クラスメイトは全員思春期   作:キラ

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多分この作品は原作3巻の内容辺りで終わります。


副担任は二刀流

≪お姉さん その2≫

 

「織斑」

「あ、千冬姉」

 

 織斑千冬。俺の所属する1年1組の担任で、寮監も兼ねている。そして、俺の実の姉でもある。

 

「学校では織斑先生と呼べ。何回言わせれば気が済むんだ」

「あ、そうだった。ごめ……すみません、織斑先生」

 

 授業中とかはちゃんと呼べてるんだが、たまにこうして廊下でばったり出くわした時とかはついいつもの癖が出てしまう。

 

「次からは間違うな。……ああそうだ、ひとつ話があった」

「はい?」

「以前大浴場が使えないことをぼやいていただろう。寮の方に掛け合ってみたが、近いうちにお前専用の時間を設けることが決まった」

「え、本当ですか!」

 

 学生寮には大浴場があるのだが、当然混浴は不可なので男の俺は使用が禁止されている。毎日自分の部屋のシャワーで我慢している状態だ。銭湯とか大好きな俺にとっては辛いので、千冬姉にそのことを愚痴った記憶がある。

 

「ありがとうございます」

「気にするな。当然のことをしただけだ」

 

 それにしたってうれしい。今から湯船につかるのが楽しみになってきた。

 

「気持ちいいだろうなあ」

「先に言っておくが、浴場にひとりだからといってはしゃぎすぎるなよ」

「わかってます」

「………」

「………」

「………」

「……なぜ怪訝そうな目つきをしている」

「いや、最近会話にオチがつくことが多くて身構えてしまっただけです」

「何を言ってるんだお前は」

 

 だって風呂とかはしゃぐとかそういう単語出したら絶対反応するやつが同じ部屋にいるし。そのせいで今も何か言われるんじゃないかと思ってしまった。

 でも、普通に考えたら千冬姉は安全だ。一緒に暮らしててそういう傾向がないのはわかってるんだから。

 

「そろそろ休み時間が終わる。早く教室に戻れ」

「はい」

「あと、自宅にあった姉萌え本は資源ゴミに出しておいたからな」

「Oh……」

 

 そうそう、千冬姉はこうやってストレートにえげつない行為するだけなんだから。

 

 

≪男嫌いはなにゆえに≫

 

 また別の休み時間のこと。

 

「きゃっ」

「おっと。ごめん、ちゃんと前見てなかった」

 

 考え事をしながら歩いていたせいで、廊下の曲がり角で誰かと肩がぶつかってしまった。

 

「いえ、お気になさら……」

 

 かちん、とぶつかった子の動きが止まる。

 金髪ロールのお嬢様、セシリア・オルコットだった。

 

「ずあっ!?」

 

 およそお嬢様らしからぬ声をあげながらズザザザと後ずさるオルコット。……ここまで嫌がられるとさすがに傷つくな。

 

「大丈夫か?」

「だ、大丈夫なわけないでしょう!? ぶ、ぶつか、ぶつかったのですわよ肩が! どうしてくれますの!」

「お気になさらずって言いかけたのに」

「あれは相手が女性だと思っていたからですわ! まさかたったひとりの男に当たっただなんて……」

 

 顔を真っ赤にしてきーきーわめくオルコット。こいつの男性恐怖症は筋金入りらしい。

 

「なあ、どうしてそんなに男を怖がるんだ?」

 

 女にしか扱えないISの登場以降、世論は女尊男卑に傾いた。昔は男が女を差別していたように、今では男を差別する女性が増えつつある。

 ただし、その差別の仕方は『男を見下す』もので、オルコットのように男に近づくことすらままならないような人は見たことがない。

 

「ど、どうしてって、それは……どうしてもですわ」

「別に触れたら呪われるってわけじゃないし、とって食おうってわけでもない。なのにそこまで避ける必要はないんじゃ――」

 

 ここまで言って、俺はある大事なことに気がついた。

 そうだ。普通なら男をここまで怖がる必要はない。だけど現にオルコットは過剰に俺を避けている。

 俺のどこかが気に入らないから近づけない? それならまだいい。でももし、オルコットが男全般に触れられないのだとしたら、そこには何か『普通でない』理由があるんじゃないだろうか。

 たとえば、昔男に暴力を振るわれてトラウマになっているとか。

 だとしたら、事情も知らない俺が知った風な口を聞くのは間違っている。

 

「わ、悪い。あんまり深入りするようなことじゃ」

「本当に?」

「え?」

「本当に、とって食おうってわけじゃないんですの?」

 

 じーっと俺の顔を(5メートル先から)見つめるオルコット。何か真に迫るものを感じる問いだった。

 

「もちろんだ。少なくとも、俺に関しては間違いない」

「………」

「………」

 

 無言の間。

 

「……や、やっぱり信用できませんわ! そうやって油断させておいてむしゃぶり尽くそうというのがああいう本の定番なのですわーー!!」

 

 急に叫んだかと思うと、オルコットは背を向けて走り去ってしまった。

 

「ああいう本……?」

 

 女の子を油断させといてむしゃぶり尽くすのが定番。

 そういう本のジャンルを、一応俺は知っている。これでもいろいろ気になるお年頃だから。

 

「……いやいや、ないだろ」

 

 だってオルコットだぞ? なんかすごい貴族のお嬢様なんだぞ? そんな女の子があんなの読むわけないだろ。

 ……ないよな?

 

 

≪専用機登場≫

 

「ほう、それがお前の専用機か」

 

 先ほど千冬姉から受け取ったISを見せると、箒は物珍しそうに俺の周囲をぐるぐる回り始めた。

 

「うむ、白くて男らしいじゃないか。かっこいいぞ」

「そうか。なんか褒められると照れるな」

 

 特訓3日目。昨日までは机の上でISの基礎知識を学ぶだけだったが、今日の放課後からはいよいよ実際に動かすとのことで、こうしてアリーナに来たわけだ。

 

「名前はなんという?」

白式(びゃくしき)だってさ」

「白式か。シンプルなのがよく似合っている」

 

 箒の方は、学校で貸し出している量産機『打鉄』を身に纏っている。武士っぽいデザインで作られているからか、彼女によく映えていた。

 

「そっちは侍みたいだな」

「侍……確かに。なら一夏は西洋の騎士だ。ホワイトナイトだな」

 

 騎士か、なんかかっこいいな。もっとも、俺に西洋騎士のような華麗な戦いができるとは思ってないけど。

 

「私も騎士のようなISを使いたいものだ」

「そうなのか?」

 

 どっちかというと、箒は騎士よりは侍の方が合っているイメージなんだが。剣道も強いし。

 

「だって女騎士ごっこができないじゃないか」

「すっげえ普通に言ってるけど別に変な意味はないんだよな?」

「くっ……殺せ!」

「やっぱりそっちか!」

 

 

≪好みの男性≫

 

「山田先生って彼氏いるんですか?」

「えっ!? か、彼氏さんですか? い、いませんよそんな人」

「えー、そうなの? 真耶ちゃん美人なのに」

「び、美人だなんてそんな。第一、私コミュニケーション苦手だから男の人となかなか仲良くなれなくて」

「あー。そういえばそんなこと言ってたような。男の人の押しが苦手とか?」

「はい。男の人って大きいから、迫られると怖いというか……」

「なるほどー」

「あ、でも高校生の時に気づいたんですけど、年下の子ならある程度平気なんですよ。なんだか言うことを従順に聞いてくれそうな気がするので」

「へえー。じゃあたとえば織斑くんもストライクゾーン?」

「え? 織斑くん、ですか?」

「だって年下ですよ」

「………」

「あ、あれ? 真耶ちゃん?」

「あー、そうですね。どうして今まで気づかなかったんでしょう。年下だし、顔もいいし、憧れの織斑先生の弟ですし。困りましたねー。こういうことが起こらないように女子しかいない学園で働こうと思ったのに、男の子が入って来ちゃうんですから……うふふふ」

「や、山田先生が壊れた……暴走?」

「いや、これはむしろ覚醒なんじゃ」

 

 

「む? どうした一夏。ぶるぶる震えて」

「今ものすごく身の危険を感じた」

 

 

≪好みの男性 その2≫

 

「女子って普段どんなこと話してるんだ?」

「急にどうした」

「いや、少しでも女の子と円滑なコミュニケーションを送れるようにと思って」

 

 話のネタとかを合わせられれば、ある程度は仲良くできる気がする。

 

「別に男と大して変わらないぞ。昨日見たテレビ番組の話とか、最近読んだ雑誌の話とか……いや、でも恋愛絡みのネタは女子の方が多いらしいな」

「それっていわゆる恋バナってやつか」

「ああ。私もこの学園に来てからもう2回ほど経験している」

 

 結構頻度高いんだな。でも箒に恋バナってあまり想像できない。シモの話をしている場面ならいくらでも浮かんでくるんだけど。

 

「そういや、箒ってどんな男がタイプなんだ?」

 

 せっかくだし聞いてみるか。単純に気になるし。

 

「な、なんだ。いきなり恋バナの実践か」

「別にそういうわけでもないんだが、まあそれも兼ねとくか」

「ずいぶんと適当だな……」

 

 苦笑を浮かべる箒。ちょっとデリカシーに欠けていただろうか。

 

「まあいい、教えてやる。私の好みは面白い男。以上だ」

「面白い男……それだけか?」

「それだけだ。どうした、何か不満か?」

「いや、そんなことないぞ」

 

 ただ、こいつのことだから何かしらオチをつけてくるんじゃないかと思ったぶん意外だっただけだ。

 

「だが、よくよく考えるとただ面白い人間とは友人であればそれで済む話だな。恋人にしたい男となると……やはりかっこよさも欲しいところだ」

「なるほどな」

 

 なんだか乙女チックな一面を見た気がする。やっぱり箒も普通の女の子なんだな。

 

「あと、私はSだから蝋燭プレイくらいには耐えられる男が望ましいな」

「油断するとすーぐこれだ」

 

 

≪決闘本番!≫

 

 新生活に適応しようと頑張っているうちに、気づけばすでに1週間経ってしまった。

 月曜日の放課後。ついにオルコットとの勝負の時が来てしまった。

 

「まったく自信がない」

「そう暗い顔をするな。命を賭けた戦いでもあるまいし」

「でもなあ……結局白式を一通りスムーズに動かせるようになっただけだぜ?」

 

 最初から勝てるとも考えていないけど、多少ダメージを与えるくらいはしたい。でも、今の俺でオルコット相手にそれができるのだろうか。

 

「たった1週間でそこまで行けただけでも十分だ。それに、この後私もオルコットと試合をする。敗者はお前ひとりにはならないさ」

 

 クラス代表を決める意味合いを持った模擬戦なので、俺と同じく推薦を受けた箒も参加者のひとりだ。俺よりずっと強いけど、それでも代表候補生には遠く及ばないらしい。

 にもかかわらず、箒は俺と違ってニコニコ笑っている。

 

「お前、どうしてそう楽しそうにいられるんだ?」

「だって面白そうじゃないか。入学早々代表候補生と手合せできるのだ。こんな機会滅多にない」

「面白そうって」

「お前も、辛気臭い顔をしている暇があったら笑っておけ。オルコットとの勝負を楽しんでくればいい。向こうは負けたら恥かもしれんが、お前は負けても失うものはない。万が一勝てたら勲章ものだ」

 

 ……そうだな。マイナスに考えるよりも、ポジティブに前向いてた方がずっとマシだよな。

 

「あ、いたいた。織斑くん、そろそろ時間なのでアリーナに来てください」

 

 山田先生が俺を呼びに来た。オルコットはもう準備できてるのだろうか。

 

「行ってくる。ありがとな、おかげで緊張がほぐれた」

 

 まずは俺の試合からだ。アリーナに向かうことにしよう。

 

「一夏!」

「なんだ?」

「しっかりアナ――」

「そのネタはもういい」

「織斑くん! しっかりア○ル引き締めて頑張ってくださいね!」

「そっちもかい!」

 

 ツッコミが足りないぞ、おい。

 

「ったく……」

 

 締まらない。本当に締まらない送り出し方だが、俺にはそれでちょうどいいのかもしれない。

 

「頑張れ、ホワイトナイト」

「おう!」

 




ホワイトナイト……英語で書けばWhite knight。直訳すれば白騎士。だが、白甲冑のイメージの薄い日本においては、「白馬の騎士」と訳されることも多い。――ホウキペディアからの引用

下ネタマシンガンの中にわずかなデレを潜ませる。新たな萌えジャンル「シモデレ」の使い手、それが篠ノ之箒である。

感想等あれば気軽に送ってもらえるとうれしいです。
では、次回もよろしくお願いします。
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