クラスメイトは全員思春期   作:キラ

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セカンド幼なじみは病持ち

≪スキャンダル≫

 

 ざわざわ……

 

「なんだこの人だかり?」

「掲示板……校内新聞に人が群がっているようだな」

 

 箒と一緒に登校してくると、廊下が生徒達でいっぱいになっているのを発見した。

 

「あ、織斑くんだ! ねえねえ、これ本当なの?」

 

 生徒のひとりが俺に声をかけ、貼り出されている新聞を指さす。あれって俺関連の記事なのか?

 

「なになに……『織斑一夏と生徒会長、夜の密会♡』」

 

 新聞にはそんなタイトルとともに、更識会長が俺の額を小突いている写真が載せられていた。

 

「ってなんだこれ。なんでハートマークついてるんだ」

 

 これじゃまるで俺と会長がいちゃいちゃしてるみたいじゃないか。一昨日の夜に会ったのは事実だけど、全然そんな雰囲気じゃなかったのに。

 

「みたい、というよりそう読み取れる記事を書かれているのだ。パパラッチされたな」

「い、いったい誰がこんなことを」

「それは私よ」

 

 背後を振り返ると、いつの間にか知らない人が近くに立っていた。

 

「新聞部副部長の黛薫子です。よろしくね、織斑くん」

「あ、ご丁寧にどうも」

 

 じゃなくて。

 

「で、なんですかこの記事」

「うん、よく書けてるでしょ? 写真もピントばっちり」

「そういう問題じゃないですよ。なんですか夜の密会って。嘘並べ立てたら新聞の意味ないじゃないですか」

「失礼な。私は捏造だけはしないって心に決めてるのに」

「でも思いっきり」

「いや待て一夏。よく見ると『密会』の横に米粒みたいな字で『か?』と書いてあるぞ」

「ね?」

「ね? じゃないですよ! なにドヤ顔してるんですか」

 

 こんなの、読めなきゃほとんど詐欺と変わらないだろ。

 

「次からはこんなのやめてくださいよ?」

「えー、そんなー」

 

 文句を垂れる黛先輩だったが、俺も退かずにごり押した。

 

「わかったわよ、前向きに検討しておくわ。代わりに自己紹介させてくれる? 贔屓にしてもらいたいし」

「はあ、いいですけど」

 

 名前はさっき聞いたけど、プロフィール的なことでも話すのかな。

 

「黛薫子、新聞部副部長。学年は2年。好きなことは想像すること、得意なことは脚色、嫌いな言葉は写実よ」

「多分ジャーナリスト向いてないと思うんですけど」

 

 

≪悩み事≫

 

「うーん」

「どうした一夏? さっきからうんうん唸って」

「いや、今日の夜のおかずは何にしようかなと思って」

 

 今日の授業もあと一コマなので、なんとなく夕飯のメニューに思いを寄せていたところである。寮の食堂はバイキング形式なので、選択肢が多い分迷ってしまう。

 

「大雑把なジャンルは決まっているのか?」

「今日は和風にしようと」

 

 昼はカレーだったし、夜はさっぱりしたものを食べたい。

 

「ふむ、王道だな」

「日本人だしな」

 

 結局米に回帰してしまう。パンとかも十分おいしいんだけどな。

 

「そうだな……ならあれなんてどうだ」

「何かおすすめがあるのか?」

「巫女服コスプレ」

「………」

「ん? どうかしたのか」

「いや、全然かみ合ってないのによくここまで会話続いたなーって」

 

 

≪オカズって書くとなんかエロい≫

 

 夜の自室にて。

 

「一夏。なにをナニって書くとエロく見えるな」

「そうだな」

「あそこをアソコって書くとちょっとエロいな」

「そうだな」

「行くをイクって書くとすごくエロいな」

「そうだな。ところで箒、ここの問題わからないんだけど」

「ああ、ここは教科書32ページの下の段を読めば簡単だ」

「おう、サンキュー」

 

 ……なんで脳内ピンクなのに頭いいんだろう、こいつ。

 

 

≪あなたに触れたい≫

 

「今日こそは男性に触ってみせますわ!」

「よし、やってみるか」

「ヤってみるか?」

「違うわ」

 

 協力宣言から1週間。そろそろ何かしら結果が欲しいところ。

 

「まずは無難に握手ができるようにするか」

「そ、そうですわね。今後生きていくうえで、さすがに握手のひとつもできなくては問題ですから」

 

 というわけで、俺は右手を差し出した。それを見て、セシリアも緊張した面持ちでゆっくりと手を伸ばし。

 

「や、やっぱり無理ですわ! 心臓がどきどきして……」

「そうか……まあ、まだ焦るような時間でもないか」

「そうだぞ一夏。いきなり手と手の接触ではハードルが高すぎる」

 

 俺達のやり取りを見ていたのか、ひょいっと箒が姿を現した。

 

「私にいい考えがある。セシリア、少し体勢を変えるぞ」

「は、はい。箒さん」

 

 そういえば、いつの間にかお互い名前呼びになってるな。仲良きことは美しい。

 

「そうそう。一夏に背を向けて、片足立ちになって」

 

 箒の指示のもと、セシリアはあっちを向いて右脚を後ろに突き出し、上履きを脱いだ。

 

「顔と足はもっとも遠い位置にあるからな。いくらかやりやすいだろう」

「確かに、そうかもしれません」

 

 でもこれ、仮に俺の手に足が触れたとして何か進歩があったと言えるのだろうか。

 

「や、やはり駄目ですわ! 足を突き出すと舐められそうですわ!」

「しかも結局できないのかよ!」

 

 

≪転校生≫

 

 四月も終盤に入り、桜もすっかり散った頃。

 朝の教室で、とある噂を耳にした。なんでも2組に転校生がやって来たらしい。しかも中国の代表候補生だとかなんだとか。

 

「代表候補生、しかも4月のこの時期に転入……面白そうだな。1時間目が終わったら見物に行くか。それともいっそ朝のホームルームを2組で受けるか」

「そんなことしたら千冬姉に説教されるぞ」

 

 興味津々の箒に釘をさしつつ、俺も俺で転校生のことはちょっと気になった。

 ……中国といえば、あいつがいる国だな。今でもたまに連絡取り合ってるけど、元気にしてるだろうか。あいつもあいつで箒と同じくらい騒がしいやつだからなあ。

 

「一夏っ!」

 

 そうそう、こんな甲高い声で俺のこと呼ぶんだ。懐かしいな。

 

「一夏ってば!」

「一夏、呼ばれているぞ」

「え?」

 

 箒に言われ、俺はその声が俺の思い出の中ではなく現実で聞こえていることに気づいた。

 

「なに、シカト? それともあたしのこと忘れちゃったの?」

「おいおい、マジかよ」

 

 まさか転校生って……

 

「鈴! 鈴じゃないか!」

「返事が遅いわよ! ちょっと不安になったじゃない」

 

 教室の入り口あたりで仁王立ちしているその女子は、まさしく俺の知っているツインテールのあの子だった。

 凰鈴音。小学5年生の時にうちの学校に入ってきて、中2の終わりに中国に帰るまで仲良くしていた友達だ。

 

「なんでここに……中国の代表候補生ってお前なのか?」

「驚いたでしょう? ずっと秘密にしてたもんね」

「ああ、本当にびっくりだ。直接会うのは1年ぶりだよな」

 

 でもあんまり変わってないな。小柄だった背はあんまり伸びてないように見えるし、髪型も昔と変わらずツインテールのままだし。

 

「一夏。その転校生、お前の知り合いなのか」

「わたくしも気になります」

 

 思わぬ再会に興奮しているうちに、俺達の周りには興味を持ったクラスメイト達が集結していた。箒やセシリアもその中に混じっている。

 

「はじめまして、凰鈴音よ。一夏とは中学まで一緒だったの」

「つまり幼なじみだな」

「小5で知り合ったのに幼なじみって変じゃない?」

「そうか? まあいいだろ別に」

 

 簡単な紹介を終えたところで、ホームルームの鐘が鳴った。

 

「じゃあ一夏、またあとでね」

「おう」

 

 ひらひらと手を振って教室を出ていく鈴。俺も自分の席に戻るか。

 

「小5で知り合ったということは、転校生だったのか?」

「ああ、お前と入れ替わる感じで入ってきたんだ」

「なるほど。私が知らないわけだ」

 

 納得した風にうなずく箒。そういえば、ふたりとも俺と一緒にいた時間は4年くらいでだいたい同じか。

 

「それにしても普通の子だったな。一夏の昔なじみだからてっきりもっと変わった者かと」

「どんなの想像してたんだよ」

「おはよオ○ニー! って挨拶したりとか」

「それお前だろ」

 

 俺が変わり種としかつるまないみたいな風潮はやめてくれ。というか、一応自分が変わってるって自覚はあるんだな。

 

「ま、あいつもあいつで変なところはあるんだけどな」

「なに?」

「あとでわかると思うぜ」

 

 昼は鈴と一緒に食べよう。話したいことがたくさんある。

 

 

≪凰鈴音≫

 

 というわけで昼食の時間。結構な大人数でテーブルを囲み、各々好きなものを食べながらおしゃべりに興じていた。

 

「へー。その子が昔言ってた、剣道やってる幼なじみなんだ」

「篠ノ之箒だ。よろしく頼む」

 

 幼なじみ同士が邂逅したり。

 

「わたくしはセシリア・オルコット。あなたと同じくイギリスの代表候補生ですわ」

「じゃあ1組の代表ってアンタなんだ。クラスの人に聞いたわ」

 

 代表候補生同士で挨拶したり。

 

「ねえねえ、中学時代の織斑くんってどんな感じだったの?」

「甘酸っぱいエピソードとかないの?」

「そうねえ」

 

 俺の昔話を掘り起こそうとしたり……っておい、それはやめてくれ。

 

「そういえば一夏、アンタ背伸びた?」

「ん? ああ、中3の1年間で結構でかくなってたな」

 

 男子はこの辺の年齢が伸び盛りだしな。

 

「鈴の方は……」

 

 幼なじみの全体像をじーっと眺める。1年前は女子の中でもかなり小柄な部類に入る体型だったが、しばらくぶりに会ってみると、なんと。

 

「ま、まあちょびっとだけ大きくなったみたいだな」

「下手な気遣いしないでくれる? 余計に傷つくから」

 

 全然成長していなかった。身体的コンプレックスを抱いているのは変わらないようだ。

 

「篠ノ之さん、肩凝ってるの?」

「うむ。どうも胸が大きいと不便でな、最近またブラもきつくなってきたし」

 

 ぎりぎりぎり……

 

「落ち着け鈴。歯ぎしりしてるぞ」

「ええ、ええ。わかってるわ。いちいちそんなこと気にしたりなんて……」

 

 特にバストのサイズが激しく不満らしく、指摘されると青筋が立つのがお約束だった。

 

 

≪重病人≫

 

「こんなことでイライラしてちゃ駄目ね。大人の女になるって決めたのに」

「大人の女?」

 

 ふとこぼれた鈴のつぶやきに反応すると、彼女はにっこり笑って俺を見た。

 

「そ、大人の女。落ち着いて、滅多なことで癇癪起こしたりしない人間になるのが目標」

「ほう」

 

 なかなか先を見据えた目標を持っているようだ。体に見合わず――

 

「体に見合わないとか思ってたらたこ殴りだから」

「癇癪起こさないって話はどこ行ったんだ」

 

 もうすでに思っちゃったじゃないか。

 

「でもなあ……落ち着いた鈴って想像できないな。中学の時はあんなだったし」

 

 ビクッ。

 

「ん?」

 

 なんか今、鈴の体が震えたような。

 

「やーねー一夏。あんなって何よ。あたしは別に普通だったでしょ?」

「いや、あれは普通とは言えないだろ。だって」

「知らないわねえ! いったいなんのことかしら!」

 

 な、なんだこいつ。急に声でかくして。えらく否定してくるな……

 

「なんだ? 何か面白い話でもしているのか?」

 

 箒達も食いついてきた。

 

「いや、鈴の中学時代の話なんだが」

「ほう」

「だから別に普通だったって」

「でもほら、よくやってたろ。今日は左手が疼く~とか」

 

 ピシリ、と鈴の体が硬直する。

 

「左手が疼く? なんですのそれ」

「他にもいろいろ難しい言い回し使ったりとかな。あとは決めポーズとったり」

「日本ではそういうのを中2病と言うのだ」

「なるほど、勉強になりましたわ」

 

 ちょうど発症したのが中2の真ん中くらいだったか。突然言葉遣いが変わったりして最初は戸惑ったなあ。

 

「うぐぅ……ふ、ふん。それはもう卒業したのよ。大人の女になるんだから」

「そうなのか? 残念だな、結構面白かったのに」

「いつまでも子供みたいなことやってられないわよ」

 

 ぷいっとそっぽを向く鈴。恥ずかしいのか横顔が赤く染まっている。

 

「面白い? 一夏、たとえばどんなのがあったのだ」

「たとえば、か。俺もうろ覚えなんだけどな、えーと確か……地獄の炎にどうこうとか。なんちゃらかんちゃらプリンセスとか」

 

 ピクッ。

 

「全然覚えてないではないか」

「しょうがないだろ。あ、でもよくやってたポーズなら多分できるぜ」

 

 椅子から立ち上がり、脚を肩幅まで開く。

 

「こうやって左目を手で覆ってだな。余った右手は前に突き出して……それで、なんとかフレイムって叫ぶんだ」

「なるほど。私もやってみよう」

 

 ピクピクッ。

 

「凰さん? さっきから震えてるみたいだけど大丈夫?」

「え、ええ……なんでもないのよ、なんでも」

 

 箒と一緒にポーズをとってみると、なかなか様になってる気がした。

 

「おお、結構かっこいいではないか。だが肝心の決め台詞を思い出せないのは問題だな」

「なんだったかな……ダークフレイム?」

「それならダークネスフレイムの方がかっこよくないか?」

「お、本当だ。じゃあもうそれでいいか」

「頭に何か補うといいかもしれんな。……滅びよ、ダークネスフレイム!」

「すげえ、様になってる! 滅びよ、ダークネスフレイム!」

「一夏もなかなかだぞ。ほら、今度は同時にだ」

 

 ぎりぎりぎりぎり……

 

「ふぁ、凰さん? あの」

「違う」

「え?」

「全然違う……!」

 

 ガタン!

 

「なってない! 全然なってないわアンタ達!」

「うおっ、急にどうした」

 

 いきなり椅子を揺らして立ち上がったかと思うと、鈴がずんずんと俺達の真ん前まで歩いてきた。

 

「左目は右手で隠すの! あと完全に覆うんじゃなくて隙間空けなさい。じゃないと『真眼』が魔力を解放できないでしょう!」

「お、おう」

「あと残った手は真正面じゃなくて左斜め前30度に突き出す! 手は開いて念を放出するイメージで!」

「う、うむ」

「そして台詞は」

 

 無茶苦茶引き締まったポーズをして、鈴はカッと目を開く。あまりに気合いが入っているのでオーラみたいなものが見える気がした。

 

「我が名は悪夢の女帝(ナイトメアエンプレス)。蛮族よ、地獄の烈火に苦しみ悶えるがいい。く、ふふふふっ……」

 

 あ、自己紹介から入るんだ。笑い声もすごく悪役っぽいぞ。

 

「終焉の闇に溺れろ! エターナル・デスブレイク!!」

 

 ビシイィッ!

 

 キレッキレの動きで必殺技が放たれた。

 

「こ、これはすごいな……付け焼刃では相手にならん」

「不覚にも見惚れてしまいましたわ……」

「闇が放たれる幻覚が見えたよ……」

「私も……」

 

 ギャラリーもなんだか感動していた。

 

「くくっ……見るがいい我が右腕よ。持たざる者どもが私を崇拝している」

「1年たってもさすがだな」

 

 ちなみに右腕というのは俺のことだ。いつの間にかそうされていた。

 

「当然だ。なぜなら私は混沌に愛されし……あ」

 

 気分よく語っていたかと思うと、急に言葉に詰まる鈴。

 

「あ、あ、ああ」

 

 みるみるうちに顔が真っ赤になっていく。ついでにきょろきょろあたりを見回し、自分に注目が集まっていることを確認していた。

 

「あ、あのね、これは違うの。その」

「凰」

 

 何か言おうとした鈴の言葉を遮り、箒がずいっと前に出る。

 そしてとびっきりの笑顔を見せて、

 

「感動したぞ! また今度私にも教えてくれ!」

 

 すごくうれしそうにそう言い放った。

 

「……う」

「う?」

「う、うわあああああ!!」

 

 直後、鈴は逃げ出した。それはもう驚くべきスピードで。

 

「封印したはずだったのにーーー!!」

 

 どうやら、この場にいるのが耐えられなくなったらしい。

 

「大人の女になりたいっていうのは本当らしいな」

 

 でも、いまだに重度の中2病に苛まれているみたいだ。

 

「やはり一夏の周りには面白い人間が集まるな」

 

 まあ、少なくともここにいる連中からの感触はよかったみたいだし、それが救いっちゃ救いか。

 




セカンド幼なじみは(中2)病持ち。大人な女を目指してるけど身体的にも精神的にも子供の殻を破れないキャラになりました。次回でもうちょっと掘り下げます。
クラス代表もセシリアになってますし、一夏が次に戦うのは結構先になりそうです。まあそっちがメインの作品じゃないからいいんですけど。

しかし、自分で書いてて思いましたけどエターナルデスブレイクってどういう技なんでしょうね。永遠の死の破壊って何してるかわからんです。あと一夏の記憶力はボロボロ。

感想等あれば、気軽に送ってもらえるとうれしいです。
では、次回もよろしくお願いします。
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