クラスメイトは全員思春期   作:キラ

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前回お気に入り400件とか言ってたのに700目前になっている……本当にありがとうございます。


中華娘は夢見る少女

≪大人の女≫

 

 あたしの名前は凰鈴音。昨日からこのIS学園に通うことになった代表候補生。

 目下最大の目標は、大人の女になること。中2病? イッタイナンノコトカシラ。

 

「いちかー、遊びに来たわよ」

「おう、鈴じゃないか」

 

 残念ながら今のあたしは目指すべき理想から程遠いので、まずはお手本になりそうな子を探すことにした。2組にこれだと思える人材がいなかったので、続いて1組の見物に移る。

 

「なにキョロキョロしてるんだ、お前」

「ちょっとね」

 

 一夏と他愛のない話を繰り広げつつ、教室全体を見渡す。どこかに大人っぽい人はいないかしら。

 

「一夏さん、少しよろしいでしょうか」

「セシリア、どうかしたのか?」

「お尋ねしたいことがあるのですが」

 

 早速気品を感じさせる女子が出てきた。昨日会った時も思ったけど、このセシリアって子はすごくお嬢様っぽい。こういうふうに動作のひとつひとつから落ち着いた雰囲気を出せれば――

 

「男性は眠くなるとアソコが勃つと聞いたのですが、何か興奮なさっているのでしょうか」

「ああ、あれは興奮とかじゃなくて、眠気と緊張感が同時にあると起きるらしいぞ。あと女の子がそういうこと堂々と言わない」

「なるほど。またひとつ男の人について賢くなりましたわ。ありがとうございます」

 

 ぺこりと一礼して去っていくセシリア。

 

「どうした鈴、ぼーっとして」

「……なんでもないわ。ちょっと幻想が壊れただけだから」

 

 み、見た目は完璧なのに……

 

 

≪大人の女 その2≫

 

 気を取り直しましょう。さっきのは特殊な例に違いないわ。

 

「箒ちゃんって剣道強いんでしょ? 早くも剣道部のエースになったって聞いたよ」

「エースというのは言い過ぎだが……まあ、実家が道場だったからな。物心ついたときには竹刀を握っていた」

「へー、そうなんだ」

 

 少し離れたところで会話しているグループの中に、知った顔を見つけた。

 篠ノ之箒。一夏の幼なじみらしいけど、まず目に付くのがあの抜群のプロポーション。あれだけ胸が大きいのは羨ましいを通り越して恨めしい。

 

「箒がどうかしたのか?」

「え?」

「いや、気になってたみたいだから」

 

 彼女に視線を送っているのを一夏に気づかれた。ちょっと目を凝らしすぎたかもしれない。

 

「ええ……あの子、よく笑ってるわよね」

 

 昨日の昼食の時も、今も。あの満面の笑みがなんだか印象的だった。

 

「そうだな。箒はいつも笑ってる。面白いことを見つけるのが上手なんだよ」

「面白いこと、か」

 

 大人っぽい、とは少し違うけど、ああいうのも魅力的よね。見てる方も元気になりそうな笑顔だし。

 なんて思っていると、クラスメイトと話していた彼女がこっちに近づいてきた。

 

「凰ではないか。1組に遊びに来ていたのだな」

「こっちのクラスの様子も見てみようと思って。今ちょうど篠ノ之さんの話してたのよ」

「ほう、私の話か。一夏、妙なことを教えていないだろうな」

「俺は事実しか教えてないぞ」

「引っかかる言い方だな……まあいい。それより凰、私のことは箒と呼んでくれ。篠ノ之という名字はいささか呼びにくいだろう」

「そう? じゃああたしのことも鈴でいいわ」

 

 基本的に人を下の名前で呼びたがるあたしとしては、いきなり許可が下りてありがたい。

 

「一夏の幼なじみ同士、仲良くしよう。私達が組めばこいつのプライベートは丸裸だ」

「なるほど、それは面白そうね」

「お前ら笑顔で怖いこと言うなよ」

 

 一夏がジト目で睨む横で、箒と握手を交わす。この子とは仲良くなれそうだ。

 

「そういえば一夏、お前に聞きたいことがあったのだった」

「なんだ?」

「チンポジは左曲がりが一番多いらしいが、お前はどうなのだ?」

「よし帰れ。回れ右して帰れ」

「なぜだ! セシリアにはこういう話題でも丁寧に教えていたではないか!」

「あいつはまだピュアだからいいの! お前は完全アウト!」

 

 ……仲良くはなれそうだけど、参考にはできなさそうね。

 

 

≪大人の女 その3≫

 

 別の休み時間。

 

「山田先生。ちょっと質問があるんですけど」

 

 廊下を歩いていると、生徒のひとりが教師に質問している光景が目に入った。

 

「はい、なんですか」

 

 山田先生というと、確か1組の副担任だったかしら。担任が千冬さんだというインパクトが強すぎてちょっとうろ覚えだ。

 

「ここなんですけど」

「ああ、ここはですね」

 

 丁寧に優しい口調で答える山田先生。なんだか癒される声で、物腰も柔らかい。

 

「納得できましたか?」

「はい、ありがとうございました。あともうひとつ聞きたいことがあるんですけど」

「なんでも聞いてくださいね」

 

うん、ああいうのこそ大人の女よね。ようやくお手本になりそうな人を見つけたかもしれない。

 

「織斑先生と織斑くん、どっちが本命なんですか?」

「どっちが本命とかはないですよ。ついでに言うと男とか女とかも関係ないんです。ふたりとも素敵だから……ああ、どうしましょう」

「先生、よだれが」

「ああ、ごめんなさい」

 

 あたしはそっとその場をあとにした。

 

 

≪大人の女 その4≫

 

「この学園、普通じゃない人が多すぎない?」

 

 さっきから上げて落とすパターンばかり……いい加減疲れてきた。

 目標とすべき大人の女、本当に見つかるのか不安になってきた。

 せっかく一夏とまた会えたのに、先が思いやられる。

 

「はあ……」

「背筋を伸ばせ、馬鹿者」

「え?」

 

 背後から声をかけられ振り向くと、スーツをびしっと着こなした女性教師が立っていた。

 

「千冬さん」

「久しぶりだな。それと、学校では織斑先生と呼べ」

 

 織斑千冬さん。1年1組の担任で、一夏のお姉さん。昔はいろいろとお世話になった。

 

「お前は代表候補生なのだろう? 他の生徒の模範となるよう、普段からしっかりしておけ」

「は、はい」

 

 有無を言わさぬ厳しさは相変わらずみたい。さすが深淵の魔王(アビス・サタン)……って、だからこれは封印だって!

 でも、言ってることは間違ってないから文句は出ないのよね。

 

「わかればいい。ところで凰、今日の夜は空いているか」

「夜ですか? 別に用事はないですけど」

「そうか。なら少し付き合ってもらえるか? 1年ぶりだ、いろいろと話したいこともある。かりにも昔は何度も戦わされた仲だからな」

「そ、その話はやめてください!」

 

 中2病時代、勝手に魔王認定して千冬さんに喧嘩を売りまくっていた記憶がよみがえる。じゃんけんやったり将棋やったりと、あらゆるルールで挑んだけど、ことごとく返り討ちにされる……そんなこともあった。

 

「と、とにかく、夜にお話しするのは大丈夫です」

「決まりだな」

 

 ふっと口元を緩める千冬さん。ちょっとうれしそうなのが顔に出ていた。

 そしてその瞬間、あたしの体に電流が走った。

 

「これよ……」

 

 ザ・社会人といったスーツの着こなし。厳しさの裏に暖かさが見え隠れしているその態度。

 

「師匠! 師匠と呼ばせてください!」

「なんだ急に。私は魔王ではなかったのか」

「それは昔の話です!」

 

 これこそ大人の女、間違いない。早速弟子入りしなきゃ……

 

「弟子にしてください!」

「ば、馬鹿者、いきなり抱きついてくるな。ここは学園――」

「見て、織斑先生が転校生と抱き合ってる!」

「山田先生もすごく慕ってるし、やっぱり千冬お姉様って……アッチ系?」

「アッチ系?」

「……どうしてこの学園はこうなんだ」

 

 なんか外野がうるさいけど何言ってるのかしら?

 

 

≪ししょー≫

 

「大変だ一夏! 千冬さんと鈴が廊下でぐんずほぐれつぎしぎしあんあんらしいぞ!」

「絶対ないから安心しろ」

 

 何があったか知らないけど話に尾ひれつきすぎだろ。女子校特有の現象なのか?

 

「そうなのか? つまらないな」

「実際に起きてたら面白いじゃすまないんだが」

「む、それもそうか」

 

 残念そうな箒にツッコミを入れつつ、2階へ続く階段を昇っていく。先ほど他のクラスの教師に段ボール箱を運んでほしいと頼まれたのだ。

 

「これ、何が入ってるんだろうな」

「教科書だったぞ。この時期に追加するのは少し妙だな」

「ふーん」

 

 俺も箒も、運んでいるのは1箱ずつ。ちょっと重いが、持てないというほどではない。

 

「あら、一夏くんじゃない」

「あ、会長。こんにちは」

 

 2階に上がったところで、廊下を歩いていた更識生徒会長と鉢合わせた。

 

「キミが2階に来るなんて珍しいね」

「ちょっと届け物を頼まれまして」

「それはご苦労様」

 

 ぽんぽんと閉じた扇子で手を叩く会長。会うのは2回目なのにすごく親しげに接してくるので、少し戸惑ってしまう。

 

「で、あなたが篠ノ之箒ちゃんね?」

「はい、そうですけど……そちらは更識生徒会長ですよね」

 

 いきなり名前を呼ばれて少し驚いている箒。会長とは初対面のようだ。

 

「そうよ。こんにちは」

 

 と、そこで会長の扇子がばっと開かれる。

 白い扇子には、大きく『和姦』と書かれていた。……いや、おかしいだろ。

 

「なっ……!?」

 

 なぜか箒が硬直している。まさか今さら和姦の文字に驚愕するようなやつでもないだろうし。

 

「こんにち『わ』と『和』姦をかけて、こんにち和姦! なんて高度な……!」

「ハードル低すぎない?」

 

 会長もなんで満足げに笑ってるんですか。

 

「会長……いえ、師匠。私を弟子にしてください」

「いいわ。見たところあなたは有望そうだし」

 

 こうして謎の師弟関係が誕生した。ふたりがお互いの何を気に入ったのかはさっぱりわからない。

 ……だが、確かに言えることがひとつある。

 

「このふたりが組むとヤバい……!」

 

 知らないぞ。俺ひとりじゃ収拾つけられないからな!

 

 

≪鈴ちゃんの専用機≫

 

 今日は2組と合同で屋外授業。グラウンドで実践を学ぶ時間だ。

 

「オルコットと凰。せっかくだ、模擬戦をやってみろ」

 

 授業の概要を説明し終えたところで、千冬姉がセシリアと鈴を指名した。代表候補生同士の試合を見て手本にしろということだろうか。

 

「鈴のISってどんなのなんだ?」

「バランス型ね。名前は甲龍(シェンロン)って言うんだけど、胸張って初心者向けって言えるような機体よ」

 

 シェンロン、か。強そうな名前だな。

 

「クラス対抗戦ではこのカードは見られないからな。面白そうだ」

「そうか。鈴は代表じゃないんだよな」

 

 箒に言われて今さらその事実に気づく。あいつは途中で転入してきたから、その頃にはすでに2組の代表は決まっていたんだ。

とすると、クラス代表で専用機持ちはうちのセシリアだけになるのか?

 なんて考えているうちに、千冬姉の合図で試合が始まった。

 

「おお、すげえ」

「さすがに専用機持ち同士の試合となると迫力があるな」

 

 探り合いはほんの序盤で終わり、すぐに激しい攻撃の応酬が繰り広げられ始めた。この前はセシリアとの勝負で惜しいところまで行ったと思ったけど、やっぱりまだまだ届きそうにない。

 

「………」

 

 そのまましばらく、観客席から試合を眺めていたのだが。

 

「なあ箒。鈴の動き、どんどん激しくなってきていないか」

 

 攻撃の手はかなり増え、代わりに防御が本当に紙一重になってきてる。

 

「というより、そもそも根本から変わってるように感じられるな」

「根本から?」

「ああ。まるで人が変わったみたいだ」

 

 人が変わったって、まさか。

 自分の予想が当たっているか確かめるため、白式の開放回線をつないでみる。これでセシリアと鈴の会話が聞こえるはずだ。

 

『遅い、遅いぞブルー・ティアーズ! それでは私の聖域に届きはしない!』

『くっ……よくわかりませんが、雰囲気にのまれている感じがいたしますわ』

『さあ受けてみろ。私の愛機、常夜の呪龍(ナイトカース・ドラゴニス)の真の力を!』

 

 案の定、中2病が表に出てきていた。多分勝負が白熱してるせいで興奮状態なんだと思うが……

 

「あいつ本当に治す気あるのか?」

 

 というかシェンロンどこいった。そんなおどろおどろしい名前の機体初心者に勧められねえよ。

 

『く、ふふふふっ……闇に溺れるがいい』

 

 模擬戦終了後、勝ったのにもかかわらず悶絶している鈴の姿が発見され、見かねた千冬姉に頭をひっぱたかれていた。中2病完治への道は険しそうだ。

 




織斑姉弟はどっちも常識人ゆえ苦労体質です。仕方ないね。
2話連続中2病オチですが、普段も下ネタオチだしワンパターンとか今さらですね。
しかし鈴ちゃんのシーンは書きやすいです。以前たくさん描写したからでしょうか。

感想等あれば気軽に送ってくださるとうれしいです。
では、次回もよろしくお願いします。
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