらいで作品を振り返るのを終わりにしようと思います。
最後にもう一度。読んでいただき、ありがとうございました。
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