天海志騎は勇者である   作:白い鴉

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刑「さて、今回は三好夏凜との日常回だが、予想以上に長くなってしまったので今回と次回に分ける事となった。なので今回は前編に当たる」
志「考えてみれば、日常回が続くって事は友奈達にとっては良い事なんだよな。だからといって原作の展開にいつまでも入らないっていうのもあれだけど……」
刑「ま、いつか終わりはくるものだ。お前もその時が来るまで楽しんでおけ。では第四十四話、楽しんでくれ」


第四十四話 誇り高きK/天海志騎の困惑

 

 

 志騎達が勇者部に入部してから月日が経ち、ついに一年の終わりである十二月に突入した。気温がさらに寒くなり、暖房器具がさらに稼働を増すころ、志騎は変わらずに勇者部の面々と一緒に学校生活を過ごしながらも困っている人達のために部活動をこなすという、年末年始が近づきながらも特に何の異変も無い日常を過ごしていた。

 ……のだが、最近どうも奇妙な事が起こっていた。

「夏凜の様子がおかしい?」

 放課後、勇者部部室で椅子に座った風が怪訝な声を上げると、彼女に相談を持ち掛けた志騎がこくりと頷いた。彼は困ったような表情で手を組みながら、

「前は普通に話せていたんですが、どうも最近あいつ俺と一緒だとピリピリしてるって言うか、イライラしてるって言うか……」

 すると、二人の話を聞いていた東郷がパソコンでホームページをチェックしながら話に入ってくる。

「失礼だけれど、志騎君の勘違いって事は?」

「それはたぶんない……と思う。けど、そうも言い切れないんだよな。あいつ、俺以外の人間の前じゃあ普通そうだし」

 だから、勘違いじゃないとも言い切れない。志騎は思わずため息をついてしまった。

 そもそもどうしてこのような事になっているのか、志騎自身よく分からないのだ。

 ただきっかけは、先週の部活動の時だった。志騎が風から勇者部の依頼を振り分けられ、さぁ行くぞと部室を出た時にちょうど夏凜と出るタイミングが重なった。そのような事は以前にもあったので志騎は気にしなかったのだが、何やら視線のようなものを感じて横を見ると何故か夏凜が自分を鋭く睨んでいる事に気づいた。

 彼女からそのような視線を向けられている理由が分からず、志騎が戸惑っていると、彼が言葉を発するよりも早く夏凜が切り出した。

『志騎』

『な、なんだよ』

『あんたに負けるつもり、ないから』

 え? と志騎が何の事か聞き返そうとするが、その前に夏凜はふんと鼻を鳴らしてすたすたと依頼に向かってしまった。その場に残されたのは、呆然と立ち尽くす志騎だけだった。

 それから異変が続いた。勇者部に寄せられる依頼であるゴミ拾いなどで夏凜と一緒に行動を共にする事があったのだが、依頼の最中夏凜は何故かピリピリした様子で活動に励むようになった。他の勇者部部員の前ではそのような表情はまったく見せないので、志騎だけに対してなのは明らかだった。

 おまけに行動も志騎よりも多くゴミを拾おうとあちこちを動き回ったりと、まるで志騎と張り合うような姿勢を見せる事が多くなった。彼女がどうしてそんな行動を見せるのか分からず、志騎はただ戸惑う事しかできない。

 それで何か理由が見つからないか、今日こうして勇者部部長である風に相談を持ち掛けたという事だ。ちなみに現在部室にいるのは、志騎と風、東郷と園子と友奈の五人だ。夏凜と銀は部活の助っ人に、樹は勇者部にやってきた依頼のため不在である。風だけでなく他の四人にも相談内容が伝わってしまったが、特にデメリットは無いだろう。

「にぼっしーがあまみんの前にだけピリピリしてるって事は、あまみんがにぼっしーを怒らせるような事をしたかもしれないって事も考えられるよね~」

「だけど、志騎君が夏凜ちゃんを怒らせるような事をするかなぁ?」

 もう志騎が勇者部に入って大分経ち、夏凜の性格を熟知してきたころだ。今更彼が夏凜を怒らせるような事をするとはとても思えない。風が腕を組んでうーんと唸りながら、

「そもそも、二人が依頼で一緒になる事も少ないのよね」

「夏凜さんは部活の助っ人が多くて、志騎君は機械の簡単な修理とか多かったですもんね」

「うん。それ以外の依頼だと、私達も一緒にいたよね?」

「でも、あまみんとにぼっしーが喧嘩をしてる所は見た事が無い」

「そう。だから俺も困ってるんだよ」

 うーん………と五人が腕を組んで唸る。いささか奇妙な光景だが、五人にとっては大真面目だ。友人としても同じ部員としても志騎の悩みは解決してあげたいし、夏凜がどうしてそこまで怒っているのか理由も気になる。しかし考え続けても、五人には思い当たる節は無かった。

 それぞれ頭を悩ましていると、唐突に志騎が再度ため息をつく。

「……仕方ない。ちょっと聞いてみるか」

「え、誰に?」

「原因を知ってそうな奴」 

 志騎の口から出た言葉を聞いて驚いたのは風だ。彼女は目を丸くしながら、

「え、そんな人いるの? ってか、だったら最初からその人に聞けばよかったんじゃ……」

「ええ、います。ってか俺達が知らないって事は、たぶん九十九パーセントそいつが原因です」

 スマートフォンを取り出して電話帳を表示しながら志騎が言うと、友奈が首を傾げる。

「じゃあ、どうしてその人に聞かなかったの?」

「先輩達に聞いても駄目だったら聞くつもりだったんだよ。本当にそいつが原因かはっきりしなかったし。でも、ここまで誰も知らないって事は……」

 そう言いながら志騎がスマートフォンを耳に当てると、どうやらすぐに電話の相手が出たらしい。志騎は表情を険しくさせながら、電話相手に告げる。

「お前に聞きたい事がある。今すぐ勇者部部室に来い」

 

 

 

 

 

 

「ふむ。久しぶりと言いたいところだが、その前にまずこの状況を説明しろクソガキ共」

 志騎に電話で呼び出された人物――――刑部姫がひくひくと口元を引きつらせながら言った。

 彼女は現在体を縄でぐるぐると縛られており、天井から吊るされていた。さらに彼女の真下のテーブルにはコンロから中火が噴き出し、その上に鍋がでんと置かれ、中にはぐつぐつと煮えたぎった油が入っている。元々ここは家庭科準備室なので、そういった道具が置かれていても不思議ではない。

「この状況でそんな事が言えるとは……。あんたって意外と馬鹿というか、大物というか……」

 このような状況に陥っても変わらず毒舌を吐く事ができる刑部姫に、風が半ば感心した声を出す。樹辺りが見たら泣きながら止めにかかりそうな光景だが、生憎ここにそれを止める人物は誰もいない。刑部姫は精霊なので死ぬ事はまずないし、入っても熱い程度で済むだろう。東郷など、「まさか本当に釜茹でをこの目で見られるなんて……」と驚愕半分好奇半分の目で刑部姫を見ている。ちなみに彼女の手には縄を切るための小刀が握られているので、これで縄を切れば刑部姫は鍋の中に即投入だ。

「いや、お前に聞きたい事があって呼び出したんだけど、多分十中八九お前が原因だから今の内にお前をしょけ……お仕置きする準備を済ませようと思って」

「ははは。今日も変わらず私に対しての信頼がゼロで何よりだ。人間をそこのガキ共のように信じすぎるのも馬鹿らしいが、私は少し悲しいぞ志騎よ」

「須美、縄切って良いぞ」

「待て待て待て待て待て。分かった、質問に答えよう。何が聞きたい」

 笑顔ですっと縄を切ろうとした須美を横目に、刑部姫が志騎に言う。志騎はふぅと息をつきながら、早速話の核心をつく事にした。

「最近どうも夏凜が俺に対して当たりが強いって言うか、俺に対してだけ機嫌が悪い。原因はお前か?」

「あ? 知らん、大体何故あいつがそんな事を……」

 と、次の瞬間ダラダラと刑部姫の顔から冷や汗が噴き出した。それを冷たい目で見ながら、志騎が聞く。

「もう一度聞くぞ。原因はお前か?」

「…………黙秘権を使用する」

「悪いが、ここには日本の法律は適用されないらしい」

「クソが。まさかここが治外法権だったとはさすがの私も驚きだ」

「俺もだよ。でも、今そんな事はどうでも良い。原因は、お前か?」

「………えと、いや、その………」

「園子ー、火力上げてー」

「は~い」

 カチッと、園子がスイッチを回して中火を強火にする。油がさらに煮えたぎり、熱気が刑部姫の全身と顔面を襲う。

「熱い熱い熱い熱い! 私は煮ても焼いても食えんぞ!」

「知ってるからさっさと話せよ。原因はお前か?」

 舌打ちすらして冷たく吐き捨てる志騎を見て、ああ、やっぱりこいつら親子だわ、血は争えないわ……と風は遠い目をして心の中で呟いた。

「いや、原因が私かどうかは知らんが、思い当たる節があるというか……」

「じゃあそれを話せ」

「うむ。分かった。あれは数日前の事だった」

 死ぬ事は無いがさすがに刑部姫も釜茹でにはされたくないのか、すんなりと素直に話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 志騎に対して夏凜の当たりが強くなる一週間前、夏凜が家で一人勉強をしていると彼女の頭にぽすんと何かが乗った。このような事をする人物は彼女の知る限り一人しかおらず、彼女はぴくぴくと額に青筋を浮かび上がらせながら言う。

「人の頭の上に勝手に乗っからないでくれる?」

「安心しろ。次からそうする。お前の頭の上は乗り心地が悪くて最悪だ。なんで額が広い癖に頭の乗り心地が悪いんだよデコ娘」

「勝手に人の頭の上に乗った癖に何で酷評されなきゃいけないの!?」

 ふしゃー! と夏凜が吼えると頭の上にいた人物――――刑部姫はふふんと不敵な笑みを浮かべながらくるんと回転し、ぱたぱたと羽を動かして宙に浮かぶ。ふーふーと荒く息を吐きながら、久しぶりに姿を見せた精霊を睨んで夏凜が聞く。

「……何の用よ」

「いや、単に暇だから来ただけだ。しっかし相変わらず生活感が無い家だなぁ。女子力というものが死んでいる。さすがは全てを勇者という生き方に捧げた女、コミュ力はおろか女子力も無いとは嘆かわしい」

「帰れ!」

「だが断る」

 すごく腹立つドヤ顔で言い放たれ、夏凜はまた荒く息をつく事になった。短い間とはいえ彼女と行動を共にしたのだから彼女の性格は十分に分かっているつもりなのだが、分かっていても彼女には振り回されてしまう。彼女にはまともに取り合わない方が身のためだと自分に言い聞かせると、夏凜は再びテーブルに座って勉強を再開する。

 すると夏凜をイジッて満足したのか、刑部姫がぺたりと座ると彼女が広げているノートをちらりと見る。

「違う」

「え?」

「問三の数式が間違っている。見直してみろ」

 言われた通りに夏凜が数式を見直してみると、確かに刑部姫の言う通り数式に間違いがあった。まさか一目見ただけで間違っていると分かるとは……と夏凜が驚きながらもどこか悔しそうに刑部姫を見ていると、刑部姫はにやにやと笑みを浮かべて、

「その程度の問題を間違えるなよ、完成型勇者(笑)。……ま、そもそももう完成型ですらないが」

「………どういう意味よ」

 いつも通りの刑部姫の軽口だったが、後半の言葉だけは受け流す事が出来なかった。夏凜がペンを動かす手を止めると、刑部姫はやれやれと肩をすくめて、

「言葉通りの意味だ。お前はもう完成型勇者じゃない。本物の完成型勇者が勇者部に入ったからな」

「……それ、乃木の事?」

 悔しいが、自分の知る限り彼女は確かに完成型勇者と言われても過言ではない。先代の勇者達の中でも彼女はリーダーだったと聞いているし、普段はぽやんとしているように見えるがああいう手合いこそが油断できない。が、刑部暇はその答えを馬鹿にするようにはっと鼻で笑った。その所作すらもが、今の夏凜には腹が立つ。

「志騎の事に決まってるだろう、馬鹿が」

「……あいつが?」

 夏凜の脳裏に浮かんだのは、最近勇者部に入った唯一の少年の顔だった。

 天海志騎。先代勇者の一人にして、唯一の男子。そして大赦が作り出した、人間型のバーテックスにして自分達に襲い掛かったアンノウン・バーテックスと呼ばれたバーテックスの正体。その彼が、本当の完成型勇者?

「あいつの中のバーテックスの細胞は、あいつの意志に応じて無限に進化し、強化し続ける。その進化には今のところではあるが限界は見られない。完成というのは一見聞こえは良いが、それはつまりもう強くなることが無いという事だ。そういった意味ではあいつはまだ未完成ではあるが、反対にまだまだ強くなるという事だ。どこまでも進化する兵器という意味では完成形であるにも関わず、いくらでも強くなる可能性を秘めた未完成でもある勇者……。それがあいつ、天海志騎なんだよ。これを完成型勇者と言わずなんと言う?」

 そう言いながら浮かべる刑部姫の笑みが、何故か今の夏凜には非常に腹立たしかった。彼女はクックックと笑いながら、

「ま、そういう事だからその完成型勇者という呼称はやめるんだな。偽物がいくら強がっても滑稽なだけだ」

「………じゃない」

「あ?」

「私は、偽物なんかじゃない! 誰がなんと言おうと、私が完成型勇者だ!」

 が、それに対する刑部姫の反応は冷たかった。彼女は今まで浮かべていた笑みを消すと、冷たい目で夏凜を見ながら、

「お前がどう思うが関係ねぇよ。お前が偽物で、志騎が生まれながらの完成型勇者って事実に変わりはないんだから」

「………っ!」

 夏凜が手にしていたペンを投げつけると、刑部姫は首をわずかに横に向けてペンをかわすと、最後まで悪意のこもった笑みを浮かべながら言った。

「じゃあな、自称完成型勇者」

 そう言って、刑部姫はリビングから姿を消した。残された夏凜は一人、ギリ……と奥歯を噛み締めた。

 

 

 

 

 

 

「………とまぁ、そんな事があってな。……うん、正直イジりすぎたな!」

「須美、落として良いぞ」

「はい」

 笑顔を浮かべたまま東郷が小刀で縄を切り落とそうとすると、刑部姫がじたばたと派手に暴れて、

「ま、待て志騎! 確かに煽りすぎたか? とは思うが私が焚き付けたわけじゃないだろう!?」

「うるさいよ馬鹿! どう考えてもお前が原因だろうが! むしろそこまで無関係を言い張れる事が逆にすごいと思うわ!」

 おまけにそれで志騎が夏凜に冷たくされるとなれば、完全なとばっちりである。これで刑部姫を許す方が難しい。そしてついに刑部姫が真下の鍋に投入されようとした瞬間、風の口からこんな疑問が漏れた。

「でも夏凜の奴、どうして今更完成型勇者に固執してるのかしら。最初ここに来た時の夏凜ならまだしも、大分性格も変わったのに」

 風の言う通り、夏凜は勇者部に入部して友奈達との交流を得て、性格が大分変わった。触れるもの全て切ってしまいそうな雰囲気は鳴りを潜め、最近では大分穏やかになっている。それなのに何故、完成型勇者という肩書に、しかも刑部姫が言っているだけのものにそれだけ固執するのだろうか。

 と、その理由を告げたのはコンロの火を見ていた園子だった。

「たぶん、春信さんに関係してるんじゃないかな~」

「………春信?」

 初めて聞く名前に志騎は首を傾げるが、対照的に他の勇者部部員達は腑に落ちたような表情を浮かべ、刑部姫も「だろうな」と吊るされながら頷いている。どうやら志騎以外の全員は春信なる人物を知っているようだ。そして、疑問の表情を浮かべている志騎に友奈が助け舟を出す。

「夏凜ちゃんのお兄さんだよ」

「あいつ、兄さんがいたんだ」

 そのような事を聞くのは初めてだったので、志騎は目を丸くする。しかしそうなると、更なる疑問が出てくる。

「でも、どうしてそれが夏凜が俺に強く当たる事に関係するんだ?」

 夏凜の兄と聞かされても、自分と春信は赤の他人である。それでどうして自分が被害を被らなければならないのか。志騎の言葉に勇者部一同が何故か気まずい表情を浮かべていると、事情を知っている園子が志騎に説明する。

「にぼっしーのお兄さんの春信さんって、まだ若い人なんだけど大赦の中でもすごく上の立場の人なんよ~。あまりにも偉いから、家族の人とも中々連絡ができないって言ってたしね~」

「そうなのか……。って園子、お前その春信って人に会った事あるのか?」

「うん、あるよ~。優しくて良い人だった~」

 恐らく園子と春信が出会ったのは、園子が生き神として祀られていた時だろう。当時の園子はまさしく神のような扱いで、下っ端の神官が会おうとしても中々会えないはずなので、春信が大赦の中で上の立場というのはまず間違いない。志騎は視線を園子から刑部姫に返ると彼女に尋ねる。

「お前もその春信さんの事は知ってるのか?」

「ああ。直接会った事は無いが、かなり優秀だ。V.H計画の事も知っているしな」

 V.H計画の事を知っているのは大赦の上層部に計画の立案者である氷室真由理と助手である安芸、さらに讃州中学勇者部だけだ。春信が大赦の上層部にいるならば計画の事を知っていてもなんら不思議ではない。しかし春信の優秀さと今回の件がどう関係しているのかまだ分からず志騎が困惑していると、事情を知っていたのか園子に続いて友奈も説明する。

「私も夏凜ちゃんから聞いただけなんだけど、お兄さんは確かに優秀みたいなんだけど、夏凜ちゃんそれで小さい時から周りの人達によくお兄さんと比べられちゃってたんだって」

「比べられてたって……。夏凜も十分に優秀だろ」

 聞いた話になるが、夏凜は讃州中学でも成績優秀運動神経抜群という、まさに文武両道を地で行く少女だ。どれほど優秀かは分からないが、兄と彼女が比べられるという事自体が志騎には良く理解できない。

 と、話を聞いていた刑部姫が「いや」と口を出し、

「奴は確かにそれなりに優秀だが、あれは努力型の人間で三好夏凜自身はどちらかというと凡人に近い。それに対して三好春信はまさに才能の塊の人間で、俗に言う『天才』と呼ばれる人間だ。……私には及ばないがな」

 最後に張り合う刑部姫は無視して、志騎は腕を組んで考え込み、

「でも、兄は兄で夏凜は夏凜だろ? 比べる必要なんてないだろ。兄妹とはいえ、違う人間なんだから」

「そうもいかないのが人間の不合理な所だよ、志騎。できる事とできない事は万人それぞれ千差万別にも関わらず、人間という生き物はしばしば互いを比べたがる。それは家族でも例外はない。身内や近い距離に何でもできる兄と不出来な妹がいれば、大抵の人間は比べるさ。それで出来上がるのは、妹の事を気にしながらも中々距離を縮める事が出来ない天才の兄と、そんな兄にコンプレックスを抱く凡人の妹だ」

 どうやら調子を取り戻してきたらしく、ケタケタと笑いながら刑部姫がくるくると回る。それからピタリと体の動きを止めると、

「三好夏凜はストイックだが、あれは奴自身の性根であると同時に兄に比べられたくない、自分を見て欲しいという考えの表れでもある。奴が完成型勇者と馬鹿みたいに叫ぶのもその一つだ。あいつにとって完成型勇者というのは、兄とは違う自分を象徴するアイデンティティのようなものなんだろう」

「……あー、どうして俺が夏凜に敵視されているのかなんか分かってきた」

 今の刑部姫の言葉を聞いて、ようやく志騎にも理解する事ができた。

 三好夏凜にとって、完成型勇者というのは自分の代名詞であり象徴のようなものだった。それは勇者部との交流を得て柔らかくなった今でも変わらない。というよりは、それは変わってはならないものだろう。完成型勇者という自負とその名前を背負うプライドも全てひっくるめて、三好夏凜という人間なのだから。

 しかしそこに、天海志騎という勇者が入ってきた。しかもただの勇者ではなく、自分の兄すらも上回る才能と頭脳を持ち合わす刑部姫が完成型勇者と太鼓判を押すほどの可能性と実力を秘めた存在。そんな存在が自分の目の前に現れたとすれば、彼女の自負とプライドは大きく揺るがされる事になる。それは自分を確立していた完成型勇者という自負を奪う事であると同時に、幼い頃に何度も兄と比べられたという苦い思い出を再び味わう事なのだから。

 もしもこの勇者部内で志騎こそが真の完成型勇者だと認められてしまえば、夏凜を確立していたものは無くなり、もしかしたら自分の居場所すらも無くなってしまうかもしれない……。だから夏凜は最近、志騎に敵意とライバル心を持って彼に接していたのだろう。彼ではなく、自分こそが完成型勇者なのだと証明するために。自分がようやく得た居場所を、奪われないように。

 ようやく理由に辿り着いた志騎は腕を組むとため息をついて、

「なんていうか……。こう言ったら失礼というか酷いけど、面倒臭い奴だな。別に俺が入ってきたからって自分の居場所が無くなるわけもないだろうに」

「仕方ないと思うわ。夏凜さんは今までずっと一人で頑張ってきたようだし、まっすぐだけれど不器用な所もあるから」

「ま、そこが夏凜らしいと言えばらしいけどね」

 東郷と風が苦笑しながら口々に言う。さすがに志騎よりも彼女と付き合いが長いだけあって、彼女が何を考えているかは分かっているようだ。

「はぁ、それにしてもコンプレックスか……。さっき刑部姫からちらっと言ったけど、春信さんの方は別に夏凜が嫌いってわけじゃないんだろ?」

「うん! きっとそうだと思う! 前に勇者部に夏凜ちゃんの成長ビデオ送ってきてくれたし!」

「え、そんな事あったのか?」

「あれ、その時志騎君いなかったっけ?」

 きょとんと二人揃って首を斜めにしていると、その時の事を東郷が説明してくれた。

「確かその時は、志騎君だけがいなかったと思うわ。ちょうどそれぐらいに、暖房器具の修理の依頼が殺到してたから……」

「ああ。風先輩が調子に乗って依頼を受けまくってた時か。確かに俺いなかっただろうな。忙しかったし」

「あの時は大変ご迷惑をお掛けいたしました………」

 悪意が無いとはいえ当時の自分の所業に罪悪感を抱いているのか、風が深々と志騎に頭を下げる。ちなみにその成長ビデオは夏凜本人によって没収され、今は彼女の部屋の一角に封印されているとか。

「まぁ、奴の幼少期の写真は私が前に三好春信からもらっていたから、その気になればコピーなんていくらでもできるんだけどな」

「やめたげてよぉ!」 

 あまりの仕打ちに風が叫び、刑部姫がケタケタと笑う。一方で志騎は椅子に座りながら、

「でも、自分の兄貴や姉にコンプレックスなんて抱くか? 樹も風先輩の妹だけど、別に姉妹仲がギクシャクした事なんてたぶんないだろ?」

「いや、アタシも前に樹から聞いたんだけど、やっぱり樹も学校で比べられた事があったみたい。でもあの子の場合はみんなアタシがすごいって言ってて、逆に誇らしかったって言ってた」

「でもいっつんの場合はそうかもしれないけど、やっぱりみんながみんなそういうわけじゃないとは思うよ~。自分達は仲良しでも、他の人から比べられちゃったらやっぱりコンプレックスは抱いちゃうんじゃないかな~」

「ふぅん。そんなものか」

 馬鹿馬鹿しいと思う。例え血が繋がっていても、違う人間という事に変わりはないのに。兄弟を比べたがる人間の思考が、志騎にはどうも理解できなかった。すると、志騎の言葉を聞いて風が彼に尋ねた。

「志騎もそういう経験とかないの? もしかして、一人……」

「あの、風先輩……」

 風が言いかけると、東郷が困った表情を浮かべて風の発言を遮る。最初はきょとんとした表情を浮かべていた風だったが、ようやく彼女がどうして自分を止めたのか理由に気づいてバツが悪そうに志騎に謝った。

「………ごめん、志騎」

「別に良いですよ。気にしてないですし」

 志騎はV.H計画で生まれたバーテックスにして、唯一の完成体だ。自分以外にバーテックス・ヒューマンはおらず、親と呼べるのは遺伝子を提供した氷室真由理ぐらいだ。兄弟などいるはずがない。

 ただ。

「……確かに俺には兄や妹はいなかったですけど、姉のような人はいますから」

 そう言う志騎の表情はとても優し気で、彼が誰を思い浮かべているかは東郷と園子、そして刑部姫にはすぐに分かった。すると志騎の言葉に興味を抱いた友奈が志騎に聞く。

「お姉さんのような人かぁ……。ねぇねぇ、どんな人なの?」

「真面目な人っていうか……。俺に生きるのに大切な事を色々教えてくれたって言うか……。うん、姉でもあるような親でもあるような、恩人でもあるような……。一言では言い表せないな」

「へぇ、そうなんだ。良い人なのね」

「………はい。本当に良い人ですよ」

 その人物の事を思い出して志騎が肯定すると、彼だけではなく東郷や園子も笑みを浮かべ、刑部姫も口元をわずかに綻ばせている。もしもこの場に銀がいれば、彼女も似たような表情を浮かべるだろう。志騎は頭の後ろで手を組みながら背中にもたれかかり、

「とりあえず、夏凜の事はどうにか考えておきます。このままだと、ろくに話す事も出来ませんし」

「分かったわ。でも何かあったらちゃんとアタシ達に話すのよ。相談に乗るから」

「うんうん! 勇者部五箇条!」

「悩んだら相談~!」

 おー! と友奈と園子が片腕を上げて声を揃える。そんな二人を見てから志騎は腰を上げると、

「じゃあそろそろ用済みなった刑部姫を処刑するか。遺言があったら言い残して良いぞ」

「結局私は許されないのか志騎よ!」

「……やっぱりあんた、刑部姫の息子だわ」

 鋏を手にして縄をばつんと切ろうとする志騎に刑部姫が絶叫を上げ、風が半眼になりながら呟いた。

 

 

 

 

 

「ひどい目に遭った……」

「自業自得だ」

 夜、リビングで志騎が作ったおかずのコロッケをむしゃむしゃと食べながら刑部姫が言うと、志騎がじろりと彼女を睨んだ。

 あれから間一髪樹が部室に戻って来て、今にも鍋に投入されようとしている刑部姫を見て悲鳴を上げた。さすがに刑部姫に懐いている彼女の目の前で釜茹での刑を執行するわけにもいかず、刑部姫はどうにか茹で上がらずに済んだ。これに懲りたら、他者をイジるような真似は少し控えた方が良いなと志騎は心の中で思った。……まぁきっと、刑部姫が控える様な事はまずありえないだろうが。

「でもそこまでか完成型勇者にこだわるなんて、よっぽど強いコンプレックスなのかな」

「……あいつの場合、恐らく三好春信だけではなく防人(さきもり)の奴らの事もあるんだろうな」

「防人?」

 初めて聞く単語を志騎が繰り返し呟くと、刑部姫がああと頷きながら、

「大赦には勇者の他にそういう奴らがいるんだよ。少し話が長くなるが、構わないか?」

 それに志騎がこくりと頷くと、刑部姫は防人について説明を始めた。

「防人と言うのは、勇者と同じく神樹の力を使う人間達の名称だ。勇者が神樹の力を使ってバーテックスと戦うのに対し、防人は壁外の調査などが主な任務だな」

「つまり、勇者がバーテックスと戦う戦闘員なら、防人は調査員や工作員みたいなものなのか」

「その認識で間違ってない」

 むぐむぐと口の中を動かしながら刑部姫が答える。志騎も白米を口にしながら、

「夏凜にその防人が関係してるって事は……、もしかして夏凜って、元々防人だったのか?」

「いや、違う。防人はそもそも二つの種類の人間達から構成されている。一つは、今回の戦いで勇者に選ばれなかった人間達」

「今回の戦いって……友奈達と十二体のバーテックスの戦いの事か?」

 志騎の言葉に、刑部姫はこくりと頷く。

「三好夏凜と犬吠埼風は知っているだろうが、神樹に選ばれる素質を持ったガキ共のグループは讃州中学だけでなく、四国全国にあったんだ。その中から神樹が一つのグループを選び、そいつらが勇者となってバーテックスと戦うという手筈になっていた。今回の場合は結城友奈達讃州中学勇者部が選ばれたが、それ以外のグループは用済みとなったんだ。だが神樹に選ばれなかったとはいえ、その候補に選ばれるほど素養の高い奴らを放っておくほど大赦も呑気じゃない。バーテックスとは戦えないが、それなら他の事をしてもらおうって事で大赦はそいつらを集めて防人に組み込んだんだ」

「ちょっと待てよ。グループって事は、結構な人数だろ? そんな数の人間が一斉に神樹の力を使って大丈夫なのか?」

 現在勇者は志騎を入れると八人いるが、実際の所は六人がギリギリなのである。勇者も神樹の力を使用しているので、あまりに数が多すぎると最悪神樹の寿命が縮みかねないからだ。志騎と刑部姫と銀の勇者システムは刑部姫が独自に開発したプロトコルが組み込まれているため、小さな力で既存の勇者システムと同じぐらいの出力を得ているが、そうでないなら防人に使われる神樹の力は馬鹿にならないだろう。それとも、志騎達同様特別なシステムを使っているのだろうか。

「確かに防人も勇者システムを使っているが、奴らのシステムは戦闘よりも量産を重視している。その分一人当たりの神樹の力は制限されているから個人の戦闘能力はお前達よりも低いが、その分多くの人間が変身できる。現に今の防人は、三十二人で構成されているしな」

「へぇ……」

 個人の戦闘能力は劣るとはいえ、三十二人もの戦士が並ぶところを想像すると中々圧巻である。と、そこまで考えた所で志騎はある事に気づいた。

「でも、お前が防人の勇者システムに俺と銀のと同じプロトコルを組み込めば、戦力は大幅に増したんじゃないのか?」

「何故私がそんな事をしなければならない?」

 心の底から、どうしてやらなければいけないのか分からないと考えている表情だった。この野郎……と志騎がジト目で刑部姫を見ると、彼女は「話が逸れたな」と言って続ける。

「で、もう一つが三ノ輪銀の前の端末を巡る競争からあぶれた奴らだ」

「銀の前の端末?」

 それについては、以前銀本人から聞いた事がある。銀は生き神となった後、外に出ないために彼女自身の勇者システムを没収されていた。それでその端末は改造され、今は夏凜のものとなっていたはずだが。

「お前も知っての通り、三ノ輪銀の前の端末は改造されて今は三好夏凜が持っている。だがすぐに奴の手に渡ったわけでなく、勇者の素質が高い奴らを集めて選別を行ったんだ。そしてその選別で勇者に選ばれたのが三好夏凜で、選ばれなかった奴らがもう一種類の奴らと同じように防人に組み込まれたというわけだ」

「じゃあ、夏凜がいたのはそっちなのか」

 ああ、と刑部姫は頷き、

「温度差はあったが、どいつもこいつも自分が勇者になろうと必死に努力していた。で、選ばれたのは三好夏凜一人だけ。それはつまり、奴が名乗っている完成型勇者という称号には勇者に選ばれなかった奴らの想いがこもっていると言っても過言ではない。ああ見えて奴は責任感が強いからな、完成型勇者と馬鹿みたいに常日頃から言っているのも、その表れなんだろう。………チッ」

 と、話をしていた刑部姫が突然舌打ちをした。刑部姫の顔を見た志騎は、彼女が嫌悪感を滲ませた表情をしている事に気づく。

「どうした?」

「何でもない。……嫌な奴の顔を思い出しただけだ」

「……?」

 刑部姫がここまでの表情を浮かべるほどの人物がいるのかと志騎は気になったが、あえて追求しない事にした。仮に彼女の聞いても何も答えないだろうし、答えたくないものをしつこく聞いて不機嫌にさせるのが目に見えるからだ。コロッケに備え付けられているシャキシャキとした歯ごたえのキャベツを味わいながら、志騎は夏凜の事について話を戻す。

「つまり夏凜は勇者としての責任だけじゃなくて、防人の想いも背負ってるのか。なるほど、改めて合点がいったよ。いきなり入ってきた奴が完成型勇者だなんて言われれば気に食わないよな」

「はっ、防人と言っても所詮は勇者に選ばれなかった外れクジ共だ。そんな奴らの想いを背負おうのは奴の勝手だが、それでお前に八つ当たりするのもどうかと思うがな」

「……お前それ、絶対に防人って人達の前で言うなよ」

 言葉は悪いが、刑部姫は志騎に夏凜の言う事など気にするなと言っているのだ。

 だがそういうわけにもいかない。夏凜の背負っている想いは大切なものだし、それを気にしないというのは人間としても勇者としてもあまりに無神経すぎる。そんな彼女と、どうすれば距離を縮める事ができるのか……。

(………こういうのは少し苦手だけど、ちょっと考えてみるか)

 と内心思いながら、志騎はそれを刑部姫に明かす事はせず代わりにある事を尋ねる。

「なぁ刑部姫。防人は壁の外を調べてるって言ったけど、それって今もしてるのか?」

「ああ」

「………それ、天の神にバレないのか?」

 ピクリ、と刑部姫の箸を動かしていた止まった。彼女は視線をコロッケから志騎の顔へと変える。

 四国が約三百年間平穏を保ってきたのは、西暦の時代に人類が敗北を認め、四国を守る神樹の結界から出ない事を条件として天の神が侵攻を止めたからだ。それから二年前にバーテックスが攻め入るまで、四国は神樹の庇護の元で平穏を保ってきた。ちなみにこの話は、志騎が四国に戻って来てから銀と刑部姫から聞かされて初めて知った。

 今大赦が行っている事は、その天の神との条約を反故する事になりかねない。いや……それどころか約束を反故にしたと天の神に気づかれ、明日にでも四国を滅ぼそうとしても不思議ではない。そんなリスクを冒して本当に大丈夫なのか。

 二人の視線が空中で絡み合い、重い沈黙が食卓に降りる。やがて刑部姫はふぅと息をつくと、改めてコロッケを取って口に運び、よく噛み飲んでから答える。

「今のところは大丈夫と言いたい所だが、正直怪しいな。この前東郷美森が壁を壊したから、天の神の警戒が以前よりも強くなっている可能性は否定できない。それもあって、大赦も最近ピリピリしている」

「じゃあ、やめた方が良いんじゃないのか? 探索は中断するかもしれないけど、また計画を練って……」

「それも考えたが、時間がない」

「時間?」

 刑部姫は表情を険しくすると、「ガキ共には言うなよ」と前置きしてから告げた。

「神樹の寿命が尽きるのが予想よりも早い可能性が出てきた。うかうかしていたら、天の神よりも先にこっちが早くくたばる事になる」

「それって、まさか勇者が増えた事で?」

 いや、と刑部姫は首を横に振り、

「それもないわけじゃないが、一番の原因は信仰心が薄くなっている事だ。基本的に神の力って言うのは、自分に向けられる信仰心で決まる。大赦の奴らや勇者部の奴らの信仰心は強いが、それ以外の奴らに関してはそうでもない。バーテックスが襲来してから三百年経ってるし、平穏な日々と言うのはそれだけで危機感や信仰心を低下させる。四国の奴らは今も神樹を崇めてはいるが、ほとんどが人並程度の信仰心だ。このままだと、神樹の寿命が予想していたよりも早く尽きる」

 どうやら思っていたよりも、神樹と天の神の戦いは天の神の方が優勢となっているらしい。知らずの内に唾を飲み込みながら、志騎が尋ねる。

「何か方法は無いのか?」

「極端な話、四国の奴らが大赦の人間と同じぐらいの信仰心を持てば寿命が長くなる可能性はあるが、それにはある程度の危機感が必要だ。例えば……バーテックスと壁の外の真相を公にする、とかな」

「………っ!」

 彼女の提案に志騎は思わず目を見開いた。確かにそうすれば真実が明らかになり、四国の人々の心に強い危機感が芽生えるかもしれない。だが同時にそれは諸刃の剣だ。それは刑部姫も分かっているのか、彼女はこくりと頷き、

「だがそうなれば四国全土が強い混乱に陥るのは明らかだ。それでパニックになる奴らもいるだろうし、大赦に反感を抱く奴らも出てくるだろう。そうなったら終わりだ。治安維持に力を割きすぎて、外敵に意識を向けるどころじゃなくなる。おまけに畏怖の心や恐怖心も神の力になるから、結果的に神樹の力は弱まり天の神だけが強力になる。私がこの真実を使って脅した時も大赦の奴らが必死に止めてきたからな。いやぁ、あれは愉快だった」

「お前が手に入れた情報ってそれだったのか……」

 氷室真由理はある情報を使って大赦を脅迫し、大赦の科学者になったと聞いていたが、どうやらそれはバーテックスと壁の外の真実だったらしい。普通の人間だったなら大赦の強大な権力に握りつぶされて終わりだったろうが、残念ながら情報を手に入れた人物は神世紀最高の頭脳を持った天才だ。大赦も厄介な人物に知らされてしまったと思ったに違いない。

「ま、色々と脅しはしたが今すぐ神樹の寿命が尽きるというわけではない。だがただぼんやりしているというわけにもいかないから、計画を中断する事も出来ず探索を続けているというわけだ。とりあえずこちらの問題は大赦と私の方でどうにかしておくから、お前はとりあえず目の前の問題を解決しろ」

「……了解」

 気になる事は山々だが、確かに目の前の問題を放置しておくわけにもいかない。話を切り上げると、志騎は夕食を食べながら問題の解決方法について考え込むのだった。

 

 

 

 

 




 前書きで刑部姫達も言っていましたが、今回の夏凜との日常回は少し長くなりそうな気がするため今回と次回に分ける事になりました。次回についてはもう書き始めていますので、少しでも早く投稿できるよう努力いたします。もうしばらくお待ちください。
 

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