天海志騎は勇者である   作:白い鴉

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第十五話 失われた日常

 

 

 

「志騎君が……バーテックス……?」

 刑部姫の口から放たれた衝撃的な事実に、須美がかすれた声を出す。

 今の刑部姫の言葉をそのまま受け取るならば、志騎は今まで自分達が撃退してきた人類の敵----バーテックスと同類という事だ。

 するとそれを否定するかのように、銀が叫んだ。

「そ、そんなわけないだろ!! どこからどう見ても、志騎は人間じゃんか!」

「外見はな。お前達と同じ外見を持ち、人間と同じ臓器を持っているという意味ならば志騎は確かに人間だろうよ。だがその姿を構成している細胞や遺伝子などは人間とは違い、どちらかというとバーテックスと同じものだ。つまり外見は人間そのものだがそれはあくまで形だけの話で、中身はバーテックスとほぼ同じなんだよ」

 しかし銀の叫びを、刑部姫はばっさりと切り捨てる。彼女の冷徹な言葉に銀は一瞬黙り込むものの、すぐに体勢を立て直してさらに彼女の言葉を否定するかのように叫ぶ。

「で、でもバーテックスは人間を襲うんだろ!? あたしはずっと志騎と一緒だったけど、志騎が自分から人を襲った事なんてない!」

「それは当然だ。志騎には封印が施されていたからな」

 しかし銀の叫びを、刑部姫はばっさりと切り捨てた。

「封印ってなんだよ……俺、そんなのされた覚えないぞ」

「覚えが無くて当然だ。科学者がお前に封印を施したのは、お前が病院で目覚める前だ」

 病院で目覚める前、と聞いて志騎の脳にある記憶が浮かび上がる。

 当然それは今から六年前、志騎が初めて自我を持ったと同時に、安芸と初めて出会った時の記憶だ。

「バーテックス・ヒューマン計画によってお前が作り出された後、科学者はお前の中のバーテックスの力を封印した。バーテックスとの戦いが始まるその日まで、お前がその力を使わないようにな。そしてその力を開放するための鍵がキリングトリガーだ」

 キリングトリガー、と聞いて志騎の表情がこわばる。やはりあのアイテムが、志騎の中のバーテックスの力を開放する重大な鍵だったらしい。

「お前がバーテックスと戦う日に備えて、科学者は二つのシステムを作り上げた。一つは三百年前のバーテックスの戦闘によって得られたバーテックスのデータを解析・模倣して作られたシステム、『ゾディアックシステム』。あらゆる戦闘形態を持つバーテックスの力を模倣する事によってあらゆる戦闘に対応する事ができ、それによって多様な力を持つバーテックスを倒す事を目的としたシステムだ。ゾディアックシステムがバーテックスの力と同じなのは当たり前だ。元々ゾディアックシステムは、バーテックスの力を模倣して作られたんだからな。……そして、もう一つがキリングトリガーを使用する事によって使う事ができるシステム、『精霊武装システム』だ」

 精霊武装、と言われても正直志騎達にはピンとこない。言葉にしてみると強力な響きに聞こえるが、四人の知っている精霊は今こうして目の前で説明をしている刑部姫一人しかいない。なので、精霊が戦闘でどのような行動をしてくれるのかが全く分からないのだ。

「もう知っているとは思うが、精霊というのは私のように神樹に蓄積された地球上のあらゆる概念的存在が抽出、具現化した存在だ。私は今こうしてお前達の前に具現化しているが、三百年前はこうして外部に具現化するのではなく、勇者の体に直接宿る事で勇者にその精霊の持つ強大な力を与える事ができたんだ。志騎だけが使える精霊武装システムは、それから着想を得て科学者が改良したシステムだ」

「三百年前に、そんな技術が……」

 刑部姫の言葉に須美が驚いたように呟くと、刑部姫の言葉を聞いて何やら考え込んでいた園子が口を開いた。

「でも、ちょっとおかしくないかな~? 三百年前は普通に使ってたんだよね~? ならどうして、今の私達にはその力が使えないの?」

 園子の疑問は当然のものと言えるだろう。この前三人が目にした志騎の力は、三体のバーテックスを圧倒するほど凄まじいものだった。もしもあの力を自分達が使う事が出来たら、バーテックスとの戦闘も今よりも遥かに楽になる可能性が高い。なのに何故、今の勇者である園子や銀、須美には使えないのだろうか。 

 すると、刑部姫はまるで歌うような滑らかな口調で言った。

「大いなる力には大いなる代償が常について回る。体に直接精霊を宿すと言えば聞こえは良いが、その実態は降霊術に近い。古来より神・精霊といった人知を超えた存在を人間に憑依・降霊させる儀式は数多く存在していた。だがその全てが人間に良い結果をもたらしていたのかと言われれば嘘になる。そういった人外の存在を用いた降霊術の中には一歩間違えれば人の命を奪いかねないものもある。例を挙げるなら犬神憑きや狐憑きだな。これらは降霊術というよりはもはや『呪い』と言っても何らおかしくない。精霊をその身に宿すのもそれに似たようなものだ。人と人ならざるものの境界は時として曖昧になる。黄泉比良坂に置かれた千引きの石の話は知っているか?」

 と刑部姫が四人に問うが、銀はもちろん須美や園子も困ったような表情を浮かべている。志騎もそのような話は聞いた事が無いので、首を横にふるふると振った。

「黄泉比良坂は日本神話に登場する、生者が住む現世と死者の住む世界である黄泉との境目にあるとされる場所、もしくは境界だな。ちなみに千引きの石というのはその道を塞いでいる、千人いなければ動かせないような巨大な岩の事だ。精霊をその身に宿す、というのはその境界の先に半身を浸すようなものだ。ただの人間の身でそんな事をすれば体にどんな影響が出ても不思議じゃない。そして実際に三百年前の勇者達が精霊をその身に宿し続けた結果、ある事実が判明した」

「ある事実?」

「精霊をその身に宿し続けると、体内に穢れが溜まり、精神に悪影響を及ぼす事が判明したんだ。具体的に言うと、不安感、不信感、攻撃性の増加などだな。それが三百年前の勇者の一人、伊予島(いよじま)(あんず)のノートから分かり、大赦は精霊を人体に宿す方法ではなく、こうして外部に具現化する方法に変えたというわけだ」

 精霊をその身に宿し続ける事で体内に穢れが溜まるというのは少し考えづらいかもしれないが、精霊全てが人間にとって良い存在というわけではない。例えば先日のバーテックスの戦いで志騎が使用した精霊の中に酒呑童子と一目連という名の精霊がいるが、酒呑童子は日本三大悪妖怪の一角を担う鬼の王であり、一目連は暴風雨をもたらす神であると同時に、一説には妖怪としても知られている。またその二体以外にも精霊は使用したが、雪女郎の別名は雪女、つまり妖怪であり、義経は英雄として知られているが一方で怨霊と化して兄である頼朝を呪い殺したという伝承が存在する。ちなみに、今こうして説明をしている刑部姫もかつて日本に存在していた姫路城という城に隠れ住んでいた女性の妖怪である。

 このように、志騎が使用してきた精霊達にはいずれも悪鬼怨霊の側面を持つ。そのような存在を体に宿し続ければ、体に何らかの悪影響が現れるのは火を見るよりも明らかだろう。

「だがその力がバーテックスに通用していたのは紛れもない事実だ。進化するバーテックスに段々と精霊の力が通用しなくなっていったが、それでも酒呑童子など一部の精霊の力はバーテックスを圧倒する事があった。しかし三百年経過した今ではバーテックスもそれ相応に強力になっている可能性があり、当時と同じようにバーテックスを倒す事ができるとは限らない。ゆえに科学者は三百年前に使用されていた精霊憑依のシステムに二つの改良を施したんだ。一つは時間が経つごとに精霊の力が上昇していくもの、そしてもう一つは二体の精霊の同時憑依」

 言いながら刑部姫は右手の人差し指と中指の二本をピッと立てた。はた目から見ると完璧なVサインだが、これほど不穏な気配を感じさせるVサインも無いだろう。

「この二つの改良を施す事によって、精霊憑依のシステムは凄まじく強力なものに変化した。そこにまた別のプログラムを加えて完成したのが、お前に渡したキリングトリガーだ」

 すると刑部姫の言葉に、不安げな表情を浮かべた須美が恐る恐るといった感じで右手を挙げた。

「あ、あの……質問良いかしら?」

「構わん」

「精霊の力を使うと、体に穢れが溜まって精神的に悪影響を及ぼすのよね? 二体同時に使用したら、どうなるの?」

「良くて廃人確定、悪くて即死」

 須美の質問に対する刑部姫の口調は、恐ろしい響きを持つ内容に反してあっさりとしたものだった。

「そ、即死って……」

「当然だろう? 精神に悪影響を及ぼす精霊を二体宿すんだ。普通の勇者ならば即死するだろうし、仮に即死を免れても精神が崩壊して廃人確定だ。……普通の人間ならばな」

「俺は違うって言うのか?」

 暗にお前は人間じゃないと言われているようで志騎は少し眉をしかめたが、そんな事はまったく気にせず刑部姫は肯定する。

「そうだ。精霊をその身に憑依させる、つまり境界のその先に身を浸して精神に悪影響ができるのは、それが人間だからだ。だがそいつが人間では無かったら話は別だ。体に何らかの負担がかかるのは普通の人間と変わりはないだろうが、負担は人間よりもずっと軽くて済む」

「じゃあ、あまみんがずっと眠ってたのは……」

「精霊の二体憑依により体に強い負担がかかっていたからだろう。ま、それで済んだのはお前だからだ。普通の人間ならさっき言った通り、精神崩壊で廃人かすでに死んでいる」

 つまり志騎が普通の人間だったなら、あの眠りが永久の眠りになっていたという事だ。その事実を刑部姫から突き付けられ、須美達三人の少女は背筋に寒気が走るのを感じた。志騎が死んでいたかもしれないという事実に恐怖を感じたというのもあるが、何よりもそのような事を淡々と口にする刑部姫が得体の知れないものに見えたからだ。

「そしてキリングトリガーに組み込まれたもう一つのシステム。その役目は……お前の中のバーテックスの本能を完全に目覚めさせる事」

「バーテックスの、本能……?」

 自分の胸に手を当てながら、志騎は静かに呟く。

「そもそもバーテックスに感情は存在しない。奴らはただ目の前の敵を殺す事に特化した殺戮兵器だ。お前が普通の人間と同じように生活ができているのは、その本能に封印がかけられているからに過ぎない。身も蓋もない事を言えば……キリングトリガーを使った時のお前の姿が、本来のお前なんだよ」

 その言葉に、銀達の脳裏にキリングトリガーを使った時の志騎の姿が浮かび上がる。

 笑いもしなければ泣きもせず、それどころか痛みに表情を変える事すらない。何の感情もなく目の前の敵を観察し、淡々とまるで機械の流れ作業でも行うかのように敵を効率的に屠る姿。悪い言い方をすれば、まるで人形のような表情。

 あのような姿が……自分の本来の姿だというのか。

 今の自分は、ただ人間の感情を真似ているだけの偽物だとでも言うのか。

「精霊の二体同時憑依による爆発的な戦力の向上と、バーテックスの本能を呼び覚ます事で発揮させる機械の如き冷徹な判断力と戦闘に特化した思考形態。それらを組み合わせる事で発動する対バーテックスに特化した殺戮形態……それがキリングトリガーを用いた時のお前の姿、『キリングフォーム』だ。あらゆる戦闘に対応する事ができる汎用性を持つ『ゾディアックフォーム』と戦闘に特化した殺戮形態『キリングフォーム』を組み込んだのがお前の勇者システムであり、それを使用してバーテックスと戦うのがお前いう兵器だ。理解できたか?」

 理解できたか、と言われてもそんな簡単に理解できるはずもない。そもそも刑部姫から告げられた情報量があまりにも膨大で、中々頭の中で上手く処理する事ができない。

 分かった事は二つ。

 自分は、人間では無くバーテックスである事。

 自分は、バーテックスを殺すのに特化した殺戮兵器である事。

 こんな事を言われて、理解しろと言うほうが無茶苦茶だろう。

 志騎は自分の頭をまるで頭痛をこらえるように抑えるが、刑部姫は変わらずに淡々とした口調で続ける。

「身体能力と回復能力の強化、そしてバーテックスに対する感知能力。これらは全てお前の中のバーテックスの細胞によるものだ。今までは封印が施されて使えなかったが、キリングトリガーを使う事でその封印が解除され、それらの力が使えるようになったんだ」

「……じゃあ、俺のあの腕は……」

「お前の意志に応じて変異したんだろう。バーテックスの細胞はあらゆる状況に応じてその形や性質を変える。今はまだ右腕だけだが、使いこなせるようになればいずれバーテックスの姿にもなる事ができるだろうよ」

 できるだろう、とは言うがはっきり言ってやりたくもない。

 それはまるで、自分の今の人間としての姿を捨てようとしているように志騎には聞こえたからだ。

「あの、夢は……」

「夢……。ああ、人が死ぬ夢の事か。それは恐らく、過去に起こった事だろう。過去に起こった事を夢として見ているという事は、もしかしたらバーテックスの細胞は記憶の共有ができるのかもしれん」

「記憶の……共有?」

「ああ。それなら例え一つの個体が消滅したとしても、その個体が体験した戦闘データや取得した情報等は、他のバーテックスにもすぐに伝達する事ができる。本当にそんな事ができるかは分からんが、今の志騎の言葉と、三百年前にバーテックスが非常に短い期間の間に世界のほとんどを滅ぼした事を考えればそれぐらいの事は出来ても不思議はない」

 それを聞いて、志騎の頭の中が気持ち悪いほどぐちゃぐちゃにかき回される。

 自分が見た人が死ぬ夢が、過去に実際に起こった事。

 助けを求めながら殺される人々。焼き払われる街並み。肉が焼ける不快な臭い。肉を噛み砕く感触。

 それら全てを、バーテックスが行った。

 たくさんの人々を、バーテックスが殺した。

 ジブンガ、コロシタ。

 そう考えた時、志騎は強烈な吐き気が沸き起こってくるのを感じて口を押えながらその場にうずくまった。

「志騎!」

「あまみん、大丈夫!?」

 心配した三人が志騎に駆け寄るが、志騎は何も答えない。酸っぱい液体が胃の底から逆流してきて今にも吐き出してしまいそうになるが、吐き出すのをどうにか我慢して飲み込む。食道を液体が通り、熱い感触が喉に伝わってくくるが、今の志騎にはどうでも良かった。荒く息をつきながら駆け寄ってきた三人を押しのけると、奥歯を強く噛みしめて応接室から走って出て行ってしまった。

「ま、待って志騎!」

「ぎ、銀!」

「ミノさん!」

 応接室から出て行ってしまった志騎を銀が追いかけ、その銀を須美と園子が追いかける。結果、応接室には刑部姫と安芸の二人だけが残った。四人が出て行った応接室の扉を眺めながら、刑部姫はふぅとため息をつく。

「最後の最後まで騒々しい奴らだな。私達も出るぞ、志騎はもう戻ってこないだろ」

 しかしそんな刑部姫の言葉に、安芸からの返事は返ってこなかった。刑部姫が怪訝な表情で彼女の顔を見ると、彼女は今まで見た事がないほど苦悩した表情で両手の拳を強く握りしめていた。

「やっぱり……少し早すぎたんじゃないかしら……。もう少しタイミングを見計らってから話した方が……」

「今話そうと後で話そうと真実は何も変わらん。そもそも今回は、志騎が話せと言ったんだぞ。なのに当の本人がこの場から逃げ出すとはな」

「当たり前よ……。彼はまだ小学生よ? 自分がバーテックスなんて、受け入れられるはずがないじゃない……」

「バーテックスでも、奴は兵器だ」

「刑部姫!」

 刑部姫の言葉に安芸が彼女を睨みつけるが、刑部姫はどこ吹く風だ。

 だが、彼女と長い付き合いの安芸には分かった。一見何も感じていないように見える彼女の表情だが……どこか、苦し気な表情を浮かべているように見える。その表情に安芸は驚いたように目を見開いてから、ふぅと疲れたように息をついた。

「……本当に、本当にあなたは昔からそうね。いつも私以外の人間には本音を隠して、嘘をつくのがとても上手い……。ここまでくると、もう呆れるしかないわ」

「……誉め言葉として受け取っておく」

「だけど、それは本当にあなたが望んでいる事なの? あなたの本心なの? ……真由理(・・・)

「………」

 別の名前で呼ばれた刑部姫は何も答えず、花びらと共に応接室から姿を消した。

 まるで先ほど応接室から出て行った志騎と同じように。

 

 

 

 

 

 応接室を飛び出した銀達は志騎の後を追いかけたものの、すぐに彼の姿を見失ってしまった。校内中を走り回って探したものの、彼の姿は見つからない。とすると、志騎は学校の外に出た可能性が高い。

 三人は学校を出ると、それぞれバラバラに散って志騎を探す事にした。連絡はスマートフォンで取る事ができるので問題はない。なお、念のためにチャットアプリで志騎にメッセージを飛ばしてみたものの変身は返ってこず、既読の文字すらつかなかった。電話をしてみても無駄で、電波が届かないところにいるか電源が入っていないという無情な音声だけが返ってきた。志騎の事なので、恐らく後者だろう。

 三人は街中を文字通り駆けずり回って彼の姿を捜し回ったが、その姿はどこにも見当たらなかった。まだ夏なので日は高いとはいえ、すでに時刻は五時を回っている。街中には仕事や学業を終え、帰路に就く人々の姿がちらほらと出てきた。その人達の中に混じって、銀は志騎が行きそうな場所全てを捜し回る。

 だが結局、彼の姿を見つけ出す事は出来なかった。銀は走り回っていた足を止めると、荒い息をつきながらすぐそばにあった電柱に手をつく。それからスマートフォンを取り出すと、チャットアプリにメッセージを入力した。

『見つかった!?』

 すると直後、須美と園子からメッセージが返ってきた。

『ダメ、見つからない』

『こっちも見つからないよ~』

 どうやら二人の方も結果は芳しくないようだ。銀はぎり……と奥歯を噛み占めると、一旦集まる旨のメッセージをチャットアプリに打ち込んでから小さく呟く。

「どこ行っちゃったんだよ……志騎……」

 当然その声に答える人間は、この場にはいない。

 銀は額から流れ落ちてくる汗を拭うと、須美達と決めた集合場所へと走り出す。

 三人が集合場所に定めたのは、四人が家に帰る時にいつも通る分かれ道だ。目立ちやすい神樹館の前という選択肢もあったが、一度学校を出た志騎が戻ってくる可能性は低いし、ここならばもしかしたら志騎が通るかもしれないという希望もあり、三人はここを集合場所に選んだ。

 銀が息を切らしながら到着すると、すでに来ていた須美と園子が銀に視線を向けてきた。銀は呼吸を落ち着かせると、二人に尋ねた。

「こっちは駄目だった……。須美達の方も?」

「ええ。念のために神樹館に戻って先生達にも聞いてみたけれど、やっぱり戻ってないみたい」

「歩いている人にも聞いてみたんだけど、あまみんを見た人はいないみたいだったよ~……」

「そっか……」

 須美と園子の言葉を聞いて、銀は沈んだ声を出した。

 志騎の特徴と言えば、何よりもあの水色がかった白髪だ。そのような髪の毛を持つ少年がいれば、嫌でも記憶に残るだろう。なのに通行人が誰も見ていないという事は、街中を走っているのではなくどこかに隠れているか一か所に留まっている可能性が高い。それでも見つからないという事は、よほど隠れるのが上手いのか、誰にも見つからないように逃げ続けているのか。正直、志騎ならば両方共ありえそうである。

 銀がもう一度街を捜してみようと提案しようとした時、銀のスマートフォンに着信が入った。一瞬志騎かと期待してスマートフォンの画面を見るが、そこに表示されていたのは『非通知』という三文字だけだった。こんな時に誰だと思いながら銀は通話ボタンを押すと、スマートフォンを耳に当てる。

「もしもし?」

『私だ』

 訝し気に通話に出た銀の耳に届いた声の主は、予想外の人物----いや、存在だった。

「お、刑部姫!?」

 なんと電話をしてきたのは、志騎の精霊であり先ほど志騎に彼の正体を明かした刑部姫だった。突然の彼女からの連絡に、銀は驚きを露にしながら言う。

「な、なんでお前があたしの番号知ってるんだよ!?」

『うるさい。耳元で騒ぐな』

 向こうからかけてきたくせにあんまりな言い方に銀は一瞬ムッとした表情を浮かべるが、彼女の毒舌はいつもの事だと思いどうにか流すと用件を聞く。

「突然電話してきてなんだよ?」

『今志騎を捜しているんだろう? 単刀直入に言うが、さっさと帰れ』

「……帰るわけないだろ。志騎はまだ見つかってないんだぞ」

『だったらこのまま何の手がかりもなく捜し続ける気か? 暗くなれば人一人捜すのも難しくなるし、小学生三人が夜行動していたら間違いなく警察に連絡がいくぞ。お前達の家族も心配するし安芸も心配する。志騎を捜すのは私がするからお前達はさっさと家に帰って寝ろ』

 刑部姫の言う事はもっともだが、はいそうですかと言われて帰るわけにもいかない。家族に心配をかけたくないのは三人とも同じだが、それと同じぐらい志騎の事も大事なのである。そして何より、刑部姫の言葉を真正面から受け取るほど、銀は刑部姫の事を信用していない。彼女が志騎の事を何故か信頼しているのは分かるが、今までの彼女の態度を考えると簡単に信用できないというのが本音だ。

 なので、銀は正直にその気持ちを口にした。

「……信用できると思ってるのか?」

『お前が私の事を信用しているのかなんてどうでも良い。捜すと言ったら捜す。役立たずのガキはとっとと帰れ。それとも安芸を向かわせて強制的に帰らせた方が良いか? 選択権なんてない事にいい加減気づけよ馬鹿が』

 冷たい口調で放たれる毒舌に、通話越しだというのに銀と刑部姫の間に険悪な空気が流れる。

 銀は少しの間黙ると、低い声で刑部姫に言う。

「……分かった。志騎の事は任せる。だけど、見つかったら絶対に連絡しろよ」

『誰にモノ言ってんだクソガキ』

 最後に吐き捨てるような口調で言うと、刑部姫は通話を切った。本当に、本当に口の悪い精霊である。衝動的にスマートフォンを地面に叩きつけたい衝動に駆られるが、さすがにそれはマズいのでぐっとこらえながらポケットにしまう。

 すると、銀と刑部姫が話す様子を心配そうに見ていた須美が銀に尋ねた。

「銀、刑部姫はなんて言ってたの?」

「自分が捜すから、あたし達は早く帰れだってさ」

「でも、それじゃああまみんが……」

 不安そうな口調で園子が言う。彼の事を心配している園子の気持ちはよく分かる。いや、彼女だけではなく須美も同じ気持ちだろう。刑部姫が捜すからと言って、それがどこにいるか分からない友人を放っておいて良い理由にはならない。銀はどうにか笑顔を作り出すと、明るく彼女達に告げた。

「だ、大丈夫だよ! 刑部姫はムカつく奴だけどあいつも志騎の事は捜してるみたいだし、きっとすぐに見つけてくれるって! それに志騎も、もしかしたらもう家に帰ってるかもしれないし。とりあえず、今日はもう家に帰ろう。これ以上遅くなったら家族に心配かけちゃうでしょ?」

 無理やり作られたその笑顔を見て二人は銀の意図を察すると、顔を見合わせてから銀に合わせるように、

「……ええ、そうね。仕方ないけど、今日は一旦帰った方が良いわね」

「そうだね~。ミノさんの言う通り、あまみんもお腹空かして帰ってるかもしれないもんね~」

 無論それが二人の本心というわけではない。だがこの中で一番志騎の身を案じているであろう銀が不安な気持ちを押し殺して明るく振舞っている姿を見て、これ以上捜し続けるなどと言えなくなってしまったのだ。

 それに、性格に問題はあるが刑部姫が志騎を放っておくとは二人にも思えない。正直かなり不安だが、何の手がかりもなく闇雲に捜し続けるよりかは彼女に一度任せてみた方が良いかもしれない。……本当に、かなり不安だが。

 そんなわけで、三人の志騎捜しは一旦中止となった。

 銀は二人と別れると、しばらく一人で自宅への道を歩き続ける。やがて彼女の目に、志騎と安芸が一緒に暮らしている家の姿が入った。もしかしたら志騎が返っているかもしれないという期待を込めて近くまで来て家の様子を確かめるが、家に明かりはついていない。ならばと玄関の前まで歩いて引き戸を開けようとするが、鍵がかかっているようで中に入れなかった。それを確認した銀の胸に、ズキンと痛みが走り、引き戸から手を離すととぼとぼと家へと帰っていった。

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「おかえりー!」

 銀が家に戻ると、銀の声に返事をしながら家の中から弟の鉄男が次男の金太郎を抱っこしながら駆け寄ってきた。抱えられている金太郎は銀の姿を見ると、にぱっと明るい笑顔になった。だが、いつもならば見るだけで心が明るくなる弟達の笑顔を見ても、銀の心は晴れなかった。だがそれを表に出すわけにもいかないので、銀は努めて笑顔を作ると鉄男に謝るように両手を合わせる。

「ごめんなー、遅くなって。ちょっと野暮用ができちゃってさ」

「全然大丈夫! そうだ、なぁ姉ちゃん。志騎兄ちゃん知らない?」

 唐突に弟の口から出た志騎の名前に、一瞬銀の表情がひきつりそうになる。それをどうにかこらえると、どうにかいつも通りの口調と声音で鉄男に聞く。

「な、何か志騎に用事でもあるのか?」

「この前、兄ちゃんと今度遊ぼうって約束したからさっき家に行ったんだけど、兄ちゃんまだ帰ってなかったんだ。いつもならもう帰ってる時間なのに……もしかして、兄ちゃんに何かあったのかなって……」

 弟を抱きかかえながら不安げな表情を浮かべる鉄男に、銀は胸が痛むのを感じた。目の前の弟は、兄のように慕っている志騎の事を心の底から案じている。何もないと彼に嘘をつくのは簡単だが、志騎を心配している彼にそのような嘘をついて果たして良いのだろうか。しかし、ならば彼に本当の事をどうやって伝えろと言うのだろうか。

 銀は鉄男に悟られないように一瞬唇を強く噛むと、しゃがみ込んで鉄男と視線を合わせる。

「実は志騎、今日はちょっと用事があって帰りが遅くなるみたいなんだ。でも鉄男と遊ぶ約束は忘れてないって言ってたから、今度志騎が暇な時にもう一度誘いに行ってみたらどうだ?」

 すると鉄男はすぐに表情を明るくして、

「ほんと!?」

「おいおい、姉ちゃんが嘘つくわけないだろ? さ、分かったら悪いけど金太郎をちょっとあやしといてよ。あたしも着替えたらすぐに手伝うからさ」

「うん! 分かった!」

 元気よく答えると、鉄男は金太郎を大事に抱きかかえたままとてててと家の奥へと戻っていった。銀はそんな弟の姿を見送ると、嫌な嘘をついちゃったなと心の中で呟く。今日、志騎が本当に戻ってくるか確証があるわけでもないのに。

 だが、今銀が心に抱えている不安はそれだけでは無かった。

(志騎がバーテックスって事は……あたし達の敵、って事なのかよ……)

 人の形をしたバーテックス、と刑部姫は言った。それはつまり、姿形は自分達と同じでも、その本質は自分達が今まで戦ってきたバーテックスと同類という事であり、世界を殺す存在という事だ。

 では彼がバーテックスと判明した以上は、今まで追い返してきたバーテックスと同じように、彼も同じように壁の外に追い出すのか、それかもしくは----。

(って、何馬鹿な事考えてたんだよあたしは!)

 自分の頭に浮かんできた考えを振り払うかのように、銀は自分の両頬をぴしゃりと叩いた。彼がバーテックスと分かったからと言って、それで自分達の関係性まで変わる事はない。彼は自分と須美達の大切な友達であると同時に、自分の大切な幼馴染だ。----そんな彼を自分達の手で倒すなど、考えたくもない。

 よしっと気持ちを奮い立たせると、先ほどの鉄男との約束を果たすために自分の部屋へと向かう。

 だがその後、刑部姫から志騎が見つかったなどの連絡がかかってくる事はなく、その日の夜銀の胸から不安が消える事は無かった。

 

 

 

 

 

 翌日、神樹館に登校するために家を出た銀はまっすぐ志騎の家へと向かっていた。結局刑部姫からの連絡は無かったので志騎は帰ってきていないと頭では分かっているのだが、それでももしかしたらという可能性を捨てきる事は出来ない。それに何より、志騎の家に向かって彼と一緒に登校するのがすっかり日々の日常の一部になっているので、逆に志騎の家に向かわないと落ち着かないのである。 

 三分歩き、志騎の家の前に辿り着いた銀は玄関の前で一度深呼吸をすると引き戸に手をかけて開けようとする。しかし玄関にはすでに鍵がかかっており、今家には誰もいないという事実を銀に改めて突きつけた。志騎と一緒に住んでいる安芸は現在の時刻よりも早い時間に家を出るし、何気に律儀な志騎は銀が来るまで一人で登校する事はまず無い。つまり安芸はもう学校に向かい、志騎は家に帰ってきていないという事だ。その事実だけで、銀は自分の胸に大きな穴が開いたような喪失感を感じる。まるで、自分の半身をもがれたような気分だった。

 銀は引き戸から手を離すと、昨日と同じように一人で学校へ向かう。  

 その背中はまるで、母親を見失ってしまった迷子のようだった。

 

 

 

「銀ちゃんおはよー」

「あ、ああ。おはよう!」

 自分に明るく挨拶をしてくるクラスメイトに挨拶を返した銀の目に、先に教室に来ていた須美と園子の姿が見えた。いつもならば自分の席ですやすやと眠っている園子は、今日はきちんと起きていた。きっと彼女も志騎の安否に気が気でないのだろう。とは言っても、それは須美も同じ気持ちだろうが。

 なお、いつもならば志騎が座っている席は、当然の如く誰も座っていなかった。

 銀が自分の席に到着すると、心配そうな表情を浮かべた須美と園子が銀に近づいてくる。

「銀、志騎君は……」

 そう尋ねる須美に、銀は首を横にふるふると振りながら、

「結局帰ってこなかった。刑部姫からの連絡もなし」

「……あまみん、大丈夫かな。お腹空いてたりしないかな」

 不安げな園子の言葉に、誰も答える事ができない。いつもならば銀が場を暗くしないようにあえて明るい言葉で雰囲気を明るくするのだが、今は当の本人がそんな状態ではない。生徒達が明るく会話をする教室の中で、三人の周りの雰囲気と彼女達の表情だけが暗かった。

 やがて始業を知らせるチャイムが鳴り響くと、クラスメイト達が一斉に席に着席し始める。三人もいつまでも立っているわけにはいかないので、クラスメイト達と同じように自分の席へと向かい着席する。するとタイミングよく、安芸が教室に入ってきた。

「皆さん、おはようございます」

 安芸の朝の挨拶に、生徒達からもおはようございますと元気の良い挨拶が返ってくる。安芸は出席簿を開きながら、少し険しい表情で言った。

「授業を始める前に、皆さんにお伝えしておく事があります。今日欠席となっている天海君ですが、体調不良のため、しばらく学校に来れなくなってしまいました。今は休養のため病院に入院しています」

 安芸の口からそのような言葉が発せられると、生徒達の間に動揺と困惑が見る間に広がっていった。すると銀の真後ろの席に座っていたショートヘアの少女が、不安げな表情を浮かべながら安芸に尋ねる。

「せ、先生! 病院に入院してるって、天海君の体調ってそんなに悪いんですか!?」

「命に関わるほどではありません。今は病院に入院していますが、お医者様の診断によるとすぐに回復するだろうとの事です。そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

 彼女の言葉にショートヘアの表所は安堵の表情を浮かべ、クラスにもほっとした雰囲気が漂い始める。

 だが、それが事実ではない事を須美と園子、銀の三人は知っていた。

 安芸がこのような嘘をつくのは、恐らく行方不明の志騎がすぐに見つかるか分からないからだろう。志騎が行方不明の状態でまだ見つかっていないという事を馬鹿正直に生徒に伝えれば大きな騒ぎに繋がりかねないし、志騎が失踪した理由を尋ねられる可能性が非常に高い。しかし今のように嘘の情報を流しておけば生徒達の動揺も小さくする事ができる。安芸は大赦の人間なので嘘の情報についての根回しはもう済んでいるだろうし、志騎は元々定期健診で学校の授業を休む事がたまにあったので、嘘に信憑性を持たせる事もできる。

「あと、お見舞いに行きたいという人もいるかもしれませんが、天海君に負担をかけてしまうかもしれないのでそれは避けるように。不満かもしれませんが、彼がまた元気になるために協力をお願いします」

 しかもこのように言えば、生徒の誰かが入院先を聞いて嘘がバレる可能性も低くなる。嘘をつくのは良い事ではないが、生徒達を心配させないためにはこれも仕方のない事だと割り切るしかない。

 そして安芸は今日の日直に号令をかけ、礼と神樹への礼拝を済ませてから一限目の授業を始めるのだった。

 

 

 

 

 ようやく本日の授業を全て終えた銀はランドセルに教科書を全て入れると、勢いよく椅子から立ち上がる。ふと横を見てみると、同じように帰り支度を終えた園子と須美が真剣な表情で頷くのが見えた。

 一限目の授業を終えた三人が安芸に志騎の捜索について尋ねたところ、まだ志騎は見つかっていないとの事だった。刑部姫の事だから今日中には見つけるだろうというのが安芸の意見だったが、正直連絡が来ないところを見ると刑部姫もまだ志騎を見つけていないのではないかというのが銀の考えだった。

 なので、刑部姫がまだ見つけていないのならば自分達が先に志騎を見つければいいという銀の考えにより、授業が終わった放課後再び志騎を捜す事になった。自分と同じように志騎を心配している須美と園子からも反対意見が出る事はなく、志騎をなんとしても見つけ出す事が無事決定した。

 三人は銀の席に集まると、教室に残っている生徒達に聞こえないように声を潜めて志騎の捜索について話し合う。

「じゃあ、早速だけどどこから探した方が良いと思う?」

「私の考えだけど、まずあまみんが大橋市から出てないか調べた方が良いと思うよ。さすがに小学生だから遠くには行けてないと思うけど、どこに行ったか参考になると思うし」

「それに神樹館の生徒がたった一人で、しかも珍しい髪の色をした男の子が電車やバスに乗れば、直接会話はしなくても駅員さんや運転手の人の印象に残ってると思うの。どうにかその人達を捜し出して……」

 三人が志騎の捜索について話し合っていたそんな時。

 突然三人の視界に、ふっと何かが舞い降りた。舞い降りてきたそれを見て、銀が思わず声を上げる。

「あ、あれ!? これって……確か刑部姫の式神くん?」

 そう。机に降り立ってきた、青白い半透明の体を持つそれはまさしく、鳥の形をした刑部姫の自律型電子式神、通称『式神くん』だった。銀の上げた声に生徒達の何人かが銀達の方に視線を向けるが、誰も半透明の鳥に反応を示さない。どうやらこの式神は刑部姫同様普通の人間には見えないようだ。

 式神くんは両翼を広げて空中に舞い上がると、そのまま窓ガラスを通過して外へと飛び出した。しかしそのままどこかへ行くような事はせず、空中に滞空して銀達をじっと見つめている。まるで、ついて来いと言っているかのように。

「もしかして、志騎君を見つけたんじゃ……」

 須美の言葉に銀ははっとした表情を浮かべると、園子と須美に言った。

「----行こう!」

 銀の言葉に須美と園子は勢いよく頷くと、急いで教室を出てから昇降口へと向かい、上履きから靴へと履き替えて外へ飛び出す。すると三人を待っていたかのように空中で滞空していた式神くんは三人を案内するかのように移動し始めた。その速度が少しゆっくりめで、しかも三人にわざわざ見えるように低空を飛んでいるのは、きっと三人が誤って見失ったりしないようにするためだろう。

 そして銀は式神くんの後を追いかけながら、ある疑問を抱いていた。

 こうして式神くんが自分達の前に現れたという事は、先ほど須美が言ったように志騎が見つかったという事だろう。それ自体はとても喜ばしい事だ。

 だが、タイミングが良すぎる。授業が終わり、自分達が志騎を捜しに行こうとした矢先に式神くんが現れた。まるで、三人の動きを予想していたかのように。

 自律型とはいえ、式神くんはあくまでも式神だ。主人の命令に沿った行動しかする事はできない。

 そして、今自分達を案内している式神の主人は。

(……刑部姫)

 性悪毒舌精霊、刑部姫。

 昨日銀に志騎は自分が捜すと一方的に告げてから、今式神くんを寄こすまでまったく音沙汰が無かった彼女。自分達は刑部姫もまだ志騎を見つけていないから連絡がないのだと思っていたが、もしかしたらそれは違うのかもしれない。

 彼女はとっくに志騎を見つけていたが、何らかの目的があって自分達への連絡を意図的に遅らせていた。そしてこうして授業が終わったタイミングを見計らって、式神くんを自分達の元に寄こした。

 証拠も根拠もない、ただの妄想。

 だが、そう考えると式神くんがタイミングよく自分達の前に出現した事にも説明がつく。

 何故刑部姫がそんな事をするのか分からない。彼女が何を考えているのかも分からない。

 しかし今はそのような事は正直どうでも良い。今大切な事は、志騎の元に急いで辿り着く事だ。

 銀は心の中の疑念を振り払うと、悠々と飛ぶ式神くんの後を追いかけるのだった。

 

 

 

 

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